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男子高校生の月岡 祐平(つきおか ゆうへい)は、

カレンダーを見つめるー。


今日は11月20日ー。


”1か月前”の10月20日に×印がつけられているー。


忘れもしない、”あの日ー”


机の上には、写真が飾られている。

祐平と、幼馴染でもあり、彼女でも”あった”

里内 詩織(さとうち しおり)が一緒に写っている写真ー


”祐平の彼女になるなんて、小さいころは夢にも思わなかったなぁ~”


優しくてー

時にお姉さんみたいでー

何事にも一生懸命な詩織ー


けれどー

そんな”詩織”はもういないー


1か月前ー

詩織は”豹変”したのだー


昼休みー


”先生から呼ばれてるから、ちょっと理科室に行ってくるね”


と、微笑みながら言っていた詩織ー


それが、”本当の”詩織と交わした最後の言葉ー。


昼休みが終わり間際になっても、

詩織が戻ってこないため、なんとなく心配になって理科室に

駆け付けた祐平が見たものはー


”謎の霊魂のようなもの”が、詩織の口から中に入っていく場面だったー。


詩織は不気味に微笑んだー

胸を揉み、髪を触り、

「女の身体げっと~」と笑ったー。


そして、理科室の入口から唖然としながら見ていた祐平のほうを

振り返った詩織は、確かに言ったー。

”憑依の瞬間、見られちまったか”とー。


その日から、詩織は豹変してしまったー

学校での態度も、自宅での態度も、何もかも変わり、

派手になり、祐平を避けるようになりー

やがて不良生徒と付き合い始めてー


あれから1か月が経った現在ー

詩織は”まるで別人”のようになってしまったー。


もうー

祐平が知る、詩織は、いないー。


”憑依ー”

詩織は、そう言ったー


「詩織ー」

祐平が悲しそうに呟くー。


「----」

教室の恥の方で、柄の悪い生徒たちと、

詩織がげらげら笑いながらしゃべっているー。

祐平のほうをたまに、チラチラと見つめながらー

金髪にピアス、派手なメイク、見えてしまいそうなほど短いスカート…


もはや、詩織じゃないー


「---何よ、、文句あんの?」

詩織が近づいてきて、ガムを噛みながら笑うー。


「--ぼ、、ぼ、、、僕は…」

元々気弱な祐平はーーー

何も言えなくなってしまうー。


豹変した詩織と”まともに会話すること”すらできないー。


「-ーーぼ、、ぼ、、ぼ、、僕はぁ~~~?」

馬鹿にした笑みを浮かべながら揶揄う詩織ー


「ぎゃははははははは!!!うっざ!」

廊下の真ん中を笑いながら堂々と歩く詩織ー


「おら!どけよ!」

道を阻む他の生徒に怒鳴り声をあげながら詩織が廊下を歩いていくー。


「---詩織…ごめん」

祐平は涙を流すー


”僕は無力だー”

祐平は、詩織に何もしてやることができないー

”憑依される瞬間”を見たのにー

”何かに乗っ取られていること”は分かっているのにー。


そしてー

その3日後ー

詩織は、”死んだー”


近くの川から水死体となって発見されたのだー

証言によれば、地元のワルたちとつるんでいる姿が

直前に目撃されていて、”殺人”の可能性が高いと、

警察は捜査を始めていたー。


「-------」

祐平は、失意にどん底にいたー


”わたし、優しい祐平が、大好きだよー”


詩織の笑顔を思い出すー。

もう、その詩織はいないー。


気づいたときには、祐平は、自宅から30分ほどの

山中にやってきていたー。


”もうーいいや”

なんだか、そんな風に思ってしまったー


詩織が憑依されてー

詩織がどんどん変わっていってー

挙句の果てに、事件に巻き込まれて死んでしまったー。


「--僕も、、、死んじゃおっかな…」

そんな風に呟きながら、山の奥へ、奥へ向かう祐平ー


その時だったー


「---!」

山奥にあるはずのない、謎の光を見つける祐平ー


(夜の山に、光…?)

街灯だとか、誰かの懐中電灯だとか、そんなレベルではない。

もっと、明るくー

鋭い光ー。


「---!」

その光の方向に向かうと、祐平は驚いたー


”光の渦”のようなものがそこにはあったのだー

言葉でイメージするのであれば

”小さなブラックホール”のようなものが、白い輝きを発しているような、

そんな状態だ。


「--これは…?」

祐平がその渦に触れてみようとすると、

自分の手が吸い込まれー


「-え!?」

慌てて手を引き戻そうとしたその瞬間、

祐平はその光の渦に吸い込まれてしまったー


「うわああああああああああああああ!!!」

見たこともないような空間に飛ばされる祐平ー


”な、、なんだこれ…!?”と思うのがやっとー

そして、次の瞬間、祐平はさらに激しい光に包まれー

衝撃を感じーーーー


「--ねぇ、、、ねぇってば!!!」


「--え」

祐平が虚ろな目で周囲を見渡すー


「ねぇ~~!!!祐平!!寝てるの~???」


”起きてますか~?”と言わんばかりに

祐平の目の前で手を振るのはーーー


「--え」

祐平は驚くー

祐平の目の前で、意識があるかどうか確認するような

手の振り方をしていたのはー

彼女の、詩織だったー。


”憑依される前”の

優しい詩織ー


「--え…し、、詩織…!?」

祐平が驚くー


「あ、、、そ、、そっか」

祐平は笑ったー


詩織は憑依された。

詩織は死んだー。


その詩織がいる、ということは、

ここは”天国”なのだろう、と。


「---僕、死んだんだね」

祐平が悲しそうに笑うー


「-----へ?」

詩織は

表情で祐平のほうを見る。


「---でも、詩織とまた会えてよかった」

祐平が嬉しそうに言うと、

詩織が突然笑いだしたー


憑依されたあとの”ぎゃはははは”みたいな笑いではなく、

穏やかで、優しい微笑みー。


「--祐平ったら、寝ぼけてるの?

 今、昼休みでしょ~?」


詩織が言う。


「え…」

祐平が周囲を見渡すと、

そこは”いつも通り”の図書室だったー。


とても、”あの世”には見えないー


「え、、で、、でも、詩織、、一昨日、、、

 事故で、、、」


祐平は”詩織は2日前に水死体で見つかって”と

説明するー


「--ちょっと~!?勝手に殺さないで!?」

詩織が苦笑いしながら言うー。


「え…で、、でも」

祐平が、スマホを起動するー

スマホのニュースを詩織に見せーーーー


「--!?!?」

祐平は手を止めたー


スマホに表示されている数字を見てーー

唖然とするー


「10月19日…?」

祐平は震えていたー。


今日はー11月25日だったはずなのだー。


「---大丈夫?」

”寝ぼけてるにしては様子がおかしい”

そう思った詩織が不思議そうに言う。


「---え…あ、、、き、今日って…」

祐平が言うと

詩織はほほ笑んだー


「10月19日の昼休み。

 さっきまで普通にしてたのに、急にどうしたの?」


と、優しく首を傾げたー。


「---え、、あ、、、え、、うん」

祐平は、スマホをしまうと考えるー


10月19日ー

詩織が憑依される前日ー

もう、1か月以上前のことで、

詩織が憑依されたあとのことのインパクトが

強すぎて、よく覚えていないが

確かに図書室で何か一緒にしてた気がするー


「あ!、もう昼休み終わっちゃう!教室に戻ろ!」

詩織が笑いながら言うー。


「うん」と答える祐平ー


廊下を歩きながら、祐平は思うー。

”どういうこと…?”とー。


これがあの世じゃないって言うならー

僕はーーー


”タイムスリップ”

したーー????


詩織が憑依される前日にーー?


「--」

祐平は、廊下で理科の先生・本庄 竜太郎(ほんじょう りゅうたろう)と

すれ違い、無意識のうちに頭を下げるー


本庄先生は、研究者を目指していたものの挫折し、

理科の教師になったという異色の経歴の持ち主だー。


教室に戻ると

「今日も詩織ちゃんとイチャイチャしてたのか~?」と

親友の重倉 和馬(しげくら かずま)が茶化してくるー


「い、いちゃいちゃはしてないよ」

祐平が苦笑いしながら言うー。


いつもの光景ー

”詩織が憑依される前”の穏やかな日常ー


「--ほんと、仲良さそうでうらやましいなぁ」

祐平の隣の座席の女子生徒、

生徒会書記の深森 瑠菜(ふかもり るな)が、声を掛けて来るー

超がつくほど頭が良い一方で、計算高い性格の持ち主ー。


「え、、、あ、、そ、そうかなぁ」

祐平は照れ臭そうにしながらそう答えたー。


そしてー

瑠菜から目を逸らすと、真剣な表情を浮かべたー


”今日が10月19日だとするならーーー

 詩織は、明日、憑依されるーーーー?????”


・・・・・・・・・・・・・・


10月20日ー

詩織が憑依される日ー。


祐平は確信したー。


「僕はタイムスリップした」

とー。


10月20日ー

昼休みに詩織が理科室で憑依されるー


そこから始まる詩織の豹変ー


11月23日ー

詩織の水死体が発見されるー

地元のワルたちと直前に行動していた目撃情報ありー。


11月25日ー

祐平が、山中で光の渦を発見し、それに飲み込まれるー


そしてー

今は再び10月20日ー


「---」

祐平は、朝から教室の様子を慎重に見回していたー


元々の10月19日の出来事を完全に覚えているわけではないが、

やはり”前の10月19日”と基本的には同じことが起きていた気がしたー

どこか、見覚えのある場面や出来事が多かったのだー


ちょうど、昨日、不登校気味になっていた、芦沢(あしざわ)という

生徒が、退学届けを出しに来ていて、退学になったー。

それを、祐平はよく覚えていたし、

”前の10月19日”と”今回の10月19日”は同じだったー。


と、いうことはーーー


昼休みになるー

「先生から呼ばれてるから、ちょっと理科室に行ってくるね」


詩織が微笑むー


「だめだ!」

祐平は叫んだー


「え?」

詩織が戸惑うー


祐平は確信したー


何でかは分からないけどー

僕がー

僕がタイムスリップしたのはきっとー

”詩織を助ける”ためー。


「---とにかく、だめなんだ!」

祐平は、そう叫ぶと詩織を置いて、理科室に走ったー


あの日ー

理科室に向かった詩織が謎の霊魂に憑依されたー


事件は、理科室で起きたー


”本庄先生が、何か知っているのかー?”


祐平は、理科の先生・本庄 竜太郎の姿を思い浮かべるー。


理科の先生に呼ばれて、詩織が理科室に行きー

そこで、憑依されたー


と、いうことはー


「---!」

理科室に入る祐平ー。


だが、理科室には誰もいないー。


「----ほ、本条先生はいらっしゃいますか?」

祐平はそう声をだしながら、理科準備室のほうを見るー。


だがー

本条先生はいないー


誰もいない理科室ー。


「------」

時計の音だけが、不気味に鳴り響くー。


そしてーーー

ついに、理科室に誰も来ることはなかったー


昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴り響くー。


「---!(出来事が、変わったー?)」

祐平は表情を歪めたー


詩織は”昼休み中”に確実に憑依されていたー

憑依された詩織が、笑いながら立ち去っていったあとにー

チャイムが鳴っていたのをよく覚えているー


だがー

今ー

チャイムが鳴ったー


理科室には、誰も来なかったー


祐平は戸惑いながら教室に戻るー


するとーーー

詩織が、不気味な笑みを浮かべながらーーーー

祐平のほうを見つめたー


「---!!!」

祐平の背筋に悪寒が走ったー


詩織はーーー

その日から”豹変”したーーー


祐平が、理科室に行っている間にーー

詩織は、”前”と同じように、憑依されてしまったのだーー


祐平はー

積極的に”詩織が憑依された”ことを周囲に伝えようとしたー


前は”憑依なんて信じてもらえない”と、一人で詩織を助けようとしたー

しかし、今回は”前とは違うやり方でー”


だがーーー

結果は変わらなかったー

”憑依”なんて、信じてもらえずー、


今度はー

11月15日に、詩織が地元のワルに連れ去られー

その数日後に、水死体となって発見されたー


”前より…早くなってる…”

祐平は戸惑うー。


”憑依されたあと”に何かしてもダメだ、と祐平は思うー


そして、祐平は走ったー。

”あの山中”にー。


光の渦は、そこにあったー。

前と同じ場所にー


”これはいったい何なんだろう…”

祐平は、そんな風に思いながら再び手を伸ばしたー


詩織が憑依される前日ー

10月19日に戻るためにー


”僕はー何度でもー

 詩織を救うためなら、何度でも、、

  タイムスリップしてみせるーーー”


「ねぇ~~!!!祐平!!寝てるの~???」


詩織の声ー


祐平が図書室で目を覚ますー


「寝てないよ」

祐平はほほ笑んだー


”3回目”の10月19日ー

今度こそー…。


祐平の、”彼女を救うための”

時間を遡る戦いは、始まったばかりだったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・


コメント


憑依Xタイムスリップ!

憑依の謎を解き明かして、彼女を救うことはできるのでしょうか!


ぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!!



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