<女体化>異世界の星空⑰~姫の行方~ (Pixiv Fanbox)
Content
異世界の星空を見上げながらー
和哉は、思う。
和哉、この世界に来て女体化したー。
それも、”アリシア姫”そっくりの姿にー。
女として過ごすことー。
姫として過ごすことー。
正直、まだ慣れないー。
しかしー
輝く星を見つめながら、風になびく髪を抑えてー
和哉は、考えるー
”それ以上の不安の影”をー。
和哉はまだ、本物の”アリシア姫”に会ったことはないー。
”アリシア姫”が、どんな性格なのか、
”アリシア姫”が、女体化した和哉が影武者をやっているという
事実を知ったら、どういう反応をするのかー。
何も、分からない。
そもそも今、”アリシア姫”はどこにいるのかー。
そしてーーー
本物の”アリシア姫”が帰還したときー
「---」
和哉は、”用済み”として、ユーリスら騎士団に斬り捨てられる
イメージを頭の中に浮かべてしまうー。
「----はは…まさかなー」
”そんなこと、あるはずがないー”
そうは思いながらも、
和哉の目には、”不安の色”が浮かんでいたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
★主要登場人物★
藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫
異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。
高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ
和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。
神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍
和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。
ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア
王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。
ラナ
アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。
エックス
自らを死神と語る謎の生命体
グール伯爵
皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。
皇帝ゼロ
闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。その正体は不明。
※登場人物詳細
(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に
プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、
お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)
fanbox post: creator/29593080/post/1260447
・・・・・・・・・・・・・・
廊下で立ち止まる和哉ー。
ドレスがふわりと、廊下の空気を流れていくー。
「今、なんて…?」
和哉が聞き返すと、自称死神・エックスは笑みを浮かべたー
まるで”妖精”のような小柄な体格に、
つかみどころのない悪魔のような風貌ー
悪意を感じることはないが、
味方であるという安心感もないー。
「--聞こえなかったのか?アリシア姫に会わせてやるー。
”本物”の、な」
エックスの言葉に、和哉は周囲を見渡しながら、
誰もいないことを確認すると、言葉をつづけたー
「どういう意味だ?」
和哉が、鋭い眼差しをエックスに向けるー
”敵意”ではないー
だが、聞かなくてはならない、という強い”決意”-
「---だが、アリシア姫がいる場所は
お前ひとりじゃ危険だ。
俺は見ての通り”非力”
お前を助けることなんざ、できやしない。
俺のー
いや、”俺たち”の能力は、直接的な戦闘には
弱いからな」
エックスの言葉に、
和哉は「--俺たち?」と聞き返すー。
だが、エックスは返事をしない。
和哉は続けて
「アリシア姫は危険な場所にいるのか?」と
表情を歪めたー。
「あぁ…お前が最初に目覚めた場所を覚えているか?」
エックスの言葉に、
和哉は、この世界に飛ばされて最初に目を覚ました場所ー。
荒れ果てた広々とした荒野を思い出すー。
「あの先にある、隠れ里の”跡地”ー…
そこに、姫はいるのさ」
エックスの言葉に、
和哉は「どうして今になって、それを?」と、疑惑の目を
エックスに向けるー
”姫の居場所を知るなら、今までなぜそれを隠していた?”
”どうして、姫はそこにいる?”
”こいつは、何を企んでいる?”
様々な疑問が浮かび上がってくる。
和哉のそんな目を見透かしたかのように、
エックスは笑うー。
「おいおい、美人さんの顔でそんな怖い顔すんなって」
エックスは冗談を口にした後に、
真剣な口調で、続けたー。
「--俺も”命がけ”なんでねー。
お前が”希望”か、それとも、”そうではない”のか
見極めるのに時間がかかったー…
それだけのことだー」
ガラム海岸で、和哉は、”アリシア姫のエナジーによる技”と
同じ技を使って見せたー。
”覚醒ー”
あれは、アリシア姫がーー
エックスは、和哉の決意と、和哉の力ー
それを見定めて、ついに、和哉に全てを託す決意をしたー
”皇帝・ゼロ”を止めることー。
「----」
和哉は、なおもエックスを睨むようにしているー
”疑惑”の目ー
エックスはふいに呟くー
「俺はー、”ミルト族”-」
「---?」
和哉が、少しだけ表情を緩めた。
エックスの突然の言葉に、意味を理解できなかったからだー。
「---…誰かに、聞いてみなーーー」
エックスはそれだけ言うと、姿を消したー。
「---ミルト族…」
和哉は、そう呟くと、”分からないことだらけだな”と
ため息をついて、王宮会議が行われる場所へと向かったー
・・・・・・・・・・・
「これはこれは姫様…ご快復されたようで、何より」
いつも通りの神経質そうな顔を歪めて、
騎士団長のジークが嫌味を言うー。
「--ええ。この通り、もう大丈夫です」
和哉は、姫の口調で、ジークに嫌味っぽく返事を返したー。
王宮会議が始まるー
騎士団長のミリアが”ここのところ、王国側の情報が
闇の帝国側に漏れている節がある”ことを、問題に挙げるー。
「---闇の帝国に通じるものが、この王国にいるなどと
思いたくはないが」
騎士団長のフェルナンデスが、そう口にするー。
だが、宰相のローディスは、微笑むー。
「--15年前ー。国王の忠臣とまで言われていた
グールまで裏切ったのだー。
誰が内通していても、不思議なことではあるまい?」
とー。
確かに”疑う”ことも大事だろうー。
だが、まるでー宰相ローディスの言い方は
”騎士団長たちの疑心暗鬼”を招きたいかのようなー
そんな、嫌な感じの言い方だったー。
騎士団長のユーリスが「いずれにせよ、注意は必要だな」と、
話をまとめるー。
隠密部隊長のカイルや、
騎士団長のフェルナンデスらが、各自の報告を進めー
王宮会議は終了したー。
会議終了後、和哉はユーリスを呼び止めるー。
「--姫、どうかされましたか?」
ユーリスが、振り返るー。
ユーリスは、アリシア姫の幼馴染であり、
今のアリシア姫が、和哉が女体化した姿であることも
理解はしているが、
”人前”では、あくまでも家臣として振舞うー
「少し、お話が」
和哉が言うと、ユーリスは黙ってうなずき、
アリシア姫の執務室へと向かうー
「-----」
その様子を、宰相のローディスが、意味深な笑みを浮かべて
見つめていたー
・・・・・・・・・・・・・・
執務室の扉を閉めると、
ユーリスは「どうかしたのか?」と、素を出して
和哉の方を見たー
「---ミルト族…って、知ってるか?」
和哉が言うと、
ユーリスが「ミルト族…!」と、表情を歪めたー
明らかに”知っている”表情だー。
「--どこで、それを?」
ユーリスが、少し間を置いてから、和哉にそう聞き返したー
和哉は落ち着かない様子で、綺麗な髪をいじり始めるー。
この世界に来て、女体化してから、
和哉は落ち着かないと、アリシア姫のー
いや、自分の髪をいじる癖があるー。
”俺のことは言わないでくれ”
隣に、エックスが姿を現していたー
「----」
和哉は、ユーリスの方を見るー。
エックスの姿は、ユーリスには見えていないのか、
ユーリスは反応を示さないー。
”俺の能力は、”ステルス”-。
自分の意図した相手以外から、姿を消し、
声も認識できないようにする能力だー”
エックスは、和哉の横でそう説明したー
”なるほど…それで、俺以外には見えないのか”
和哉はそう納得すると、
エックスのことは言わず、ユーリスに質問したー。
「--兵士たちが話をしていて…さ…
ミルト族って…どんな種族なんだ?」
和哉が髪をいじりながら言うと、
ユーリスは首を振ったー
「ミルト族なら、もう”いない”」
とー。
和哉は表情を歪めるー
「--どういうことだ?」
和哉の声のトーンが下がるー
緊張した雰囲気ー。
「--俺が生まれる遥か昔ー
アクア王国が”滅ぼした”種族だー」
ユーリスは、そう答えたー。
ーー!?
和哉は横目でエックスの方を見るー。
エックスは”自分がミルト族”だと言っていたー。
だが、今、ユーリスは
確かに”はるか昔にほろんだ種族”だと言ったー。
「---…ミルト族ってのは…
妖精みたいな…こう…小っちゃいサイズ…か?」
ユーリスは驚いた表情を浮かべるー。
「そうだー」
とー。
「---…」
和哉はエックスの方をもう一度見るー
”ここにミルト族がいるー”
そう、ユーリスに伝えたくなったが
エックスにも何か事情があるのだろうと、和哉は
その言葉を喉で止めて、ユーリスに尋ねたー。
「--どうして、その”ミルト族”は
アクア王国に滅ぼされたんだ?」
和哉の言葉に、
ユーリスは、少し沈黙した後に答えたー。
遠い昔ー
まだ、”闇の帝国”が出現していなかったころー。
アクア王国では、人間の他に”ミルト族”と呼ばれる
小柄な妖精のような種族が暮らしていたー。
ミルト族は、体力に恵まれない代わりに、
人間よりもはるかに強いエナジーを持っており、
人間では成しえない”強力な能力”を持つものが多かった。
その力で、ミルト族は、人間やアクア王国を支え、
人間と友好関係を築いていたー
だが、ある時から、
アクア王国では”謎の疫病”が流行り出してー
それが”ミルト族による仕業”であるという噂が流れたー
ミルト族の強大なエナジーをもってすれば、
”伝染病”を作り出すことも可能かもしれないー
混乱するアクア王国ー
アクア王国の当時の国王は、
その”強大すぎるエナジー”を恐れた。
”ミルト族がその気になれば、人間を支配することなどたやすい”
という、恐れを抱いたのだー。
そして、国王は、
疑心暗鬼になっていた自分と、
ミルト族を恐れるようになっていた民衆の声に答える形でー
当時の王宮騎士団長の一人に命じたー
”ミルト族を根絶やしにせよ”
とー。
命を受けた騎士団長は、部隊を率いて
ミルト族の暮らす村を襲撃ー
ミルト族を一匹残らずー抹殺しーーー
ミルト族は”滅んだ”のだというー。
語り終えると、ユーリスは、神妙な雰囲気で呟いたー
「---ミルト族の”エナジー”による能力は
人間を遥かに超えていたー
当時の国王が恐れたのも…無理はないのかもしれない」
とー。
そして、ユーリスは和哉を見るー。
「--俺が生まれる前の話だー。
当時の状況は分からないがー
ひとつの種族を、この王国が滅ぼしたのはー、事実だ」
しばらく沈黙する部屋ー。
「---わかった。ありがとう」
和哉がそう言うと、
ユーリスは静かに頷いたー。
”ミルト族のことをどこで聞いたんだ?”と
もう一度聞きたそうな雰囲気だったが、
ユーリスは、そのまま「また何かあれば、いつでも聞いてくれ」とだけ
告げて、そのまま執務室から出て行ったー。
部屋に残されたのは
和哉とエックスの二人ー。
「---俺は、今、騎士団長サマが言ってた”ミルト族”の
生き残りだー」
エックスの言葉ー。
エックスは自分の口から”自称”しても
和哉に信じてもらえないだろう、と判断して
和哉の口から、あえてユーリスに確認させたのだー。
和哉は、少し考えてから言葉を口にする。
「---王国に滅ぼされた種族の生き残りー…」
和哉はそう聞いて、このエックスが王国への復讐を
目論んでいるのでは?と思い、それを口にしたー
「ーーははは、そう思うのも無理はないな。
俺も確かに、昔は王国を憎んだこともあったー。
でもなー、
俺は、アリシア姫と出会って、考えを変えたんだ」
エックスも、かつては王国を憎んでいたのだと言うー
自分たちを滅ぼした王国をー。
だが、10年以上昔ー。
行き場を失って、森の中で倒れていたエックスを
偶然、アリシア姫が見つけてー
”ミルト族”であることを知りながら、アリシア姫は
エックスを匿い、そして、親身になって助けてくれたのだと言うー。
それ以来、エックスのエナジーによる能力”ステルス”で
身を隠しながら、アリシア姫とは、度々会っていたのだと言うー。
”友”として、
そして、”命の恩人”としてー
「-----俺は、止めたいんだー」
エックスは呟いた。
「止めたい?誰を?」
和哉が言うと、
エックスは「---皇帝・ゼロだー」と、呟いたー。
皇帝・ゼロー
”闇の帝国”の支配者であり、正体不明の、強大な力を持つ皇帝ー
異世界から魔物を召喚したり、
魔物を洗脳したり、
心が弱った人間を洗脳したりー
圧倒的”エナジー”の力を持つ謎の存在ー。
和哉の彼女・亜優美も、この皇帝ゼロに洗脳されているー。
「----!」
和哉は表情を歪めるー。
ユーリスは言っていたー。
皇帝ゼロは、
”人間ではありえないほどの強大なエナジーを持っている”
とー。
「---皇帝ゼロは…お前と同じ…?」
和哉が言うと、エックスは頷いた。
「そうー
皇帝ゼロは、俺と同じ”ミルト族”の生き残りー
そしてーーーーー」
エックスが少し間を置いてから、
言葉を続けたー
「---俺の”兄貴”だー」
とー。
「----!」
和哉は、戸惑った様子で、エックスの方を見るー
「--兄貴…皇帝ゼロは、俺と同じで、ミルト族の生き残りだー。
昔は優しかったんだけどな…
今は変わっちまった。
人間への憎しみに囚われて、その強大なエナジーで
魔物を召喚ー”闇の帝国”を作り上げたー」
エックスは言う。
「俺は、憎しみに囚われた兄貴を止めたいんだー」
と。
しかしー
ミルト族は王国に忌み嫌われる存在ー。
エックスは、自分の能力で身を隠すことが限界で、
人間たちの前に、姿を現すことはしなかったー。
皇帝ゼロが、人前に姿を見せないのもそれが理由だー。
能力は強大だが、直接の戦闘能力はないー。
だから、グール伯爵ら配下にも決して普段は姿を見せないー。
「-ー俺らは非力だ。
エナジーは強くても”戦闘向き”じゃないー
直接争いになれば、あっという間に殺される」
エックスは言うー。
人間の前に姿を現せば、すぐに殺されてしまうー
だから、自分を助けてくれたアリシア姫以外には姿を見せず、
また、アリシア姫にも、誰にも言わないでほしい、と
お願いしていた、とー。
そしてー
ミルト族であるエックスには、自分ひとりで
兄である皇帝ゼロ率いる、闇の帝国を止める力はないー。
誰かに助けを求めることもー
自分で兄を止めることもできなかったー
「--そんなとき、お前がこの世界に来た」
エックスは、和哉の方を見るー
「お前は、ミルト族のことも、何も知らないー
だから、お前の前に姿を現しても、
俺が殺される心配はない、そう思った」
エックスはそれだけ言うと、
和哉は本来”亜優美が回収されたのに巻き込まれてこの異世界に来た”とき、
本当は、亜優美と同じ場所ー
つまり、皇帝ゼロの前に召喚されるはずだった、と告げたー
「最初に言ったろ?俺がお前を助けてやったって」
エックスは続けたー
皇帝ゼロが、戦力として亜優美を異世界から回収した際に、
和哉がとっさに亜優美を助けようとしたことで、
和哉も巻き込んで、この世界に召喚してしまったー。
そのことを察知したエックスは、
皇帝ゼロの力に割り込む形で、
和哉が召喚される場所を、”捻じ曲げたー”
「--俺が介入しなければ、お前は、彼女の亜優美と一緒に
皇帝ゼロの前に召喚されてー
何も分からないまま洗脳されるかー
洗脳できなかった場合は、洗脳された彼女によってー
殺されていただろうよ」
エックスはそこまで言うと、
和哉の方を見たー。
「--さっき言った通り、俺らミルト族は非力だー。
だから、誰にも助けを求められないー。
さっき言った通り、俺が王国の連中の前に姿を現せば
その場で斬り捨てられる可能性もあるー。
だから、俺にとって”命がけ”なんだー。
真実を打ち明けることも、こうして姿を現すことも」
エックスは、
異世界から来た和哉に希望を見出したー。
和哉ならミルト族のことを知らないし、
いきなり殺される心配もないー。
そして、異世界から来た和哉なら
王国や帝国のしがらみを乗り越えて、
皇帝ゼロを止めてくれるのではないか、と
そう考えていたー
だがー和哉が本当に”希望となり得る存在”かは、分からない。
だから、
エックスはしばらく和哉を観察していたー。
その結果ー
和哉の強い思いやー
さらには、アリシア姫のエナジーを引き出し、
ガラム海岸では圧倒的光の力で、ダーク将軍こと神崎省吾らを撃退したー
「---俺は、お前に賭ける
だからー全てを打ち明けるー
だからー、アリシア姫に合わせる」
だがー、とエックスは続けた。
「アリシア姫は今、どうしても”動けない”状態だー。
だから、アリシア姫からここに来ることはできないー
お前がー
会いに行くしかない」
エックスは言った。
アリシア姫は、和哉が最初に目覚めた場所
”テンペスト高原”の奥のーー
ある場所にいるのだと言う。
そして、今現在、アリシア姫は身動きが取れず、
和哉と会わせるためには、和哉が直接会いにいくしかないのだとー。
だが、そのテンペスト高原には、帝国の魔物が待ち構えており、
和哉一人で突破することは不可能、
そして、エックスが力を貸そうにも、非力であるミルト族の力では
どうにもできない、とー。
「---騎士団長が最低一人…いや、できれば二人、必要だ」
エックスは言ったー
「-----…」
和哉はエックスの方を見るー
「--ーーー俺にとっては”命がけ”だー」
エックスは少しだけ緊張したトーンで言う。
「騎士団長に俺のことを話すー
もしかしたら、その瞬間に、俺は殺されるかもしれない」
エックスの言葉に、和哉は首を振るー。
「--ユーリスは、そんなことしないよ」
とー。
「--本当に、そう言い切れるのか?」
エックスが、鋭い言葉を投げかけるー。
「---」
和哉は少しだけ迷ったー。
アリシア姫に会いに行くためには、
騎士団長の力が必要だー。
だが、アリシア姫が”テンペスト高原”なる場所の
奥にいるとなれば、事情を話す必要がある。
当然、エックスのこともー。
エックスにとっては”大きなリスク”命がけなのだろうー。
だがー
このエックスが”本当のこと”を言っている保証もないー
テンペスト高原とやらに、和哉と騎士団長を誘い込んで
皇帝ゼロと結託し、殺そうとしている可能性だってあるのだー。
でもー
和哉はしばらく沈黙したあとに、
決意の眼差しをエックスに向けたー
「---俺は、二人とも信じるー
お前は、俺を罠にはめたりはしないと信じるー
そして、ユーリスは、お前や俺を殺したりしないと信じるー」
和哉の言葉に
エックスが首を傾げる。
「--お前を、あの騎士団長サマが殺す?」
とー。
「--命を懸けるのは、お前だけじゃないー」
和哉は言ったー
”本物のアリシア姫が見つかったら、
俺はどうなる?
もしかしたら用済みとして殺されるかもしれないじゃないか?”
とー。
「-----」
エックスは少しだけ笑ったー
「---確かにな」
とー。
本物のアリシア姫が見つかったらー
王国からすれば、”アリシア姫の姿をした和哉”は
邪魔者でしかないだろうー。
下手をすればー”処分”される可能性だってある。
本物のアリシア姫に会いに行くことはー
エックスだけではなく、
和哉にとっても”命がけ”なのだー。
「---でもー
俺は、ユーリスを信じるー
あいつは、俺のことも、エックスのことも
殺したりは、しないー」
「---」
和哉の強い眼差しに、エックスは頷いたー
「わかったー
俺も、お前を信じよう」
エックスの言葉に、和哉は頷くー
「お互い”命がけ”で本物の姫に会いに行くなんてーー
なんだか変な気分だな」
和哉は、それだけ言うと、
今日の夜、執務が終わったら、離宮で、ユーリスに
お前のことと、アリシア姫の居場所のことを話すけど、いいか?と
確認するー
エックスはーー
「わかった」と、決意した様子で頷いたー
アリシア姫以外の王国の連中に姿を見せるのはー
これが、
エックスにとっては”賭け”
ミルト族に偏見のある王国の連中の前に姿を現せばー
その時点でーー
”殺される”かもしれないー
エックスが立ち去ったあと、
和哉は、一人想うー
”ユーリス…信じて、いいよな”
この世界に来てからずっと、
親身になって接してくれている
騎士団長のユーリス。
だがー
本物の姫が見つかったときー
ユーリスにとって、いや、王国にとって
”和哉は邪魔者”になるはずだー。
姫は二人もいらないー
「----」
和哉にとっても、命がけー
本物の姫が見つかった時、
自分は、どうなってしまうのだろうかー。
そんな風に不安に思いながら、
和哉は、”俺は、絶対に死ねない…”と
決意を新たにするのだったー。
本物のアリシア姫との対面ー
和哉が女体化した理由ー
和哉がアリシア姫の姿になった理由ー
和哉を取り巻く”謎”が
明かされようとしていたー。
⑱へ続く
・・・・・・・・・・
コメント
本物の姫との対面の日も近いデス…!
女体化した理由も、ちゃんと明かされますよ~!
(女体化後の日常描写も、どこかでたくさん挟みたい気持ち…★
でも、進行とのバランスの兼ね合いもあって、悩み悩みデス~)
今日もお読み下さりありがとうございました~!