<入れ替わり>揺れるトライアングル⑥~俺の選ぶ道~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
純也は、保健室に隠すようにして置かれていた
黒い袋の中身をこっそりと見たー。
そこにはー
謎の注射器が入っていたー
袋には、”白崎” ”風間”の文字ー
つまり入れ替わっている穂乃香と英司のことだー。
「人間が生成できる成分じゃないー
”外部”からー
注射されたような、そんな、感じだー」
病院の先生の言葉を思い出すー。
あの日ー
階段から転落した穂乃香と英司を保健室に運んだのは、
保健室の先生・由美だと聞いたー。
とは言えー、
保健室には、生徒会長の洋平もいたし、
その場で由美を問い詰めることはできなかったー。
そして、生徒会長の洋平を殴ったことで、
生徒指導室に連れていかれた英司(穂乃香)のことも気になるー。
生徒指導室の前にたどり着くと、
英司(穂乃香)が生徒指導室から出てきたー。
「---もう、、滅茶苦茶だよ」
生徒指導室から出てきた英司(穂乃香)が純也のほうを見て言うー。
「--…穂乃香…」
純也が悲しそうに呟くと、
英司(穂乃香)は言ったー。
「--純也はさ…わたしの”身体”が好きだったんでしょ?
わたしの中身のことなんて、どうでもいいのー。
だから、わたしがこの身体で、どんなに、どんなに
純也に振り向いてもらおうとしても、
純也は振り向いてくれない!」
英司(穂乃香)が叫ぶー。
学校の廊下特有の冷たい空気に晒されながら
純也は口を開くー
「それは違うー。
俺は、穂乃香のことも、英司のこともー、
本当に助けたいと思ってるー
でもー」
純也は言葉に詰まるー。
”彼女”と”親友”がそれぞれ半分ずつになってしまったー。
どうしていいか、純也自身も、分からないー。
「---ーーいいよ、もう、」
英司(穂乃香)は、悔しそうにそう呟くー
この身体じゃー
もう、純也に振り向いてもらうことはできないー
「--穂乃香!」
純也が立ち去って行こうとする英司(穂乃香)に声を掛けるー。
「--ーー俺は英司ですよーだ!」
英司(穂乃香)はそれだけ言うと、立ち去ってしまったー。
「---」
純也は廊下を歩くー。
早くー
早く、二人を元に戻さないとー
”彼女”も”親友”も、どっちもー
失ってしまうー。
「----どうしたんですか?」
生徒会の書記ー、後輩の雫が、偶然通りがかって純也に声を掛けるー。
「---…神谷さん」
純也が雫の方を見つめるー
雫はクスッと笑ったー
「先輩の彼女さんってーまるで男みたいですし、
先輩の親友さんってーーーなんか女々しいですよね?
まるでーーー
入れ替わっているみたいー」
クスッと不気味に微笑む雫ー
「ーーー…そ、そんなことないよ」
純也は”入れ替わりのこと”を隠そうと、そう返事をするー
雫は、微笑むと
「---先輩、見てると面白いですー
色々な意味でー」
と、呟いて、そのまま立ち去っていくー
「-ーーー」
純也は雫の後ろ姿を見つめながら戸惑いつつもー
保健室の方を目指したー
由美先生に聞かないといけないー
”入れ替わり”のことをー。
保健室に戻った純也ー。
夕日に照らされる保健室で、
由美先生は、静かに純也のほうを見たー。
「--先生…お話があります」
”元ギャル”なんて噂まである由美先生ー。
だがー、
過去がどうあれ、学校では”みんなの人気者”だし、
穂乃香や英司が恨まれる理由なんて、ないはずー
「---」
由美先生は、純也のほうを見て、
静かに口を開いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した純也は、部屋で頭を抱えるー。
”二人を入れ替えたのは、わたしー”
由美先生の言葉を思い出すー。
”あの日、階段を下りていた風間くんを背後から
突き飛ばしてー
二人が意識を失ったときにー
二人に”入れ替わり薬”を注射したー”
「---」
純也は頭を抱えながら、机の上に置かれている写真を見つめるー。
”どうして、そんなことをー?”
その質問には、答えてもらえなかったー。
そしてー
由美先生は、頭を下げたー
その時に言われた言葉を思い出すー。
”二人を戻す方法はーーーないの。
少なくともーわたしは知らない
わたしは、頼まれただけだからー”
「---」
純也が、純也・穂乃香・英司の三人で撮影した
写真を見つめるー。
もう、戻れないー?
机の上に置かれたノートには、
文字がびっしりと書かれているー
必死に純也が”入れ替わり”について、
毎日毎日徹夜で調べ続けたことが
びっしりと、そこには隠れているー。
もうーーー
元の穂乃香にも、英司にもーーー
戻せないー?
”---俺さ…自分がどんどん女になってるのを感じるんだ…”
穂乃香(英司)から届いたLINEを見つめる純也ー。
”俺、どうすればいいのかな…?
なぁ…英司…
俺はお前の親友でいたい…
でも、同時に彼女として愛してほしいって
思っちゃうんだ…
気持ち悪いよな…俺…。
最低だよ”
穂乃香(英司)のLINEがさらに送られてくるー。
二人の、辛い想いー。
明日ー
由美先生をもっと、問い詰めてみようー。
純也は、そんな風に思いながら、
スマホを手にするー。
だがー
その”希望”さえも、砕かれてしまったー。
「---え」
翌日ー
保健室に、由美先生の姿は、もう、なかったー。
そこにいたのは、生活指導の先生ー。
「---由美先生はー
今朝、退職届を校長に提出したよー。
急にでびっくりしたけどさー」
その言葉にーー
純也は愕然としたー。
ふたりは、ずっとーー
このままーーー?
純也は、そのことを英司(穂乃香)、
穂乃香(英司)の二人に伝えたー。
英司(穂乃香)は泣いていたー。
穂乃香(英司)は腕組みしたまま、窓の外を見つめていたー。
やがてー
英司(穂乃香)が口を開くー
「--俺、、ホントに英司になっちゃおうかな」
とー。
涙を浮かべながら笑っているー
「---……」
穂乃香(英司)が暗い表情で英司(穂乃香)のほうを見るー
「ほら、二人も仲良くしなよ、、いや、しろよ。
彼氏彼女だろ、ほら!」
英司(穂乃香)が、英司の口調で、
純也と穂乃香(英司)の手を掴み、
無理やり二人の手を握らせるー。
「--へへ、やっぱりお似合いだよね…
いや、だよな!
純也、、それにわた、、、ほ、、穂乃香!
仲良くしろよ!」
英司(穂乃香)が、
自分が穂乃香であったことを忘れようとするかのように叫ぶー。
そして、教室から出ていこうとするー。
「--おい!それでいいのかよ!」
穂乃香(英司)が、英司(穂乃香)に向かって叫ぶー。
「--俺、、俺、、もう英司だし!!
これ以上一緒にいたら、わたし、男の身体で、
純也に迷惑かけちゃうし!!
風間君には嫉妬しちゃうし!!!
もう、、ダメなの!
…ダメなんだよ!」
英司(穂乃香)はそれだけ言うと、外に出ていくー。
「---…」
穂乃香(英司)が、純也の方を見つめるー
「--親友半分、彼女半分ー」
穂乃香(英司)の言葉に、純也が「え…」と声を出すー。
「--感情がごっちゃになっててさ…
このままじゃ、俺…おかしくなっちまいそうなんだ…
……お前のこと好きだし、友情も感じてるー
俺……どうすりゃいいんだよ…」
穂乃香(英司)の言葉を聞いて、純也は
深呼吸をするー
”二人が元に戻らない未来ー”
「---来週…」
純也は、意を決して、口を開いたー。
「--来週…デートしよう」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・
”もう、やめてあげてー
二人を、元に戻してあげてー…”
「-----」
保健室の先生・由美からのメールを見つめるー。
純也にばれたことー
そして、あの学校を辞職したことー
この先”どんなこと”をされても、もう、協力できないという
”決別”の言葉がそこには綴られていたー。
「-----」
由美に”入れ替わり薬”を渡しー
英司と穂乃香を入れ替えるように”指示”した人物が、
そのメールを見つめると、スマホを握りしめて、
返事を入力したー。
”元に戻す方法なんて、ないー”
とー。
そうー
元に戻す方法なんて、ないー
”入れ替わりの薬”は、研究室から盗み出したものー。
元に戻す方法なんて知らないしー
もう、同じものは、手元に存在しないー。
「---」
由美先生に返事を送ると、その人物は立ち上がったー
・・・・・・・・・・・・・・・
大粒の雪が空から舞い落ちるー。
2月の雪の日ー。
純也は”デート”の当日を迎えていたー。
寂しそうな表情でスマホの写真を見つめるー。
ライトアップされた遊園地ー。
観覧車が、色とりどりの光を放つ中ー、
彼は、一人、寂しげにー
その光を見つめていたー
幻想的な光が、美しく、そして、虚しく光輝くー。
「--------」
純也が顔をあげると、そこには”大切な人”がいたー。
もう、戻れないー
あの時にはー。
それでもー
純也が、悲しそうに、相手に向かって微笑むー。
そして、”大切な写真”を見つめるー。
純也と、純也にくっつく可愛らしい少女とー
二人を見守る男子生徒ー。
三人はー
いつも仲良しだったー
小さいころから、ずっとー
三人、一緒だったー。
「----ーー」
純也がスマホをしまうと、
少しだけ驚いた様子で相手を見つめたー
三人の絆は、もう戻らないー
三人の絆ー
決して切れないはずだった、絆が壊れていくー。
「----…よー」
やってきたのはー
穂乃香(英司)だったー。
どうしてー
どうして、こんなことになってしまったのだろうー。
この1か月間ー
揺れ動いた三人の絆ー
けれどー
純也は”その答え”を出そうとしていたー
三人の未来のためにー
「俺、決めたよー」
純也が、静かに口を開いたー
光輝く、遊園地の中でー。
「----…え」
穂乃香(英司)が戸惑いながら、
寒そうに純也の方を見つめるー
大粒の雪が、舞い落ちるー。
「-ーー俺…やっぱ、穂乃香が好きだからー
俺、やっぱ、英司は大切な親友だからー」
純也の言葉に、
穂乃香(英司)は、首を傾げるー。
「--だからーー決めた」
「--!」
穂乃香(英司)が振り返ると、
そこには英司(穂乃香)の姿もあったー。
純也が”デート”に誘ったのは
穂乃香(英司)だけではなくー
英司(穂乃香)のことも誘っていたー。
「---…あれ…」
英司(穂乃香)が、穂乃香(英司)も
呼ばれていたことに驚くー。
そして、二人は純也の方を見つめるー。
純也は必死に、二人を元に戻そうとしていたー
けれど、その”道”が絶たれてしまったー
このままじゃ、英司も、穂乃香も失うことになってしまうー
三人の、固い三角形のような絆は、
もう、ボロボロだったー。
かと言ってー
穂乃香(英司)を選べばーー
英司(穂乃香)を選べばーー
大切な”どちらか”を失ってしまうー。
純也はこの1週間、必死に不器用な自分を奮い立たせながら、
答えを出したー。
「------」
純也が微笑みながら、二人の方に向かって歩いてくるー。
観覧車の光が、三人を照らすー。
「--ーー俺は、穂乃香が好きだー。
そして、英司のことは、本当に大事な親友だー」
純也が静かに呟くー。
「---穂乃香」
純也が英司(穂乃香)の方を見つめるー
「-身体目的なの?って聞いたよな?」
純也は、ようやく答えを出したー
「---うん」
英司(穂乃香)が返事をするー。
純也は、観覧車の方を見上げたー
「--身体目的ーーっていうと、変だけど、
穂乃香の身体…”外側”は、好きだよー。」
”やっぱ身体目的なんだー”
と、英司(穂乃香)は少し表情を曇らせるー
「でもー」
純也が英司(穂乃香)の方をまっすぐ見たー。
「--外側だけじゃない、中身も大好きなんだー。
外も、中も大好きなんだー。
中身が好きだからー
なんていう人もいるけど、
俺はさ、違うと思うんだー。
ホントに好きな人のことは、
外側も内側も、、、どっちか、じゃなくて、
ホントに、、相手の全部を好きになると思うんだ…!
だから、穂乃香、俺はー
俺は、穂乃香の外側…そう、身体、中身も大好きなんだ。
下心なんかじゃないー
穂乃香の全部が好きなんだ…!
だから、、だから、身体目的なの?って言われてもー
違う、とは言えなかったー…
ごめんー
全部、好きだからー」
純也の言葉に
英司(穂乃香)は、「純也…」と呟くー。
「でも、わたしはもう、、」
純也の言う通りー
”外見”と”中身”両方好きだとしてもー
入れ替わってしまった穂乃香はー
”外見”と”中身”がバラバラになってしまったー
「---…英司」
純也が穂乃香(英司)の方を見るー
「彼女として振舞えばいいのか、親友として振舞えばいいのか
分からないって言ったよなー?」
純也はそれだけ言うと、静かに微笑んだー
「--”両方”でいいと思うんだー。
俺、色々考えたけどさー。
両方ー。
それで、いいと思うんだー
俺は英司の外見も、英司の中身も、どっちも揃って
親友だと思ってるからさー」
そこまで言うと、
純也は二人の方をまっすぐと見つめたー。
「---俺と、改めて付き合ってほしい」
純也が言うー。
穂乃香(英司)が、自分を指さしながら首を傾げているー。
英司(穂乃香)も、周囲をキョロキョロしながら不思議そうにしているー。
「どっち?」
英司(穂乃香)が不思議そうに言うと、
純也は笑ったー
「---そして、俺と改めて親友になってほしいー」
純也は、そこまで言うと、
「--二人に、お願いしてるんだー」
と、少しだけ笑みを浮かべるー
「-え」
穂乃香(英司)の言葉に、
純也は続けたー。
「--英司の外見、英司の中身ー
穂乃香の外見、穂乃香の中身ー
俺は、全部好きなんだー。
全部揃って、親友と、彼女ー」
穂乃香(英司)の方を見つめるー。
「--俺が英司の、彼氏と親友になるー」
そして、英司(穂乃香)の方を見つめるー。
「--俺が穂乃香の、彼氏と親友になるー」
「---俺は”4つの宝物”
どれも、手放したくないし、順位もつけられないー
本当に、大切な存在なんだー。
だからー」
純也は、穂乃香(英司)と英司(穂乃香)をまとめて抱きしめたー。
”元に戻ったあとー”
そればかりを考えていたー
でも、もう、戻れないかもしれないならー
これがー
”俺の出した答えー”
「”ふたり”にこだわる必要なんて、なかったんだー。
彼氏・彼女・親友ー。
俺たち、三人で、ひとつー…
それでいいのかな…って、俺、そう思ったんだー
穂乃香の心も体もー
英司の心も体もー
全て、俺には、宝物だからー。」
遊園地のライトが、三人を照らすー
心なしか、少しだけ、ライトが暖かく感じられたー。
「---そっか」
英司(穂乃香)が微笑んだー
「--親友でもあり、彼女でもあるーか」
穂乃香(英司)も少しだけ笑うー
「---…欲張りだな、お前は」
穂乃香(英司)はそう言うと、
「でも、友達も彼女も大事にする、お前らしいや」と
笑みを浮かべたー。
三人は、仲良く手をつなぐー。
「--周囲が何か言って来たってー
言わせておけばいいー
三人一組で歩んじゃいけないなんてルール、はないんだから」
純也の言葉はそこまで言うと、
「--なんて…俺は思ったけど…穂乃香と英司はどうかな…?」と
少しだけ申し訳なさそうに言ったー
「-ーー二人に同時に告白してるみたいで、変な気分だな」
純也は少し笑うと、遊園地の風景を見つめたー。
もし、断られてもー
自分の中での答えは出したー
親友も、彼女も、どっちも大事ー
順位をつけることなんてできないー
身体も、中身もどっちも大事ー。
どちらかに優劣をつけることは純也にはできないー。
二人が入れ替わってしまって、もう元に戻らないのならー
二人が想いの狭間で苦しんでいるのであればー
全部まとめてー
三人で歩んでいけばいいー
純也はそう答えを出したー
「--色々…大変だと思うよ」
英司(穂乃香)が呟くー
「--でもーーーーー」
英司(穂乃香)は、純也の方を見て笑ったー
「-ーー彼女と親友、、両方の立場を半分ずつって言うのも、
悪くはないのかもねー」
英司(穂乃香)の言葉に、純也は優しく微笑んだー。
「--…そうだな…」
穂乃香(英司)は、それだけ呟くと、
純也の方を見てー
「--じゃあ、三人で一つのカップル…ってことにしておくか」
と笑ったー
これから先ー
三人で歩んでいく未来の先にはー
あらゆる困難が待ち受けているかもしれないー
けれど、
きっと、三人なら、乗り越えられるはずだからー
「--せっかく遊園地に来たんだから、遊んでいこうぜ!」
穂乃香(英司)は観覧車の方を指さしながら嬉しそうに走っていくー
「--なんか、わたしが、あの身体だったときよりも、
女の子っぽくなってる気がする」
英司(穂乃香)が、笑いながら純也に向って言うと、
「---はは、そうかもなーー」と、純也も笑いながら
英司(穂乃香)と一緒に観覧車の方に向かったー
・・・・・・・・・・・・・・
三人の絆は取り戻されたー
どっちが彼女、どっちが親友ー
そんな区別は取り除いてー
両方彼女であり、両方親友であるー
そう、考えることにしたー
どっちか選べと言われてもー
どっちも大切で、
どっちも半分ずつになってしまって
もう元に戻れないのだからー
その未来を受け入れて、歩んでいくしかないー。
学校でもー
純也は、穂乃香(英司)、英司(穂乃香)
どちらとも仲良く、周囲から何を言われても堂々と振舞ったー
三人の明るさと、元々の友達の多さもあってかー
最初は揶揄う者もいたがー
次第に、クラスも自然と純也たちのことを受け入れたー
「---」
純也は自宅の写真を見つめるー
そこには、2枚の写真ー
クリスマスの時に撮影した純也・穂乃香・英司の写真とー
この前撮影した純也・穂乃香(英司)・英司(穂乃香)の写真ー
”形”は変わってもー
二人は大事な彼女と親友だー。
二人とも彼女であり、二人とも親友だー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
数年後ー
大学に進学した三人は、
同居生活を始めていたー
そんなある日ー
「------」
空港を歩く女が立ち止まるー。
「---お姉ちゃん」
背後から声を掛けられて女が振り返るー。
大学を卒業して、地方の企業に就職ー
”逃げるようにして”実家を離れようとした女に
声を掛けたのはー
英司の身体になった穂乃香だったー。
「----」
振り返ったのは、穂乃香の姉・千里ー。
穂乃香になった英司を”異様”に溺愛していた姉だー。
「---お姉ちゃん、なんだよね…?」
英司(穂乃香)が呟くー
「----穂乃香…」
姉・千里が呟くー。
そして荷物を手にしたまま、英司(穂乃香)の方に近づいてくるー。
入れ替わりを仕組んだ犯人ー
それが、姉・千里であると、英司(穂乃香)は気づいていたー。
「--ーーーごめんなさいー」
千里はそう口にすると、
全てを話したー。
穂乃香と英司の入れ替わりを仕組んだことは自分であることー。
妹である穂乃香が、高校に入学してから、千里の過保護っぷりを
嫌がるようになったことで、強い寂しさを感じていたことー
入れ替わり薬は大学の研究室から盗み出したもので、
元に戻す方法は分からないことー
穂乃香たちの高校時代の保健室の先生・由美は、
穂乃香の姉・千里の高校時代の先輩で、
噂通り、当時ギャルだった由美の悪さや秘密を握っていた
千里は、それをネタに、由美先生を脅し、
入れ替わり薬を英司と穂乃香に投与するように指示したことー
高校時代の悪事をネタに脅された由美先生は、
既に家族持ちであったこともあり、家族にそれを知られたくない、
という一心で、千里に協力したー。
保健室に無防備に袋に入れた空の注射器を置いたままだったのはー
どこかに、罪悪感があったからなのかもしれないー。
「--やっぱ…由美先生、元ギャルだったんだー」
英司(穂乃香)が少しだけ笑いながら呟くー
「--お姉ちゃんの先輩だったなんて、知らなかったー」
姉・千里は、浪人していたこともあり、由美は先に就職、
保健室の先生として働いていたのだったー。
「---でもーーー
やっぱり、身体は穂乃香でもー
わたしは、中身も穂乃香じゃないと、満足できなかったー」
それだけ言うと、千里は、英司(穂乃香)に背を向けるー
”妹の穂乃香が大好き”な姉・千里は
英司や純也に嫉妬し、英司と穂乃香を入れ替えることで、三人を苦しめてー
さらには、自分の愛を拒む穂乃香の中身を別の男子にすることで、
穂乃香を思いのままに溺愛しようとしたー
それが、入れ替わりの理由ー
「お姉ちゃんー
わたしこそ、お姉ちゃんに冷たくしてごめんねー…」
英司(穂乃香)が謝罪の言葉を口にすると、
千里は振り返ったー
「---でも、今、わたし、男子の身体になっちゃったけどー
幸せだからー…
心配しないでー」
英司(穂乃香)の言葉に、
千里は、少しだけ微笑むとー
英司(穂乃香)に背を向けて、
そのまま空港の奥の方に歩いて行ったー
・・・・・・・・・・・・・
どっちも彼女で、どっちも親友ー
そして、二人にとっては純也が彼氏であり、親友ー
入れ替わった相手は、もう一人の自分ー
誰一人として欠かせない存在ー
「---ただいま」
大学から帰宅した純也が微笑むー
今日も家にはー
大切な彼女が二人と、
大切な親友が二人、いるー
”普通”じゃないかもしれないー
でも、これがー俺のー
俺たちの選択ー。
壊れかけた三人の三角形は、
今、あの日々を通じて、さらに固くなったー。
どんなに叩かれても砕けることのない、
トライアングルのようにー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
親友と彼女が入れ替わってしまって
三人の絆が揺らぐ入れ替わりモノでした~!
最終的に主人公が出した答え…
もしも皆様が彼の立場だったらどんな答えを出したでしょうか~?
お読み下さり、ありがとうございました!!