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テーブルに座る家族4人ー

光輝は、緊張して、喉がカラカラになっていたー。

コップに水を入れて、それを飲み、喉を潤すー。


緊迫した空気ー。


「--金曜日の晩御飯に、スープがあったでしょ?

 あれの中に、これを混ぜたの」

母・美佐江の衝撃的な激白ー


父・典之と、妹・遥香が入れ替わってしまったのはー

母である美佐江が、晩御飯のスープに

入れ替わり薬を混ぜたことによるものー。


母の美佐江が自らそう激白したのだー。


「---……ど、、どうして、わたしとお父さんを入れ替えたの…?」

典之(遥香)が言うー。


目には涙が浮かんでいるー


「----」

光輝は、”親父の身体で目に涙を浮かべられると、

どうにも違和感がすごいな…”と思いながら

母・美佐江の返事を待ったー。


「----」

遥香(典之)は落ち着かない様子で、美佐江を見つめるー


何故、夫である典之と、娘である遥香を

”入れ替えよう”と思ったのかー


「---事故よー」

美佐江は、そう口にした。


「事故?」

遥香(典之)が表情を歪めるー。


「本当は、あなたと遥香を入れ替えようとしたんじゃない」

美佐江が言う。


「---じ、じゃあ、いったい何を?」

光輝が、口の渇きを気にしながらようやく口を挟むと、

美佐江は”遥香”の身体のほうを見たー。


「--わたしと、遥香を入れ替えようとしたのー」

母・美佐江の言葉に、

典之(遥香)は「えっ!?」と声を上げるー。


「--わたしのスープと、遥香のスープに

 ”入れ替わり薬”を混ぜたのー。


 でもー」


美佐江が、目を瞑りながら当時を思い出すー。


家族が揃ってご飯を食べる食卓ー

美佐江の席の前と、遥香の席の前に

”入れ替わり薬”入りのスープが

並べられていたー


だがー


「--あ、それも持って行って~!

 ありがと!」

美佐江が言うー。


当時ー

晩御飯の支度を、光輝が手伝っていたー


そして、その最中ー


「--やべっ!テーブルが埋まりそうだなぁ~」

光輝は、そんな風に呟きながらー


テーブルにおかずや、サラダを全部置けるようーーー

スープの入った皿を一旦移動させー、

テーブルの上に、おかずの入った食器を並べたー


その際にー

意図せず、美佐江の席の前にあったスープと

父・典之の席の前にあったスープが

”入れ替わって”しまったー。


その結果ー

入れ替わり薬入りのスープを飲んでしまったのはー

父・典之と、遥香ー。

だからー

二人は入れ替わってしまったのだー


美佐江は、そのことを知らずにいたため、

”翌朝になれば、遥香になれる”と思っていたー。


だからー翌朝、

美佐江も驚いたー。


自分が遥香と入れ替わるはずだったのに、

典之が、遥香と入れ替わってしまっていたからだー。


「---こんなはずじゃなかったの…」

美佐江が、片手で頭を押さえて呟くー。


「わたしが、遥香になるはずだったの…」

とー。


「-----」

遥香(典之)は、腕を組んで、いつの間にか

イスに座る姿勢も、親父臭くなっているー。


「-----」

典之(遥香)は今にも泣きそうな表情で

母の美佐江を見つめているー。


父親と入れ替わってしまった、今、この状況が

あろうことか、母親に仕組まれていたものなんて…と、

信じられない様子で、典之(遥香)は

美佐江のほうを見つめるー。


空気がさらに重苦しくなるー。


遥香(典之)は、何かブツブツ独り言を言っているー

見た目は遥香で可愛らしいのだが、

下手をすれば”妻”の裏切りに急に怒鳴り声を

上げたとしても、おかしくはない-。


その、重い空気をなんとか打ち破ろうと、

光輝が口を開くー


「母さん…どうして、そんなことを…?」

光輝の言葉に、美佐江が光輝のほうを見るー


「どうして、遥香と入れ替わろうだなんて…?」

光輝の言葉に、

美佐江は「きっと、みんなは笑うでしょうね…」と

呟いてから、”真意”を話したー


「--わたしは…綺麗でいたかった…」

とー。


「--え」

光輝が首を傾げるー。


「--わたしは…いつまでも綺麗でいたかった…

 若くなりたかったー…」

美佐江が、悔しそうにそう呟くと、

夫である典之ー

今は遥香になっている典之に対して言い放つー。


「--あなたは…昔はわたしのこと、綺麗とか

 かわいいとか言ってくれていたけど、

 今は全然言ってくれなくなったしー

 

 いつもいつも遥香のことばかりだし、

 テレビで芸能人を見れば綺麗とか、かわいいばっかり…」


美佐江の言葉に

遥香(典之)は「美佐江…」と、戸惑いながら呟くー


「それとー」

美佐江が今度は典之(遥香)のほうを見るー


「遥香は若くて、どんどん可愛くなっていくしー

 色々なおしゃれも出来てー

 この前も友達に「かわいい」って言われててー

 わたし…

 母親として失格だと思うケド、

 あなたに嫉妬して…」


美佐江の言葉に

典之(遥香)は戸惑っているー


「---毎日毎日”綺麗になる方法”

 ”若くなる方法”

 そんなことばっかり検索してたのー


 そして、見つけたのー

 この”入れ替わり薬”をー」


美佐江の言葉に、

沈黙する家族ー


光輝は、さっきから緊張で、喉が何度も何度も

乾いてしまって、しきりにお茶を口に運んでいる。

お茶を飲まずにはいられないー。

そんな状況になってしまっていた。


遥香(典之)も戸惑いを隠せないー。

貧乏ゆすりをして、髪をくしゃくしゃとかきむしっているー


典之(遥香)は泣いているー。


そんな家族を見つめて、美佐江は

「本当にごめんなさい。

 わたしは、年齢をいくつ重ねてもー

 子供のままだった…ってことね」と、

頭を下げたー。


母・美佐江はいつも冷静でクールな印象だったー。

少なくとも、息子である光輝はそう思っていたー


だが、実際にはそうではなくー

美佐江は、いつまでも少女のような、

そんな心を持ち続けていて、

その呪縛からー

美や若さへの想いという呪縛から

抜け出せずにいたのだったー。


「----」

「----」

「----」

典之(遥香)の泣き声だけが

リビングに響き渡るー。


傍から見れば、家族が集まって

何故か父親だけが泣いている異様な光景ー。


遥香(典之)は、頭をボリボリかきむしるとー

ようやくー

口を開いた。


「----それで、元に戻ることは、できるのか?」

とー。


低い声だったー

遥香の身体から、こんな低い声が出ているのかー

と、そんな風に思いながらー。


「----ええ」

美佐江は、入れ替わり薬の入った容器を机の上に置いた。


「--これを二人で飲めば、

 明日の朝には、元に戻れるわ」

とー。


「----」

遥香(典之)は「そうか」だけ呟くと、

立ち上がった。


遥香の顔が、怒りの形相に染まっているー

普段の遥香が見せないような凄みのある形相ー


遥香(典之)が美佐江の座る席に近づいていくー


典之(遥香)は泣いたままー


光輝が「と、父さん!」と叫ぶー。

遥香(典之)が、美佐江を殴るー。

そう、思ったからだー。


しかしー


遥香(典之)は、その、小柄な身体でー

美佐江を抱きしめたー。


「---!?」

光輝が、

母と娘(の身体)が抱き合っている光景を見て

表情を歪めるー


”何が起きたんだ!?”という表情ー


「すまんな美佐江」

遥香(典之)が、美佐江を抱きしめたままそう呟くー


「お前の、悩みに気づいてやれなくてー。

 俺は今でもお前が大好きだし、

 たとえお前がおばあさんになっても

 俺は、美佐江が一番好きだー」


遥香(典之)は、遥香の声でそう呟くと

美佐江は「ごめんなさいごめんなさい」と何度もつぶやいたー


光輝は

両親のそういう光景を見せられた上に

父・典之の身体が遥香のままであることに、

苦笑いしながらー、

典之(遥香)の肩を叩き、

一旦、リビングから退出しよう、と促したー。


30分ぐらい経過しただろうかー。

遥香(典之)が、別室に移動した、

光輝と典之(遥香)を呼び出しに来たー。


「色々巻き込んですまなかったな…

 …やっと、元に戻れからー…

 下に降りてきてくれ」

と、遥香(典之)が申し訳なさそうに言ったー


「---もう…こんな身体こりごり!」

典之(遥香)は泣き止んで、そう呟くと、

父に促されて、1階のリビングに向かったー


光輝もそれについていくー。


母の美佐江は、いつものように

穏やかな雰囲気を取り戻していた。


入れ替わり薬の入った容器が

机の上に置かれているー。


「--これを飲めば、元に戻れるんだよね?」

典之(遥香)が言うと、

美佐江は、「ええ…そうよ」と頷いた。


「----」

典之(遥香)が不安そうな表情を浮かべているー。


それに気づいた美佐江は

「…ごめんね。もう、遥香の身体を奪おうなんて

 考えないからー」

と、入れ替わり薬の容器を手に取ると、

近くに用意していたコップに、少量ずつ、

それを入れたー。


そしてー

残りの入れ替わり薬をーー

流し台に持っていきー

家族の目の前でそれを流したー。


「--もうこれで、わたしが入れ替わることはできないー

 安心してー」

美佐江が少しだけ微笑むー。


入れ替わり薬は、2つのコップの中に入れられたものだけー。


これを遥香(典之)と典之(遥香)が飲めばー、

入れ替わり薬は、無くなるー。


「---(ちょっと残念だなぁ…遥香の身体、きもちよかったなぁ…)」

遥香(典之)が、内心でそう考えるー


遥香の下心を浮かべた表情に、光輝が気づいて

何も言わず「(おい、親父、ダメだダメだ)」と首を振ると、

遥香(典之)もそれに気づいて、目で”わかってるよ、元に戻る”と

合図をしたー。


「--あ~~もう、やっと元に戻れる!」

そう叫びながら、典之(遥香)が、コップに手を掛けるー


その時ー


「あっ!!!」

典之(遥香)が入れ替わり薬の入ったコップを倒して、

こぼしてしまうー


「ちょ!?何やってるんだよ!?」

光輝が慌てて、雑巾を持ってくると

美佐江も「ちょっとちょっと」と、戸惑っているー


「ご、、ごめん!つい…」

典之(遥香)が苦笑いするー。


「--もう、これしかないんだからね」

美佐江が苦笑いしながら、もう一つのコップの

入れ替わり薬を半分ずつにするー。


”少量でも入れ替われるらしいから、大丈夫だけど”と、

呟くと、改めてふたりは、

入れ替わり薬を飲みほしたー


飲み終えた典之(遥香)と

遥香(典之)-


美佐江が呟くー


「これで、明日の朝になれば、元通りだからー」

と。


そして、改めて頭を下げた。


「みんな、迷惑かけて、本当にごめんなさいー」

とー。


光輝も、典之(遥香)も、遥香(典之)も、

少しだけ安心した様子で、安堵の笑みを浮かべたー。


入れ替わり薬は完全に全部なくなりー、

購入したサイトも既に閉鎖、

美佐江は「もう入れ替わろうとしないから、安心して」と

穏やかな笑みを浮かべたー


光輝は、部屋に戻りながら思うー


「あ~…土日がつぶれた…」

と…。


とほほ、と思いながら部屋に戻りー

”今日はなんだか疲れた”と、

ベットで眠りにつくのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


家族の悲鳴が響き渡るー


「えっ…!?!?!?」

「うああああああああ」

「そ、、そんな!?」

「なんだこれは!?!?」


リビングで集合した家族が、

お互いを指さしあっているー。


いったい、何が起きたのかー。


長男・光輝が、妹の遥香の身体にー

長女・遥香が、母親の美佐江の身体にー

母・美佐江が、父・典之の身体にー

父・典之が、長男の光輝の身体にーー


「え…なんで、、どうして!?!?」

戸惑う美佐江(遥香)-


「も、もしかしてー」

典之(美佐江)が呟くー


”昨日、入れ替わり薬をこぼして、

 家族全員”手で触れたから”-?”


とー。


「えええええええええええええええ!?!?!?」


月曜日の朝ー。


本当の修羅場が、始まろうとしていたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


家族をテーマにした入れ替わりモノでした~!

最後は集団入れ替わりオチに…☆


お読み下さりありがとうございました!!





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