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”どうして、こんな目に遭うのか”

彼女は、いつもそう思っていたー。


高校2年生の風原 紀子(かざはら のりこ)は、

小さいころから、”いじめ”を受け続けてきた。

理由は、簡単だったー


”容姿”-


紀子の顔立ちは、特徴的で、

同級生たちから”ブス”と言われることが多かったー。

好きでこの顔に生まれたわけじゃないし、

容姿のことなんて、言われても、どうすることもできないー


背伸びして、おしゃれをしたりしようとすれば

”ゾンビがおしゃれしてる”などと笑われたりー、

何もしなければ”あんたさぁ、少しは自分を変えようと思わないの?”と

言われたりー。


世の中は、理不尽だ。

容姿を理由にした”いじめ”なんて、理不尽だ。


でもーーー

この世は、綺麗な世界じゃない。

ファンタジーの世界じゃない。


だからー

”そういういじめ”は、なくならないー。


紀子は、諦めていた。

”人間”という存在に対して

”諦め”を抱いていた。


どうせ人間なんて、こんなものだと、諦めていた。


「----うわっ!ゾンビが来た!」

男子生徒の久木野 平八(くぎの へいはち)が

笑いながら言うー。


生徒会書記、というポジションにいて、

先生からの評判も”優等生”-


「----」

紀子は、反応しない。


「--しっかし、あんた、ブスだよねぇ~!」

クラスのおしゃれ女子・坂田 千代(さかた ちよ)が

笑いながら近づいてくるー


「---そういうの、いいから」

紀子が冷めた様子で言うと、

千代は舌打ちをしたー。


「----ゾンビのくせに、口応えすんな!」

と、紀子の髪を引っ張りながらー。


”ほんと、きもい!”と捨て台詞を吐きながら

立ち去っていく千代ー。


男子もー

女子もー

味方なんていないー


小学校でも、

中学校でも、ずっとそうだったー。


男子からも、女子からもいじめられ、

先生は助けてくれないし、

両親も”きれいごと”を言うだけー。

誰も、何も、助けてくれないー


けれどーーー

この高校ではーー

”味方”が一人だけいたー


「---大丈夫?」


優しい笑顔を浮かべるその子はーーー

紀子に”唯一”手を差し伸べてくれる

”太陽”のような存在だったー。


上梨 雫(かみなし しずく)-

クラス一の美少女と言ってもいいほど、可愛く、

明るく、友達も多い生徒だー

成績もクラストップクラスで、生徒会副会長も

務めているー


まさにー

容姿に恵まれず、友達0で、成績はボロボロな

紀子とは全く”正反対”と言える、

キラキラした女子だったー


そんな雫がー

”なぜか”紀子に手を差し伸べてくれているー


いじめられていれば助けてくれるし、

心配もしてくれるー。


おしゃれ女子の千代に対しても

「あんまりそういうひどいことしちゃだめだよ!」と

繰り返し、注意してくれているー。


「--わたしなんかと関わってると…

 上梨さんも、いじめられちゃうよー?」

ある時、自分のことを助けてくれる雫に対して

紀子が不安そうに言ったー。


「----そんな心配しなくていいの!」

雫がやさしく笑いながら、紀子の方を見つめるー


「--困ってる友達がいたら、助けるのは、当たり前でしょ?」

雫は、にっこりとほほ笑んだー


雫の笑顔はー

紀子には、まぶしすぎたー


光の中を堂々と歩む雫ー

男子からも、女子からも人気があってー

容姿にも恵まれていてー

学力も、スポーツも、なんでもそつなくこなすー。

とてもやさしい性格に、それでいて、容姿や自分が勉強できることを

自慢するような態度も見せないー


まさに”理想”のような子ー

まさに、紀子とは、正反対の子ー


「----元気出して…!ね!」

雫が、やさしく紀子に向って言う。


今日もー

紀子はいじめを受けていたー。

いつものように、雫が紀子を助けてくれてー

いじめは収まったー


しかしー

紀子は最近、”ある感情”を抱いていたー


「----ねぇ」

紀子が口を開くー


「----え?」

雫が紀子の方を見るー


「ずっとずっと、なんで上梨さんみたいな人が

 わたしのことなんて助けてくれるんだろう…?って

 そう思ってたんだけどー

 最近、やっとわかったの」

紀子が、ゆがんだ笑みを浮かべるー。

元々特徴的な顔立ちが、さらに特徴的になるー。


「---わたしのこと、見下してるんだよね?」

紀子は、ひと思いに、そうつぶやいたー


「え???」

予期せぬ言葉に、雫は混乱したー。


「---こんなブスで、何にもできないゴミみたいなわたしを

 助けて、優越感に浸ってるんでしょ?」


紀子は自虐的に笑いながらつぶやくー


雫のような”キラキラした人生”を歩む人間が、

自分を助けてくれるわけなんて、ないのだ。

きっと、雫は、”自分より遥か格下”の女子である

自分を助けることで、優越感に浸り、見下し、

楽しんでいるのだー


「---ふふ」

雫は、思わず笑ってしまったー


「---そんなわけ、ないでしょ」

雫がやさしく微笑むー


「わたしは、紀子ちゃんのこと、本当に友達だと思ってるし、

 見下してなんかいない」

雫が言うー。


”優等生”のような回答ー

紀子は、その答えにも腹が立ったー


「---……どうせ、、どうせ、他のみんなと組んで

 わたしを笑ってるんでしょ!」

不貞腐れた様子で叫ぶ紀子。


雫だけが自分を助けてくれるー

なんて、おかしいー

本当は、いじめっ子の平八や千代らと組んでいるのではないか。

助けるふりをして、裏で笑っているのではないか。


そうじゃないとおかしいー。

雫がどんなに千代たちを止めても、いじめがやまないし、

”いじめられっ子”をかばっているのに、雫が

巻き添えを食らっていじめられる様子もないー。


「----…ちょ、ちょっと、そんなことあるわけ…」

雫は戸惑っているー

まさか”共犯”扱いされるなんて思ってもみなかったー


「-だって、あいつらとしゃべってるの、わたし、見たもん!」

紀子が叫ぶー


紀子をいじめている生徒と、雫がしゃべっているのを何度か見ているー。


その言葉に、雫は困り果てた様子で呟いたー


「あ、、あのね…なんて言ったらいいかな…?

 用があるときは、話しかけるし、

 話しかけられたら無視するわけにもいかないでしょ?」


雫が紀子を助けたいと思っている気持ちはー

”本当”だー。

紀子の言うように、平八や千代と組んでいたりすることはないし、

見下しているつもりもないー。


しかしー

いじめを受け続けて歪んでしまった紀子は、

そうは思わなかったー


「嘘!!わたしを見下してる!」

紀子が涙を浮かべながら叫ぶー


「---ちょ、、、おちついてよ…!」

雫が困り果てた様子で言うー


「-そうやって、ブスを見下して楽しい?

 自分はキラキラした人生を歩んでるから、

 わからないよね?」


紀子が涙目になりながら言うー。


「---み、、見下してなんかないってば!

 わたしは、、わたしは、本当に紀子ちゃんを

 助けたいし、心配してるの!」


雫が、少しだけ口調を強めて反論したー。


「---ふ~~~ん」

紀子は、不貞腐れた態度で頷くと

そのまま、雫の前から立ち去って行ったー


「---紀子ちゃん…」

雫は心配そうに、紀子の後ろ姿を見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


味方だと思っていた雫も敵だったー!


紀子はそんな風に思いながら、

スマホで何かを検索していたー


”復讐”

”復讐”

”復讐”

”復讐”

”復讐”


何度も何度もそのワードを検索して

血走った目で検索結果を見つめているー


そしてーーーー


”あの子の人生を奪える最新の復讐方法ー!”


そんな広告が目に入ったー


「---!!」

紀子は目を見開いたー


”入れ替わり薬”

自分と、相手の身体を入れ替える薬ー


それを見た紀子は、一人、クスクスと笑い出したー


「--困ってる友達がいたら、助けるのは、当たり前でしょ?」


綺麗ごとを言う雫のことを思い出すー


「--ーーーそんなにわたしのこと心配だって言うなら…

 証明してみなよ」


そう呟くと、紀子はためらわず、入れ替わり薬を注文したー


・・・・・・・・・・・・・


1週間後ー


いじめは、相変わらず続いていたー


「--うわっ!風原菌を移すな!」


紀子に触れた男子の一人が、

いじめ男子のリーダー格・平八に触れて笑っているー


クラスでよくある光景ー。

”紀子に触れると、風原菌が移るー”

そんな、いじめが行われているのだー。


「--やめなよ。」

近くの座席にいた雫が言うと、

平八は「あ、、、う、、うん、ごめん、つい」と

顔を赤らめながら、すぐに言われた通りにしたー


生徒会書記の平八は、副会長である雫のことが好きだったー


雫に言われるといつも、すぐにいじめを止めるー。

そして、雫のいない場所で、紀子をいじめることが多かったー


”まるで、台本があるみたい”

紀子は、そう思ったー


実際にはー平八と雫が”組んでいる”なんてことはないのだが、

いじめを受け続けて疑心暗鬼になっている紀子は、

そう思わずにはいられなかったー


「----(でも、いいけど)」

紀子は、カバンの中を見つめるー


”入れ替わり薬”


昨夜ー

先週注文した入れ替わり薬が届いたのだー。


これでー

こんなブスな身体とは、お別れー


紀子は、雫の方を見つめるー


”あんたの身体、もらうからー”


とー。


・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


紀子は、雫を空き教室に呼び出していた。


空き教室にやってくる雫ー。


「ーーごめん!ちょっと遅れちゃった」

生徒会の打ち合わせがあって、

待ち合わせに遅れてしまった雫が、苦笑いしながら謝罪の言葉を口にするー


「---ねぇ」

紀子は口を開いたー


「--上梨さんは、わたしのこと、助けようとしてくれてるんだよね?」

紀子の言葉ー


雫は”何をいまさら”という感じで、

「友達だから」と、笑顔で即答したー


「--でも、ごめんね…。

 わたしの力が足りなくて、みんななかなか…」


「--いいよ、そんなこと」

紀子が愛想なく言うー。


いじめは消えないー

そんなことは分かっている。

雫に謝られても、そんなの、何の意味もない。


「--じゃあさ、その身体をちょうだい」

紀子が、にっこりとほほ笑むー


いつもにこにこしている雫の表情からー

初めて笑顔が消えたー


「え…?どういうこと?」

雫が”気味の悪いもの”を見る目で、紀子を見るー


「---わたしを助けたいんでしょ?

 だったら、上梨さんのその、かわいい顔、わたしに頂戴」

紀子が言うと、

雫は、「な、、何を言ってるの…?」と、表情を歪めたー


「ほら!その顔!他のやつらと同じ!

 ”化け物”を見る顔!」

紀子が雫を指さすー。


既にーーー

入れ替わり薬は飲んであるー。


あとは、奪うだけー


「--ちょ、ちょっと待ってよ!?どういうこと!?

 意味がわからないよ!?」

雫は、戸惑った様子で言うー


雫の反応は、ごく普通の反応と言えるだろうー。

しかし、極度の人間不信に陥っている紀子は

”これが雫の本性だ”と勘違いしたー


「---あんたにブスの気持ちなんてわからないもんね!」

紀子が叫ぶー


「--の、、紀子ちゃん、落ち着いて!」

雫が叫ぶー。


「--あんたがブスになって、わたしがクラスの人気者になるの!」

紀子はそう叫ぶと、雫に突然抱き着いて、キスをしたー


「むぐっ!?」

雫が目を見開くー


ぐちゅぐちゅと音を立てながら

無理やり激しいキスをする紀子ー


クラス一のブスといじめられている紀子と

クラス一の美少女と言われる雫がー

空き教室で、激しいキスをしているー


雫の目から涙があふれるー


「は、、放して…!」

と、苦しそうに呟く雫ー


そんな言葉も無視して、空き教室の壁にキスしたまま

雫を落ち着けると、紀子はさらに激しく雫にキスをするー


もがく雫ー


やがて、雫と紀子はそのまま、空き教室に倒れこんだー


雫が仰向けにー

紀子がその上に覆いかぶさるようにしてうつぶせにー


しばらくしてーー


「----……ふふ…ふふふふ…やった…」

雫が嬉しそうに呟くー


仰向けのまま自分の手を見つめて呟くー


「やったー…

 わたしが、、わたしが 上梨 雫よ…!

 やった…!やった!

 もう、ブスじゃない!」


雫と紀子はーー

入れ替わったー


クラス一の美少女の身体を手にした紀子は、

雫の身体で笑うー


「-もう、わたしはブスでも豚でもない!」

雫(紀子)がケラケラ笑いながら叫ぶー


上に覆いかぶさったままの元・自分の身体ー

紀子(雫)を、「邪魔!」と、ごみのようにどかすと、

雫(紀子)は立ち上がったー


「やった!!!やった!!!!!あはははははっ♡」

嬉しそうに顔をべたべた触る雫(紀子)-


「---……う、、、うそ…」

紀子(雫)も意識を取り戻したー


入れ替わってしまったことに驚愕する紀子(雫)-


「---どう?自分が見下してたわたしになった気分は?」

雫(紀子)が勝ち誇った表情で言うー


いつものような、穏やかな笑みは、そこにはないー


紀子(雫)が、困り果てた様子で「これは…どういうことなの?」

と呟いているー


そんな紀子になった雫に対してー

雫になった紀子は、ほほ笑んだー


「--あんたがブスになってー

 わたしが、可愛くて、なんでもできる、上梨雫になったの!!!」


雫(紀子)が狂気をはらんだ笑みを浮かべるー。


「そ、、そんな…!」

紀子(雫)の戸惑っている様子を見ながら、

雫(紀子)は叫んだー


「わたしをいじめから助けてくれてありがとうー!」


とー。


”人気者”の身体を奪ったー

これでもう、わたしは、誰にも見下されないー


”わたしは、もう、ゾンビじゃないー

 かわいい女の子よー”

雫の身体を奪った紀子は、不気味な笑みを浮かべた-


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


女子同士の入れ替わりデス~!

いつも男女の入れ替わりがほとんどなので、

たまには女子同士も、ということで考えてみました!


続きはまた近日中に!

今日もありがとうございました!! 




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