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人間は、愚かだー。


絶えない争いー

権力闘争ー

綺麗事だらけの正義ー。


権力を手にすることに溺れた宰相ローディスー

かつて、他種族を忌み嫌い、滅ぼしたアクア王国ー。

反姫派の騎士団長ジークやー

己の正義を信じて疑わない他の騎士団長どもー

その裏で貧困に苦しむ民ー。


それだけではないー。

隠密として活動してきた私はー

この世の地獄のような光景を

数え切れぬほど、見て来たー。


人間は、救いようのない愚かな生き物だー。


いつしか私は、人間など滅んでしまえば良い、と

考えるようになったー


闇の帝国に接触を図りー、

私は闇の帝国に情報を伝えるようになったー。


醜いこの世界をー

醜い人間を、消すためにー


全て、消えてしまえばいいー。


・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。アリシア姫の意思を受け継ぎ、戦う決意を固めた。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。エックスの兄。


カイル

アクア王国隠密部隊長。闇の帝国と内通している。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


アクア商会内に侵入した

裏切者の隠密部隊長・カイルがー

和哉や騎士団長ユーリスのほうを見つめるー。


「---周辺の民や商人の避難を」

ユーリスが、アクア商会の兵士に指示を出すと、

兵士たちは、ただちに周辺の人間の避難誘導を始めたー


アクア商会中心部にそびえ立つシンボルとも言える塔を

見つめながらカイルは呟くー


「--ユーリス様…あなたもご存じでしょう?

 この世界は腐っているー。

 理不尽なことだらけー


 争いが、争いを生みー

 人間は、愚かな争いを繰り広げるー

 綺麗事や、平和を願う言葉を口にしながらー

 実際には真逆の行動を繰り返すー。」


覆面で目しか見えないカイルの瞳がー

少しだけ寂しそうに輝くー


和哉はそんなカイルのほうを見ながらー

”この忍も、自分には想像できないような壮絶な過去が

 あったのだろうかー”と、内心で思うー。


「---ああ、そうさー」

騎士団長のユーリスが、剣に炎を纏わせて、カイルの方に向けるー


「--この世界は、理不尽だなんてことは、俺にも分かってるー。

 でもー」


ユーリスはカイルをまっすぐ見つめるー

その瞳に、迷いはないー。


「--それでも、俺は、この世界に生きる人々を少しでも救いたいー。

 全員が笑顔になれるなんて、俺も思ってはいないー


 でもー

 それでもーーー

 ほんの少しだったとしてもー

 この世界を良くできるならー

 この世界に暮らす人を助けることができるならー


 その”少し”のために、命を賭して戦うー!」


ユーリスの言葉に、カイルは笑ったー


「--”希望”の目ー…

 あなたは私のようにー

 この世界の”地獄”を見ていないから、

 そう言えるのだー」


カイルは、そう呟くと、

エナジーの力で、手裏剣を具現化し、その手に持つー。


「---この世界など、救うに値しない!」

カイルが、手裏剣を飛ばすー

ユーリスの剣が、その手裏剣をはじき飛ばすー。


「ーー相手が騎士団長と言えど、

 私は隠密部隊長として、数々の闇を見つめー

 そして、生き抜いてきた」


カイルが、素早い動きでユーリスの攻撃をかわしながら

ユーリスに小刀で攻撃を加えるー。


ユーリスも軽い身のこなしで、それを回避しながら、

炎を纏った剣を振るうー。


カイルが瞬間移動のようにワープするー。


「--ーーユーリス!」

和哉が叫ぶー


ユーリスは「--大丈夫だ!お前も下がってろ!」と叫ぶー。


だが、和哉は引かなかったー。

女体化して、姫の影武者として振舞うことになってー

自分は周囲に支えられ続けているー。


この先ー

闇の帝国と戦いー

洗脳された亜優美を取り戻しー

王国に平和を取り戻すためにはーー

ここで、逃げるわけにはいかないー。


「--ーー」

和哉が、ユーリスとカイルの戦いに加わろうとするー。


だがー

そこにー


「--!」

和哉の前の前に、突然、不気味な水晶玉を持つ少女が姿を現したー


”ソフィア”


亜優美や和哉と同じ世界からやってきた少女ー

元の世界で両親から虐待され続けて、心を閉ざし、餓死寸前だったところー

彼女の持つ”強い恨み”と”絶望”に目をつけた皇帝ゼロが

その能力で和哉たちの世界から”回収”-

亜優美と同じように洗脳し、

”殺戮兵器”に仕立て上げられてしまった小さな少女ー。


両親からの虐待により、強い恨みと怨念を持つ彼女の

エナジーはとても強く、”人を呪い殺す能力”を持っているー。

本物のアリシア姫を仕留めたのも、このソフィアだー。


「--君は…」

和哉は、この”ソフィア”と呼ばれる少女が

元々何という名前だったのかも知らないし、面識もなかったー


けれどー

”亜優美と同じように洗脳されている”

その事実が、和哉の手を止めさせたー。


「-------全部…全部…壊すの」

ソフィアが虚ろな目で呟くー


「やめろ!君は皇帝ゼロに洗脳されているんだー!」

和哉が叫ぶー


本当に小さな少女ー

自分が置かれている状況すらもー

理解できていないかもしれないー


こんな小さな子供までー。


その横で、ユーリスとカイルが激しい火花を散らしているー。


「--くらえ!」

ユーリスが炎の剣を振るうー。


カイルが空中を舞い、それを避け、手裏剣を飛ばすー。

ユーリスがすかさず、炎のバリアを作り、それを防ぐー


「--くくく…私とその子供で、お前たちを全て消し去ってやる!」

カイルが、手裏剣をさらに飛ばしながら笑うー。


アクア商会の会長・アリスを始末すれば、

アリスの能力により、このアクア商会全体に張られているバリアは消えー

魔物がなだれ込むことが可能になるー


「--カイル!お前にだって守りたい人の一人や二人、いるはずだ!

 仲間を裏切ってー、心が痛まないのか!」

ユーリスが剣を振るいながら言うー。


カイルが、側転をして避けると、小刀を構えて言うー。


「---守りたい人の一人や、二人?」

カイルは、覆面越しに笑みを浮かべたー。


「-私が幼いころに、家族はー、全員殺されたよ、盗賊にー」

カイルがユーリスを見つめるー。


ユーリスは、ハッとしたような表情を浮かべるー


「騎士団長様には分からないでしょうなぁ?

 地べたを這いずり、血反吐を吐いてー

 守るべきものも何もなくー

 隠密としてこの世の地獄を見て来たーー

 暗い道を歩んできた私のことなど!」


カイルが小刀で、分身しながらユーリスを襲うー。


カイルには”守るべきもの”すら、存在しないー


ユーリスはカイルの猛攻を防ぎながら、

悲しそうな表情を浮かべるー。


「この世界はー」

攻撃を防御するのがやっとなユーリスを

徹底的に攻撃しながら、カイルが叫ぶー


「--腐っているー。

 故にーー

 滅ぼすしかないー

 人間は愚かだー

 人間は無力だー


 ゴミはーーー

 消してしまうしかーーーー


 ---!?」


カイルが、ユーリスの剣に今まで以上の力を感じて

攻撃の手を緩めるー


「--確かに、人間は愚かかもしれないー


 でもなーー

 だから”滅ぼしてしまえばいい”なんてのはーーー


 そんな考えはーーー

 俺は認めない!」


ユーリスの怒りに呼応して、ユーリスの剣の炎が

強く巻き上がるー。


「--!」

カイルが、瞳を震わせるー


「--お前はーーー

 ただ、、、、

 ただーー

 この世の苦しみから、逃げているだけだーーーー!!!」


ユーリスが強大な炎を纏う剣を振り下ろすー

カイルに炎が直撃して、カイルが吹き飛ばされるー


地面に倒れ込んだまま、ユーリスのほうを見つめるカイルー。


「---」

ユーリスは、炎を纏った剣を振ると、

少しだけ悲しそうに呟いたー


「---”忍者のお兄ちゃん、今日はどこにいるの”-」

ユーリスの言葉に、

カイルが表情を歪めるー


「--よく薬屋にお使いに来てた子がいつもそう言ってたー

 忍者のお兄ちゃん、頑張って、てー

 いつも、俺に会うたびに、そう言ってたー」


ユーリスは言うー

かつて、その子は、夜盗に襲われているときに、

任務中だったカイルが助けた子供なのだとー。

だからー

いつもカイルのことを慕っていたのだとー。


カイルが、ユーリスのほうを見つめながら戸惑いの表情を見せるー。


「---最後にその子に会った時ー

 これを渡されたー」


ユーリスが決して綺麗とは言えない、

お守りのようなものを取り出すー


「”次に忍者のお兄ちゃんに会ったら渡して”って

 そう頼まれたんだー

 ---でもーー

 お前には渡せなかったー。 

 こんなことになってしまったからなー」


「----そんな子供が」

カイルが言葉を絞り出したー。


「----その子はーー

 死んだよー。

 お前たちのー

 闇の帝国の襲撃で、なー」


ユーリスが寂しそうに呟くと、

その子から預かっていたお守りをカイルの方に投げつけるー


それを拾ったカイルが、お守りを手にすると

歯を食いしばるー


「---はは、、、、はははははははは…」

笑いだすカイルー。


ユーリスと和哉ー

そして、ソフィアがそんなカイルのほうを見つめるー。


「---やっぱり、、、やっぱり、、人間は愚かだー。

 そうでしょう?ユーリス様…


 こんなーーーー

 こんな、私のような者のためにーーー」


カイルが歯を食いしばりながら目から少しだけ涙をこぼすー。


そしてー

呟くー


「だからーーー

 全部、消してしまうしかないんだ!!!!」

とー。


「-!」

ユーリスと和哉が表情を歪めた。


「ソフィア!やれ!お前のエナジーで、殺せ!」

カイルが叫ぶー


洗脳されている少女・ソフィアが、

水晶玉にエナジーを注ぎ込むー。


「--アクア王国の会長・アリスを呪い殺せぇえええええええ!」

カイルが大声で叫んだー。


「---!」

和哉がソフィアの水晶玉を見るー

ソフィアの水晶玉にはアクア商会の会長・アリスの顔が映っているー


ソフィアの能力は

一定距離内の相手を、念じることで呪い殺す能力ー。


「--やめろ!やめるんだ!!

 君は、、君は、闇の帝国に操られてるんだぞ!」

和哉がソフィアに向かって叫ぶー


だがー

洗脳される前から心が壊れていた彼女には、

和哉の言葉など届かないー。


「くそっ!」

ユーリスが剣を手に、ソフィアの方に向かうー


「待ってくれ!」

和哉が叫ぶー

ユーリスが立ち止まるー。


「--この子は…」

和哉はユーリスのほうを見つめるー。


ユーリスも皇帝ゼロらとの戦いの際に聞いているー。


このソフィアと名乗る少女は、

和哉と同じ世界から異世界に召喚されて

皇帝ゼロに洗脳され、利用されている哀れな少女ー。


「----君が、どんな辛い思いをしてきたのか、

 俺ははっきりとは知らないー

 でも…」


和哉は、周囲をさっと見渡して、周辺の民は避難したことを

確認すると、自分の口調で叫ぶー。


「--でも、今の君は悪いやつに利用されているだけなんだ!」

和哉が叫ぶー


小さな少女ー

こんな子供まで、洗脳して利用するなんてー

と、怒りすら感じるー


ソフィアは無表情で、怨念を水晶玉に注いでいくー


「--わたしは全てに復讐するー

 すべてを呪い殺してやるー」

ソフィアが感情のない声で呟くー


地面に座り込んだままのカイルが呟くー


「無駄だー

 そいつに何を言っても通じない」


カイルの言葉に、和哉がカイルのほうを見るー


カイルは笑みを浮かべるー

ソフィアをここに

和哉が、ソフィアを攻撃できないことを

カイルは理解していたからだー。


自分の暗殺が失敗しても、

ソフィアを使ってアリスを呪い殺せばよいー。


「--恵まれた環境でー

 何も奪われたことのない、

 お前のような者の言葉は、届かないー」


カイルの言葉に、

和哉は叫ぶー


「----奪われたことのない?

 俺だって、両親を事故で失ったー!


 お前や、この子に比べたら、全然かもしれないけど、

 俺だって、急に違う世界に召喚されて

 しかも急に女の身体になって、

 自分の住む世界も、自分の姿さえも、失ってるんだ!」


和哉はそう叫ぶと、

黙り込んだカイルを無視して、

ソフィアのほうを見つめるー


「頼む!やめてくれ!君だって、人を殺したくなんて、ないだろ!?」

和哉は呼びかけるー


洗脳されたこの少女とー

同じく洗脳されている最愛の彼女・亜優美のことが重なって見えるー


亜優美も、この子もー

全く洗脳が解ける気配がないー


でも、それでもー


「やめるんだ!」

和哉が、ソフィアに駆け寄って、ソフィアを抱きしめるー。


「----!」

ソフィアの瞳がわずかに揺れたー


「---マ………マ…?」


ー!?


和哉がソフィアのほうを見るー

女体化している和哉のことを今、「ママ」とー?


”俺は君のママじゃない”

と言おうとしたが、すぐに和哉は

「そう、、そう、、そうだよ!」と叫んだー。


とにかく、この子の心をー


「----和哉!もう限界だ!」

ユーリスが叫ぶー


ソフィアの持つ水晶玉がどす黒いオーラを放ち始めているー

エナジーの力が高まるのを感じるー


このままでは、アクア商会会長のアリスが呪い殺されてしまうー


ユーリスが武器を構えるー


「待ってくれ!」

和哉が叫ぶー


「もう少しで、もう少しでこの子をーーー」

和哉がソフィアのほうを見つめながら、次の言葉を発しようとした

その時だったー


「-----ーーー!」


馬の走って来る音が聞こえるー


「---!」

和哉とユーリスがそれに気づいて振り返るとー

そこには、騎士団長のひとり…

カイルにそそのかされて王宮陥落のきっかけを作ってしまった

騎士団長…反姫派のジークの姿があったー


「--ジーク!無事だったのか!」

ユーリスが叫ぶー


ジークは和哉とユーリスに目もくれずーーー


「---やめろ!!!」

和哉が叫ぶー


だがー

ジークは馬上からー

ソフィアに剣を突き刺したー


「---ぁ…」

剣がソフィアを貫くー


ソフィアが身体を震わして

水晶玉を落とすー


水晶玉が音を立てて割れてー

闇のエナジーが霧散していくーーー

呪いの力はーー

発動されることなく、そのまま消滅したー


「-----…いたい…よぅ…」

最後に正気に戻ったソフィアは、それだけ呟くと、

そのまま崩れ落ちるようにして、その場に倒れたー。


「----」

ジークが剣を振り、馬から降りるー


「---なんで…どうして…」

和哉が呟くー


この子を、救い出すことができたかもしれないのにー


「---俺がやらねばー…

 アクア商会会長のアリス様は呪い殺されていたー

 それだけのことだ」

ジークはそれだけ言うと、カイルがいた場所を見つめるー


カイルは既に、逃亡していたー。


「----………許してもらえるとは思っていない」

ジークが和哉とユーリスのほうを見つめるー。


ジークは、カイルにそそのかされて、

アリシア姫が偽物と知り、女体化して姫として振舞っている

和哉を問い詰めるために兵を集めー

その結果、王国の警備に隙を作りー

王宮は陥落してしまったー。


炎の中、消息不明になっていたものの、

ジークはこうして無事、アクア商会に駆け付けたのだったー


「----お前……どうして」

和哉がジークを睨むー


ジークが和哉を見つめるー


「--ーー恨みたければ恨めー」

それだけ呟くと、ジークはユーリスのほうを見たー。


ユーリスの方に近づいていくと、ジークは何やらユーリスと

話し始めるー


ユーリスはジークと話しながら複雑そうな表情で、

ソフィアの亡骸の前で手を合わせる和哉のほうを見つめたー



㉛へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今年最初の女体化X異世界転生長編でした~!

最終決戦に向けて、物語進行中デス~!


今日もありがとうございました!


明日は入れ替わりモノ「揺れるトライアングル③」の予定デス~


(Fanbox)


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