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梓紗(史和)は冷や汗をかきながら、

大学に戻って来たー。


昼休みー

梓紗を慕う男・シゲくんに

”梓紗の彼氏が浮気していること”がバレてしまったー


梓紗の彼氏、とは史和のことだー。

梓紗になった史和は、シゲくんの怒りの形相を目の当たりにして、

恐れをなして、

咄嗟に嘘をついてしまったー。


史和の浮気相手である麗子から、

史和になった梓紗は、”自分が史和に浮気されていたこと”を知ったー

そして、怒りのあまり、シゲくんにそのことを相談したのだー。


だが、その相談のLINE内で”史和”の名前を出さなかったため、

シゲくんは、梓紗(史和)に、

”こいつ誰っすか?許せねぇ…お嬢を泣かせるなんて!”と

怒りの形相で聞いたー


そして、梓紗(史和)は嘘をついたー。

史和の友人である”藤岡”の名前をシゲくんに伝えてしまったー。


”お嬢の浮気相手は”藤岡”という男子大学生”、と

勘違いしてしまったシゲくんは、怒りの形相で大学に向かっていったー


「は~~~…は~~~」

冷や汗を流す梓紗(史和)-

我を忘れて大学に戻って来た梓紗(史和)は自分が

女子の身体であることも忘れて、男子トイレに駆け込んで

荒い息を吐き続けていたー。


「--は~~~…は~~~~~~…はぁっ…はぁっ」

男子トイレの鏡の前で、過呼吸を起こしそうなレベルで

荒い息をしている梓紗(史和)-


後から入って来た男子が、女子である梓紗が

男子トイレにいることに「えっ!?えっ!?」となっているー


それにも気づかない梓紗(史和)-


”くそっ……”

梓紗(史和)は考えるー

シゲくんに”浮気”のことが伝わったということは、おそらく、

史和の身体で行動している梓紗が

”史和の浮気を知った”のだろうー。


そして、史和(梓紗)がシゲくんにメールかLINEか何かで

連絡を入れたー。


梓紗の実家は、絶対に寿司屋じゃないー

極道的な、あれだー。


梓紗(史和)は自分が殺されるかもしれないという恐怖ー

そして、彼女である梓紗に浮気がばれたかもしれないという恐怖ー

さらにはー、シゲくんに咄嗟に嘘をついて友人の”藤岡”の名前を出してしまった

ことへの焦りを感じていたー


「--あ、、、あの…ここ男子トイレ…」

後からトイレに入って来た男子が、梓紗(史和)に話しかけるー


「うるさい!俺は男だ!」

梓紗(史和)が、我を忘れて大声で叫ぶー


どう見ても女子なのにそう叫ぶ梓紗(史和)に、

周囲は戸惑うことしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


史和(梓紗)は、怒りの形相で、廊下を歩いていたー。


「史和が浮気してたなんて、許せない…!」

史和(梓紗)は、悔しそうにそう呟くー


思えば”嘘つきカップル”なんて言われてしまうほどの二人ー。


嘘つきの史和が、彼女である梓紗に対しても”嘘”をつくのは

ある意味必然と言えたー。


「----」

怒りの形相で廊下を歩いていた史和(梓紗)は、ふと我に返るー。


「---でも…」

史和(梓紗)は”わたしも、お父さんのこと、すし職人って嘘をついてるね…”

と、少しだけ冷静になるー。


授業を受けてー、

やっと冷静になった史和(梓紗)は、スマホで梓紗(史和)に

連絡を入れるー。


”話したいことがあるの”

とー。


梓紗は、自分の嘘を全て打ち明ける決意をしたー。

その上で、史和の嘘ー”浮気”について、全て聞き出そうとしていたー。


後輩の女子・麗子と浮気していたことを、洗いざらい、

全部話してもらうー。


その、つもりでー。


「---!」

史和(梓紗)が、ふと、大学の正門前を見るとー


「何するんだ!」と叫んでいる、史和の友人・藤岡の姿があったー。

梓紗の父親の舎弟であるシゲくんが、藤岡を連れ去ろうとしているー。


梓紗になった史和がビビッて、”浮気相手は藤岡”と

言ってしまったことで、ブチギレしたシゲくんが、

藤岡を拉致しようとしているー


「--え…」

史和(梓紗)が唖然としていると、

梓紗(史和)が背後から、ヌッ、と現れたー


真っ青な顔をして呟く梓紗(史和)-


「--お、、俺…俺…浮気相手の名前を藤岡って…

 あの、、シゲくんに嘘を…」


梓紗(史和)の言葉に、

史和(梓紗)は「え…それ、やばいよ!バカじゃないの!」と叫ぶと、

そのままシゲくんの前に姿を現して、叫んだー。


「--シゲくん!その人、、藤岡くんは、わたしの彼氏じゃないの!」

史和の身体のまま、そう叫ぶ史和(梓紗)-


「--はぁ?」

シゲくんが表情を歪めるー

藤岡は「たすけてくれ!」と叫んでいるー。


「--え、、えっと、、わ、、わ、、わたし、、

 この人と、身体が入れ替わってて…ほら、、これ、、わたしのスマホ!

 それに、わたしのーー」


史和(梓紗)が

無関係の藤岡を救うため、”入れ替わった”ことをシゲくんに伝えるー。


その様子を離れた場所から、ビビりながら見つめている梓紗(史和)-。


「---……テメェ、なんでお嬢のスマホを持ってやがるんだ!!」

シゲくんが叫んだー


”入れ替わり”を信じてもらえなかったー。

逆上したシゲくんは

「テメェもお嬢の浮気相手の仲間か!」と叫ぶと、

一人で、藤岡と史和(梓紗)を車の中に放り込んで、

そのまま走り去ってしまったー


「あ、、あ、、あ、、あわわわわわわ!?」

梓紗(史和)は、あまりの恐怖に失禁しそうになりながらも

「や、、やべぇ!」と叫んで、

梓紗の実家に向かって走り出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--お嬢を泣かせるなんて、許せねぇ!」

シゲくんと、その仲間たちが、梓紗の実家の

広々とした庭で、縛り付けた藤岡を殴りつけているー


藤岡は悲鳴をあげながら「俺は何もしらねぇ~~~!」と叫ぶー。


「--し、、シゲくん!」

史和(梓紗)が叫ぶー。


入れ替わりのことを信じてもらおうと、

梓紗自身の個人情報から、

シゲくんの個人情報、

シゲくんの思い出まで、全部口にしたー。


藤岡に聞かれるのは正直、あまりよくなかったが、

今は緊急事態ー。

そんなことを言っている場合じゃない。


このままでは、無関係の藤岡が殺されかねないー。


梓紗の実家の”組”は、人を傷つけるようなことは

基本的にしない方針なのだが、

娘である梓紗のこととなると、梓紗を溺愛している父も

梓紗を”お嬢”と慕う構成員たちも暴走してしまうー。


「-------」

シゲくんも、周囲の人間も唖然としているー。


史和(梓紗)が、梓紗の個人情報や

シゲくんの個人情報ー、その他もろもろを全て口にしたからだー。


口をぽかんと開けたままのシゲくんー。


「--ね、、シゲくん?だから、その人を離して」

史和(梓紗)がそう言うと、

シゲくんは「、、お前!お嬢のストーカーだな!?」

と叫んだー


史和(梓紗)は目をぱちぱちさせるー。

シゲくんの反応が予想外だったからだー。


「--いやいやいや、え!?どうしてそうなるの!?」

史和(梓紗)が叫ぶと、シゲくんは叫んだー


「-いや、違うかーー

 俺とお嬢のストーカーだな!?」

シゲくんの反応に、史和(梓紗)は「ちがーう!わたし!入れ替わってるの!」と

必死に叫ぶー。


シゲくんが、藤岡の方を見るー


「おい!こいつの言ってることは本当か!」

とー。


ボロボロな藤岡は、史和(梓紗)の方をチラッと見ると

ヘラヘラ笑いながら答えるー


「ふ、、史和はいつも嘘ついてばっかりだから!」

とー。


「--馬鹿ーーーーー!!!!!」

史和(梓紗)は思わず叫んだー。


藤岡は空気を読めないー

ここは、史和が嘘つきだと思っても

”入れ替わってる”って話を合わせてくれれば、自分だって

助かる可能性が高くなるのにー


「--へへ 決まりだ。 この嘘つき野郎と浮気野郎ー

 テメェら、許さねぇからな」

シゲくんが、鉄パイプを手にして笑うー。


「--だめ!!シゲくん!人殺しはダメ!」

史和(梓紗)が叫ぶー。

父親は現在不在のようでその姿は見えないー


若い衆たちは血の気が荒いー。

”お嬢の浮気相手”と”それを庇おうとした男”となれば

殺す可能性もあるー。


早く、なんとかしないとー


史和(梓紗)は仕方がなく

「ろ、、六歳のとき、わたし、図書館でお漏らししちゃって

 シゲくんに運んでもらったとき!」

と、叫んだー。


恥ずかしい思い出を口にすればー

絶対に入れ替わっていることを証明できるー。


しかしー


「--テメェ!6歳から俺とお嬢のストーカーをしてやがったのか!」と

シゲくんは叫んだー


「ばかーーーー!!!」

史和(梓紗)は絶望の表情で叫んだー


”んなわけないでしょ!入れ替わってるの!”と、叫ぶ史和(梓紗)-


その時だったー


「---やめろーーーーーーーーーーー!!!」

梓紗(史和)が、梓紗の実家に乗り込んで来たー


「お、、お嬢!」

シゲくんたち、若衆が、梓紗(史和)の姿を見て、

途端に頭を下げるー。


「--ほっ…」

史和(梓紗)は、ほっと、ため息をつくー。


これで、とりあえず、梓紗の身体になっている史和が

梓紗のフリをして、シゲくんたちをなだめれば、

この場は収まるー。


梓紗の言葉には、シゲくんたちは絶対服従だからだー。


「---実は、実は、俺、入れ替わってるんです!梓紗とー」

梓紗(史和)は、そう叫びながら、全てを自白したー


自分が浮気相手の史和であることー

階段から転落して入れ替わっちゃったことー


その、全てをー。


「--え…言うんだ~……」

史和(梓紗)は、梓紗(史和)が期待外れの行動をしたことに

絶望しながらも、

シゲ君の反応を待ったー


入れ替わり当事者である梓紗と史和がお互いに

”入れ替わった”と言っているのだからー

さすがにシゲくんも信じてくれるかもしれないー。


「---あ!!気を付けてください!」

突然、縛られている藤岡が叫んだー


「その二人、嘘つきっすから!」

とー。


どこまでも空気の読めない藤岡ー


梓紗(史和)も史和(梓紗)も

”黙ってろ!”と言わんばかりの視線を送るー


「テメェ!お嬢も嘘つきだってのか!?」

シゲくんが、藤岡をグーで殴りつけるー


「ぐはっ!」

悲鳴を上げる藤岡ー。


シゲくんは、藤岡を殴り終えると、

梓紗(史和)と史和(梓紗)を見比べてー

そして、微笑んだー。


「--じゃあさ、階段から再び転がり落ちれば

 元に戻るってことかな?」

とー。


「---もしーーー

 もしも嘘だったらー

 お前をぶち殺す」

シゲくんは、史和(梓紗)を睨みながら呟くー


「--ひぇっ…だ、、だから、、わたしが、、梓紗なんだってば」

史和(梓紗)はそう呟くー。


シゲくんが、他の構成員に指示をして、

史和(梓紗)の拘束を解くと、

「お嬢、こちらへ」と、近くの階段の方に梓紗(史和)を案内したー


階段の前に立つふたりー


梓紗(史和)と史和(梓紗)が気まずい雰囲気で

お互いを見つめ合うー。


「どうしよう…」


二人の嘘と嘘が作り出した最悪の状況ー


これでもし、元に戻ることができなければー

梓紗は、史和の身体のまま、シゲくんに殺されかねないー


「--とにかく、やるしかないー

 これで、元に戻れればいいんだ」

梓紗(史和)が言うー。


この場で、二人が階段から転落して

シゲくんの目の前で、元に戻れば問題ないー。


そもそも、シゲくんがどうやって、二人が元に戻ったのか

確認するのか、という疑問もあったけれど

シゲくんは単細胞だから、そこまで考えていないのだろうー、と

史和(梓紗)は思うー。


元に戻ったあともー

藤岡に、梓紗の実家のことがバレてしまったことや、

史和の浮気の件などなど、色々問題はあるけれどー

まずは、元に戻ることが先決だー。


「いこうー」

「--うん」


二人はそう呟くと、梓紗の実家の階段からーー

転がり落ちたーーー


元に戻るためにーー


⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


嘘つきと嘘つきが作り出してしまった最悪な状況…

二人は無事に元に戻れるのでしょうか~?


続きはまた次回デス!

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