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結婚してからー

変わってしまった夫の哲司ー。

そんな夫に寄り添おうと必死になって頑張って来たものの、

度重なる暴力と暴言ー

過酷な”DV”に、妻の美空はついに限界を迎えていたー。


そんな中、美空が出会ったのが”入れ替わり薬”-


それを使いー、

美空は、夫の哲司と身体を入れ替えたー。


「--これで分かった!?

 これが、わたしが受け続けて来た、暴力の痛みよ!」

哲司になった美空は、

美空になった哲司を思いきり、殴りつけたー。


吹き飛ばされる美空(哲司)-


離婚を突き付ける前の”復讐”-


そしてー

哲司に”目を覚ましてほしい”と、いう想いもあったー。


わずかな希望ー

けれどー

もしも、”暴力を受ける側”になって、

哲司が目を覚ましてくれればー

もう一度ー


「--調子に乗るんじゃねぇぇ!!!!」

美空(哲司)が立ち上がって鬼のような形相で襲い掛かってくるー。


美空とは思えないような鬼の形相ー

美空とは思えないような怒鳴り声ー。


それを見た時、哲司になった美空は悟ったー


夫の哲司はー

もう、”あの優しかった頃には、戻らない”

とー。


美空の身体になってもー

こんな鬼のような形相をする夫・哲司とは、もう歩めないー

とー。


「---調子に乗ってるのは…!」

哲司(美空)は、美空(哲司)の腕を掴むー。


美空(哲司)が、必死に反撃しようとするもー

”運動神経の悪い”美空の身体と

”スポーツ万能”な哲司の身体では

”覆ることのない決定的”な差があったー


「--ぐぐぐぐぐぐぐぐ」

腕を掴まれた美空(哲司)が怒りの形相を浮かべるー


「-俺は、、俺は、毎日毎日、遅くまで働いて、苦労してるんだぞ!

 それなのに、それなのにお前は…!」

美空の顔と声で、そう叫ぶ哲司ー。

悔しそうな顔の”自分”を見て、

哲司(美空)は目に涙を浮かべながら叫んだー


「--そういう悔しそうな顔をしたいのは…

 わたしのほうよ!」


その叫び声に、


「--このニート女が!自分だけ子供と楽しく過ごしやがって!」

と、美空(哲司)が、怒りの形相で叫んだー


「ニート???」

哲司(美空)が反論するー。


自分が仕事を辞めたのは、哲司と相談した上でのことで、

哲司も承諾していたー。


哲司がブラックな部署での勤務となってからは

家事も育児も、ほぼ一人で全部こなして

決して哲司に対して手伝ってほしいとも言わなかったし、

不満も口にはしなかったー。

哲司の仕事が本当に大変なことはよく理解していたからだー。


勿論、家事も育児も手を抜いてなどいないー。


その上で、最初は哲司が大変なことにも理解を示し、

暴力にも、暴言にも耐えて来たのにー


それなのにー

その哲司から出て来た言葉が”ニート”


「--馬鹿にすんのも、いい加減にして!」

哲司(美空)が、美空(哲司)を思いっきりビンタしたー。


美空(哲司)が驚きの表情を浮かべるー。


「--お前は…!お前は…!」

なおも悔しそうな表情の美空(哲司)ー


既に”話し合い”で解決することは、出来ない状況ー


哲司が元々本質的にはこういう人間だったのかー

それとも、過酷な仕事が哲司を変えてしまったのかー


それは、哲司(美空)には分からないー。


でもー

もうー

”前のようには戻れない”

それだけは、ハッキリわかったー。


「--お前の取り柄なんて…

 このエロイ身体だけだろうが!」

美空(哲司)が胸を揉み始めるー

怒り狂った表情で、胸を揉み始めるー


「--この能無し女!裏切者!!

 身体しか取り柄のない、クズのくせに!!!」


美空(哲司)は叫んだー。


哲司(美空)は、ぷつん、と何かが自分の中で

切れたのを感じたー。


散々、我慢してきたー

もう、いいよねー。


とー。


自分の身体を殴れば、元に戻ったとき、

自分が痛い思いをすることになるー。


でもー

それでもーー

哲司(美空)は美空(哲司)に怒りをぶつけずにはいられなかったー


我慢の限界ー

ここ数年、耐えに耐えに耐えに耐えて来たもの全てが、爆発したー


「--うあああああああああああっ!!!!!」

哲司(美空)が怒りの形相で、美空(哲司)を殴りつけるー


何度も、何度も、何度もー。


”元に戻れば痛いのはわたしー”


”でも、今、この時点では、わたしの身体になってる哲司が痛いはずー”


”これが、暴力”

”これが、あなたがこの数年間、わたしにしてきたことー”


どうか、

どうかー

その痛みを分かってほしいー。


わたしのことは、もう、何とでも言ってくれて構わないからー

だからー


どうかー

分かってほしいー


2歳の娘・愛の泣き声が響き渡る中ー

哲司(美空)は、美空(哲司)を、散々痛めつけるとー

美空(哲司)から離れたー


「--はぁ…はぁ…はぁ」

哲司(美空)は、荒い息をしながら、机の上に置いてある

入れ替わり薬の方を見つめるー。


そろそろ、元に戻ろうー

そして、離婚届を叩きつけようー。


もう、哲司とは終わりー。

もしかしたら改心してくれるかもしれないー

なんて、甘い考えだったー。


「---くっ…く…くぅぅぅぅ」

美空(哲司)が悔しそうな表情を浮かべるー


身体能力の差がありすぎるー。

この身体では、哲司(美空)をいつものような力で

押さえつけることが出来ないー。


「--怖いでしょ?悔しいでしょ?痛いでしょ?」

入れ替わり薬を手にしながら、哲司(美空)が叫ぶー。


「--自分より力の強い人から殴られて、暴言を吐かれてー

 立ち向かおうとしても、立ち向かう力もない。


 本当に怖いし、悔しいし、痛いし、悲しいの!」


哲司(美空)が叫ぶー。


美空(哲司)は、首を振るー。


確かにー

この身体では、哲司の身体から暴力を振るわれたらー

一方的に”やられる”ことしかできないー。


力の差がありすぎるのは、事実だー。

どうすることも出来ないー


「--」

離婚届を机の上に叩きつける哲司(美空)


「--愛はわたしが育てるから!

 もう、あなたとは一緒にいられない!」


その言葉にーー

美空(哲司)は表情を歪めるー。


「-お前はっ…!お前は!!

 散々俺を働かせて、娘を俺から遠ざけてー

 その上で娘を俺から奪うのか!」


美空(哲司)が怒りの形相で叫ぶー。


「--仕事のことは本当に大変だと思う…!

 でも、愛を遠ざけたりなんてしていないし、

 愛を奪おうとなんてしてない!


 哲司が、、哲司がそんな風にわたしをーー」


「--ふざけるな!!ふざけるな!!」

美空(哲司)は叫んだー。


そしてー

哲司(美空)に突進してきたー。


「--俺から全てを奪おうとして…!

 ふざけるなああああああああああ!」

美空の喉がはち切れそうなぐらいに

大声で怒鳴る美空(哲司)-


その表情は、怒り狂った”鬼”のようだったー。


哲司の身体でもー

美空の身体でもー

哲司が中身になると”鬼”のようになってしまうー。


過酷な労働環境が人間を変えるー

歪めるー。


”哲司”は、もう、戻ることのできないところまで

歪み切ってしまっているのだー。


「----いい加減に…して!」

美空の身体では、

哲司の身体には敵わないー。


哲司(美空)は、美空(哲司)を振り払うと、

泣きじゃくる愛の方を見ながら、

「ほら!愛だって、いっつもいっつも泣いてる!

 これ以上、娘をー怖がらせないd


 ---!?」


哲司(美空)は、言葉を止めて表情を歪めたー。


美空(哲司)の手にー

”入れ替わり薬”が握られていたからだー。


今ー美空(哲司)が突進してきたのは、

哲司(美空)を襲うのが目的ではなかったー。


”机の上に置かれていた入れ替わり薬”が狙いだったのだー。


「---ちょ、、」

哲司(美空)が驚くー。


入れ替わり薬を奪われたー。


けれどー

すぐに哲司(美空)は冷静になるー。

元の身体に戻れば、また暴力と暴言に支配されるー。

でも、どのみち元の身体に戻るつもりだったし、

すぐに離婚して、家を出ていくつもりだからー


もうー


「--!????????????」

哲司(美空)は目を疑ったー


美空(哲司)は入れ替わり薬を飲むのではなくー

容器を床に叩きつけてー割ったー。


「--え」

哲司(美空)が唖然としていると、

美空(哲司)が笑ったー


「--お前さぁ、馬鹿だよ。

 この身体の”使い方”教えてやろうか?


 俺の身体を使って、いい気になってるんじゃねぇぞ」


美空(哲司)は、唖然とする哲司(美空)を見ながら

玄関の方に向かって行くー


「な、、なにを…?」

哲司(美空)が言うと、

美空(哲司)が、先ほど殴られた顔を触りながら

ほほ笑んだー


「--きゃあああああああああああ!!!!」

わざと大きな声を出す美空(哲司)-


「--って、玄関の扉を開けながら

 俺が叫んだら、どうなる?」

美空(哲司)が邪悪な笑みを浮かべるー。


「---ど、、どうって…?」

哲司(美空)はまだ状況を理解できていないー。


「--ほんと、馬鹿だなお前はー。


 顔を殴られた女が玄関から飛び出して悲鳴を上げたらー

 どうなるかって言ってんだよ」


美空(哲司)が低い声で脅すように言うー。


「--え……」

哲司(美空)は、その意味することを理解したー


「--”入れ替わってる”なんて誰も信じちゃくれないー

 俺は、”夫に殴られたかわいそうな妻”になるんだよ…!

 へへへへへ」


美空(哲司)が顔を触りながら言うー


「--ちょ…!そ、、そんな…今まで散々…あなたが!」

哲司(美空)が叫ぶとー


「今は俺、いいや わ・た・しが美空」

と、挑発的に美空(哲司)が呟いたー。


「---…そ、、そんな…」

哲司(美空)は、先ほど叩きつけられて床に飛散してしまった

入れ替わり薬を見つめるー


もう、入れ替わりは使えないー。


「--女には、女の武器があるんだもんなぁ…?」

美空(哲司)が笑いながら近づいてくるー。


「---…」

哲司(美空)が美空(哲司)を睨むー。


「--ごめんなさいは?」

美空(哲司)が冷たい声で言うー


”わたしに見下されているわたし”

そんな状況になってしまうー


「-ご・め・ん・な・さ・い・は???????」

美空(哲司)が言うと、哲司(美空)は震えたー


「-よく考えろ

 俺がその気になりゃ、お前をDV夫に仕立てて、

 娘の親権も”母親”としてお前から奪うことも出来るんだぜ?なぁ?」


美空(哲司)が言うー。


「---そ、、そ、、そんな…」


入れ替わったままの今の状態ー


哲司(美空)は、暴力を振るったDV夫扱いされてー

愛の親権も、奪われてしまうことは、間違いないー。


「ーーーご、、ご、、、ご……」

哲司(美空)が悔しそうに美空(哲司)を見つめるー


美空(哲司)は、ニヤリと笑うとー

美空の身体で、元自分の身体を殴りつけたー


「調子に乗りやがって!このクソ女が!」

美空(哲司)が叫ぶー。


誰も人を殴ったことのない美空の綺麗な手を使ってー

哲司が、哲司になった美空を殴りつけていくー


激しい暴行が加えられるー。


哲司(美空)は泣きながら、ただひたすら、耐えたー

哲司の身体であれば、美空の身体相手に反撃するのは容易ー


けれどーー

それが、できなかったー


「--離婚なんかさせやしねぇ。

 二度と離婚なんて口にすんな」


美空(哲司)はそう言うと、美空の身体で酒を飲み始めるー。


「--離婚なんて次、言ったら

 この身体でDV被害を訴えてお前を犯罪者にしてやる!

 この身体で親権を奪って、お前から愛を取り上げてやる!


 わかったな!?」


美空(哲司)が鬼のような形相でそう叫びながら

酒を飲むー


「-明日からお前が俺の身体で会社に行くんだ!

 くくく…はははははははは!」


美空(哲司)は狂ったように笑うと、

酒を美味しそうに口に運んだー。


娘の愛の泣き声だけが、部屋に響き渡るー。


哲司(美空)は泣きながらー

どうすることもできない自分を、呪ったー。


”わたしは、わたしに殴られたー”


この日が、更なる悪夢の始まりだったー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


立場逆転!と思いきや、

さらに立場を逆転されてしまいました…!


続きはまた次回デス~!

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