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2021年ー

新年あけましておめでとうございますムードの漂う中ー、

男は一人、自宅で期限切れ間近のマカロニサラダを口に運んでいたー。


島袋 剛三郎(しまぶくろ ごうざぶろう)。

42歳独身ー。

恋愛経験は、なし。

風俗店に通った経験もなく、

正真正銘の童貞である。


剛三郎には、お正月も何も、関係なかった。

今日もいつものように、安い飯を食い、

フリーのアダルトゲームを遊び、

ネットで、何気ないリプのやり取りをして、

そして、寝るー。


そういう1日を、過ごすつもりだったー


マカロニサラダを食べ終えると、

バイト先のコンビニで譲って貰った

売れ残りのまずいジュースを飲むー。


そうこうしているうちに、既にお昼ー。


彼は別に、自分の”人生”を悔いてはいないー。

今もそれなりに楽しい人生だし、

童貞だとか、なんだとか、そんなことも、剛三郎にとっては

どうでもよかったー。


「--ん?」

ネット上までも、”あけましておめでとうムード”


新年なんざどうでもいいー

西暦という名の数字の羅列に+1するだけの

簡単な足し算に、人間はなぜこんなにも浮かれているのだろう。


そんな風に思いながら

ネットを眺めていた剛三郎は目をとめたー。


”童貞が習得できる魔法一覧”という怪しげなサイトへのリンクつきツイートを

見つけた剛三郎ー。


「明らかにあやしすぎるだろ…」

そんな風に呟きながらも、なんとなく気になった剛三郎はー

そのサイトを開いてみるー。


どうせこのパソコンも既にボロくなってきていたし、

もしウイルスに感染したり、壊れたりしたら

ネットで安い中古のノートパソコンでも買えばよかろうなのだ、と

思いつつ、彼は、”童貞が習得できる魔法一覧”というサイトを見つめてみたー


「ははは、くだらねぇ」

剛三郎は思わず笑うー


魔法がずらりと並べられていて、

効果と「習得レベル」が書かれているー

その横には「購入金額」-。


くだらない詐欺サイトか何かだろうか。

それとも、RPGゲームか何かの魔法にでも憧れた

RPGキッズが作ったお遊びサイトだろうかー。


そんな風に思いながら、剛三郎はそのサイトを閉じる。


「---そういや、童貞が魔法使いになるとか

 そんなくだらねぇ話もあったな」


どうせヒマだし、と思いながら

”童貞 魔法使い”と検索してみる剛三郎ー。


他愛のないやり取りやー

定番のやり取りがネット上に並んでいるー


退屈そうにそれらを見つめる剛三郎ー。


だがーーーー


”40歳まで童貞でいると、

 ”お年玉をあげた相手の身体に憑依できる”ってすごくね?”


”40お年玉憑依、僕も達成しましたぁ~”


”これがこの世のバグか。

 なんで40歳童貞がお年玉上げると、

 上げた金額に応じて憑依できるんだろうな?”


”神様がこの世界をアプデしちゃう前に

 憑依しまくれぇ~”


「----……んん?」

剛三郎は、童貞 魔法使いと検索した結果

出てきた情報の数々に、少し興味を抱いたー


”40歳を超えた童貞男が、お年玉をあげて、

 その相手がお年玉の封を開く前に、自分が寝ると、

 ”お憑依”という魔法が発動する”


と、いう情報が

ネット上に溢れていたのだー。


「な~にがお憑依だ!」

剛三郎はあきれ顔でそう叫ぶと、

昨日賞味期限が切れてしまった納豆を冷蔵庫から取り出し、

それをインスタントの味噌汁に放り込んで

飲み始めるー。


だが、言葉とは裏腹に剛三郎は、いつの間にか

「お憑依」のことを調べ始めていた。


「童貞だからって魔法なんざ使えるわけねぇだろ。

 もし童貞のままいたら魔法が使えるなら

 この世は今頃メリーポッターみたいな世界になってるぜ」


剛三郎は、”この世界”での人気映画の名前を口にすると、

自虐的に笑みを浮かべたー


「-----」

だがー

見れば見るほど、”お憑依”に興味を持ってしまうー。


40歳以上の童貞が、お年玉をあげて、

その相手がお年玉を開封する前に、自分が寝ることで

”お憑依”が発動できるのだと言うー。


お憑依の時間は、お年玉の金額に比例するのだとか。


1000円なら、10分

1万円なら、100分ーー


1000円ごとに、10分の憑依時間が手に入るらしいー。


「---仮に本当だとしても」

剛三郎が呟くー


仮に本当だとしても、なかなかのコスパの悪さだ、と

そう思ったのだ。


10分1000円で他人の身体を好き放題できるー。

そう、考えるとー

高いような、安いようなー


「------」

剛三郎は腕組みをして考えるー


そもそも、自分にお年玉をあげるような子がーーー


いやーーー

いるーーーーー。


弟夫婦の

子供ーーーー


剛三郎の弟・信一郎(しんいちろう)は、既に結婚していて

子供もいるー


剛三郎が42歳で、

信一郎が38歳ー

信一郎の娘・美紗(みさ)は、今たしか、中学3年だか、高校1年だったはずー


その子に毎年、”おじさん”としてお年玉を

渡していることを思い出したのだー


「---……ゴクリ」

美紗は、結構可愛かったー。

特に中学に入ってから急激に可愛らしくなったのを覚えているー。


美紗のことを思い浮かべる剛三郎ー。

弟の娘に憑依して好き放題するー?


ゴクリ

ゴクリ

ゴクリ


唾を繰り返し繰り返し飲みまくるー


剛三郎は机を叩いたー


「試してみるか!お憑依!」

とー。


仮に”お憑依”がただの都市伝説的なものだったとしてもー

”リスク”は低いー


お憑依の発動条件は、

40歳以上童貞が、お年玉を相手に渡し

相手が開封する前に、自分が寝ることー

寝る前に”お憑依”と書いた紙を枕元に置くと、

効果が確実に出るー、のだとか。


つまり、もし失敗したとしても、

ただ単に”お年玉を渡した”というだけで

何にも剛三郎にとってのデメリットは

そこには存在しないー


元々、お年玉をあげるつもりなのだからー。


”お憑依の都市伝説まとめ”

などというサイトまで存在していたー


だが、イマイチ

”リアル”の話なのか

”都市伝説”なのか、剛三郎には判断できないー


いやー

分かっているー

どうせ枕元にお憑依と書いて寝たとしても、

憑依なんざできやしないのだー。


「------相手が開封する前にって条件だけ

 ちょっと厄介だな」


そう思いつつも、剛三郎は、バイクを走らせたー

弟・信一郎が住むマンションに向かってー。


”に、してもー

 兄である俺が”三郎”で、弟が”一郎”ってどういうことだよ”


剛三郎は、小さいころから疑問に思っていることを

考えながらー

弟家族の元へ向かったー


「お、兄貴、早いじゃないか?

 いつも4日とか5日なのに?」

弟・信一郎が笑いながら言うー。

信一郎の妻・加奈子(かなこ)と、あいさつを交わす剛三郎ー。


この加奈子もーーー

剛三郎の前では何も言わないが

剛三郎には分かっているー


”目”が笑っていないー

きっと、夫である信一郎の兄だからと気を遣っているだけで、

内心は、”キモイ”とか思ってるんだろうなー。


そんな風に思いながら剛三郎は、新年のあいさつと、

近くの居酒屋で買ったおみやげを渡しー


そしてー


”ゴクリ”


”3000円”が入ったお年玉をーーー

弟の娘の、美紗に渡すー


「ありがとうございます!」

美紗が嬉しそうに微笑んだー


この子もきっと、俺のことをキモイと思ってるんだろうな、と

思いながら、剛三郎は、美紗がお年玉を開封しようとしていることに気づくー


「あ、中身は3000円だから!少なくて悪いね!」

剛三郎が言うと、

「--あ、いえいえ~!ありがとうございます~!」と美紗が微笑むー


中身の金額を知ったからか、美紗はお年玉の袋を開封せずに、

自分の机の中にしまったー


”へへ”

剛三郎はそう思いながら1時間ちょっと、

弟の信一郎や、その妻・加奈子、娘の美紗と

他愛のない雑談をしたー。


「---」

剛三郎は信一郎と雑談しながら思うー。


昔は信一郎も「兄貴もいい人が見つかるといいな!」などと

言っていたのだが

最近は何も言わなくなったー


年齢的にもう、結婚する気はない、と理解したのだろうー。


弟・信一郎が結婚して、子供を持っていることに

嫉妬の気持ちは全くないー。

剛三郎は、結婚に夢を何も持っていないからだ。

彼女を作る気も、小さいころかなかったし

今の人生も、これで良い、と剛三郎は思っているー


その”おかげ”もあってー

剛三郎と信一郎自体の関係は良好だったー。


”もしも俺が、弟の結婚に嫉妬するタイプだったら、やばかっただろうな”

剛三郎はそんな風に思いながら

信一郎との雑談を終えると、

挨拶して、信一郎の家から立ち去りー


自宅に舞い戻ったー


「--へへへっ!へへへっ!」


靴を放り投げて

手洗いうがいも忘れてー

靴を放り投げて、

トランクス一丁の姿になると

広告の切れ端に、汚い字で「お憑依」と書いたー


お憑依と書かれた紙を枕元に置いて

早速剛三郎は布団に潜り込むー


「へへへへ、へへへへへへへへへ!」

恋愛や、結婚に剛三郎は興味はなかったが、

身体には興味があったー


憑依や入れ替わりー

そういう物語を見たりすると興奮したりするー。


それが、現実に出来るとなればー

試すしかなかったー


「---……」

剛三郎のドキドキが最高潮に達するー


もしもー

「童貞の魔法・お憑依」が都市伝説ではなく、

現実だとしたらー


そんな風に思ってしまうと、眠れないー

眠れないー


”早くーー

 早く寝るんだ!!俺ぇええええええええ!!!”


わくわくしてしまうと眠れないー

そんな状況に陥ってしまった剛三郎は、

起き上がると「副作用で眠気が現れることがあります」と書かれた

アレルギー薬を飲んで、布団に潜り込んだー。


そしてーー


zzzzzzz…

剛三郎がいびきをかき始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・


「---うっ!」


ーー!?


剛三郎の意識が急激に戻ったー


変な声がしたー

ビクンと身体が震えたー


剛三郎がーー

周囲を見渡すとー

そこはー

見慣れないー

可愛らしい小物が置かれた部屋だったー。


「え…これって…」

剛三郎がそう呟くと、口から出たのは

剛三郎の重く、低い声ではなくー

可愛らしい、明るい声ー


「えっ……」

周囲を見渡してー

鏡を見つめると

そこにはー

信一郎の娘・美紗の姿がーーー


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!?!?

 すっげえええええええええええええええええええ!!!」

男モード全開で大声で叫んでしまう美紗ー


”お憑依”は都市伝説などではなかったー

お憑依は本物だったー


「うおおおおっ!!

 うおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」


あまりの歓喜に奇声をあげてしまう美紗ー


「--どうした!?」

父親ーー

剛三郎にとっては弟の信一郎が部屋をノックしながら叫ぶー


「---あ、いやいや、なんでもねぇよ、信一ろ、、、

 じゃねぇ、、、

 おとーさん!なんでもないよ~!」


可愛らしく言う美紗ー


「--そっ、そっか。なら良かったー」

それだけ言うと、信一郎は部屋を覗くことなく、

そのまま立ち去って行ったー


年頃の娘に対する配慮、というやつだろうー


「へへへ、、へへへへへへへっ」

美紗は下品な笑みを浮かべるとー

「美紗ちゃんに渡したのはー3000円だから、

 お憑依の情報が正しいとすればー

 30分憑依できるってわけだなー」


と、呟いたー


美紗は時計を見つめるー


そしてー

立ち上がると「最高の30分の始まりだぜ」と、

唇をペロリと舐めながら、美紗が笑みを浮かべたー


②へ続く


・・・・・・・・・・・


コメント


「むみょトーク」でもご挨拶しましたが

改めてあけましておめでとうございます~


今年も色々な作品をお届けできるように、

頑張ります!!

よろしくお願いします☆!


新年、ということでお年玉ネタの憑依モノを今年最初に書いてみました!!


現実では「お憑依」はできないと思うので、真似しないでくださいネ!笑


今日もありがとうございました~!


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