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”元に戻る約束”をした当日ー

萌美の身体になった尚樹は、入れ替わった直後に回収しておいた

”入れ替わり薬”を、鞄の中に入れるー。


この錠剤を飲み込んで、10時間以内に入れ替わりたい相手と

キスすることにより、その相手と入れ替わることが出来るー。

最初に、萌美の身体を奪ったときと、同じだー。


だが、手元にある入れ替わり薬は、あと1錠のみー。

万が一ということもあるー。

この前のように”あらかじめ”飲んでおくことは危険だと判断し、

今日の大学が終わって、尚樹(萌美)と合流してから

服用することにしたー。


「--本当は、美人女子大生ライフを楽しむはずだったのに…」

萌美(尚樹)は鏡で萌美の姿を見つめながらそう呟いたー。


萌美は、本当に可愛いー。

芸能界にいても、おかしくないぐらいの美人だと思うー。


だが、今の萌美(尚樹)は、もうエッチなことを

萌美の身体でする気力も失ってしまっていたー。

胸に手を触れればドキドキするし、

髪に手を触れればドキドキするー。

自分の口から萌美の声が出れば、それも当然ドキドキするし、

今でも、自分が萌美になっているなんて、信じられないー


それでもー

そのドキドキをー

ゾクゾクを、この現状が消してしまうー


”断食”と書かれたケージの中にいるハムスター

串刺しになったハムスター

標本化された昆虫ー

首だけになったカラスー

さらには、大学の同級生・詩織の遺体ー。


こんな、部屋で、楽しめるはずがなかったー。

一気に血の気が引いて、興ざめしてしまうー。


”がんばるいきものたち”と書かれた謎のDVDは

もはや見る気にもならなかったー。

再生した瞬間、恐ろしい映像が出て来るに決まっているー。


それにー

萌美が、こんな風にー

”生き物が死んでいく様子を見て喜ぶ”という

サイコパスになってしまったのにはー


過去の災害で、

妹・美穂が目の前で衰弱して、死んでいく様を

見せられたー、というトラウマがきっかけだと

萌美(尚樹)は知ってしまったー。


心から同情したしー

萌美の身体を奪うのではなく、

萌美をなんとか支えてあげたいー、と

心からそう、思えたー。


勿論、このまま萌美の身体でいれば

”詩織殺し”の件で、尚樹は萌美の身体のまま逮捕

されてしまうー。

それも避けなくてはいけないー


今、すべきことは

萌美を説得し、元の身体にお互い戻り、

萌美を自首させることー。

その上で、萌美の支えになってあげることー。


既に、萌美の説得は終わったー。


尚樹(萌美)は、泣きながら元に戻ることを

約束してくれたー。


萌美は

妹・美穂が目の前で衰弱して死んでいったあの日からー

ずっと、苦しんできたのだろうー。


だから、もうー

萌美の身体でエッチなことは出来ないしー、

コスプレをしたりするのも諦めたー


本当は、色々したかったけれどー

そう、思いながら萌美(尚樹)は

「ーー次、もしも羽村さんの部屋に上がる機会があればー

 こんな残酷な部屋じゃなくてー

 本当の羽村さんの部屋が見てみたいな…」と呟きー

そのまま大学に向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学に到着すると、

尚樹(萌美)と鉢合わせしたー。


”元に戻る約束”は、

大学での1日が一通り終わってからー、だ。


「--じゃあ、またあとで」

尚樹(萌美)が

待ち合わせ場所の確認をすると、そう呟いたー。


「--この身体で授業を受けるのも、今日で最後だな」

萌美(尚樹)が言うと、

尚樹(萌美)は「うん。そうだね」と、微笑んだー。


尚樹になった萌美は

”人前では普通”にしているー。


元々、羽村 萌美がそうであったようにー

愛想も良くー、とても優しくー

それを誇ることもなく、

あくまでも下手に、穏やかな雰囲気を持っているー

そんな、”好かれるタイプ”の振る舞いだー。


だから、尚樹も入れ替わるまで、

萌美が”やべぇ奴”だとは気づかなかったのだー。


羽村 萌美の本当の”姿”はー

きっとー

”表向きの心優しい姿”なのだろうー。


でもー

災害が、それを壊してしまったー


萌美(尚樹)は、フルーツパフェを食べ終えると

”この身体だと、スイーツすっごいうまいよな”と、

普段、あまり食べない甘いものを

萌美の身体で、存分に堪能してー

昼休みを終えたー。


萌美の身体と、尚樹の身体では

”味覚”が違うー。

正直、身体が変わるだけでこんなに違うとは、思わなかったー。


そんなこんなで、大学での1日を終えた萌美(尚樹)は、

大学の敷地内の人目につかない場所へとやってきたー

”入れ替わる”瞬間を見られるわけにはいかない、と、

萌美になった尚樹側から、この場所を指定したー。


少しだけ、雨が降り出すー。


萌美の綺麗な足に、雨粒が落ちるー

尚樹の好みで、今日の萌美は素足を晒したスタイルで大学に着ていたー


その足が、濡れていくー。


「-やべっ…傘持ってないや」

萌美(尚樹)がそんな風に呟いていると

尚樹(萌美)が、やってきたー。


「--お待たせ」

尚樹(萌美)が微笑むー。


萌美(尚樹)が「羽村さんー」と、その名前を呟くとー

「-元に戻ったら、俺、羽村さんのこと……支えるから…

 その、変な意味じゃなくて…]

と、顔を赤らめながら萌美(尚樹)は、言葉を口にしたー


「-ふふ、わたしの顔でそんなに赤くならないでよー…

 で、どうやって入れ替わるの?」


雨に濡れている萌美の身体にドキドキしながら、

萌美(尚樹)は「あ、あぁ」と、持ってきた鞄から

”入れ替わり薬”を取り出したー。


普通の薬のようにしか見えない錠剤ー。


「これを飲んで、10時間以内に入れ替わる相手とキスするんだ。

 そうすれば入れ替わることが出来るー」


萌美(尚樹)が言うと、

尚樹(萌美)が「普通の薬にしか見えないけど」と

入れ替わり薬を萌美(尚樹)から受け取って、その薬を

じろじろと見まわすー


「--どっちか片方が飲めば入れ替われるから、

 俺がー


萌美(尚樹)が、そこまで言葉を口にした

その時だったー。


激しい痛みを胸のあたりに感じたー


「----え?」


しばらく、雨以外の音が聞こえなかったー。

何が起きたのか、一瞬、理解できなかったー。


「----え……? え…… え…?」

萌美(尚樹)は、自分の身体を見つめるー。

萌美の胸のーー

心臓のあたりに、ナイフが刺さっているー


「---え……は、、羽村さん…?」

信じられない、という様子で、尚樹(萌美)を見つめる

萌美(尚樹)ー


尚樹(萌美)は入れ替わり薬を手にしたまま、

にっこりとほほ笑んでいるー。


「--な、、何、、してんの…?」

萌美(尚樹)は驚いた様子で、苦しそうに、ナイフの方を見つめるー


尚樹になった萌美がー

萌美になった尚樹をナイフで刺したー。


萌美が、”元・自分の身体”をナイフで刺したー。


「-”わたし”が、弱っていきながら、死んでいく姿、みたいな♡」

尚樹(萌美)は、狂ったように笑みを浮かべながら、

苦しむ萌美(尚樹)を見つめたー


「--ちょ、、、え……は、、羽村さんの身体…

 し、死んじゃうよ…?」

萌美(尚樹)は、激痛を感じながら、尚樹(萌美)の方を見るー。


「--うん。だからそれが見たいの」

そう呟くと、尚樹(萌美)は、萌美の身体に刺したナイフを

わざと乱暴に引き抜いたー。


血が溢れ出る萌美(尚樹)-

その場に膝をついてー

萌美(尚樹)は泣きながら尚樹(萌美)の方を見るー


「なんで……なんで……

 元に戻るって……」


萌美(尚樹)が、致命傷となる場所を刺されたことを悟り、

溢れ出る血を見つめながら、尚樹(萌美)の方を見るー


「-ー元に戻る気なんてないの。

 今日、ここに来たのは、

 ”わたしが死んでいくのを”見るためー


 そして、藤堂くんから”入れ替わり薬”を奪うためー」


入れ替わり薬を手にしながら、尚樹(萌美)はそう言うと、

苦しそうにしている萌美(尚樹)を見つめたー


「-わたし、苦しそう…可愛そう…」

ゾクゾクしながら尚樹(萌美)はー

”自分の身体が死んでいく”のを嬉しそうに見つめるー


表情から、激しく興奮しているのが分かるー


「は、、羽村さん、、、お願いだよ…やめてくれ…!

 動物を殺して喜んだり…

 そんなこと……妹さんは、、望んでない…!!


 辛かったのはわかるよ…!

 でも、お姉さんが、こんなこと、してるなんて…

 天国の妹さんが知ったら、、絶対に…


 げほっ…げほっ」


萌美(尚樹)は、呼吸が苦しくなるのを感じて、

青ざめた様子で、咳き込み始めたー。


「--がんばれ!わたし!がんばれ!がんばれ!!

 あぁ、、顔が真っ青!

 わたしが弱ってく…


 ほら、がんばれ、がんばれ!

 うふ、うふふ!うふふふふふふふふ」


尚樹(萌美)は、もう、萌美(尚樹)の話なんて

聞いてなかったー


”死にゆく萌美”を見て、興奮していたー

この光景が、昨日から楽しみで仕方がなかったー


「---ぁぁ…ぁ…」

水たまりに倒れ込む萌美(尚樹)-


萌美の髪が、服が、綺麗な手が

汚れていくー


雨が痛いー。


「--しにたくない…しにたくない…!」

萌美(尚樹)が泣きながら、尚樹(萌美)の方を見つめるー


「--うんうん!そうだよね!

 誰だって死にたくないー!

 うんうん!わかる、わかるよ」

尚樹(萌美)が笑いながら、倒れ込んだ萌美(尚樹)の前で

しゃがみこんで、

まるで”アリ”を観察するかのように笑みを浮かべたー。


「--たす、けて…!たす、、けて!」

萌美(尚樹)は、もう、尚樹(萌美)を説得することも忘れてー

死にたくない、という気持ちでいっぱいになっていたー


「-ーあぁ…かわいそう…かわいそう…かわいそぅぅぅぅ♡」

尚樹(萌美)はゾクゾクしながら、

萌美(尚樹)を見つめるー


「-自分が弱っていく様子をこんな風に見れるなんて…

 あぁぁぁ…かわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそう

 かわかわかわかわいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ」


尚樹(萌美)は、泣きながら笑っているー

激しく興奮しながら、泣きながら笑っているー


「あぁぁ…あ…x… う…ぁ…」

萌美(尚樹)は、身体から力が抜けていくのを感じるー


”--俺なんかがーー

 羽村さんを救うなんてーー

 無理だったんだー


 羽村さんはーー

 羽村さんは、俺が思っている以上にー

 ずっとずっとずっと、”壊れて”いたんだー


 それをー

 妹さんの死の理由と、羽村さんがサイコパスになった理由を

 知っただけでー

 分かったつもりになってー


 俺はー

 俺はーー”


死の間際だからだろうかー

尚樹は、妙に冷静になって、そう思ったー


そして、

ずぶぬれになった萌美の身体で、

尚樹(萌美)の方を見つめて、叫んだー


「---羽村さん、、、このままじゃ、、、ダメだ…

 羽村、、、さん」


とー。


ほとんど、聞こえない声でーー


「---ばいばい♡」

尚樹(萌美)は嬉しそうに微笑みながら手を振ったー。


それがー

萌美になった尚樹が、最後に見た光景ー

そして、聞いた言葉だったー。


「--あーーあ♡」

尚樹(萌美)は、

萌美(尚樹)が動かなくなったのを見て

「わたしの身体、死んじゃった」と、嬉しそうに微笑んだー。


その手には、”入れ替わり薬”-


これがあればー

”詩織を殺してしまった萌美の身体”に戻らずー

さらに”萌美の身体を殺した尚樹の身体”も捨てることが出来るー


「--ふふふふふ」

尚樹(萌美)は、足早にその場から立ち去ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


「--ただいま~!」

可愛らしいツインテールの女子高生が帰宅したー。


ごく普通の幸せな家庭ー。


部屋に戻ると、ツインテールの女子高生は、

可愛らしい顔を歪めて、

彼女が部屋で大切に飼育しているハムスターを見つめたー


「--ポムちゃん… かわいい♡」

彼女はそう呟くと、急に真顔になって、”ポムちゃん”に告げたー。


「---今日から”断食”ネ

 何日持つかな… うふ♡」


”新しい身体”を入れ替わり薬で手に入れた羽村 萌美はー

奪った身体の子が、元々飼育していたハムスターで、

また、”趣味”を存分に楽しもうとしていたー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わった相手が「やばい奴」をテーマに

考えてみた入れ替わりモノでした~!☆


改心…

するはずもなく、このような結果に…☆


皆様も入れ替わるときは、

しっかり相手を選びましょうネ~!


お読み下さり、ありがとうございました!!

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Comments

みのむー

ラストまで…… まあ、一回こわれた心はね…… 楽しめましたわ。

無名

コメントありがとうございます~!ハッピーエンド案もあったのですが、やめました(笑) お楽しみ頂けて何よりデス!