Home Artists Posts Import Register
Join the new SimpleX Chat Group!

Content

「------」

大学の建物の裏の非常階段に座り込んで、

一人、泣きじゃくる女子大生がいたー。


「----」

雨が降るその日ー。


富岡 佐奈(とみおか さな)は、

落ち込んでいたー。


人間関係のトラブルー。

友達や、先輩を巻き込む内容で、

不器用な佐奈は、どうすれば良いのか分からず、

途方に暮れてしまっていたー。


そんなときだったー


「----どうしたの?」

傘を差した男子大学生ー

須永 涼平(すなが りょうへい)が、

非常階段で泣きじゃくる佐奈を心配して

声をかけてきてくれたのだったー。


「----……あ、、うん…ごめん…なんでもないの」

佐奈は、涙を拭いて立ち上がるー


二人は同じ大学に通う生徒同士だが、

ほとんど面識はなくー

”見たことある”程度の間柄ー。


だがー

困っている人を放っておけない性格の涼平は、

立ち去ろうとする佐奈に向かって声をかけるー


「--何か悩んでるならー…

 僕で良ければーーー

 話を聞くことぐらいはできるよ」


とー。


「----…どうして…?」

佐奈が不思議そうに振り返るー。

傘も差さずにー。


雨の音が響き渡る中ー

涼平は、佐奈に自分の傘を手渡すと、濡れながら呟くー


「どうして…って…?」

涼平が不思議そうに、首を傾げるー。


「---お互いに顔は見たことある程度の間柄なのに、

 どうしてそんなに親切にしてくれるの…?」

佐奈の表情に警戒の色が現れているー


涼平は濡れながら、「はは、そっか」と苦笑いするー。


いきなり女子に声をかけて

下心があるのではないか?と疑われているのだろうー。


涼平は頭を掻きながら、

「-僕さ、昔から、よく言われるんだよ、お人よしってさ」

と、呟くー


「-お人よし?」

佐奈はまだ警戒しているー。


「--そう。別に君が女子だから声をかけたわけじゃないし、

 別に何も悪だくみもしてないよ」

涼平はそれだけ言うと、微笑んだー


佐奈は、そんな涼平の顔を見てー

涼平は嘘をついていない、と判断したー


その日からー

佐奈は、涼平に自分の悩みを相談するようになったー。


涼平は、自分で言っていた通り”お人よし”だったー。

男女問わず、困っている人がいたら、声をかけてしまうー

そんな感じの男子だー。


涼平を通じて、涼平の親友の田丸 勝之(たまる かつゆき)とも

知り合った佐奈ー。

勝之も、涼平のことを「自分より他人を優先するバカ」と笑っていたー。


そんな涼平に佐奈は惹かれていくー

だが、佐奈の抱えている”人間関係のトラブル”は非常に厄介な

トラブルで、涼平が必死に解決のためにと力を貸してくれても、

なかなか解決しなかったー。


「----…僕さ」

ある日、涼平が呟いたー。


「---実は生まれつき、”他人に変身する力”があるんだ」

涼平の言葉に、佐奈は思わず笑ってしまうー。


「--え???ど、どうしたの急に?熱でもあるの?」

佐奈が困惑した様子で言うと、

涼平は”本当なんだ”、と佐奈の目の前で変身をして見せたー。


「--えっ!?!?!?!?」

驚く佐奈ー。


佐奈の姿になった涼平は、少しだけ悲しそうに微笑むー


涼平は、何も言わなかったー


けれどー

”この能力があるせいで”

多くのものを失ってきたー

そんな、表情に見えるー。


「-----」

元の姿に戻った涼平は、佐奈のほうを見るー。


「--富岡さんが、僕を信じてくれるならー。

 僕が、この力で、富岡さんのトラブルを解決させるー」


涼平が、佐奈のほうを見つめるー。


佐奈は、涼平に好意を抱き始めていたー。


佐奈は頷くー。


涼平が、佐奈に変身して、

佐奈の代わりにトラブルを解決するー。


涼平に、佐奈は自分の全てを託したー。


”涼平なら、佐奈の姿に変身しても、佐奈の姿を悪用することはない”


と、佐奈は、そう信じたのだー。


結果ー

佐奈に変身した涼平が、必死に行動を起こしてー

佐奈の抱えていた”トラブル”は解決したー。


「-----ありがとう」

「--どういたしまして」


それが、1年半前のことー。

そのことをきっかけに、佐奈は涼平に告白ー

佐奈と涼平は彼女と彼氏の関係になり、

付き合いを始めたのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・


「------」

涼平は、悲しそうに写真を見つめるー


”他人に変身することのできる力”

その力に気づいたのは、小さいころだったー。


テレビを見ていて、

ヒーローになりたい!と強く思ったところー

テレビに出ているヒーローの姿に変身してしまったのだー。


自分何故、そんな力があるのかは分からないー。

けれどー。

涼平は”自分の力”が嫌いだったー。


涼平は、自分の力を誇示するようなことは決してしないし、

普段、その力を使うことはない。

夜中に一人でエッチなことをする目的で使ったりすることも絶対にないし、

日常生活の中で何か悪用することも絶対にないー。


佐奈に能力を打ち明けた時点でも、

変身の能力を知っていたのは

親友の勝之ぐらいだったー。


だがー

あれから1年半ー。


「-わたしの彼氏は他人に変身できちゃうんだよ~!」

1年半前よりもおしゃれになった佐奈が、友達に向かって言うー。


「--え~~?ほんとに~?」

佐奈の友達が騒ぎ出すー


涼平は「はは、そんなことないよ」と苦笑いしながら、

飲み物を口に運ぶー。


佐奈の家で友達と集まっていたこの日ー。

佐奈が、亮平の変身能力のことを口にしたー。


「ほらほら涼平!みんなの前で変身してみてよ~!」

佐奈の言葉に、

涼平は「ごめん」と呟いて部屋の外に出るー。


・・・・・


友達たちが帰ったあとに、佐奈は、

「-なんで変身してくれなかったの!?」と、

不機嫌そうに呟くー。


「--…言ったろ?僕はあまり力のことを広めたくないんだ」

涼平が言うと、

佐奈は「涼平ってさ」と、不機嫌そうに呟くー。


「せっかく変身できるのに、なんか、こう、宝の持ち腐れって

 感じだよね」


佐奈の言葉に、

涼平は「---そっか。ごめんな」と、優しく呟いたー


”また”だー。

涼平の力を知った人間は、

必ずー


涼平を”人間”としてではなく

”モノ”として見るようになるー。


穏やかで優しい性格だった佐奈もー

この1年半で変わってしまったー。

今では、わがままで時々横暴とも言える性格に

変わってしまっているー。


「--僕のせいだ」

涼平は帰宅してから自室で首を振るー。


「--こんな力、無ければよかったのに」

涼平が、拳を握りしめるー。


あの時、佐奈を助けるためには

変身能力を使うしかなかったー。

それほどまでに厄介なトラブルだったー。

佐奈自身がガツンと言う必要があったのだが、

当時控えめな性格だった佐奈には

それが出来ず、

涼平がどんなに立ち回っても、

どうすることもできなかったー。


そこで、最後の手段として、変身能力を使って

解決したのだー


けれどー


”ねぇねぇ、明日のバイト、代わりにお願い!”


佐奈からのLINEを見つめるー。


”---またか?たまには佐奈が行った方がー”


”--わたしのために、その力を使ってくれるんでしょ?

 おねがい!”


佐奈とのLINEのやり取りにため息をつくー。


「---」

涼平が目をつぶって”佐奈になりたい”と念じると、

涼平は佐奈の姿に変身したー。


佐奈の服がいくつか、涼平の部屋に置かれているー。

涼平が盗んだわけではなく、

佐奈が”涼平がわたしに変身したときに着る用”と

いくつか選んで勝手に持ち込んだものだー。


涼平が、下心を持っていない、ということを

佐奈は強く信頼していたし、

涼平も、事実、佐奈の服が部屋にあっても

変身するとき以外にそれを手にすることはなかったー。


「----よし」

佐奈に変身した涼平は、女物の服を身に着けると、

バイトに向かうメイクをしてー

そのまま外に出かけたー


「---」

佐奈として街を歩くー。


スカートの感触や

髪の感触を感じながらー

涼平は、表情を暗くするー


「あ、佐奈~!」

大学の友達の一人が、涼平のことを佐奈だと思って、手を振るー


「あ、恵~!」

佐奈のふりをして、涼平が返事をするー


”だましているー”

心が痛むー。


でもー

佐奈のためー。


「---じゃ、わたし、バイトがあるから、!ばいばい!」

佐奈として振舞いながら、涼平は、バイト先に向かい、

バイトをこなしたー


帰宅したことをLINEで佐奈に報告すると、

佐奈は”ん”とだけ返事を送って来たー。


「---はは、僕ってなんなんだろうな」

元の姿に戻った涼平は、佐奈として着ていた服のまま、

悲しそうに首を振ったー


・・・・・・・・・・・・・


大学の食堂で、

涼平・佐奈と、親友の勝之が、一緒に昼食を食べていたー。


「--でね~、涼平ってば優しいからわたしのために

 バイトも行ってくれるの!

 昨日もバイトの給料でほら、この可愛いイヤリング買っちゃったの!」

耳のイヤリングを指さしながら、佐奈が笑うー


「ははは…」

勝之が少し引いた様子で笑っているー


「---ほんと、わたしの自慢の彼氏!」

嬉しそうに涼平の腕にしがみつく佐奈ー。


「--佐奈の喜ぶ顔が見れて嬉しいよ」

涼平が優しく微笑むー


涼平は、優しすぎる性格ゆえに、

佐奈の悪い部分を指摘できずにいたー。

変身能力の悪用についても、佐奈のためにー、と

仕方がなく受け入れてしまっている部分があったー。


佐奈のほうを見る涼平ー。


佐奈は変わってしまったー。

出会ったばかりの頃の素直さが無くなりー

我儘な女子になってしまったー

見た目も少し派手になっているー


”佐奈をこうしてしまったのは、僕のせいだー”

涼平は、そんな風に、佐奈のほうを悲しそうな表情で見つめたー。


「---あ、そうだ!今日の夜のバイトもお願い~!」

佐奈が涼平を見て笑うー。


「--あ、、え…?あぁ、、、うん、わかった」

涼平が微笑むと、

佐奈は「やった!今日、買い物行きたいところがあったの~!ありがと!」と

嬉しそうに呟いたー。



「---なぁ」

昼食を終えて、佐奈が用事があるから、と先に立ち去ったあと、

勝之が口を開くー。


「---ん?」

涼平が勝之のほうを見ると、

勝之は「いいのかよ…?このままで」と心配そうに呟くー


親友の勝之だけだー

今まで”変身”の力を知っても”人間”と接してくれているのはー。


「----富岡さん…どんどん変わっちまってるー」

勝之の言葉に、涼平も頷くー


「---僕のせいだ」

涼平の言葉に、勝之は首を振るー


「--お前のせいじゃない」


「--いいや、僕が悪いんだー

 僕が、佐奈をダメにしてしまった」


涼平が悲しそうに首を振るー。


「---しっかりしろよ、涼平」

勝之が、亮平の肩を掴みながら涼平を見つめるー


「--富岡さんとちゃんと話し合ってみろよー。

 恋人なんだろ?

 あの子だって、根は悪い子じゃないー


 ただ、こうー

 お前の能力に魅せられて自分を見失ってるんだー」


勝之の言葉に、涼平は、「勝之…」と呟くー。


そして、少し考えたあとに、涼平は少しだけ微笑んだー。


「そっかー…

 そうだよな…

 うん、わかった」

涼平は、自虐的に笑うと、

「--僕、佐奈に相談してみるよ…自分の気持ちを」と、

決意の表情で頷いたー。


「--ああ!きっと、あの子も分かってくれるはずさー」


・・・・・・・・・・・・・


その夜ー

佐奈の姿でバイトを終えた涼平は、

佐奈にLINEを送るー


”明日、話、できるかな?”

とー。


”え?お話?うん。いいよ”

佐奈からも前向きな返事ー。


”親不孝者ー”

両親から言われた言葉を思い出すー。


優しかった両親は変わってしまったー

涼平の”変身”能力に気づいてからー

それを悪用するようになったー


ある日ー

「もう、僕は変身したくない!!!」と

打ち明けた時に

両親から言われた言葉ー


それが”親不孝者ー”


「---」

涼平は、夜空に輝く月を見上げながらー

悲しそうに呟いたー


「佐奈……」


佐奈はーーー

自分を愛してくれているのだろうかー。


それともー

”変身能力”を愛しているのだろうかー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


変身能力を持つことに苦悩する彼氏と、

変身能力を持つ彼氏を持って有頂天になってしまった彼女のお話デス~!

続きは、また今度デス!!

Files

Comments

No comments found for this post.