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男子大学生の藤堂 尚樹(とうどう なおき)は、

数日前、”あるもの”を手に入れたー


それはー

”キスをした相手と入れ替わることが出来る”薬だったー。


”どうせ嘘だろう”

そんな風にも思いつつもー

心のどこかで期待してしまう、自分がいるー。


先程からー

同じ大学に通う、女子大生・羽村 萌美(はむら もえみ)の

顔が脳裏に浮かぶー。

もし、本当に入れ替われるのであれば、憧れの萌恵と入れ替わりたいー。

そんな風に、考えてしまう。


当然、届いた”薬”は偽物の可能性もあるー

毒物の可能性もあるー。

実際はただのサプリメントか何かで、これを使った後にキスをしても

入れ替わらない…なんて可能性もあるー


けれどー、

尚樹は、その入れ替わり薬を信じていたー。


理由は簡単だ。


この入れ替わり薬は、バイト先の先輩から教えてもらったものだったからだー。


尚樹のバイト先の先輩が、少し前に

”入れ替わり薬を手に入れた”と、仲の良い後輩である尚樹に

教えてくれたのだー。


その数日後、先輩は、突然バイトに来なくなったー。

困惑していた尚樹は、バイト終わりに可愛らしい少女に呼び止められて、

”俺だよ”と、言われたのだったー。


最初は信じられなかったー。

だが、とても演技とは思えないー。

尚樹と、その先輩しか知らないはずのことを、その子は知っていた。


もちろん、その少女が”先輩”とグルで入れ替わったふりをしている

可能性も0ではなかったが、そんなことをして尚樹を騙しても意味がないー。


尚樹は”先輩は本当にこの子と入れ替わったんだ”と、

そう確信したー。


そして、その時に、少女になった先輩に頼み込んだのだー。


”入れ替わり薬を手に入れる方法を、俺にも教えてください”


とー。


その結果、尚樹は今、入れ替わり薬を手に握りしめているー。


この錠剤を飲み込み、10時間以内に、入れ替わりたい相手とキスをするー。


それが、入れ替わりの条件ー。


「先輩だって、入れ替われたんだー。

 俺だって…!」

尚樹はそう呟きながら、入れ替わり薬の方をじっと見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


羽村 萌美ー。

容姿に恵まれ、愛想も良くー、とても優しいことから

男女問わず好かれるタイプの人気者だー。

それでいて、頭も良いーーという、

全て”持っている”

そんな感じの女子大生だったー。


それなのに、本人は、それを誇ることもなく、

あくまでも下手に、穏やかな雰囲気を持っていて、

周囲から嫌われたり、嫉妬されたりするようなこともない、という

まさに理想の女子大生と言えたー。


そんな萌美の身体を奪おうと尚樹は考えていたー


「(へへへ…今日から俺が羽村さんになるんだ…!)」


萌美の他に、住崎 詩織(すみざき しおり)という、

とてもスタイルが良い、清楚な子もいて、その子も、

尚樹の中で”候補”に上がっていたのだが、

詩織は最近、大学を休んでいて、大学に来ていないため、

詩織は候補から落としたー。

詩織がいつ大学に来るのかも分からないし、そのまま退学するという

噂もあるから、ここは”萌美”を選ぶしか、ないー。


入れ替わりをするためには”キス”をする必要があるー。

そのためには、人目につかない場所がいいー。


萌美と、何とかして1:1になる状況を作り出さなくてはならない。


「--あ、、!羽村さん!」

昼休みー。

自動販売機の横のベンチで一休みしながら、りんごジュースを

口にしていた萌美を見つけた尚樹は、萌美に声を掛けたー。


萌美とは特別な関係ではないが

同級生として”ごく普通”な会話をすることはできる間柄ー。


「--あ、藤堂くん どうしたの?」

萌美がスマホをしまうと、尚樹の方を見たー


既に入れ替わり薬は服用したー

今、この場で入れ替わっても良かったのだが、

見晴らしがいいし、周囲に人もいる。

さすがにキスをするのはきついだろうー。


それに、もし入れ替わらなかったら人生が終わるー。


「--(いや、1:1の状況を作り出しても

 入れ替わらなかったら、いきなり女子にキスしたやべぇ奴になって

 おしまいか)」

尚樹はそう考えながらも、もう、自分の欲望を止めることは

できなかったー。


周囲に目撃されずに入れ替わってしまえば、あとはどうにでも出来るー

”元・自分の身体”を変態扱いにして、遠ざけたっていいー


「今日、授業全部終わったら、話、できるかな?」

尚樹は、意を決してそう呟いたー


”告白でもされるのかな?”と思われているかもしれないー

だが、入れ替わればーー

萌美の身体を奪うことに成功さえすれば、もうどうだっていいー。


「---…え? 話って?」

萌美が表情を曇らせるー。


たしかに、呼び出すような間柄ではないー

戸惑うのも当然と言えるー


「--ちょ、ちょっと、大事な、、話がー」

”拒まれたらここでキスするしかない”、

そう思いかけたその時ーー


萌美はにっこりとほほ笑んで、「少し遅くなるかもだけど、いい?」と

答えたー。


「--もちろん!」

尚樹は嬉しそうに微笑むー


”これで、準備は整った”

とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学での1日が終わりー、

大学内の、ほぼ使われていない部屋に、萌美を呼び出した尚樹は、

萌美の到着を待っていたー。


「--ごめん、遅くなっちゃった」

萌美はいつものような優しい笑顔を浮かべながら

やってきたー。


尚樹はニヤリと笑みを浮かべるー。


”羽村さんー、その身体、俺が貰うー”


今日から俺は、羽村萌美だー!

そんな風に思いながら、

尚樹は、有無を言わさず、萌美にキスをしたー


「--!?!?!?!?」

驚きで目を見開く萌美ー

尚樹は、萌美とキスできたことにゾクゾクしながらも

”これで入れ替わらなかったら、俺の人生は終わりだー”

などと、頭の中で考えるー


だが、そんな不安は杞憂だったー。

すぐに、すーっ、と意識がなくなっていくような感覚を覚えて、

尚樹は、萌美と共に、その場に倒れ込んだー。


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


数分後ー

萌美が立ち上がるー。


立ち上がった萌美は、不思議そうな顔で

自分の髪、唇、指、胸を食い入るように確認したー


そしてー


「--あぁぁぁ、、やった、、マジで、、マジで、、羽村さんだ…!」

萌美がニヤニヤと笑みを浮かべながら、

その場で足踏みをするー


「やった!!やったあああああああああああああああああ!!!」

大声で叫んでガッツポーズする萌美(尚樹)ー


入れ替わりに、成功したのだー

憧れの身体を、手に入れたのだー。


「---ふぉぉぉおおおおおおお!!やべぇ!!やべえええ!

 この、癒しの声が俺のものだああああああああ!」

萌美(尚樹)はそう叫ぶと、

何回か咳をしてから、喉の調整をして、可愛らしい声を出したー


「--わたし、、羽村萌美♡ ふふっ♡」


甘い声で自己紹介させると、興奮した様子で、

再び足をバタバタとさせたー。


「--やばい…やばい…♡」

自分の手を見つめて、綺麗な指をペロリと舐めるー。


倒れたままの尚樹(萌美)の方を見つめると、

「--最高の身体をありがとう」と、ニヤニヤしながら呟くー。


尚樹になってしまった萌美は、当然、

周囲に身体が入れ替わってしまったことを、言うだろうー。


だがーー

手は打っておいたーー。


数日前から”わざと”尚樹は奇行を繰り返しておいたのだー。


一昨日は、精神科を受診して、

「俺、自分が大学の同級生の羽村萌美だと思っちゃうことがあるんです」と、

先生に”わざと”相談しておいたー。


入れ替わった後に騒がれても、”藤堂尚樹は頭がおかしい”と

周囲に思わせるためだー。


「---ーう…」

尚樹(萌美)が目を覚ますー。


目を細めて、周囲を少しだけ見渡してから、

目の前にいる萌美(尚樹)の方を見つめて

「え…わたし…?」と不思議そうに指を差したー。


「--羽村さんー

 これからは、俺が羽村さんとして生きるよ」

萌美(尚樹)は有頂天になりながら、

そう宣言したー


”勝利”宣言だー。


萌美に恨みはないー。

ただ、萌美になりたかったー。

憧れの美少女になりたかったー。

それだけのことだー。


「--え…ど、どういう…」

尚樹(萌美)は困惑しているー。

それは、そうだろうー

困惑する以外に、することはないはずだー。


「---へへっ!じゃ!」

萌美(尚樹)は走り出したー。


大学から飛び出し、

女子大生とは思えないような、猛ダッシュで、

街中を走るー


「ふぁっ…♡」

走っているだけで、髪が揺れー

胸があることによって男とは違う感覚を覚えー

スカートがふわふわしてー

走り疲れて「はっ、、はぁ…」と口から洩れる声は色っぽいー


”やばいぞ これはー

 ただ走ってるだけで、エロい気分になるー”


駅のトイレに駆け込んで、

わたしは萌美、わたしは萌美、わたしは萌美、と

何度も繰り返すー。

自分の名前を口にしているだけなのに興奮してー

つい駅のトイレでヤッてしまいそうになったがー

萌美の身体は”使い捨て”ではなく、

これからずっと萌美として生きていくつもりだった尚樹は、

それをグッと堪えたー。


社会的に死んでしまったら、その後の生活がやりにくくなるー。


興奮を抑えて、電車に乗り、

萌美の家に向かうー


”萌美が萌美の家に帰るー”


それだけのことなのにー

ゾクゾクしてしまうー。


”羽村さんの家、どんな家なのかなぁ…”


住所は、萌美の所有物から確認したー

あとは、帰るだけー


大学をやめてー

メイドカフェとかそういうところでバイトをしつつ、

生活していきたいー。

金は”身体”を使えば稼げるはずだー。

萌美(尚樹)はそんな風に思いながら、

萌美の家の前までやってきていたー。


「--ここが、羽村さんの、家ー」


尚樹(萌美)は、おそらく何か行動を起こすだろうー。


”わたしの身体を返して!”とお願いしてくるのは目に見えているー。

たしかに、尚樹(萌美)には同情するー。

けれど、人生一度きりー。

欲しいものを手に入れずに我慢したら、それは永遠に手に入らないー


だからー


萌美(尚樹)は自分の手を見つめてニヤニヤしたー。


「--欲しいものは、手に入れなくちゃな」

鞄に入っていた鍵を手に、萌美の家に入る萌美(尚樹)


「お邪魔しま~す! あ、ただいまか」

笑みを浮かべながら、家の中に入った萌美(尚樹)は、

表情を歪めたー。


「-----えっ……」

部屋の中にはーー

たくさんの藁人形のようなものが置かれていたー。


そしてーー


「--!!!!!!!!!」

萌美(尚樹)は、一瞬にして、表情を歪めたー


萌美の部屋の中にはー

串刺しになったハムスター…

標本化された昆虫ー

首だけになったカラスー


”ヤバい”モノがたくさん置かれていたー。


「--えっ…えっ…えっ!?!?」

萌美(尚樹)は、先ほどまでの笑顔を一瞬で失い、

青ざめるー。


大学で誰からも慕われる羽村 萌美の裏の顔ー。


”断食”

そう、書かれたケージの中には、

元気のないハムスターがいるー。


その側にはメモが置かれているー


”ハムスターが餓死するまで♡”と書かれているー。


「--ひっ!?」

萌美(尚樹)は、怯えながら部屋の中を見渡すー。


部屋の中は、キラキラした女子大生のものなどではなくー

”危険な香りのする部屋”だったー。


拷問機具のようなものまで置かれているー。


これは、いったいー


そしてーー

萌美(尚樹)は、悲鳴を上げたー。


部屋の奥にーーーー


まるで標本のようになった”首”が、置かれていたー

明らかに、死んでいるその”首”だけになった人間はーー

尚樹が、”入れ替わり相手”の候補のひとりとして

考えていた女子大生・詩織だったー。


最近、大学に来ていなかった詩織はー、

萌美の家で遺体になっていたのだー。


「--な、、な、、な、、な、、なんなんだこれは…」

萌美(尚樹)が青ざめるー。


♪~~~~~!


ビクッとする萌美(尚樹)-


震えながら「も、、、しもし」と、電話に出ると、

受話器の向こうからー

”尚樹”の声がしたー


尚樹(萌美)からだー。


尚樹(萌美)はクスクスと笑いながらー


”電話に出たってことはーー

 わたしの家にいるってことね?”と、

呟いたー


「え、、、あ、、いや」

萌美(尚樹)が戸惑いながら返事をすると、

尚樹(萌美)は呟いたー


”わたしの秘密、見ちゃったんだ?”


とー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話でした~!


入れ替わった相手は、想像以上にヤバい子で…!?

これから大変そうですネ~笑


お読み下さりありがとうございました!!

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Comments

みのむー

ヤバ過ぎて、続きが気になってしまいますわ

無名

みのむー様!ありがとうございます~! これは大変なことになりそうですネ~! 次回も頑張ります~!!