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久義は、佳菜恵を取り戻すために立ち上がったー。


「--俺は、佳菜恵のこと、絶対に守るって約束したんだー」

久義が拳を握りしめるー。


「大丈夫さ。悪用したりは絶対にしないし、

 この力を使うとすれば、佳菜恵を守るためだけ、

 喜ばせるためだけにするからさ!」


そう、約束したー。

佳菜恵を守るために、この力を使うー、と。


久義は、ある場所へと向かっていたー。


「----まずは、佳菜恵の職場に行こう」


”佳菜恵の先輩の家”がどこなのか、

久義は知らない。

まずはそれを調べなくてはいけない。


見ず知らずの人間の家を調べることは、通常では容易ではないー、が、

久義には”力”があるー。


「--俺は、佳菜恵を守るために、この力を使うよ」

久義は自分を”正義”と信じて疑わず、そう呟いたー


これが、”力”に憑りつかれて溺れた人間の”末路”-


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--ご主人様…」

佳菜恵が不安そうに呟くー。


「--佳菜恵ちゃん!しっかりするの!

 佳菜恵ちゃんは彼氏さんに操られてるの!」

先輩が必死に佳菜恵を説得するー。


彼女の佳菜恵は今、佳菜恵の勤務先である”先輩”の家にいるー。


先輩が”久義の洗脳により、会社を退職しようとした佳菜恵”に

違和感を覚えて、佳菜恵を匿っているからだー。


佳菜恵も、自分の急激な変化に驚きー、

そして、戸惑っていたー。


久義が”人を操る力”を手に入れたのは、

佳菜恵も久義本人から聞かされて知っているー。

既に先輩にも、その時の出来事は伝えてあるー。


だが、既に色々な部分を久義に”洗脳”されていることから、

頭の中が上手く整理できずに、混乱している状態ー。


”ご主人様のところに帰らなくちゃ”という思いと

”このままじゃ、わたしがわたしでなくなっちゃう”という恐怖のー

板挟みになってしまっている状態だったー。


「---わたし、、わたし、、どうなっちゃうんですか…?」

佳菜恵が目から涙をこぼして、頭を抱えるー。


そんな佳菜恵を抱きしめて、先輩は「大丈夫だから」と

優しく何度も言い聞かせるー。


”この子は、絶対にわたしが守らなくちゃ”

佳菜恵の先輩は、佳菜恵を慰めながら、

心の中で強く、そう決意していたー。


なんとしても、佳菜恵を守らなくてはいけないー、と。


何故ならー

先輩自身も、以前、”彼氏からの暴力”に悩まされていたことが

あったからだー。


佳菜恵の彼氏の場合は、暴力ではない。

”人を操る力”という、得体の知れないものー


だが、”彼氏に苦しめられている”という点で、

佳菜恵の先輩は、佳菜恵を放っておくことはできなかったー。


「------」

”この家にいれば安全だから”

先輩は、佳菜恵にそう言い放つと、優しくほほ笑んだー。


そう、この家にいれば安全だー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--佳菜恵の彼氏ですけど、佳菜恵と親しくしてる

 先輩の方と会いたいんですけど」


久義は、彼女である佳菜恵の会社にやってきていたー。


メガネをかけたOLが、不審なものを見る目で

久義を見つめると、口を開いたー


「--あの…何か御用ですか?」

とー。


「--あぁ~えっと、佳菜恵がその先輩の家に

 ずっとお邪魔してるようなので、

 お礼を一言言いたくてー。


 今、佳菜恵がお世話になってる先輩って、誰です?」


久義が穏やかな笑みを浮かべながら言うー。


だが、OLは答える気は無さそうだったー。


”いいから黙って佳菜恵を”誘拐”した先輩は誰なのか教えろ”


久義は、そう強く念じながら、メガネのOLを洗脳したー


「---あ……」

虚ろな目になって、OLが答えるー。


「--”幾田(いくた)さんです-ー」

OLが機械的な口調で呟くー


「--ふぅん、そいつが、佳菜恵をさらった先輩か」


「--はい…」

OLの言葉に、「写真はあるか?あるなら見せろ」と言うと、

そのOLは、スマホをいじって、以前の忘年会か何かの

写真を見せて来たー


そこにはー

佳菜恵を匿っている先輩・幾田 益美(いくた ますみ)の

姿が映し出されていたー。


「住所は?」

久義が言うと、「申し訳ございません…わたしは住所を知らないので…」と

OLが申し訳なさそうに頭を下げたー。


「--あっそ。じゃあいいよ。お疲れ」

久義がそれだけ言うと、OLは「お役に立てず申し訳ありません」と

そのまま立ち去って行ったー。


「--ーー」

久義は、会社に乗り込んで、会社側として把握しているであろう

幾田益美の住所を聞き出そうとしたが

”さすがにそれはまずいか”と思いとどまったー。


”人を操る力”があるとは言えー、

”やりすぎ”れば、周囲からあらぬ疑いを掛けられることになるー。


”幾田益美”の顔は覚えたー。

佳菜恵を匿っていようとも、必ず益美は出社するはずだー。

その時に、洗脳して案内させればいいー。


そんな風に思っている久義のことを物影から”観察”

している男がいることにー

久義は気づいていなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「--わたしの家から、出ないようにね…。」

佳菜恵の先輩・益美が心配そうに呟くー。


「はい…すみません、ご迷惑をおかけしてー」

佳菜恵が申し訳なさそうに言うー。


佳菜恵を一人にしておくのは心配だったし、

一緒に出社する手もあったが、

会社に久義が来る可能性もあるし、しばらくは、様子を見たほうがいいー。


久義は、益美の顔も名前も知らないし、

この家も知らないー。

佳菜恵が自分から出て行きでもしない限り、

佳菜恵が久義に見つかる心配は、ないはずだー。


そしてー


「---お掃除とか、しておきますね」

佳菜恵が”お世話になってばかりじゃ申し訳ないので”と

付け加えるー。


そんな佳菜恵の様子を見て、先輩・益美は

少しだけ安心したー。


久義と引き離したからだろうかー。

少しずつ”いつもの佳菜恵”に戻ってきている気がするからだー。


今の佳菜恵なら、”ご主人様の元に戻らなくちゃ”と

言いだしたりはしない気がするー。

そう、信じて、益美は職場へと向かうー。


さすがに、仕事を休むわけにはいかないー

益美にも、生活があるし、佳菜恵を匿う分の食費だとか

そういうものも必要になるー


「--それにしても、人を操る力だなんて…」

益美がそんな風に思っているとー


「幾田益美さん?」

前から男が姿を現したー


「---!」

佳菜恵の彼氏の久義だったー。


久義とは電話で話したー。

だが、顔も名前も知られては、いないはずだー。


それなのに、何故ー?


益美は戸惑いながら

「何か御用ですか?」と聞き返すー。


”人を操る力ー

 でも、わたしは操られたりしない”と

強く、心を持ちながらー。


「--佳菜恵を返してもらうよ。

 俺が命じれば、佳菜恵は笑うんだ。

 佳菜恵は、俺が守ってやらなくちゃだめなんだー」


久義の言葉に、益美は反論したー。


「--あなたは間違ってる!失礼します」

とー。


「---今から佳菜恵のところに案内してもらうよ」

久義が言うー。


益美はそれを無視して立ち去ろうとするー。


だがー。


久義が益美の手を掴んだー。


「---は、、離して!警察を呼びますよ!」

益美が言うー。


久義は笑うー。


「-佳菜恵から聞いたんだろ?俺が人を洗脳できるって」


その言葉に、益美は気丈に叫んだー。


「--わたしは、あなたの言いなりになんて絶対になりませんから!

 佳菜恵ちゃんは、わたしが守ります!」


とー。


「--へぇ」

久義はそれだけ言うと、


”お前は今から俺の忠実なしもべだ。お前の家に俺を案内しろ”と

強く命じたー


「----あ………な、、、なにを……」

益美が歯を食いしばるー。


”洗脳”が自分の想像した以上のものであると、

感じた直後ー

もう、益美は言いなりになっていたー


「はい…ごしゅじんさま…こちらです」

益美が虚ろな目で歩き始めるー


「俺の言いなりにならないんじゃなかったのか?」

久義が笑いながら言うと、

「いえ、、わたしは、ご主人様のお人形です…」と益美が

返事をしたー


「--ははは!俺の力はすごいだろ?

 この力があれば、俺はなんだってできるんだ!」

久義は嬉しそうにそう叫んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


♪~~


インターホンが鳴るー。

益美の家で留守番をしていた佳菜恵が訪問者を

確認すると、先輩の益美が映っていたのを見て

「あれ?先輩?お仕事は…?」と首を傾げたー


”ごめん佳菜恵ちゃん!ちょっと忘れ物しちゃって”

微笑む益美ー


佳菜恵はすぐに「あ、今開けますね~!」と

玄関の扉を開けてしまったー


だがー

玄関の扉を開けると、益美は口元を歪めたー


「--あなたのごしゅじんさまが、迎えに来てくれたわよ」

とー。


「--え…」

佳菜恵が震えるー


久義が満面の笑みで益美の背後から入って来たー。


「-佳菜恵、ダメじゃないか。

 急に家出なんかして。

 さぁ、帰るぞー」

久義が言うー。


益美は、ぼーっと、玄関先で立ったままー


「--ひ、、ひさ、、ご、、ごしゅじんさま…

 も、、もう、やめて…

 わたしを、、わたしを、、操ってるんだよね…!?


 もう、、やめて」


佳菜恵が混乱しながら必死に叫ぶー。


「--全部、佳菜恵のためなんだ」

久義が言うと、

「--俺は、佳菜恵を守るためだけにこの力を使うって

 約束しただろ?」と、笑みを浮かべながら佳菜恵を見つめたー。


「で、、でも……たすけて……わたし……洗脳なんてされたくーー」


「--笑え」

久義が命令したー


「笑え。笑え。笑え。笑え。幸せを感じろ。笑え!笑え!」


「--あ、、あ、、あはっ…あははははははは!

 わたし、幸せ…!ご主人様…ご主人様ぁ♡」

嬉しそうに抱き着いてくる佳菜恵ー


久義は笑みを浮かべると、

「--俺が悪かった」と、佳菜恵を抱きしめたー


「佳菜恵が迷いを感じないように、もっともっと

 しっかり”管理”しておかないとダメだったね」


久義はそう呟くと、

さらに強く念じて、佳菜恵のすべてを支配したー


「-佳菜恵は、俺の言うことだけを聞くんだよ」

久義が言うと、佳菜恵は「--はい、ご主人様」と、

久義にうっとりとした表情のまま、抱き着いたー。


立ち去ろうとする久義と佳菜恵ー。


玄関先に立ったままの先輩・益美を見つめて

「佳菜恵をさらったお前にはお仕置きが必要だな」と呟くー


「---お前みたいなやつは、社会的に死ぬべきだ」

久義はそう言うと、

「服を全部脱ぎ捨てろ。お前は痴女だ。全裸で街中を走り回れ」と

命令して、益美が服を脱ぎ始めたのを確認すると、

そのまま久義は立ち去って行ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


男が、そんな久義と佳菜恵の後ろ姿を見つめながら笑みを浮かべたー


久義を”監視”していた男は

久義が勤務していた電子機器メーカー上層部の男-。


電子機器メーカーの上層部は密かに

”他人を操るナノマシン”の開発を行っていたー


そして、そのテストとして、久義にそれを、

本人にも気づかれないように、投与していたー。


「--身体への副作用は確認できませんでしたがー

 重大な副作用が一つ確認できました」


男が電話をしながら、そう呟くと、相手の男は

”どんな副作用かね?”と問いかけたー。


「--”力に溺れて、道を踏み外す、という副作用ですー」

男が、電話相手に向かってそう報告すると、

電話相手の男は静かに返事をしたー


”ご苦労ー

 データが揃い次第、彼は”処分”して構わないー


 以上だー”


電話が、切れたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


力を手に入れて、力に溺れてしまう男の

洗脳モノでした~!


この先に待つのは、破滅…!?


お読み下さり、ありがとうございました!!

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