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「--もうすぐ、お兄ちゃんに会える♪」


治夫の実家では、

治夫の妹・聡美が、嬉しそうに笑みを浮かべていたー。


女子大生の聡美は、数日後から大学がしばらく休みになるため、

治夫の家に遊びに行く約束をしていたー。


昔からー

とにかく”お兄ちゃん大好き”な、聡美ー。


大学生になった今でも、その感情は変わらないー。


そしてー

今ではー


「---お兄ちゃんにとって、わたしが一番で、

 亜香里さんが2番だってこと、

 ちゃ~んと、思い知らせてあげなくちゃ!」


ふふふっ、と笑う聡美ー


聡美は、兄・治夫の彼女である亜香里に

激しいライバル心を燃やしているー。


人を皮にする凶悪犯ー

黒崎陣矢を追う、兄の治夫ー。


そんな治夫の妹である聡美はまだ、

この先の自分に待つ運命を、知らなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。


片桐 由愛(かたぎり ゆめ)

かつて治夫に助けられた女子高生。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者


・・・・・・・・・・・・・・


目黒警視正から指定されたホテルにやってきた治夫ー。


13時ー。

約束の時間に、指定の場所にやってきた治夫は、

周囲を見渡すー


”モルティング”

脱皮を意味する言葉だー。

目黒警視正率いる”極秘の対策チーム”は、

他人を皮にする力を持つ凶悪犯罪者・黒崎陣矢を

モルティングと呼び、陣矢及び、その背後に潜む”闇”を

調査しているのだと言うー。


治夫は、その目黒警視正のチームに加わるべく、

ここに、やってきていたー。


その時だったー


背後から、車の音が響き渡るー。

治夫が咄嗟に振り返ると、中から覆面を被った二人の男が姿を現したー


「な、なんだお前ら!」

治夫は思わず叫ぶー。


だがー

有無を言わさず、何かを打ち込まれると、

治夫は、そのまま連れ去られてしまったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「--ーおはよううございますー!」


治夫がかつて助けた女子高生・由愛が

笑顔で挨拶をしてくるー。


「--あぁ、由愛ちゃん、おはよう」

治夫が穏やかな笑みを浮かべながら、由愛に向かって微笑むー。


由愛も微笑むー。


「おいおい、由愛ちゃんに惚れるなよ~」

先輩刑事の塚田総司が、交番の奥から出てきて、治夫を揶揄うー


「--俺には亜香里一筋ですから、そんなことしませんよ~!」

いつものような冗談を総司に言い返す治夫ー。


交番の端では、先輩の女性・奈々子が表情を変えずに

書類を整理しているー。


「---お前のせいで、先輩たちは、死んだ」


ふと気づくと、

由愛が低い声で、治夫をあざ笑っていたー


交番では、総司と奈々子が血を流して死んでいるー


由愛が悪い笑みを浮かべるー


「お前のせいで、こいつらは死んだー

 お前が、中途半端な正義感で首を突っ込むから

 こいつらは死んだんだ」


由愛とは思えないような、低い声で、

由愛は、治夫をあざ笑うー。


「---黒崎陣矢…!」

治夫が歯ぎしりをしながら、凶悪犯・黒崎陣矢に皮に

されて乗っ取られてしまった由愛を見つめるー


「そして、この女もー」

由愛が自分の胸を触りながら笑うー


「この女もお前のせいで、今じゃ俺の”洋服”だー。」

由愛が狂ったように笑い始めるー。


「--き、、貴様あああ!」

治夫が怒り狂った表情で由愛を見つめるー。


「--あはははっ♡ あはははははははははははっ♡」

笑う由愛ー。


治夫が怒りの形相で由愛の方に向かうー


だがーー


由愛の姿は消えるー。


”お前は、無力だー”


闇に、由愛の声が響き渡るー。


治夫は、悲鳴をあげながらーーー

飛び起きるようにして、目を開いたー


「はぁ…、、はぁ…、、はぁ…」


”夢”だったー。


逃れることのできない、現実ー


「-ーお目覚めですか」

声が聞こえたー。


夢から覚めた治夫が、視線をずらすと、

そこには、立派なスーツを着た目黒警視正がいたー。


一見優しそうなー

けれどもどこか、鋭い眼光を感じさせるー

年齢的には”中年”と言えるぐらいの、治夫より

遥か年上の男であるものの、

治夫に対しても、敬語で話す目黒警視正ー。


「--ここは?」

治夫が、夢を見る前のことを思い出すー。


目黒警視正から指定されたホテルの地下駐車場に

やってきた治夫は、そこで二人の男に襲撃されて、

眠らされたー。


あれは、いったいー


「-手荒な真似をして、申し訳ありません。

 あなたが”皮”にされていないかどうか、確認する必要があったためー

 一度眠っていただき、こうしてここに運びました。」


目黒警視正が穏やかな口調で言い放つー。

うすら笑みを浮かべているのが、どこか無気味な感じだー


”本当に来るかどうかも分からない相手に、対策本部を教えるほど

 我々は無警戒ではありません”

目黒警視正はそうも付け加えたー。


指定されたホテルは、目黒警視正らの”本部”ではなかったのだー。

ここはまた、別の場所ー


「--!」

二人の男が入って来るー。


「ーー目黒警視正、本当にこんな奴でいいんですか?

 俺たち二人にあっさり眠らされるようなやつが、

 役に立つとは思えませんね」


ボサボサの髪に、やる気のさそうな表情ー

ガムを噛みながら、歩いてくる男が、そう呟いたー


ムッとする治夫ー。


だが、その治夫の感情を読み取るかのように、

入って来たふたりのうちの、もう一人の男ー、

若い好青年風の男が、ボサボサ頭の男を窘めたー。


「矢神さん、彼は昨日まで、交番勤務だったんです。

 それに、いきなり不意打ちされれば、仕方ありませんよ」


好青年風の男は、そう言うと、

治夫に手を差し伸べたー


「”モルティング対策班”へようこそー

 歓迎するよ


 俺は、堂林 幸成(どうばやし ゆきなり)-。」


その言葉に、治夫は

「長瀬 治夫ですー」と、軽く自己紹介をして、

幸成と握手を交わしたー。


その挨拶が終わるのを見届けた目黒警視正が言うー。


「矢神 明信くんと、堂林 幸成くんー。

 我がモルティング対策班の一員です」


ボサボサ頭のガムをくちゃくちゃ噛んでいる男の名前は

矢神明信(やがみ あきのぶ)と言うようだー。

とても刑事には見えない、アウトローな感じを感じさせるー。


二人とも刑事で、目黒警視正のチームに所属しているのだというー。


「---…これで全員ですか?」

治夫が目黒警視正に言うと、

目黒警視正は”各地に協力者はいます”と、答えたー


治夫と同じ交番に勤務していた女性刑事・奈々子も

その一人だったのだと言うー。


「ここにいるのは、あと二人ですね」

目黒警視正はそう言うと、入口の方に視線を逸らしたー


「--え」

治夫が振り返り、唖然とするー。


入って来たのは、明らかにギャルな若い女。


「やっほ~!君がハルくん?

 わたし、真綾!よろしくぅ!」


「--え、、あ、、え、、、は、、はい、、 

 よろしくお願いします」

治夫は”いきなりハルくんかよ!?”と心の中で

戸惑いながらも握手を交わすー。


「ははは、三枝さんは、初対面の人に対しても距離感ないなぁ」

好青年風の幸成が笑うー。


「-ユッキーだって同じでしょ!」

真綾はそう言うと、目黒警視正の方を見て、

「あ、メグちゃん、新しい情報~」と、笑いながら近づいていき、

何かを手渡したー


「め、、、めぐちゃん…?」

治夫は戸惑うー


目黒”警視正”は、警察の中でも階級は高い部類にあたるー

その目黒警視正をメグちゃん呼びするとは、いったいー?


ギャルにしか見えないが、実は警視総監だったりするのだろうかー


そう思っていると、目黒警視正が治夫を見て笑ったー。


「--彼女には、距離感や礼儀というものはありません。

 ですが、優秀です」


とー。


「--は、、はぁ」

治夫は戸惑いながらも、3人に対して、改めて自己紹介をするー


そして、もう一人ー

”モルティング対策班”には、目黒警視正を含め、5人が出入りしている

とのことだったが、

最後のひとりである”剛(ごう)”という男は、

目黒警視正以外とは会わない、とのことだったー。


「---では、改めて、”深淵”へようこそー。

 共に、モルティングー

 黒崎陣矢と、その背後に潜む”闇”を暴きましょう」


目黒警視正が手を差し伸べるー

治夫は、少し戸惑いながらも、目黒警視正と握手を交わしたー。


警視正・目黒 圭吾(めぐろ けいご)ー


アウトロー風の不真面目そうな刑事ー

矢神 明信(やがみ あきのぶ)


好青年風の男ー

堂林 幸成(どうばやし ゆきなり)


どう見てもギャルにしか見えないー

三枝 真綾(さえぐさ まあや)


そして、目黒警視正としか会わない”剛(ごう)”


そこに、交番勤務の警察官、治夫が加わったー。


”他人を皮にする凶悪犯”

通称・モルティングとの戦いは、まだ始まったばかりだったー


・・・・・・・・・・・・・・


バキッ! バキッ! バキッ!


「や、、やめて…!たすけて!」

廃墟の工場に、悲鳴が響き渡るー


「--泣け!わめけ!さけべ!」

可愛らしい女の声ー

しかし、邪悪な声が響き渡るー。


その女ーーー

黒崎陣矢に乗っ取られている女子高生・由愛が、

鉄パイプを手に、縛り付けた女を

何度も何度も殴りつけていくー


返り血を浴びながら、由愛が狂ったように笑うー。


「---や、、やめて…たすけて…!」


縛られている女は、泣きながら悲鳴を上げるー。


「--いのちごい…いのちごい…いのちごい…!」

由愛がクスクスと笑うー。


返り血を浴びたセーラー服が、不気味に蠢くー。


「ほらぁ、、助けてください、じょおうさまぁ…


 って、言ってごらん?」


由愛が、縛り付けられた女子大生を脅すー。


この女子大生と由愛は、何の面識もないー

由愛を乗っ取っている黒崎陣矢とも、何の面識もないー


凶悪犯、黒崎陣矢はー

こうして”無関係の人間の命を奪うこと”に、

快感を感じる、狂気の犯罪者ー。


「---言えよ。死にたくねぇだろ?言え」

由愛の声で、脅す陣矢ー。


「--…う、、、う…う…」

女子大生は泣きながら

「た、、た、、た、、助けてください…女王様…」と

弱弱しく呟いたー


「---うんうん。よく言えました~!」

由愛はそう言うと、満面の笑みで言い放ったー


「-い・や・だ♡」

とー。


鉄パイプで狂ったように笑いながら、

女子大生が動かなくなるまで叩き続ける由愛ー


狂ったように笑う由愛は、やがて、自分のスマホが鳴っていることに気づき、

それを手にするー


「--もしもし? あ? あぁ、俺だよ黒崎だよ。

 可愛い声なのは気にすんな」

由愛はそう言いながら、血まみれの状態で笑みを浮かべたー


「--ん???ほぉ~~~~そうか」

由愛が不気味な笑みを浮かべるー


「--”報告”ありがとな」

由愛はそう言うと、スマホの電源を切ったー


”長瀬 治夫が、モルティング対策班に加わった”

そう、連絡を受けた由愛ーー、黒崎陣矢は不気味な笑みを浮かべたー。


モルティング対策班に潜む”内通者”からの

情報提供を受けた由愛は、笑いながら、”別の皮”を着こむと、

そのままその場所を後にしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--片桐由愛を指名手配します」

目黒警視正が、そう言い放ったー


「え?」

治夫は唖然とするー


「--あなたが、黒崎陣矢を執拗に追い詰めた結果、

 片桐由愛は、行方を晦ましました。

 

 今の状況では、黒崎陣矢の手がかりは全くない状況です。

 よって、相手を刺激して、何らかの行動を

 起こしてもらわないといけません」


目黒警視正の言葉に、治夫は「ちょ、ちょっと待ってください!」と

叫ぶー


「-それじゃ、由愛ちゃんは…殺人犯ということになってしまいませんか?

 それに、逆上した、黒崎陣矢が、由愛ちゃんを始末するなんてことに…」


「---ええ。なりますね。

 もちろん、始末される可能性もあります。

 ただ、黒崎陣矢が”何らかの動き”をすれば、こちらとしても

 彼の居場所を、探りやすい」


感情がない…そんな様子で淡々と告げる目黒警視正ー。


「ーーそんな…それじゃ、由愛ちゃんを助け出してもー

 由愛ちゃんは、殺人犯としてーー


「--助かりませんよ」

目黒警視正が微笑んだー。


「---え」

治夫は、さらに唖然とするー


「-片桐由愛は、もう助からないー。

 黒崎陣矢は、そういう相手です。

 解放されるときには、片桐由愛の死を意味しますー。


 助からない相手を助けようとして、

 何になりますか?


 そんな青臭い正義感を振りかざしていては

 黒崎陣矢を捕まえ、その裏に潜む人間を突き止めることはできません」


目黒警視正の言葉に、

治夫は反論するー。


「--ゆ、、由愛ちゃんを見捨てるんですか!」

とー。


「-見捨てるんじゃありません。彼女の死を無駄にしないためにも

 彼女を指名手配し、黒崎陣矢への手掛かりにつなげるのです」


「--由愛ちゃんは、死んでない!」

治夫がそう叫ぶと、

目黒警視正はうすら笑みを浮かべたー。


青臭い正義感とー

どこまでも冷徹な合理主義のぶつかり合いー。


「-----」

見つめ合うふたりー。


やがて、目黒警視正が呟くー


「--いいでしょうー。

 では、3日間、差し上げましょうー

 それ以上は、待てませんー


 三日後には、片桐由愛を指名手配し、

 黒崎陣矢の追跡を始めますー


 それまでに、あなたが片桐由愛を救い出せるというのであれば、

 それまでは、待ちましょう」


その言葉に、治夫は「ありがとうございます」と、頭を下げるー


3日ー

3日以内に、由愛ちゃんを救い出すー


そう、決意して、治夫は外に向かおうとするー。


「----」

好青年風の幸成が、目黒警視正の方を見て頷くと、

幸成が「俺も行くよ」と、治夫に声を掛けるー。


治夫は「堂林さん、ありがとうございます」

と、頭を下げると、そのまま対策本部の外に向かったー


「--いいんですか?

アウトロー風の明信がガムを噛みながら不満そうに言うー


その言葉に、目黒警視正は答えたー


「--ええ。彼が”現実”を勉強するためには、

 ちょうど良い機会でしょうー」


そう、不気味に呟くと、

警視正は、静かに笑みを浮かべたー。


⑦へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


人を皮にする凶悪犯との戦い、本番がスタート!

”皮”でやりたい放題の凶悪犯との戦いの行方を

ぜひ見届けてくださいネ~!


今日もありがとうございました~!

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