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「---モルティングの追跡は、順調です」

目黒警視正が、姿勢を正した状態で、

イスに座り、背を向けている男に声を掛けるー。


背を向けている男は、何も答えないー。

その服装からは、その男が目黒警視正よりもはるかに上の

階級に位置する男であることが分かるー。


「---”奴”はどうかね?」

イスに座ったままの男は、窓の外に広がる夜景を見つめながら、

目黒警視正にそう、問いかけたー。


その言葉に、目黒警視正は動じる様子を見せることなく、

淡々と答えたー


「えぇ、そちらに関しても、順調ですー」

とー。


・・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。


臼井 隼人/中曽根 佳純/春山 正義

”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。


泉谷 聖一(いずみや せいいち)

治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。


・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ★


人を皮にする凶悪犯”モルティング”たちの背後に潜んでいたのは

若き警察官・長瀬治夫の中学時代の恩師でもある男・

泉谷聖一だったー。

聖一から、警察内部の”闇”について聞かされ、協力を求められたものの、

治夫はこれを拒否、恩師である泉谷、そしてモルティングたちとの

戦いを決意する。


一方で、警察内部に闇があるならば、それも見過ごせない、と

目黒警視正に話を聞こうとするも意味深な対応をされ、

はぐらかされてしまう。


そんな中、”モルティング”たちは、死んだ班目順太郎の”補充”として

また新たな犯罪者を仲間に引き入れていた…


↓前回はこちら↓

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・・・・・・・・・・・・・・・・


「---春山 正義(はるやま まさよし)-」

モルティング対策本部ー


目黒警視正がホワイトボードに写真を貼り出し、

”新たなモルティング”が増えたことを告げたー。


 ”モルティングは、いくらでも補充されるー”

かつて目黒警視正がそう言っていた通り、

モルティングは、補充されたのだー。


「俺が射殺した、班目の後釜ってことですか」

アウトロー風の刑事・明信がボサボサの髪を掻きながら言うと、

目黒警視正は「そのようです」と答えたー。


治夫が対策班に加わる前にも、

”人を皮にする犯罪者”を何名か始末しておりー、

その都度”補充”されていると聞いたー。


”根本”を潰さなければ、モルティングはいくらでも補充されるー。

それはつまり、恩師ある”泉谷”を逮捕するか、

あるいはーー


「--険しい表情をして、どうかしましたか?」

目黒警視正が微笑むー。


治夫が”あ、いえ…”と、咄嗟に返事をしようとすると、

隣にいた好青年風の堂林幸成が「いえ…別に何も」と、答えたー。


目黒警視正は、治夫に声を掛けたわけではなく、

隣にいた幸成に声を掛けたのだー


「--彼女が、気になりますか?」

微笑む目黒警視正ー。


”人を皮にする凶悪犯”のひとりー、

未だに治夫が遭遇したことのない”中曽根 香澄”を

見つめながら、そう呟く目黒警視正に対し、

幸成は「ーー別に何もー。ただ、足取りが不明なことが

気になるだけです」と、答えたー。


”黒崎 陣矢”

”臼井 隼人”

その二人は、既に治夫も実際に対面しているー。


だが、新たに増えた”春山 正義”はともかく、

この”中曽根 香澄”という細い目をした女狐のような女には

まだ一度も遭遇しておらず、

目黒警視正も足取りを追うことができない様子だったー。


泉谷に”もう既に会っている”いうようなことを言われたのも

治夫はとても気になっていたー。


それにー

幸成は、前にも”中曽根佳純”の写真を凝視していたことがあるー


「--まぁまぁ、ユッキーも明るくいこ!明るく!」

ギャル風の真綾が幸成の方を叩きながらそう呟くー。


治夫は、そんな対策班メンバーの様子を見つめながらもー

不敵な笑みを浮かべる目黒警視正の方を見つめたー。


”人を皮にする力を作ったのは、警察ー”

”警察庁長官・西園寺による息子の不祥事の隠蔽”

”目黒警視正が、上と繋がり、暗躍しているー”

”いまだに姿を現さない”剛”-


恩師・泉谷から聞いた言葉はー

治夫の、目黒警視正ー

いや、警察に対する不信感を増長させていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「-------」

対策班での仕事を終えて帰宅する治夫ー。


「----!」

治夫は、夜道を振り返ったー


背後に気配を感じたからだー。


しばらく周囲の様子を見つめる治夫ー。

だが、そこには誰の姿もなかったー。


「---(気のせいか)」

治夫はそう思いながら、再び歩き出すー。


治夫が歩き出すと、物影から女が姿を現したー。


「クククククー」

メガネをかけたOLが眼鏡をいじりながら

唇をペロリと舐めるー。


ペロッと綺麗な手を舐める女ー。

”人を皮にする”力を新たに得た

ストーカー・痴漢の常習犯、春山正義は

皮にした女の身体で、治夫を尾行していたー。


治夫が帰宅したのを見届ける女ー。


”長瀬治夫の住所を確認ー

 現在、恋人と妹が同居している模様”


OLの身体で、臼井隼人にメッセージを送信すると、

春山正義は、OLの綺麗な顔を歪めて邪悪な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・


”長瀬治夫の住所を確認ー

 現在、恋人と妹が同居している模様”


臼井隼人が、春山正義からのメッセージを確認すると、

近くにいた泉谷の方に歩み寄るー。


「-泉谷さんー

 長瀬治夫の住所と、同居人を確認した」

笑みを浮かべる臼井隼人ー


泉谷は「そうか」と答えるー。


「--どうして、長瀬治夫を始末しなかった?」

隼人は、表情を歪めながら泉谷に問いかけるー。


先日ー

泉谷と治夫が対峙した際に、

泉谷がその気になれば、黒崎陣矢と臼井隼人がその場にいた以上、

治夫を始末することもできたはずだー。


だが、あの時、泉谷は治夫を始末することに消極的に見えたー。


黒崎に始末は命じていたが、結果的に治夫は生き延びているー。


「--この前の話で、長瀬は少なからず警察に疑念を抱いたー

 あえて泳がせることで、”剛”や、警察の闇をあぶりだせるー、

 そう、思っただけだ」


泉谷の言葉に、臼井隼人は「なるほど」と答えながらも、

泉谷の方を見つめたー。


「-泉谷さんの考えも分かるー。

 だが、長瀬治夫ー、

 ああいう若い正義気取りのやつは、危険だー。

 泳がせておけば、必ずいずれ私の、いいやー

 泉谷さんにとっても脅威となるー。


 その前に、確実に潰しておくに限るー。」


隼人の言葉に、泉谷は考え込むー


その様子を見て、隼人は続けたー


「-私なら”確実に”長瀬治夫を始末できるー。」

とー


泉谷と隼人が互いに視線を合わせるー。


「------…」

隼人の言うことも分かるー。


治夫のような若さと正義感を併せ持つ男はー

愚かでもあり、時に強くもあるー

治夫の存在ひとつで、全てが打ち砕かれる可能性もあるー。


だがー迷いを抱いた治夫をあえて泳がせることでー

目黒警視正や、その裏に潜む男をあぶりだしー

泉谷の目的である”警察の闇を叩き潰す”というゴールに

近づける可能性も高いー。


「----」

”両方”を天秤にかけて考え込む泉谷ー


「--わかった」

やがて、泉谷は静かに口を開いたー


「--好きにしろー」

とー。


その返事を聞いて、臼井隼人は笑みを浮かべたー。


「--どうも」

隼人は、泉谷に背を向けるー。


既に、新しく仲間になった、春山正義を使って

治夫を監視させているー

”長瀬治夫”を確実に葬るためにー


天才詐欺師・臼井隼人は

計画を緻密に組み立てー

相手の弱みを”確実”に狙い、獲物は決して逃がさないー。


「---クク」

春山正義から送られてきた写真を見つめて、笑みを浮かべる臼井隼人ー


「-妹の長瀬聡美ー

 同居している彼女の松永亜香里ー」


”弱点”

それを見つけて臼井隼人は凶悪な笑みを浮かべたー。


”人は弱みを握れば”


簡単にーーー


「---長瀬 聡美ー…

 君に、”服”になってもらうとしようかー」


ーーー潰れるー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


同時刻ー

別の場所では、黒崎陣矢に皮にされた女子大生・鈴が

誰かを呼び出していたー。


”着替え”のためにー。


鈴の身体は、片目を失ったし、ボロボロだー。


”古着”は捨てるに限るー。


鈴のスマホをいじりー

笑みを浮かべるボロボロな鈴ー。


鈴のスマホの中身を確認しー

”次の服”を見定めた黒崎陣矢は、同じ大学に通う女子大生を

呼び出したのだー。


「---クククク」

物影から、”友達”がやってきたのを見つめる鈴ー。


「--そろそろ”お着替え”の時間なんでなー」

鈴が物影から姿を現すー。


「--あ、鈴…!」

鈴に呼び出された友達の女子大生・萌恵(もえ)が、

鈴の姿を見て表情を歪めたー。


「--ふふふ…萌恵~

 来てくれて嬉しいな♡」

鈴は、片目を失った状態で、ボサボサ頭のまま、

萌恵の前に姿を現したー。


萌恵は、唖然としているー


「す、、鈴…?

 最近、大学にも来ないし…ど、どうしちゃったの?」

萌恵は、不安そうに呟くー。


大学で、鈴の親友である萌恵は、鈴が大学に来なくなり、

連絡も取れなくなったことを、とても心配していたー


だからこそ、今日ー

鈴から”会って話がしたい”と言われた萌恵は、

まさか”友達の鈴が凶悪犯に着られている”などと夢にも思わず、

やってきてしまったのだー。


「---どうしちゃったって~?

 わたしね~~、男の人にお洋服にされちゃったの!

 目も1個潰れちゃった~♡」

クスクスと笑う鈴ー


萌恵は「な、、なに、、いってるの?」と震えながら

鈴の方を見つめるー。


「---ふふふ すぐにわかるよ。

 次は、お前を着るんだから」


鈴が低い声で呟くとー

突然、萌恵の方に歩いてきて、萌恵に襲い掛かったー。


萌恵がわけの分からないまま悲鳴をあげるーー


「す、、鈴…!?な、、何があったの!?どうしちゃったの!?」

叫ぶ萌恵ー


「--今から教えてあげるから、黙ってろよ へへ」

鈴はイヤらしい笑みを浮かべるとー

ぱっくりと後頭部から、亀裂が入るようにしてー

あっという間に”脱皮”するかのように脱がれてー

中から出て来た黒崎陣矢は、笑いながら悲鳴を上げる萌恵に

注射器を打ち込みー”皮”にしたー。


鈴の皮から、萌恵の皮にー。


「---お着替え完了 うふっ♡」

黒崎陣矢に着られた萌恵は嬉しそうにピースをすると、

脱ぎ捨てた鈴の皮をそのまま放置して、笑いながら立ち去って行くー


”やっぱこの力は最高だぜー。

 俺は、俺の好きなように暴れてー

 好きなように女どもを着させてもらうぜー”


心の中でそう呟くと、萌恵は、そのまま夜の闇に姿を消したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した治夫は、彼女の亜香里、妹の聡美と共に

晩御飯を済ませていたー。


「--もう明後日かぁ~」

残念そうに呟く聡美ー


「--ははは、しょうがないだろ?

 ずっとここにいるわけにもいかないんだし」

治夫が笑いながら言うー。


治夫の家に遊びに来ていた聡美ー。

しかし、聡美は実家暮らしで、大学も実家の近くのため、

そろそろ実家に帰らなくてはいけないー。


”お兄ちゃん大好き”な、聡美は帰る日が近づくにつれて、

げっそりとし始めていたー。


「-ー聡美ちゃんってば、本当に治夫のことが大好きなんだね~」

彼女の亜香里が笑いながら言うと、

聡美は「そうだよ!亜香里さんより大好きだもん!」と、頬を

膨らませながら言うー。


「-も~~~!ずるいずるいずるい!亜香里さんばっかり!

 亜香里さんと入れ替わりたいぐらい!」

聡美が、亜香里をポコポコと叩きながら言うと、

亜香里は微笑みながら「入れ替わったら、わたしが

治夫に”おにいちゃん~”って抱き着いちゃうよ~?」と

冗談を口にするー


「--むむっ…それもだめ~~~!!!!」

聡美は子供のようにぷんすかと怒って見せるー。


治夫は「ははは…」と微笑ましく二人を見つめながらも

”モルティング”たちから二人を守らないとー、と

心の中で考えるー。


聡美に関しては明後日地元に帰るがー、

地元に帰っても狙われる可能性は、0ではないー。


それに、亜香里だってそうだー。

出来れば、どこかホテルにでも一時的に避難させておいた

方が良いのかもしれないー


だが、亜香里は”危険でも、治夫の側にいる”と

前に言ってくれていたー。


その想いをー

無駄にするわけにはーー


色々考えているうちに、晩御飯の時間は終わり、

妹の聡美はお風呂に向かうー。


「-ーーそれにしても、亜香里って本当に変わったよな~」

治夫が、後片付けを一緒にしながら呟くと、

亜香里は笑いながら「治夫、わたしに気づかなかったもんね」と笑うー。


「--いやいや、あんなの普通気づかないだろ!?」

治夫が笑いながら言い返すと、亜香里は

「-わたしはすぐに分かったケドなぁ~」と、お皿を片付けながら微笑むー


「-亜香里が変わり過ぎなんだよ!」

「--治夫が変わらな過ぎ!」


治夫と亜香里が出会ったのは、小学生の頃ー。

当時、治夫が放課後に良く遊んでいた近所の公園で、

ふたりは出会ったー


「-お~い!そこの君~!」

短髪の少年に声を掛けられた治夫は、

飛んできたサッカーボールを見つめながら

すぐに”これを蹴り返してほしい”のだと理解して、

それを蹴り返したー


当時、治夫も友達数名と、公園でサッカーをしていたー。


一人でサッカーの練習をしていたその少年は、

近くの別の学校に通う少年でー、

お互い、いつも同じような時間に、その公園で遊んでいたことから、

その日をきっかけに、治夫たちと一緒にサッカーを

するようになったー。


「--僕のかち~!」

その少年は、とても強くてー、

治夫や、治夫の友達では、まるで叶わなかったー。


そんなある日ー。

公園にやってくると、その少年は、女子に囲まれていたー。


「---あれ?その子たちは?」

治夫が言うと、

その少年は答えたー


「え?僕の友達だけど?」

少年の答えに、治夫は、揶揄うような笑みを浮かべてー


「女子ばっかじゃん~~!」

と、笑いながら指を差すー


ちょうど”女子と一緒にいる男子を揶揄う年頃”だったからだー。


だがー

相手の少年は不思議そうな顔をしたー


「--あのさ…

 僕…男じゃなくて、女なんだけど…?」

とー。


「--は?」

治夫は、唖然としたー


公園で出会った少年ー

サッカーをきっかけに知り合い、公園で一緒に遊ぶようになった

別の学校に通うその少年はー

少年ではなく、少女だったのだー。


「--ええええええええええ!?」

”いつも公園にいる子”-

それだけだったから、名前なんて聞かずに一緒に遊んでいたー


驚く治夫ー


だが、それから少しして、その少女は、引っ越したためー

以降、会うことはなかったー。



それから時は流れー


高校に入学した治夫は、そんなことも遠い昔の記憶になりー

ごく普通の学校生活を送っていたー。


その時に、亜香里と出会ったー。

亜香里は、治夫に対して妙に親しく話しかけてきてー

治夫は”随分積極的な子だな”と、思いつつも

悪い気はしなかったし、亜香里と次第に仲良くなっていったー。


亜香里は、何事にも一生懸命で、

とても可愛らしいだけではなく、

性格も良く、部活に、勉強に、人間関係に、

何もおいても”光”みたいな存在だったー。


治夫も、そんな亜香里から刺激を受けて、

頑張ろう、と思えたー。


そんなある日ー

亜香里と一緒に昼休みを過ごしていると、

亜香里がふと、グラウンドの方の、サッカーをしてる生徒たちを

見てほほ笑んだー


「--昔を思い出すね~」

と、笑う亜香里ー。


治夫は「え?亜香里、サッカーやってたの?」と、苦笑いしながら言うー


”美少女”という感じの亜香里がサッカーをやってたなんて

全然イメージが湧かないー


そんな風に思っていると、

亜香里は、きょとんとした顔で、呟いたー


「---え…」


「--え?」

治夫も首を傾げるー


「---え…一緒にやってたじゃん…小学生のころ…」

亜香里の言葉に、

治夫は「え…???」と、首を傾げるー


「--ほら…公園で…

 治夫、わたしのこと、男の子だと思ってたでしょ?」

亜香里の言葉にーー


治夫は思わず「えええええええええええええ!?!?!?」

と、叫んだー


少年にしか見えなかったあの子がー

こんなかわいい女の子にー!?


そう思った瞬間、驚きのあまり叫んでしまったー


「--ちょ!?!?気づいてなかったの!?

 お父さんの都合で、またこっちに戻って来ることになったから

 こっちの高校に戻ってきて、

 そしたら偶然長瀬くんがいたからー


 …って、じゃあ、わたし、長瀬くんに何て思われてたの!?」


亜香里が言うと、

治夫は「--え…な、、な~んか、随分俺になれなれしい子だな…って」

と、苦笑いしたー。


亜香里はそんな治夫に対して顔を赤らめて、

「--わ、、わたし、肉食女子だと思われてたの!?」と、

声をあげたー


それからー

更に親しくなってー

警察を目指す治夫を応援してくれる亜香里とは

切っても切れない関係になったー


そんな、昔の話をしながら、治夫は、笑うー


「いや、ホント気づかないよアレ…

 俺じゃなくても」


治夫が言うと、亜香里は

「-お兄ちゃんが二人の家庭だったから、

 わたしもなんか男の子っぽく育ってたんだよね」

と、笑ったー。


「--そっか~…まぁ、そうなるのかもなぁ~」

治夫は、そう言いながら、微笑む亜香里の方を見つめるー。


「-ーでも、男っぽい亜香里もまた見てみたいような気がするなぁ」

治夫が冗談を口にすると、

「-もう、わたしが男みたいに振舞うことはないと思うよ~」と、

亜香里は笑いながら答えたー。


「--はは、そうだよなぁ~」

治夫はそう言いながら、お風呂から出て来た聡美に

話しかけられて笑う亜香里の方を見つめるー


「-----」


”お前の彼女は、俺のものだー”


ふとー

”皮”にされて、乗っ取られた亜香里が

”男言葉”を口にするイメージが浮かんでしまうー。


「----!」

首を振る治夫ー


”そうならないように、俺が亜香里を守るんだー”


大切な亜香里を絶対に守るー

治夫は、改めてそう決意してー

楽しそうに談笑する亜香里と妹・聡美の方を見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして

妹の聡美が帰る日がやってきたーーー


「--じゃあ、また」


「うんー」


妹の聡美を帰りの電車まで送り届けた治夫ー。


聡美は「お兄ちゃん!亜香里さんと仲良くね!」と

微笑みながら手を振るー


「あぁ」

治夫も、聡美に対して手を振るー。


電車が、出発の時間を迎えるー


治夫は聡美に手を振り-

少し安堵した様子でため息をつくー。


スマホを確認する治夫ー


”-例の女子大生が見つかったー”

同じ対策班のメンバー・堂林幸成からの連絡ー。


”黒崎陣矢に皮にされていた女子大生・鈴”の皮が

見つかったー、そういう連絡だったー


治夫はすぐにその場所へと向かうー


・・・・・・・・・・・・


「---お兄ちゃん、ホント、亜香里さん好きだなぁ~

 妬けちゃうなぁ」

そんな風に呟きながら、電車の窓から、外の景色を見つめている聡美ー


だがーー


聡美の少し離れた場所から

スーツ姿の男が、聡美の方を見つめていたー


”君に恨みはないがー”


人を皮にする凶悪犯のひとりー

天才詐欺師の臼井隼人は無気味な笑みを浮かべたー


”大好きなお兄ちゃんを始末するためにー

 力をー

 いいや、その身体を貸してもらうよー”


⑰へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


第16話でした~!★

かなり不穏な雰囲気が漂っていますが、果たして…!?


これからも、色々な部分が動いていくので、

ぜひ楽しんでくださいネ~!


今日もありがとうございました~!

(Fanbox)


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