<憑依>タイセツナトモダチ④~脱出~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
紗耶香は、ぼーっと、自分の部屋で、
虚ろな目のまま座り込んでいたー
家族も、友達もー
”ナナちゃん”は、
紗耶香に近しい人を次々と
無残な姿へと変えていったー。
たった、”数日”の出来事ー。
「--紗耶香ちゃん~!ご飯だよ~♡
わたし、頑張って作ったの!」
お姫様のような恰好をしたツインテールの愛海が微笑むー。
愛海は、完全に”ナナちゃん”に乗っ取られたままー。
まるで別人のように成り果ててしまっているー
ご飯を食べながらー
紗耶香は目から涙をこぼすー。
「--わたしのごはんで涙まで流してくれるなんて、
ナナ、うれしい~~♡」
嬉しそうにもじもじする愛海ー。
”愛海…ごめんね…”
紗耶香は、涙を流しながら
”愛海がこんな風に支配されてしまったのは自分のせい”と、
自分で自分を責め続けるー。
大学に行くことも許されずー
スマホも、没収されたー。
スマホを踏みつぶしながら、愛海は笑っていたー。
「-紗耶香ちゃんには、わたしがいるから、
他には、何もいらないよね♡」
そう、言っていたー
紗耶香は、愛海の言葉を黙って受け入れてー
スマホが壊される際にも、何の抵抗もしなかったー
部屋の隅っこで座り込んで、
ぽかんと口を開けている紗耶香ー
友達もー
家族もー
人生もー
何もかもが、奪われてしまったー
もう、何も考えられないー
ナナちゃんに逆らえばー
もっとー
もっと、多くの人が犠牲になるかもしれないー。
「--うふふ♡ わたし、買い物に行ってくるね」
愛海が笑いながら、
ロリ系の服装で、外に向かうー。
ナナちゃんが買い物に出かけているー
この間に逃げ出せばー
逃げることはできるかもしれないー。
でも、どこにー?
どうやってー?
もう、紗耶香には、誰もいないのだー
親しい友人もー
家族もー
みんな”ナナちゃん”の餌食になってしまったー。
「---」
紗耶香は、部屋の棚の上に置かれた
”ナナちゃん”の人形を見つめるー。
「---…」
ナナちゃんの人形はー
今は”抜け殻”だー。
中に宿っていた意識ー
”ナナちゃん”の意識は今、
紗耶香の親友である愛海を
乗っ取っているのだからー。
ガチャー
「--ーー」
紗耶香は、玄関の扉が開いたことにも気づかないぐらい、
精神的に崩壊していたー。
だがーー
紗耶香は、入って来た人間を見て、
目の輝きを少しだけ取り戻したー
「--紗耶香ーー」
部屋に入って来たのはー
彼氏の孝義ー。
「--た、、たか…くん…?」
紗耶香が涙を流しながら言うー。
そうだー
今日は土曜日ー
一人暮らしを始めた紗耶香の手伝いに
孝義が来てくれる日だったー。
「--大丈夫か?紗耶香」
孝義が周囲を見回しながら言うー。
部屋の、異様な雰囲気ー。
「---……なんで…どうして…?」
紗耶香が目から涙をこぼしながら言うとー
孝義は
「お前が心配だから来たんだよ。
大学にも来なくなっちゃうし、連絡も取れなくなっちゃうし」
と、説明しながら、
「何があったんだ?話してみろ」と、
紗耶香の方を見つめたー。
紗耶香の友人数名の変死ー
孝義は、そのことも気にしていたー
紗耶香は、隠さず、泣きながら”ナナちゃん”のことを
全て打ち明けたー。
孝義は驚いていたものの、紗耶香の言葉を信じて
「今、そのナナちゃんはどこに?」と
不安そうに呟くー。
「買い物に行ってるから…
で、、でも、じきに帰って来るかも」
その言葉に、孝義は紗耶香の手を掴んだー
「今すぐここから逃げよう」
とー。
「--で、でも…」
紗耶香が半分虚ろな目のまま答えるー
「いいから!逃げるんだ!紗耶香!」
孝義は、紗耶香の手を引っ張ったー
ここにいたらー
”ナナちゃん”に、紗耶香は壊されてしまうー
とにかく今はー
逃がすしかないー。
紗耶香の手を引っ張りながら、
アパートの階段を駆け下りる孝義ー。
孝義が「とりあえず俺の家に行こう!」と
紗耶香の手を引くー。
紗耶香は、”何で孝義は殺されなかったんだろう…?”と
疑問を抱くー。
「---」
孝義が、横断歩道の信号が赤になったことを確認すると
「--あっちから行こう!」と紗耶香の手を引くー
ナナちゃんに乗っ取られたままの愛海のことは心配だー
けれど-
ずっとあそこにいるわけにはいかないー
紗耶香も、孝義のおかげで”希望”を取り戻すー。
ナナちゃんに見つかることなく、
孝義のアパートにやってきた紗耶香ー。
孝義は鍵を開けると、
「-さ、中に入ってて」と、周囲を警戒する様子を見せたー
万が一、”ナナちゃん”に尾行でもされていたら
大変なことになるー
「---」
紗耶香は、孝義の家の中に入ると、
一息ついたー。
”どうして、孝義がナナちゃんに殺されなかったんだろうー”
その疑問を考えていた紗耶香は
ハッとしたー
”愛海と孝義はほぼ面識がないー”
紗耶香は、孝義との交際を、あまり周囲に伝えていなかったー。
愛海は、彼氏を欲しがっていたし、
”自慢してるの?”と思われるといやだ、という理由で、
愛海に孝義を紹介していなかったのだー。
愛海の身体を乗っ取った”ナナちゃん”は
愛海の記憶を元に、紗耶香の身近な人間を抹殺したー
愛海の中に”彼氏の孝義”は認識されていなかったー
そのためー
孝義は、”ナナちゃん”の魔の手を逃れたのだったー。
”たかくんの家なら…大丈夫かも…”
紗耶香は、少しだけ心が落ち着くような気分になったー
付き合い始めて2カ月ー
孝義の家に来るのもこれが初めてー。
こんな形で孝義の家に来ることになるなんt
「--!?!?」
思考が、途中で止まったー
あまりの恐怖心に、
孝義の部屋の光景に気づかなかったがーーー
「--なにこれ…」
孝義の部屋にはー
紗耶香の写真が大量に貼りつけられていたー
「---愛だよ」
孝義は笑みを浮かべたー
「俺の、紗耶香に対する愛だ」
孝義の表情が歪むー。
「--ずっとずっと、紗耶香をここに連れ込むことが
できないか、チャンスを伺ってたんだよぉ…」
孝義が欲望に満ちた笑みを浮かべるー
「え…た、、たかくん…?」
震える紗耶香ー
孝義は笑うー。
「--人形がどうこうなんて妄想は
どうでもいいんだよ…
俺は、、紗耶香をこうして家に連れ込めればーー」
孝義が紗耶香に無理やりキスをしようとするー
孝義は”穏やかな好青年”を装った”変態”だったー。
高校時代も同級生に手を出して、停学処分を受けているー。
紗耶香は、その本性を知らなかったー
「--触らせろよ」
胸を触りまくる孝義ー
悲鳴を上げながら抵抗する紗耶香ー
「--うるせぇ!声を出すな!隣の部屋に聞こえるだろ!」
孝義が紗耶香の頬をビンタするー
紗耶香は泣き出すー
”ナナちゃん”から逃れたと思ったら
今度は孝義ー。
孝義の容赦ない暴力が続きー
紗耶香は悲鳴を上げるー
無理矢理紗耶香の服を脱がせようとする孝義ー
「俺はずっと、紗耶香のことが、好きだったんだ!
大学初日に一目ぼれしてから!ずぅっと、ずぅっとぉ!」
狂った笑い声をあげながら孝義は、
「紗耶香のアパート、解約して、今日から一緒に暮らそう!」
と、笑みを浮かべるー。
「-いや…やめて!やめて!」
紗耶香が孝義を突き飛ばすとー
孝義は机に激突して、うめき声をあげたー
「--この…クソ女ぁ!」
孝義が鬼のような形相で、紗耶香に迫って来るー
「-いいからヤラせろよ!?なぁ!?おい!」
孝義の言葉に悲鳴を上げる紗耶香ー
その時だったー
「---紗耶香ちゃ~~~ん… なんで…?」
別の声が聞こえたー
「ひっ---」
玄関の方向を向いていた紗耶香は、悲鳴を上げるー
「あ?」
孝義が振り返るとー
そこにはお姫様のような姿をした愛海がいたー
目は赤く光りー
髪は逆立っているー
「--まだいたんだ…」
愛海が言うー
「--わたしから…紗耶香ちゃんを盗むやつ…!」
愛海の怒りの形相ー
怨念のようなオーラが溢れ出すー。
「--なんだぁ?お前…」
孝義は不愉快そうに愛海を見つめて、
少しして笑うー
「あぁ、いつも紗耶香にちょろちょろくっついてた女かー」
孝義の言葉に、紗耶香は「だめ!愛海は今、さっきお話したナナちゃんにー!」
と、声を上げたー
だがーー
孝義は、愛海に首を掴まれて、
そのまま持ちあげられー
壁に叩きつけられていたー
「--な、、、な!?」
孝義が何が起きたのか分からず悲鳴を上げるー
愛海の目が真っ赤に光っているー
「紗耶香ちゃんは、ナナちゃんのものだもん!」
愛海の言葉に、
孝義は悲鳴を上げながら、足をばたばたとさせるー。
しかしー
紗耶香は思わず目を逸らしたー
愛海が、孝義を”バラバラ”にしたー。
バラバラになった孝義を見つめて
愛海が真っ赤に目を光らせると、
孝義はそのまま消滅するー。
「-----どうして、わたしから逃げるの?」
愛海が目を赤く光らせたまま近づいてくるー。
「--ーーーひ、、あ、、…あ」
紗耶香が泣きながら愛海の方を見るー
愛海はにっこりとほほ笑むー
「-わたし、紗耶香ちゃんとずーっとずっと
一緒にいる方法、思いついたの!」
愛海の言葉に、紗耶香は震えながら
「え…」と呟くー
「-だって、わたしと紗耶香ちゃんは
ずーっと、友達だって約束したんだもん!」
愛海の無邪気な笑顔に震える紗耶香ー
「-紗耶香ちゃんは、誰にも渡さないし、
ずぅ~~っと、ずっと、いっしょだよ♡」
愛海の髪は、まるで別人のように逆立ちー
目は真っ赤に光ったままー
紗耶香に近づいてくる愛海ー
紗耶香はー
自分も”孝義のようにバラバラにされる”と思い
泣きながら悲鳴を上げたー
・・・・・・・・・・・・・・・
「---大丈夫ですか!?」
アパートの隣人が、開いたままの部屋の入口から、
孝義の部屋に入って来るー
一人暮らしのOLだー。
部屋の中にはーー
倒れているお姫様のような格好のツインテールの女とー
立ったまま鏡を見つめている女がいたー
「---え…」
隣人のOLが表情を歪めるー
立っていた女ー
紗耶香が振り返ると、
紗耶香はにっこりとほほ笑んだー
「--わたしが紗耶香ちゃんになっちゃえばー
ずぅっと、ずっと、いっしょにいられる うふっ♡」
紗耶香が目を赤く光らせて笑うー
倒れたままの愛海を睨むとー
目を真っ赤に光らせてー
愛海の身体が蒸発するようにして”消されて”しまったー。
「--ひっ!?」
隣人のOLが悲鳴を上げるー。
紗耶香はにっこりとほほ笑むと、
「わたしと、紗耶香ちゃんの邪魔をしちゃだ~め♡」と、
隣人のOLに向かって、目を赤く光らせー
OLは悲鳴を上げながらこの世から消滅したー
・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
紗耶香はお姫様のような格好をして、
髪型をツインテールに変えてー
自分の部屋で、”ナナちゃん”の人形を愛でていたー
「-ふふふふ…
わたしと、紗耶香ちゃんは
ずーっと、一心同体、だよ♡」
紗耶香は嬉しそうに、そう囁いて、
穏やかな笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
人形に乗っ取られてしまうエンドでした~!
ナナちゃんの件がなかったとしても、
彼氏の孝義くんにいずれ…と、思うと、
救いがないですネ~…!
お読み下さりありがとうございました~!