<入れ替わり>斬る男と斬られる女①~遭遇~ (Pixiv Fanbox)
Content
”辻斬り”と呼ばれる存在がー
夜の街で、通行人に刀を振るい、斬り捨てていたー。
ある者は、刀を試すためー
ある者は、金品を強奪するためー
ある者は、己の力量を試すためー
そして、ある者は、単なる憂さ晴らしー。
斬られた側は、理不尽にその命を奪われ死んでいきー
斬る側は、己の欲求を満たすために、人を斬るー。
それが、”辻斬り”だー。
今日も、また一人ー。
その”辻斬り”の被害に遭おうとしていたー。
「へへへへへへへ…」
辻斬り・角兵衛(かくべえ)は、笑みを浮かべながら、
町娘を追い詰めるー。
父親からの使いで、隣町にいる知り合いに物を届けた帰りに
辻斬り・角兵衛と遭遇してしまった
哀れな町娘・小夜(さよ)は、悲鳴を上げながら後ずさるー。
隣町の知り合いから受け取った小包を大事そうに握りしめながら、
涙目で角兵衛を見つめるー。
「--へへへへ…いい声出すじゃねぇか」
刀を握りしめて、咲に迫る角兵衛ー。
小夜は泣きながら”助けてください”と、
嘆願するー。
小夜も、目の前にいる男ー
角兵衛が自分を斬ろうとしていることを、
よく理解しているからだー。
角兵衛は、
剣術の頂点を目指していたー。
だが、”折れた”
自分には無理だー。
そう思ったのだー
どんなに修行をしても、
剣の才能を持つ奴らには、叶わないー。
それを悟ってしまったー。
武家に生まれた角兵衛は、己の限界を感じー
いつしか弱いモノを斬り捨てることで、
自分が”強い”という錯覚を覚え、
快感に酔いしれるようになったー。
剣術の高みを目指し、己の限界に行き詰った腹いせに、
弱者を斬り捨てて回るー
それが、辻斬り・角兵衛だったー。
「ーー痛みは一瞬だ。一瞬で楽にしてやるから、
安心しな」
角兵衛は笑みを浮かべて、刀を振り上げたー。
弱者を斬り捨てる瞬間は、とても興奮するー
まるで、自分が神になったような、
そんな感覚を覚えることができるー。
今、目の前にいる人間のー
明日ー。
いや、明後日ー
その先も全て、一瞬にして、消えるー。
その事実に、激しく興奮するー。
「--やめて、、やめて、、やめて、、やめて、、やめて…」
小夜が泣きながら頭を抱えているー。
角兵衛は笑みを浮かべたー。
「--恨むなら、己の不運を恨みな!せいやぁぁああ!」
大声を上げてーーー
角兵衛が剣を振り上げてーー
小夜が抱えていた小包ごと、小夜を叩き斬ったーー
ーーはずだったーーー
「---?」
角兵衛は、強い違和感を感じたー
(なんだー?)
何やら、様子が変だー
状況が飲み込めないー
小夜を斬り捨てたはずの自分が、
尻餅をついて、道端に座り込んでいるー。
そして、その違和感はーー
小夜にとっても同じことだったー
”斬られる”
そう思って目を閉じたまま、悲鳴を上げた小夜ー。
だが、いつまで経っても”自分の身体を襲うはずの痛み”が
自分に伝わってこないのだー。
(え……)
”わたし、助かったの…?”
”痛みを感じる前に、死んじゃったってこと…?”
そんな風に思いながら、小夜はさらに違和感を覚えたー。
自分が、何かを握りしめている気がするー。
いやー
尻餅をつくような状態だったはずの自分が
いつの間にか立ち上がっているような気もするー
これはいったいー、
どういうことなのかー。
小夜はそんな風に思いながら、恐る恐る目を開けるとー
「----え」
「---な、、な、なんだこれは…」
2人は同時に呟いたー
小夜は驚くー
”目の前に、座り込んだわたしが…?”
同時に、角兵衛も驚いたー
”な、なんで刀を持った俺が目の前にー?”
とー。
人の気配のない夜の道ー。
2人は、激しく混乱していたー
「-わ、わたしが、刀を……?」
小夜は、自分がいつの間にか刀を握っていることに
戸惑いの表情を浮かべるー。
いやー
それだけではない。
自分の口から出る声は、
小夜のものではなく、男の声になっていたー
「え…??え…?」
小夜は、辻斬り・角兵衛の身体になっていたのだー。
さらにー
「--…ど、、ど、、うへ…?」
戸惑いながら、小夜になった角兵衛は自分の胸を触るー
「へへ、、す、、すげっ…」
小夜(角兵衛)がイヤらしい笑みを浮かべると、
すぐに我に返って、
角兵衛(小夜)の方を見て、驚きの声を上げたー。
「ま、、ま、、まさか、俺とお前が、入れ替わったっていうのか?」
小夜(角兵衛)は、さっきまで悲鳴を上げていた町娘とは
思えないような態度で、そう叫んだー。
「--ひっ、、わ、、わ、、わたしは、、何も、、
何もしていません、、お、、御助けを…!」
角兵衛(小夜)は、目から涙をこぼしながら必死に、そう呟くー
小夜にとっては
”角兵衛と入れ替わってしまった”ということよりも
”とにかく助かりたい”一心だったー。
「---ーーき、、貴様、、図ったな!?
俺に何をしたー!?」
小夜になった角兵衛は、
さっきまで泣いていた小夜の顔を鬼のように歪めながら
角兵衛になった小夜に襲い掛かるー
「やめて!やめて!!たすけて!」
角兵衛(小夜)が必死にもがくー。
「--!?」
ドサッ、と音がしたー。
「---え」
もがいていた角兵衛(小夜)も唖然とした表情ー。
襲い掛かった小夜(角兵衛)が
いとも簡単に角兵衛(小夜)に突き飛ばされて
雑草の上に尻餅をついているー。
「--…!」
小夜になった角兵衛は、自分の手を見つめるー
小夜の、華奢で綺麗な手ー
「----くそっ!貴様!俺に何をした!」
小夜(角兵衛)は再び怒りの形相で、
角兵衛(小夜)に襲い掛かり、つかみ合いになるー
しかしー
再び小夜(角兵衛)の身体が簡単に突き飛ばされたー
先程まで悲鳴をあげていた角兵衛(小夜)は
きょとんとした表情で、元自分の身体…、小夜になった角兵衛の方を
見つめたー。
地面に付着した白い粉を手に付着させながら
小夜(角兵衛)は歯ぎしりをするー。
江戸時代の夜道ー
街から離れたこの道には、他の人間が通ることは、まずないー
この、異常事態に直面しているのは、
小夜と角兵衛の二人だけー。
だからこそ、時々人が通るこの場所で、
角兵衛は待ち伏せをし、やってきた人間を
斬り捨てていたのだー
”くそっ…この娘…どこまで貧弱なんだー”
小夜になった角兵衛は、地面に手をついたまま歯ぎしりをするー。
小夜の身体は、角兵衛からしてみれば、貧弱だったー
そのため、角兵衛になった小夜に乱暴しようとしても、
すぐに振り払われてしまうー
角兵衛と小夜の身体では決定的に、
力の差があったのだー
「---!」
小夜(角兵衛)がどうしようかと考えているとー
満月の月に背を向けた角兵衛(小夜)が、
じっと、小夜になった角兵衛の方を見つめていたー。
そして、角兵衛(小夜)は、角兵衛が握りしめていた刀と
小夜になった角兵衛の方を交互に見つめるとー
目に涙を浮かべながら、刀を握りしめるー。
「---!!!!!!!!」
小夜(角兵衛)は、表情を歪めたー
「----」
涙目のまま、無言で近づいてくる角兵衛(小夜)ー
「--ちょ、、ま、、ま、、待て!待つんだ!」
小夜(角兵衛)が叫ぶー
「ーわ、わ、、わ、わたし、、まだ、、死にたくないんです!
わたし、、わたし…まだ!」
角兵衛(小夜)は、自分が助かるために、刀を必死に握りしめているー。
「--わ、、わ、わ、わ、わ、わかった!わかったよ!」
小夜(角兵衛)は必死に叫ぶー。
このままだと、自分が小夜の身体のまま斬られてしまうー
「--まずは、落ち着いて!」
小夜(角兵衛)は尻餅をついた状態のまま、
角兵衛(小夜)を見つめたー
「ーーーーはぁ、、はぁ、、はぁ、、はぁ」
角兵衛(小夜)は半分パニックになったまま、刀を
小夜(角兵衛)に向けているー。
角兵衛になった小夜は、さっきまで
自分が斬られる側だったことで、パニック状態だー
入れ替わったこの状況も、あまり理解できていない様子に見えるー
そう思った小夜(角兵衛)は
「-落ち着け、テメェが斬られることはもうねぇ」
と、叫んだー。
「---…はぁ、、、はぁ、、、はぁ」
角兵衛(小夜)は、怯えた表情のまま小夜(角兵衛)を見つめるー
「--見てみろ。自分の身体をー
どうやら、俺たちは入れ替わっちまったみたいだぜ」
小夜(角兵衛)は立ち上がりながら、小夜の胸を触るー
「--はぁ…はぁ…なんで…」
角兵衛(小夜)は、刀を握りしめたまま、
”目の前にいる自分”を見つめるー
「-それは俺にも分からねぇ。
だが、とにかくー
お前はもう斬られることはねぇ。
見てみな。
今、刀を握りしめているのは、俺の身体になった
お前のほうだー。
お前の身体になった俺は、刀を持ってねぇ」
角兵衛になった小夜は刀を持っているー
パニックになったままでいられると、
斬られてしまう可能性もあるー。
そう思って焦っている小夜(角兵衛)は、
その焦りを悟られないように、冷静に振舞いながら
状況を説明していくー。
「--(へへへへ…最初は焦ったがこれはラッキーかもしれねぇな)」
小夜になった角兵衛は、小夜の身体を見つめるー。
女の身体にー
最強の刀ー
”身体は貧弱でもー
2つを使えば今まで以上に楽しめそうだぜ”
”女辻斬りってのも、悪くねぇ”
小夜(角兵衛)は、そんな、下心丸出しの考えを浮かべながらー
角兵衛(小夜)を今一度見つめたー
「ま、身体が入れ替わっちまったものは仕方ねぇ。
けど、もうお前は俺に斬られる心配をしなくていいんだー。
俺の身体になったお前のほうが、力も強いし
俺の身体になったお前のほうが、逃げ足も速いだろうよ。
だからホラ、その刀を置いて、とっとと帰りなー」
小夜(角兵衛)の言葉にー
角兵衛になった小夜は、パニックを起こしかけていた心を
落ち着かせた様子だったー。
だが、じっと小夜(角兵衛)の方を見つめたまま、
刀を離そうとしないー。
「--へへへ 安心しろって、
言っただろ?
この身体じゃ俺の身体で全力疾走されたら
追いつけやしねぇよ。
それに、俺も”元・自分の身体”を斬るほど悪趣味じゃねぇ。
刀を置いて、そのままさっさと帰りな。」
小夜(角兵衛)は
”角兵衛(小夜)が、刀を置いた瞬間に斬られることを
警戒している”と、考えて、安心させるために
そう言葉を口にしたー
「--ーーー…… ---」
角兵衛(小夜)は、何度も、自分の身体と、
角兵衛の身体を見つめているー
「わたしたち、本当に…」
角兵衛(小夜)の言葉に、
小夜(角兵衛)は、「あぁ、本当に入れ替わっちまったみたいだな」と、
小夜の身体で笑みを浮かべたー。
「--そう、、ですか」
角兵衛(小夜)はそれだけ言うとー
ため息のようなものをついて、安堵の表情を浮かべるー。
”斬られる直前だった自分”が、
入れ替わりが起きたことにより、命拾いした安堵のため息ー
そしてーー
「---え」
小夜(角兵衛)が表情を歪めたー
「--じゃあーーー」
握りしめていた刀を見つめると、
角兵衛になった小夜は、笑みを浮かべながら
小夜(角兵衛)の方に向かってきたー
「-----え???」
小夜(角兵衛)が今一度間抜けな声を出すー。
「--じゃあ、わたしが”辻斬り”で、
あなたが”斬られる娘”ってことでございますねー」
にっこりと笑う角兵衛(小夜)-
小夜(角兵衛)は
「--え、おい、ちょっ!?!?」
と、悲鳴に似た声を上げるー
角兵衛(小夜)は、その言葉に止まる様子もなく、
小夜(角兵衛)に襲い掛かって来たー
「--ちょ!待て!えっ!?じ、自分の身体を斬るのか!?
おいっ!待て!」
小夜(角兵衛)は、悲鳴に似た声を上げながらー
角兵衛(小夜)の方を見つめたー
がー
角兵衛(小夜)は止まることなく
”元・自分の身体”に向かって刀を振るったー
②へ続く
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コメント
江戸時代が舞台の入れ替わりデス~!
斬られる側と斬る側が逆転してしまった
ふたりの運命は…!?
ぜひ次回もお楽しみくださいネ~!
今日もありがとうございました~!