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「ーーー遠く離れていても、この星空の向こうには、

 みんながいるー」


亜優美は、星空を見つめながら、

そう言っていたー。


たとえ、今は敵同士だったとしてもー

たとえ、亜優美が洗脳されているのだとしてもー


どこかでー

亜優美とつながっているー


この、異世界の星空の下でー

俺と亜優美は、繋がっているー。


そう、信じてー

きっと、そうだと信じてー。


また、きっと、笑いあえる日々が来るはずだからー

きっと、”こんなこともあったね”と、

思い出話に出来る日が来るはずだからー。


だからー

俺は戦うー


俺はー

”本物のアリシア姫”に会いに行くー。


少しでも、前に、進むためにー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。その正体は不明。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「---本当に、いいのか?」

アリシア姫の部屋で、和哉は身なりを整え、

騎士団長のユーリスを待つー。


”本物のアリシア姫”の居場所に案内してくれるという

エックスと、ユーリスを引き合わせるためー、

和哉は、ユーリスを呼び出していたのだ。


侍女のラナには、”大事な話があるから”と、

部屋から出てもらったー。

”どうせわたしは仲間はずれですよーだ!”などと

拗ねていたが、仕方がないー。


「----ああ」

死神を自称していた、ミルト族のエックスはそう答えたー。


和哉を信じることを決め、

”兄”である皇帝ゼロの打倒を託すー。

そして、エックスは、そのために

”本物のアリシア姫”がいる場所に、和哉を案内するのだという。


そのためにはー

和哉がこの異世界で最初に目を覚ました場所ー

”テンペスト高原”を超える必要があるー。


そして、魔物が多数徘徊しているテンペスト高原を超えるためにはー

”騎士団長の力”が絶対に必要とのことだったー。

和哉は、エナジーをまだ自在に操ることができないし、

エックスらミルト族は”戦闘”に適した能力を持っていないー。


「----…さっくりと、騎士団長サマに殺されちゃったりしてなー?」

エックスが冗談を口にするー。


笑ってはいるがー

エックスの小さな身体が小刻みに震えているのを、

和哉は見逃さなかったー。


遠い昔ー

その強大なエナジーを恐れられて

アクア王国に滅ぼされた種族・”ミルト族”-

その生き残りであるという話が本当なのであれば

エックスが恐怖を覚えるのも当然なのかもしれないー


エックスはー

同胞がー

故郷が滅ぼされてから、

ずっと、エックス自身の能力”ステルス”により、

身を隠して、生きてきたー。


”本物のアリシア姫”


そして

”和哉ー”


ミルト族が滅ぼされてから、

エックスは、その二人にしか、姿すら見せていないのだと言うー。


「--ユーリスは、そんなことしないよ」

和哉は、そう言いながらも、少し震えていたー。


エックスとは”別の理由”ー


和哉は、自分がアリシア姫の姿であることも忘れて、

だらしない姿勢で椅子に座りながら、

少し震えていたー。


本物の”アリシア姫”が見つかったときー

自分はどうなるのだろうかー。


騎士団長のユーリスたちは、今は”味方”だー。

だが、それはー

本当に”和哉のため”なのだろうかー。


そもそも、ユーリスと侍女のラナ以外は、

和哉のことを本物のアリシア姫だと思っているー。


”偽物”だと、ばれたらー?

本物が、帰ってきたらー?


”俺は殺されるかもしれないー”


和哉は、ここのところ、そんな不安にとらわれていたー。

姫は”二人”いらないー。


「---どうした?びびってるのか?」

エックスが、揶揄うようにして言うー。


和哉の震えに気づいたのだー。


だが、和哉は、笑いながら

「お前も震えてるぞ?」と、冗談を口にしたー


「ハッ、これは武者震いってやつさ」

エックスは気丈に、そう答えたー


「--ははは、俺も武者震いだよ」

和哉はそう言うと、

二人で少しだけ笑うー。


そして、ユーリスがやってきたー。


「----遅れてすまんな。話ってなんだ?」

騎士団長のユーリスが、和哉が用意しておいたイスに座るー。


エックスは、自分の能力”ステルス”により、

ユーリスからは身を隠したままー。


”いいか?”

和哉が、エックスのほうを見て、目で合図をするー。


”-----”

エックスは、深呼吸をするー。


同胞と、故郷を奪ったアクア王国の人間ー

今でも、アクア王国の人間は

”ミルト族”を恐ろしい存在、として歴史上に残しているー。


今、生きているアクア王国の人間たちは、

ユーリスも含め、実際にミルト族と会ったことはないとは思うがー、

”良いイメージ”は持っていないだろうー


下手をすれば、エックスが、姿を見せたとたんー

騎士団長のユーリスは、エックスを殺すかもしれないー。


”------ああ”

エックスは決意をしたー。


和哉は、エックスを信じたー


その和哉が、”ユーリスになら、伝えても大丈夫”だと言っているのだー。

エックスは、”お前を信じるぜ”と思いながら、頷いたー。


「---本物のアリシア姫の居場所が分かったんだ」

和哉が言う。


「--なっ?!」

ユーリスが驚いた様子で声を出すー。


「--い、いったいどこに!?」

和哉のほうを見ながら、戸惑いの言葉を口にするユーリス。


和哉は、ユーリスのほうを見返しながら、答えたー。


「--テンペスト高原の先にー」

とー。


和哉は緊張のあまり、綺麗な髪をしきりにいじりながら、

喉が猛烈に乾くのを感じて、

可愛らしいセキを2回ほどしたー。


「---……その情報は、確かなのか?」

ユーリスはそう言いながら

”どこから手に入れた情報なんだー?”

と、和哉に問いかけるー。


「---」

和哉はエックスのほうを見て頷くと、


「---”ミルト族”のエックスが、教えてくれたんだー」

と、エックスがいる方向を見つめたー


エックスは、深呼吸するとー

”ステルス”の能力を”ユーリス”に対して解除しー

和哉だけではなく、ユーリスの前にも、姿を晒したー


「-------…ミルト族…!」

ユーリスが驚きの表情を浮かべているー


ミルト族を見るのは、ユーリスにとっても初めてでー

ミルト族は、かつてアクア王国が滅ぼしているー、と

聞いているー。


「---ーーー初めまして。騎士団長サマ」

エックスはいつものように、不敵な笑みを浮かべながら

ユーリスのほうを見るー


和哉は、エックスの小さな身体が、震えているのに気づくー。


エックスにとっては

”人間の前に姿を現すだけで、命がけ”なのだー。


今、この瞬間、

ユーリスが炎を発したら、エックスはひとたまりもないー。


「---」

和哉は緊張した様子で、髪を意味もなく、指先にぐるぐる巻きに

してみたりしながら、二人の様子を見つめるー。


「ーあんたらの姫様の居場所とーー

 こいつが姫の姿になった理由ー

 俺は、全て知っているー」


エックスがそう言うと、

ユーリスは

「…なんだって!?」と、エックスのほうを見つめたー。


「---!」

ユーリスも、エックスが身体を震わせているのに気づくー。


騎士団長としての、さすがの洞察力だー。


「----」

そして、ユーリスは、携えていた剣に手を掛けたー。


部屋が緊張感に包まれるー。


エックスは”死”を覚悟したー。

和哉は甘かったー。

やはり、ミルト族と、アクア王国の人間の間には

”深い溝”があるー。

アクア王国の歴史の文献や、教育が、

そもそも、ミルト族を”過去に存在した脅威”と

教えているため、ユーリスが、ミルト族のエックスを

瞬時に斬り捨てようとしたのは、妥当な判断なのだー。


「---ユーリス!」

和哉は咄嗟に叫んだー。


だがー

ユーリスの行動は、

和哉とエックスが予想した行動ではなかったー。


「-----話を、聞かせて貰えるか?」

ユーリスは、剣を床に置き、手の届かない場所へと押し飛ばしたー。


”武装解除”


エックスが怯えているのに気づいたユーリスは、

武器を手放して、”争う意思はない”ことを示したのだー


「ユーリス…」

和哉は安心した様子で安堵の笑みを浮かべるー。


ユーリスの配慮に、エックスも心を打たれー

ユーリスのほうを、真剣な表情で見つめたー。


「---騎士団長サマ…

 心遣い、感謝するー」


エックスは、そう言うと、

ユーリスのほうを見つめてー


和哉に話したことを、話し始めたー


本物のアリシア姫に10年以上前に助けられて、親交があったことー

本物のアリシア姫の居場所ー

そして、和哉がこの世界に転生した理由ー。

皇帝ゼロのが、エックスの兄であり、ミルト族の生き残りであることー


・・・・・・・・・・・


「------」

アリシア姫の部屋の外ではー

隠密部隊長のカイルが、その話を”盗み聞き”していたー。


”隠密”である、カイルは、自身のエナジーにより、

完全に”気配を殺す”ことができるー。

手練れの騎士団長であっても”欺けるほど”の

強力な力だー。


そんなカイルが、

騎士団長・ジークの指示で、

アリシア姫の近辺を探っていたのだー。


”誰と話している?”

カイルは、そう思うー。


エックスの能力”ステルス”はー

エックスが心を許した相手ー

彼が”許可”した相手以外から姿を隠す能力ー。


和哉・ユーリスの二人以外からは、

エックスは見えないし、声も聞こえないー。


「-----…」

カイルは、アリシア姫のほうを、部屋の隙間から見つめるー。


なんだかー、様子がおかしいー

妙に男っぽいしぐさと言うかー。


「---何をしている?」


「--!」

カイルが慌てて振り返ると、

そこには、女性騎士団長のミリアがいたー。


偶然、通りがかったミリアに声を掛けられたカイルは

咄嗟に釈明をしようとしたー。


だがー。


「---さてはジークの指示か」

ミリアが言う。


女性とはいえ、

”氷の女王”の異名を持つミリアの迫力は、凄まじいー


「--そ、、それは」

カイルが、動揺するー。


「---ジークの指示なら、仕方ない。

 貴様は騎士団長の指示に従っただけだ。

 咎めは無い」

ミリアは、淡々とそう告げたー。


”隠密部隊長”は、

”騎士団長”より、アクア王国内に

”階級”的には、”下”となるー。

そのため、ジークの指示を受けたカイルが、

アリシア姫を探っているのはー

”仕方のないこと”でもあったのだー。


「---だが、姫様の身辺を探るなどと、無礼な行為は慎め」

ミリアが、綺麗な、けれども迫力のある、声で言うー。


「---し、、しかし」

カイルは”ジーク様の命令故”と呟くー


「--貴様はいつからー」

ミリアが、威圧感を丸出しにして、カイルを睨んだー


「いつから、”ジークの専属に”なったんだー?

 ”同じ騎士団長の一人である”私の言うことは聞けないと?」

ミリアは、普段、”権力の乱用”はしないー。


しかし、今は、姫を守るためー。

あえて、カイルを”階級の差”で威圧したー。


「---そ、、、それは…」

カイルが戸惑うー。


そしてー

観念したのか

「---承知いたしましたー」と、頭を下げて、カイルは

その場から姿を消したー


「----」

ミリアは、カイルの気配が消えたことを確認すると、

そのまま、和哉たちが話しているアリシア姫の部屋のほうを見つめたー


・・・・・・・・・・・・


全てを話し終えたエックスー。


アリシア姫は”テンペスト高原”の先のとある場所にいることー。

和哉が女体化した理由や、アリシア姫と同じエナジーによる光を使えたことを

姫の口から直接説明することー、

エックスが、アリシア姫の居場所まで直接案内することー。


それらも、全て伝えたー。


ユーリスは、”確かに、テンペスト高原を突破するなら

俺が同行しないわけにはいかないな”と、呟いたー


和哉とエックスだけでは、テンペスト高原は突破できないー。


だがー。

ユーリスは、エックスを見つめるー。


皇帝ゼロがミルト族で、しかもエックスの兄だということには

特に驚いたー。


このエックスはー”本当のこと”を言っているのだろうかー。

皇帝ゼロの弟だと言うのであれば

ゼロと結託して、和哉やユーリスを罠にはめようと

している可能性もあるー。


「---…………信じて、いいんだな?」

ユーリスが真剣な表情でエックスを見るー。


「--------」

エックスは頷くー。

和哉も、ユーリスとエックスを見て、頷いたー


「----わかった」

ユーリスは頷くー。


エックスは”命がけ”でユーリスの前に姿を現したー。

ユーリスは、そんなエックスの”命を賭した行動”に敬意を表するとともにー、

エックスを信じ、和哉と共に、テンペスト高原を突破ー、

本物のアリシア姫に会いに行くことを決意したー。


もしもー

もしもこれがエックスの罠ならー。

和哉も、ユーリスも死ぬー


だがー

それでも、和哉とユーリスは、エックスを信じたー


「--あの辺は魔物が多いー

 できれば、もう一人ぐらい騎士団長サマがついてきてくれるとー」

エックスが言う。


ユーリスだけでも心強いのだがー

あそこにはー

強大な魔物もいるー。


「---それは、難しいかもしれないー」

ユーリスは、そう呟き、表情を暗くしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


テンペスト高原に行くためには

”承認”が必要だー。


翌日の王宮会議で、ユーリスは、

エックスや、本物のアリシア姫のことは隠し、

アリシア姫(和哉)と共に、テンペスト高原に赴く提案を行ったー。

名目は、なんとか適当につけているー。


だがー、

予想通り、宰相のローディスや、反姫派の騎士団長・ジークは

反対したー。


残る騎士団長のフェルナンデスも、難色を示すー。


ミリアは迷っている様子だったー。


結局、”承認”は下りなかったー。


夜ー

ユーリスは言う。


「---今夜、出立する」

とー。


「え?」

和哉は戸惑う。


”さっき、承認されなかったのに、いいのか?”

とー。


ユーリスは少しだけ笑ったー。


「---…独断でお前を…姫を連れ出して

 テンペスト高原に向かうなんてー。

 騎士団長としては失格かもしれない」


とー。


場合によってはー

騎士団長の座を返還する覚悟-。


でもー、

と、ユーリスは続けたー


「俺は、アリシアを助けたいー

 本物のアリシアがいる場所が分かっているならー

 俺はどんな危険を冒してでも、

 アリシアを助けたいー


 それとー

 お前が、アリシアの姿になった理由ー

 それが分かるならー

 俺は、この身を投げうってでも

 お前の力になりたいー」


ユーリスの言葉に、和哉は少し、

ドキッとするような感情を覚えながらも

「どうして、そこまでー…」と呟くー。


ユーリスは、どうして和哉のために、そこまでしてくれるのかー。

和哉はそこが”疑問”だったー。


「決まってるー」

ユーリスは答えたー


「--友が困っていたら、手を差し伸べるー

 当然じゃないかー。」


とー。


「お前は、”姫の影武者”として振舞って

 俺をー

 この王国を助けてくれたー


 だからー

 俺も、お前の力になりたいー


 …それ以上の理由が必要か?

 -異世界の友よ」


ユーリスはそう言うと、和哉のほうを見て笑ったー。


和哉は、「異世界の友ー」と呟くと、

”いい響きだな”と笑いながら、ユーリスのほうを見てほほ笑んだー。


・・・・・・・


その日の夜ー

和哉とユーリスは王宮を抜け出したー。


テンペスト高原を目指してー。


「----」

和哉は思う。


ユーリスに

”本物の姫が見つかったら、俺はどうなる?”と

聞こうと思っていたー


だが、そんな気はなくなってしまったー。


”友”


自分のことを、そう呼んでくれたー

そんなユーリスを疑うことはしたくなかったー。


城下町を抜けて、

裏門から密かに飛び出す和哉とユーリスー

そして、二人にしか見えないエックスー


”本物のアリシア姫”の居場所を目指してー


そしてー

”真実”を見つけるためにー


「--待て!」


ーー!


和哉とユーリスが、馬を止めて、振り返るー。


そこにはー

女性騎士団長・ミリアと、

その部下の騎士たちー

そして、ユーリスの騎士団の騎士たちの姿があったー。


「--ミリア…!」

驚くユーリス。


ミリアが馬を歩ませて、前に出ると

ユーリスのほうを見つめながら言ったー。


「---ユーリス。騎士団長として、あるまじき行為だな」

とー。


「---ミリア…」

ユーリスは、女性騎士団長・ミリアのほうを見て、

険しい表情を浮かべたー


”無断”での出立は、禁じられているー

それを破ることは、騎士団長でも、許されないー。

特に、姫を連れ出そうなどとー。


和哉が戸惑う中ー

ユーリスとミリアがにらみ合いー

緊張した空気が、その場に流れたー。



⑲へ続く


・・・・・・・・・・・


コメント


いつもより間が開いた気がしますが

長編の最新話でした~!


今日もお読み下さりありがとうございました!!

(Fanbox)


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