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男子大学生の安藤 誠太郎(あんどう せいたろう)は、

”超”がつくほどの、草食系男子だったー。

恋愛経験は0、姉も妹もいないため、異性に対する耐性も0の男子だー。


性格的には心優しいものの、大人しく、奥手であるため、

自分から女子に話しかけることは一切せず、

話しかけられても、女子に慣れていないから挙動不審になってしまうー。

そんな、有様だったー。


大学でも、少数の”気の合う男子”と仲良くしているぐらいで、

相変わらず、彼女はできないままー。

自分から話しかけず、話しかけられても逃げ出してしまうような感じではー

どんなに優しくても、彼女なんて、なかなか出来るはずもないー。


だがー

そんなある日ー

彼に、信じられない出来事が起きたー。


「--やばっ!」

誠太郎は、声をスマホを見つめながら声を上げたー。

友達との”昼食を一緒に食べる”約束をすっかり忘れていて、

その友達・恭司(きょうじ)から”まだなのか~?”と連絡が来たのを見て、

慌てて走り出す誠太郎ー。


「--あぁ~~…僕ってば、やっぱどこか抜けてる…!」

そんな風に思いながら、慌てて大学を走っているとー


「----!」

「----!!」

ちょうど廊下の影から、友達と一緒に歩いている女子が出てきてーー


盛大に、その女子と正面衝突してしまったー。


誠太郎は、そのままバランスを崩してその場に転倒ー

衝突された女子は吹き飛ばされて、壁に叩きつけられ、

うめき声を上げて倒れ込んだー。


「--ちょ!?涼香(りょうか)!?」

誠太郎に正面衝突された女子と一緒に歩いていた友達が叫ぶー。


「--りょ、涼香!?だいじょうぶ?ねぇ?」

友達は、吹き飛ばされて倒れ込んだ涼香に駆け寄ると、

心配そうに涼香の身体を揺さぶったー。


ざわめく周囲ー。

ぶつかって涼香を吹き飛ばしたあとに、バランスを崩して転倒した

誠太郎も倒れたままー。


「-----う…」

友達が必死に呼びかけていると、涼香が、声を出したー。


意識を取り戻したのだー。


「ーーーあ…あれ…」

涼香が、寝起きかのように目をこすりながら、周囲を見つめるー。


「よかった…!涼香!けがはない?」

涼香の友達は、心配そうに、涼香の手や頬のあたりに手を振れるー。

涼香はドキッ!としたのか、顔を真っ赤にしながら

その友達を見つめるー。


「---ん……」

背後で倒れていた誠太郎もうめき声をあげたー。


誠太郎が意識を取り戻したことに気づいた涼香の友人は

振り返ると、怒りの形相で、誠太郎の方に向かって

歩いて行ったー。


「--ちょっとあんた!危ないじゃないの!」

怒りの形相で叫ぶ涼香の友人ー。


意識を取り戻したばかりの涼香は、背後で茫然としているー。


「---え」

同じく、意識を取り戻したばかりの誠太郎が、

涼香の友人の方を見るとー


「-ー由紀子(ゆきこ)-?」

と、不思議そうに呟いたー


「--はぁ~~~~~~~~~~~?」

涼香の友人・由紀子は、不快感を隠そうともせずに声を上げたー


いきなり大学の構内を猛ダッシュしてきて

一緒に歩いていた親友の涼香に正面衝突したかと思えば、

意識を取り戻して、いきなり「由紀子」と下の名前で呼んできたー。


誠太郎と由紀子は、大学で”顔を見たことはある程度”でしかなく、

まともに話したことすらないような間柄ー

そんな誠太郎にいきなり「由紀子」などと下の名前で

呼ばれたために、不快感をあらわにしたのだー。


「----あんたなんかに名前呼びされる筋合いはないんですけどぉ~~?

 ってかさ、わたしの涼香にぶつかっておいて、

 その態度は何なの?」


由紀子の怒りの口調と表情に

誠太郎は戸惑いの表情を浮かべるー。


「--ゆ、、由紀子…なにを…」

そこまで言って誠太郎は”何か”に気付いたのか、

急に自分の手を見つめたり、咳き込んで声を調節するような素振りをみせたりー

”おかしな様子”を見せ始めたー。


「-う、、うあああああああああああっ…!」

誠太郎の反対側では、涼香も、状況を理解したのか、

悲鳴を上げたー。


「--うっ、、あ、、あっ…えっ…えっ!?」

涼香が、パニックになった様子で自分の身体を見つめるー。


周囲の混乱がさらに深まるー。

涼香の親友である由紀子も、表情を歪めて、心配そうに

悲鳴を上げた涼香の方を見つめながら

「り、、涼香…大丈夫?」と、心配の言葉を口にするー。


「-----…!」

誠太郎は、そんな周囲の様子を見つめながらー

困惑した様子で、立ち上がると、突然涼香の手を引っ張りだし、

「え…?!ちょ、、な、、なに、、なにこれ!?」と

叫ぶ涼香を無視して、そのまま涼香を人がほとんどいない

大学構内の別の場所へと移動させたー。


「--はぁ…はぁ…」

移動した先で、涼香が荒い息を上げているー。


誠太郎も疲れた表情を浮かべながらー

口を開いたー


「---……えっと、、確か…」

すぐ横の廊下に備え付けられている鏡を見つめながら

誠太郎は口を開いたー。


「--安藤くん、だったよね?」

誠太郎が、自分の名前を涼香に向かって口にしたー。


”安藤誠太郎”が、「安藤くんだったよね?」という

言葉を発するのはおかしいー。


目の前にいる相手も”安藤”なら話は別だがー

目の前にいるのは、藤崎 涼香という”安藤”とは

何も関係のない女子大生だー。


なのに、その子のことを”安藤”と呼ぶ誠太郎ー。


涼香は、目を必死に瞑りながら

「ごめんなさい…ごめんなさい…!ごめんなさい…

 ぼ、、ぼ、、ぼ、、ぼく、何も、、何もしないから…!」と

顔を真っ赤にしながら叫んだー。


「--ちょ、ちょっと、、落ち着いて!」

誠太郎が、涼香を落ち着かせようと、必死に声を掛けるー。


涼香は、そーっと目を開くと、自分の胸のあたりを見つめて

真っ赤になって「ごめんなさい!ごめんなさい!」と再び

顔を手で隠すー。


「---あ、安藤くん!?大丈夫だから、落ち着いて!?」

誠太郎が再び、自分の名前を呼ぶー。


周囲から見れば、とても奇妙な発言ー。


まるで、普段の二人とは”真逆”のようにー


そうー

2人は、ぶつかった時に、身体が入れ替わってしまっていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


なんとか、涼香になった誠太郎を落ち着かせる

誠太郎になってしまった涼香ー。


誠太郎(涼香)は戸惑いながら、涼香(誠太郎)の方を見つめているー。


涼香(誠太郎)はずっと目を瞑ったままで、

両手を上にあげているー。


涼香は、

明るく、気配りも出来る優しい性格で、

男女問わず慕われているような女子大生だー。

容姿にも恵まれていて、内外共に、”綺麗”な子だー。

そんな涼香は、誠太郎からすれば、雲の上の存在だー。

涼香が月だとするならば、誠太郎は間違いなく、自信をもって

宣言できる。

「僕はゴミだ」と。


そんな、キラキラまぶしすぎる涼香の身体に自分が

なってしまったことで、もはや自分の身体を

直視できず、目を閉じたままの涼香(誠太郎)-


誠太郎とは、あまり接点がなくー。

存在は知っていたけれど、誠太郎が”異性がニガテ”

だということは知らない誠太郎(涼香)は

涼香(誠太郎)の”奇行”に困惑していたー。


「---あの…ど、どうして目を閉じてるの?」

誠太郎(涼香)が申し訳なさそうに言うとー


「-ご、、ご、ごめんなさい!

 ぼ、、僕のせいで、、身体が…こんな…」

と、涼香(誠太郎)が目を閉じたまま叫ぶー。


「--僕が、藤崎さんの身体を…こんな…

 ご、、ごめんなさい」

涼香(誠太郎)が必死に謝り続けるのを見て、

誠太郎(涼香)は「いいよ、わたしだって安藤くんの身体を

使ってる状態なわけだし、お互い様でしょ?」と、微笑むー。


涼香(誠太郎)は、

”どうせ僕のこと、キモいと思ってるんだ…”などと思いながらも、

そのやさしさに、ほんの少しだけ警戒心を解くー。


「-お、、怒ってないの…?」

涼香(誠太郎)が言うと、

誠太郎(涼香)は、

「入れ替わっちゃったのは、仕方ないし…わたしだって

 安藤くんの身体使ってるんだから、別に怒ってないよ」と、

優しく呟いたー。


けれど、その直後ー

誠太郎(涼香)は「でもーーー」と、続けたー。


そして、涼香(誠太郎)に顔を近づけると、

「目を開いてこっちを見て!」と、少し強めの口調で言い放ったー


「--は、、はひっ!?」

涼香(誠太郎)が目を開くと、

”自分の顔”が目の前にあったー。


自分の顔を見ながら、困惑する涼香(誠太郎)-


「-廊下を走っちゃダメでしょ!」

誠太郎(涼香)が、まるでお姉さんか先生かのように言うー。


「-入れ替わっちゃったからじゃなくて、

 普通に危ないでしょ!?

 怪我したらどうするの?

 

 ぶつかられたわたしもそうだけど、

 安藤くんだって怪我する可能性があるんだよ?」


その言葉に、

涼香(誠太郎)はしゅんとして「ごめんなさい…」と呟いたー。


落ち着かない様子で手を動かした涼香(誠太郎)-

その手がー


むにゅっー


と、涼香の胸にあたったー


「う、、わ、、ちがっ、、わっ、ごめん!

 触ろうとしたんじゃなくて、手を動かしたら…!」


涼香の胸を触ってしまった涼香(誠太郎)は

顔を真っ赤にして、涼香の身体で突然土下座を始めるー。


「ごめん!ぼ、、僕、ホント、、エッチなこと

 しようとか、その、してないし!

 今のはたまたま!

 ごめんなさい!ごめんなさい!」


胸に手を振れただけで、ここまで謝る男子を初めて見たー。


誠太郎(涼香)はそう思いながら

「--ま、、まぁ、自分の胸に触れちゃうことなんて

 よくあることだから気にしないでー」

と、苦笑いしたー。


「--で、、でも…」

そう言いながら涼香(誠太郎)は、

自分の身体を見ないように上を向きながら

「-僕なんかが、藤崎さんの身体に触れちゃうなんて、絶対だめだ」

と、再び万歳のポーズを取り始めたー。


「--あ、、、あのさ…

 そ、そういうポーズしてる方が、

 周囲から変な子に思われちゃって…わたし、困るかな~?」

誠太郎(涼香)が、困惑しながらそう言うと、誠太郎(涼香)は

「ご、ごめんなさい!」と、万歳していた手を下ろして、

落ち着かない様子で、誠太郎(涼香)を見つめたー。


「--とりあえず…わたしたち、入れ替わっちゃったみたいなんだけど…

 どうやったら元に戻れるか、色々考えてみよっか」


誠太郎(涼香)の言葉に、涼香(誠太郎)は頷いたー。


次々と色々なことを提案する誠太郎(涼香)-


握手して入れ替わりを念じるー

もう一度ぶつかってみるー

お互いの頭をぶつけてみるー


思いつくままに、色々試してみたー

涼香になった誠太郎はその都度「ごめんなさい!」と叫んでいたー。


「----……だめみたい」

誠太郎(涼香)は、困惑しながらそう呟くー


入れ替わった状態からはー

そう簡単には元に戻れないようだー


「ごめんなさい…僕の身体じゃ…藤崎さんが腐っちゃう」

涼香(誠太郎)の言葉に、

誠太郎(涼香)は「腐るとかあるわけないでしょ」と、

少しムッとした様子で言い放ったー。


「--安藤くんの身体に入っていたって

 わたしは腐ったりしないから、そういうこと言わないの。ね?」

誠太郎(涼香)の言葉に、

涼香(誠太郎)は困惑しながら頷いたー。


そしてー


誠太郎(涼香)は言ったー。


”入れ替わりました”なんて、信じてもらえないと思うから

元に戻れるまで、このままお互いとして生活するしかないー


とー。


「--え、、えっ…えっ…えっ…」

涼香(誠太郎)は心臓発作を起こしそうなぐらい

ドキドキしながら誠太郎(涼香)を見つめるー。


誠太郎と涼香はー

元に戻れるまで、お互いの姿で生活することになってしまったー。


だがー

涼香はまだ知らなかったー。


誠太郎の女性苦手属性は想像以上であることをー。

涼香の身体では、お風呂はおろか、トイレも着替えもできないぐらいにー

女性に強い苦手意識を持っていることをー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


異性に対する耐性0の男子との入れ替わり…!

2人とも、悪い子じゃなさそうですが、

入れ替わり生活をするには大変そうな組み合わせですネ~!…


入れ替わり生活のドタバタは②で★!


お読み下さりありがとうございました!!

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