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静まり返ったホールで、

直之は、ライブやネットを中心で活動し、人気急上昇中の

アイドル・”J"を床に叩きつけていたー。


「-ーお、、女の子を殴るの!?…最低!」

”J"がうすら笑みを浮かべながら叫ぶー


「--ー俺は暴力は嫌いだー。

 確かに、君みたいな女の子を殴るなんて最低かもしれないー


 でもなー」


直之は、怒りの形相で叫んだー


「妹を、親友を、彼女を好き放題されて…

 黙ってなんかいられるか!!!


 大切な人たちを助けるためならー

 最低なやつにだって、いくらでもなってやるよ!」


直之の言葉に”J"はクスクスと笑い始めるー


「わたしは、わたしは選ばれた人間なのよー!

 誰からも相手にされず、クラスの端にいたわたしが

 今では、アイドルなのよ!


 ほら、あんたも、わたしのファンになりなさいよ!」


”J"が叫ぶー。

この後に及んで、”まだ”Jは笑っているー

何故だー?


直之は不気味に感じながらも、

洗脳されている彼女・真凛が、よよろよろと立ち上がるのを

横目で確認したー。


直之は、床に仰向けに倒れているJの服を乱暴につかむと叫んだー。


「--真凛を、妹の静江を、親友の健司をー

 いや、それだけじゃない、みんなを元に戻せ!」


怒りの形相の直之ー。


「---…ふ、、ふふふふふふふ、あんたー

 わたしに、こんなことして、ただで済むと思ってるの?」


”J"の言葉と同時にー

舞台の脇から、男が姿を現すー


Jのマネージャーを務めている男だー。


「--!」


その男が、カメラを手にしているー。


「--あっははははは!わたしへの暴力は

 録画させてもらうから!

 

 ふふふふ、可愛そうなわたし…!

 殴られて、可愛そうなわたし…!


 うふふふふふふふふっ」


だがーーー

直之は、そんなことに屈しなかったー


思いきり、Jの顔面を殴りつける直之ー


”女の子への暴力ー”

確かに最低かもしれないー


でもーー

大切な人を守るためならー

大切な人を奪おうとー

脅かそうとするのであればー

それを守るために、直之は”鬼”となるー


最低と言われようがー

鬼畜と言われようがー


戦うーー


「ーーーひっ…ぁ」

鼻血を流しながら”J”が

初めて怯えた表情を浮かべたー。


「---ひ、、あ、、あんた…

 く、、狂ってる…!

 わたしは、、わたしは可愛い可愛いアイドルなのよ!」


必死に叫ぶJー。


しかしー

直之は、この世の何よりも恐ろしいー

そんな表情で、Jを見つめたー


怒りー

恐怖ー

あらゆる負の感情を超越しー

言葉には表せないほどの冷徹な表情を浮かべている直之ー


「---人々を洗脳して、ファンにしてるーー

 狂っているのは、お前だろうが!」


鬼のような形相ー


”J"は「ひっ…!?」と声を上げたー。


「--答えろ!廃墟の奥にあった”闇吉原”ってなんだ!?

 お前に洗脳された俺の妹がそこに入って行って、

 その中のメイドカフェで働かされているのを見た!


 なんなんだあそこは!?

 ”会長”って呼ばれてた男と何の関係がある!?」


直之は、怒りのこもった声で、乱暴に”J"の服を掴んで、

拳を握りしめるー


Jは叫ぶー


「闇吉原なんて知らない!

 なんのこと!?」


とー。


「-とぼけるな!」

直之はJの腕を思いっきり引っ張るー。


Jが苦しそうに声を上げるー。


”J"に洗脳された妹が闇吉原とかいう場所に

向かったのだー

”J"と無関係であることなど、絶対にありえないー。


追い詰められた”J"は、泣きながら助けを求めるー


「--相原(あいはら)!

 け、、警察を呼んで!」


とー。


”相原”とは、マネージャーの男の名前だー。


「---」

相原が電話を手にするー


直之は”くそっ”と、思いながらもー

とにかく、警察が到着するまでに

Jをボコボコにしてでも、みんなを元通りにしてもらおうー、と、

そう考えていたー。

”闇吉原”とかいう場所のことは、そのあとだー。


「---ええ、、はい、わかりましたー」


しかしー

何だか様子がおかしいー


”J”のマネージャー・相原は、電話を掛けたのだが

どうも、口振りが警察と話しているような感じでは

なかったのだー。


「---相原!?!?早く!!!早く!」

Jが悲鳴を上げるー。


「---」

相原は、電話を終えると、ホール内のスクリーンに

何かを映し出したー


「---!!!」

直之が、スクリーンに映し出された男を見て

驚くー


ここに来る直前、妹の静江が向かった”闇吉原”なる場所にいた

白い縦縞模様のスーツを着た”会長”と呼ばれていた男ー


「--話は聞いたよ。大切な人を守るためにー

 頑張っているそうじゃないか。」


”会長”が笑みを浮かべるー


「--ーーお前は、なんだ」

”J"が逃げられないようにしながら、”会長”に対して

言葉を投げかけるー。


こちらの言葉が向こうに届くかは分からないけれどー。


「---私は、そうだな。闇に生きるもの、とでも

 名乗っておこうか。」


こちらの言葉は通じているー

そう判断した直之は”J"と洗脳されたままの真凛に警戒しながら

”会長”なる男と会話を続けるー


「--俺の妹が、あんたのいた闇吉原とかいうところの

 メイドカフェに入っていくのを見た…!

 俺の妹に何をしている!?

 あんたとJの関係は!?」


直之が怒りの形相でさらに叫ぶと、

男は笑ったー


「君はこの世で、絶対に裏切らないものを知っているかね?」

男が笑みを浮かべるー

イヤらしくー

高圧的な笑みー。


「---」

直之は答えないー。


「---”金”だよ。

 ”金”は人を裏切らないー

 

 ”J"は金のなる木だー。

 Jの歌声で人々を洗脳しー

 洗脳した人々を使い、さらにJのファンを増やしー

 男はJのファンとして金を落としー

 女は、我が闇吉原で身体を使って金を稼ぐー


 全ては、私の意のままにー」


男の言葉に、直之は

「じゃあ、お前が”J”の親玉なんだな!?」と

叫ぶー。


しかしー

横にいた”J"本人が叫ぶー


「-わたし、こんなやつ、知らないわ!」

とー。


「-!?」

直之が、表情を歪めるー


てっきり、”J"の後ろにいる人間…

つまり、Jに命令を下しているボスが

この男なのだと思ったー


だがー

”J"本人は、この男を知らないのだと言うー。


「--相原ー

 その女の”洗脳”を解除してやれ」


”J"のマネージャー・相原に対して男が

スクリーン越しにそう告げると、相原は「はっ」と頭を下げたー


「--洗脳!?」

”J"が叫ぶー。


「--今までご苦労だったねー。

 花崎 友美恵(はなざき ゆみえ)ちゃんー」


笑う”会長”


マネージャーの相原が、”J"に近づき、何かをするとー


”J"が途端に弱気な表情になるー


「-ーーわ、、わたし…え……うそ…?

 え…わたし…」


目から涙をこぼして蹲る”J"-


「--お、、おい?」

直之が”J"に近づくとー

Jはその場で悲鳴を上げたー


「--”J"は誰でも良いのだー」

スクリーンに写っている”会長”が呟いたー


「なんだって?」

直之がスクリーンの方を見つめると、男は

不気味な笑みを浮かべながら、

”J"の方を見つめたー


「--その女は、いじめられてた”ごく普通の”

 女子高生だー。

 それを、我々が洗脳して、

 高飛車な自信に満ち溢れるアイドルに変えてやったー


 その女は、自分の意思でアイドルになっていると

 思っていたようだが、

 我々が洗脳して、いいように操っていただけだー


 本当はー

 自分に自身もなければ、何もないー

 ただの気弱で哀れな、小娘だー」


男の言葉に、

直之は唖然とするー


「おい…大丈夫か?」

洗脳されて、アイドル”J"として振舞わされていた友美恵に近づくー。


友美恵は泣きながら

「いっぱい酷いことして、ごめんなさい…」と、

謝罪の言葉を繰り返し口にしているー。


「---洗脳したその小娘の、声帯をちょっとばかり

 違法な手術で”改造”してなー

 だから、その女の歌声で、人々を洗脳できるのだー」


男は、少女を洗脳、

Jというアイドルを作り出し、

さらに、少女に特殊な手術を行いー

”人を洗脳する歌声”を生み出したー。

男は、安全な場所で、闇吉原を経営しー

洗脳された人々を利用して、莫大なマネーを生み出していたー


「--いやああああああっ…いやああああああ…」

”J"にされていた少女・友美恵が泣きじゃくるー


「--小娘の声帯に行った手術には

 激しい精神的副作用があってなー…

 だからこそ、その女を洗脳して使っていたのだがーー

 正気に戻った今、きっとその女は自分の罪に

 耐え切れずー勝手に死ぬだろうよ」


男は笑みを浮かべるー


直之は負けずに叫んだー


「--お前が黒幕だって言うならーー

 みんなを”解放”しろ!」


その言葉に、男は拍手を始めたー


そして、笑うー


「-ーははははははっ… いいだろう」

男は笑ったー


”あっさり”と、男が”みんなを開放する”ことを

受け入れたことに、直之は表情を歪めたー


洗脳されたままの真凛の方を見るー

泣きじゃくったままの”J"の方を見るー。


「--私は紳士だ。

 君のような有望な若者を、

 口封じのために始末したりはしない」


男が笑うー


そして、その直後、”J"のマネージャーだった相原が

直之の背後からー

直之に”何か注射”をしたー


「---!」

直之が表情を歪めるー


「--安心したまえ。

 君を私の駒にするつもりはないー


 ただー

 我々のことをこれ以上、嗅ぎまわられても厄介だー


 世の中には、知らないほうがいいことも、あるー」


男の言葉に、直之は反論しようとしたが、

すぐに視界がぼやけてー

そのまま直之は意識を失ってしまったー…


・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー」

直之が目を覚ますと、

そこは、自分の部屋だったー


「--あれ…俺は…?」

直之は、頭を抱えながら

軽い頭痛を覚えて、時計を見るー


”あ、いけね!学校に行かないと!”


「ーー」

1階に駆け降りて、両親と言葉を交わす直之ー


直之は、ふと、自宅のテーブルの机が”4つ”で

あることに違和感を覚えたがー

”あ~、4つのやつ、買っちゃったんだったな”と、

そのまま家の外に出たー


学校に到着した直之は、友達と雑談を始めるー


友達の一人が

「今、話題の”J"ってすごいよなぁ~」と笑うー。


”カリスマアイドル”とまで称される”J"は

最近、ネットやライブを中心にその人気を

爆発的に急上昇させているー。


「---はは、確かにかわいいよな」

直之は、笑うー


”J"の写真を見つめる直之ー

”J"とされる少女をーー

どこかで見たことがある気がするー


「--あれ?お前なんで泣いてるの?」

笑う友達ー。


「--え??あれ???え…なんでだろ???」

直之は、”J"の写真を見つめながら

何故か自分で涙を流していることに気づき、そして、戸惑うー。


直之は、もう”思い出せない”


今、”J"として活動しているのは、

直之の彼女”真凛”であることをー。


眠りにつかされた直之は”洗脳”されて

彼女の真凛・妹の静江・親友の健司の記憶を消去されてしまったー。


さらに”闇吉原”を支配する謎の組織は

3人の関係者を次々と”特殊な方法”で洗脳し、

3人の記憶を消し去ってしまったー


「-----」

親友・健司がいたはずの机を見つめるー


「--あそこ、誰かいなかったっけ?」

直之が言うー


だが、友達は笑うー


「はは、お前、寝ぼけてんのか?

 あそこ、前から空席だろ?」


とー。


「--そっか、、、そうだよな…」

直之はそう呟きながらー

少しだけ、微笑んだー


彼はもう、思い出せないー

親友・彼女・妹ー

その全てを奪われたことをー


・・・・・・・・・・・・・・・


直之の彼女・真凛は

アイドル”J"として、活動し、

歌声で人々を洗脳しているー


親友の健司は、闇吉原のスタッフとして働かされているー


妹の静江は、”会長”が気に入り、会長の女として

毎晩会長の相手をしているー


最初に”J"として、洗脳されていた友美恵は、正気を

取り戻して、激しく動揺した挙句、自殺してしまったー。



数か月後ー


洗脳されて、アイドル・”J"として、活動している真凛は、

ファンとの握手会に臨んでいたー


当然、ファンたちは真凛の歌声に洗脳された人々ー


真凛は”下僕”たちが、こんなに増えるなんて…

と、嬉しそうに笑みを浮かべるー


そこにーーー

直之がやってきたー


あの後、直之も、”J"となった真凛の歌声を聞き、

洗脳されて、ファンになってしまっていたー。


「---あ、、あの…ファンです!」

直之が嬉しそうに手を差し出す。

真凛が握手するー


直之と真凛ー

彼氏と彼女だった二人がー

互いに洗脳された状態で、握手を交わすー


その時ーーー

二人は、ハッとした様子で、顔を見合わせたー


そしてーーー

直之は、震えながら口を開いたー


「ま、、り…ん?」


とー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・


コメント


洗脳Xアイドルのお話でした~!

この後どうなるのかは…皆様のご想像次第デス!


お読み下さりありがとうございました~!


明日は”人形”が関係する憑依モノを書く予定ですので

お楽しみに~!

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