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カフェの一角で、

正也の親友である勝彦は、緊張の表情を浮かべていたー。


正也に”彼女がいない”ことを揶揄っていた勝彦は、

正也の彼女を名乗る京香が姿を現したことで、

戸惑っていたー。


”この子……俺と正也のやり取り知ってるんだろうなぁ…”

気まずくなって、炭酸飲料を小刻みに何度も何度も口に運ぶ勝彦ー。


「--お~~お~~お~~!なら見せてくれよ!

 頭の中の妄想の彼女じゃないなら、見せてくれよ!」


「ああ、、あぁ、!見せてやるよ!」

 --俺に本当に彼女がいたら、お前、俺の言うこと、なんでも聞けよ!?」


「-お前の話が嘘だったら、お前が俺の言うことを聞くんだぞ!」


正也とのやり取りを思い出すー。


顔を赤くしながら勝彦が、京香の方をチラチラと見つめるー

まさか、正也に彼女が本当にいるなどとは思ってもいなかったー。


目が合うたびに、京香がにこっと微笑むので、

勝彦はさらに緊張してしまったー。


「----」

京香は、勝彦がやたらと自分の方を見ていることに

”別の意味”でドキドキしていたー


”さっきから、なんで、勝彦は俺のことをチラチラ見ながら無言なんだ?”


京香はーー

正也の彼女などではないー

”彼女いるし!”と、見栄を張ってしまった正也が、

見ず知らずの女子大生である京香に憑依しているだけだー。


今の京香は、京香であって、京香ではないー

身体は京香だが、

正也が憑依していて、

京香の身も心も支配している状態だー。


勝彦が挙動不審にこちらをチラチラ見ているので、

京香に憑依している正也は

”もしかして、バレてる?”と不安に思い始めるー。


「---あの」

ようやく、勝彦が口を開いたー


「は、、はい…」

京香は”ばれていたらどうしよう…”と思いつつ、

勝彦の言葉を待ったー


勝彦は”正也の奴…なんで来ないんだよ…気まずいじゃねぇか…”と

困惑の表情を浮かべながらも、

ようやく言葉を絞り出した。


「あ…あの…ま、、正也は…?」

勝彦の言葉に、

京香は、表情を一瞬歪めたー


思わず、笑いそうになってしまったー


”あの…正也は?”

今、勝彦は確かにそう言ったー


京香のことを正也だと疑っていれば、

そんな言葉は絶対に口から出ないー


”ははは…この子が、俺だって気づいてない!”

京香に憑依している正也は

内心でガッツポーズした。


「--え、、あ、、正也くんは、

 その…今日は急用で来れなくなったので、

 わたしが、一人で」


女の子らしく、言葉を選びながらそう呟くと、

勝彦が顔を真っ赤にしたー。


”う、、嘘だろ…!?俺を彼女と1:1にするのか…!?”

勝彦はドキドキが止まらない状況のまま、

既に中身のないグラスに刺さったストローを何度も何度も口に運ぶー。


「--彼女なんているわけない…

 正也くんがそう言われたって、言ってました」


京香が笑いながら言うー。

京香に憑依している正也は、いじわるな気持ちになりながら

勝彦の方を見つめるー


「--え、、あ、、、ぁああ、あ、いやいやいやいや

 そ、それはほんの冗談で!」

勝彦が戸惑いながらそう叫ぶと、

「いっやぁぁ~~~か、、かわいいなぁ本当に…

 き、京香ちゃんだっけ?

 そ、、その、、はい、か、、かわいい うん」

と、顔を真っ赤にしながら呟いたー。


”ははは、正也のやつ、慌ててるし!”

そんな風に思いながら、京香はさらに”仕返し”を続けたー


「--わたし、ちゃんといるんですけど!」

わざと頬を膨らませて”怒ってます”アピールをする京香ー。


この子が、普段どんな子なのかは知らないが、

とにかく、今は身体を使わせてもらうー。


「---あ、、あひっ…」

勝彦がおろおろした様子で周囲を見渡すー。


「---ご、、ごめんなさい。許してください」

勝彦が、京香に向かって頭を下げるー。


京香は勝ち誇った笑みを浮かべるー。


「ま、、、まぁ、勝彦がそう言うなら、

 許してやってもいいけど」


京香が腕を組みながらそう呟くとー

勝彦が「え?」と言いながら顔を上げたー


「--え」

勝ち誇った笑みを浮かべていた京香がハッとするー


”し、、しまったああああああああああ”

勝彦をギャフンと言わせたー

浮かれていた京香は、ついつい

”いつもの正也の口調”で喋ってしまったー


「-----ってーーー

 正也くんなら言うかなぁって!」


咄嗟にごまかす京香ー


「あ、、、あぁぁ、、なんだ、、そ、そう、、だな、確かに」

勝彦が戸惑いながら笑いだすー


「あは、あはははは」

京香は、ごまかしながら「ちょっとお手洗いに」と、

トイレのために席から立ち上がったー。


「あ、、は、、はい ごゆっくり」

勝彦は戸惑いながらそう返事をしたー。


トイレに駆け込んだ京香は「ふ~~~」と深呼吸をするー。

間違えて男子トイレに駆け込みそうになったが、

髪が首筋に当たったことで、

”あ、この身体女じゃん!”と思い出して

そのまま女子トイレに駆け込んだー。


「-ーー落ち着け 俺」

胸に手を当てると、京香の胸が手に触れて

ドキッとしてしまうー。


「--ちょ、、落ち着け、落ち着けって!」

京香は一人でブツブツ呟きながら再び深呼吸をしーー

ようやく気持ちを落ち着けるー


だがー

今度は、鏡に映る京香の姿が見えてしまい、ドキッとするー。


この、松永京香という子は、かなり可愛いー


「--あ~~~こんな子が本当に彼女だったらなぁ~~…」

京香の声で、そう呟くと、

鏡に映る自分の姿に見とれたー。


「--……」

エッチなことが、つい頭をよぎってしまうー。

過去のトラウマから、女性に対しては苦手意識があったものの

こうして、自分自身が女性そのものになっているとなれば、

話は別だったー。


しかしー

胸を揉もうとしたところで「って、俺、こんなことしてる場合じゃねぇ!」と

可愛い声で叫ぶー。


この身体に憑依した目的は、そもそもエッチをすることじゃない。

勝彦に”俺の彼女を見せてやる”と、つい宣言してしまった穴埋めだー。


この乗っ取った身体で”彼女のフリ”をして、

勝彦を「あっ」と驚かせるー。

それが、目的だー。


「--そうだ。落ち着け、俺」


危うく、乗っ取った身体でエッチをし始めるところだったが、

トイレに駆け込んだ本来の目的を思い出し、

何度も、何度も深呼吸して、ようやく心を落ち着かせたー


勝彦の前でボロを出さないように、冷静にー。

そう、自分に言い聞かせると、京香は「よし!」と呟いてから

そのままトイレから出て、勝彦の待つ座席に座ったー。


「----」

座席に戻ると、勝彦が神妙な面持ちで京香の方を見ていたー


「--あのさ…」

勝彦の言葉に、京香は、”スカート落ち着かないなぁ…”と

思いながら「はい?」と返事をするー。


勝彦は少しだけ考えてから続けたー。


「--あの…変なこと、言っていいかな?」

勝彦の言葉に、

「えっ?」と裏返った声を出してしまう京香ー


”まさか勝彦、お前ー

 この子に手を出すつもりじゃないだろうな!?”


京香に憑依している正也は、

そんな風に思いながら勝彦の言葉を待つー


だがー

勝彦から出た言葉は、全く予想しないものだったー。


「--どうかーー」

勝彦が、机に頭を下げるー。


「どうか、正也のこと、よろしくお願いしますー」

とー。


「---は?」

京香は思わず変な声を出してしまうー。


「--正也のやつ、本当にいいやつなんだ。

 一緒にいて楽しいしさ、俺なんかより全然気配りも出来るー


 でもさ、あいつ、なんか、こうー

 顔は悪くないんだけど、でも、モテないんだ…


 それにあいつ、前に電車で、痴漢の冤罪を掛けられそうに

 なったことがあって、

 それから、女性恐怖症みたいになっちゃってさ…


 ずっとずっと、彼女なんて出来ないって思ってたー。


 でも、こうして今…こんなきれいな子が目の前にいるー。


 あいつ、本当にいいやつなんです!

 だから、だから、

 どうか、あいつを、よろしくお願いしますー」


勝彦はそれだけ言うと、今一度頭を深々と下げたー


「----」

京香は、勝彦を見つめながら、

思わず正也として声を上げそうになったが、

それをグッと堪えたー。


「---わ、…わた…わたしは…」

京香に憑依している正也は困惑するー。


「---ーーー」

自分は、この子と付き合ってなどいないー

それどころか、勝彦をあっと驚かせるために、

見ず知らずの女子大生の身体を乗っ取って

今日、ここにきているー。


「--ありがとう…本当に、ありがとう」

勝彦は、まるで自分のことのように

正也の彼女を名乗る京香に対して

何度も何度もお礼の言葉を口にするー。


「そ、そうだ、今度さ、俺と同じで正也のこと

 心配している友達もいるから、良ければ

 会ってやってくれないかな?


 もちろん、正也も一緒に!」


勝彦が言うと、京香は「あ、、、え、、、えっと…」と、

”憑依”のことを何とか誤魔化して

”ドッキリだった”と言おうとも思ったがー

勝彦があまりにも真剣に喜んでいたためー

言えなくなってしまったー


「---…あ、、はい…機会があれば」

京香はそう返事をしてしまうー。


勝彦が、自分のことをそんなに心配してくれていてー

自分に彼女が出来たことを、こんなに本気で喜んでくれるなんてー、

と、京香に憑依している正也は、驚かずには

いられなかったー。


いつも、憎まれ口をたたき合うようんなことも多い親友がー

こんなに自分のことを思ってくれていたなんてー。


「---ははは」

勝彦が突然苦笑いしたー。


「--今日、どうせ、正也のやつ、彼女なんて連れてこないだろう、って

 思ってたから、慰めるつもりで、全部奢ってやろうって

 思ってたのに…


 なんだか、びっくりだな…」


勝彦は、そう言いながらも

”親友の正也に彼女が出来た”ことを心の底から喜んでいる表情だったー


その後はー京香に憑依している正也は、

嬉しく思いながらも、別の意味で生きた心地がしなかったー。


勝彦と別れ、京香は街を歩くー


”おいおい…どうするんだ 俺…”

京香は表情を歪めるー。


憑依薬は既に4回使ってしまっていて

あと1回分しかないー


京香を彼女として使うには限界があるー


いつかは、打ち明けないといけないー


「-くそっ!」

京香の身体で京香の家に戻ると、

京香は戸惑いの表情で壁を叩いたー


「---あんなに、喜ばれちゃ…」

京香は部屋の中で膝を折るー。


「--”嘘だった”なんて、言えないじゃないか…」

京香はそう呟くと、

頭をフル回転させながらー


なんとかー

”自分”も、”勝彦”も傷つけないように、と

色々な秘策を考えたー。


どうするー…

どうするーー?


そしてーー


「ーーそうだ!」

京香は、ポンと手を叩いたー。


なんとかなるー。

あと1回分、憑依薬があれば、なんとかなるー。


京香に憑依している正也は、そう考えると

”今日はもう遅いからな”とそのまま京香の身体から抜け出したー


・・・・・・・・・・・・・


”どうだった?俺の京香は?”

見栄を張って、自分の身体に戻った正也は

勝彦にそうLINEを送ったー


勝彦からの返事は

”いやぁ、びっくりしたよ!おめでとな!仲良くしろよ!”

だったー。


普段、彼女がいないことを揶揄ってきていた勝彦は、

本気で正也を祝福している様子だったー


こんな親友を騙しているのかー。

と、自分で罪悪感を感じながらも、正也は

”へへ、だろ?約束通り、言うこと聞いてもらうからな~!”と、

返事を送ったー


そしてーーー

”なんとか丸く収めるための方法”を、頭の中で練り始めるのだったー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


憑依で、彼女を捏造した彼の運命は…!?

次回が最終回の予定デス~!


今日もありがとうございました!!

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