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「あぁあ…あぁ…」

少女が悲鳴を上げている。


高校2年生の少女・

村原 麻理(むらかわ まり)


真面目そうな容姿の少女で、

今もまさに、勉強している最中だった。

そんな麻理が、さっきまでの穏やかな様子が

嘘かのように、

今は苦しそうにもがいている。


苦悶の表情を浮かべている麻理ー

しかし、部屋には誰もいないー。

誰かに襲われているわけではないー


病気ー?

それも違う。

麻理は至って健康だ。

心臓発作を起こしているわけでもないし、

脳出血を起こしたりしているわけでもないー


それでも、麻理は、部屋で一人苦しんでいる。

それは、何故かー


麻理は、霊体となった男に、今、まさに憑依される最中だった。


憑依薬を手に入れた男はー

通学中の麻理を見つけて、

麻理を”次のターゲット”に定めていたー


「あぁ…あ・・・出て行って…!」

清楚なブラウスに清楚なスカート姿の麻理は

苦しそうに叫ぶ。


周囲から見たら、麻理が一人でもがいている状態ー

仮に、麻理の両親が、麻理の異変に気付いたとしても、

この部屋に駆け付けたとしても、

麻理を助けることは、できないだろうー。


相手は”霊体”なのだからー。


”何か”が自分の中に入ってくる。

気持ち悪い感覚ー

そして、徐々に、自分が自分で無くなるような感覚…

自由を奪われる感覚。


”わたしがわたしでなくなる”感覚。

麻理は恐怖し、もがき、苦しんでいた。


今までに、こんな感覚を味わったことはないー

形容しがたい、何事にも、例えられないこの感覚ー


麻理は、どうして良いかもわからず、

苦しそうに胸のあたりを抑えたり、

咳き込んだりしているー


”何かが入って来る”

そうは分かっていながらも、

どう自分の身を守ってよいのか、

麻理には分からないー。


当たり前だー

”憑依される”

そんな体験をしたことのある人間は少ない。


”はじめての脅威”に対して

適切に対応できる人間は、少ない。


「---これだ」


男は思う。


男はこれまで、何人もの少女に憑依し、

遊びつくし、そして、放棄してきたー。


これまでも。

そして、これからもだ。


この、自分の支配感が少しずつ上がっていく感触ー


次第に女の体の感触が、

伝わってくるこの快感ー


それに伴い、苦しみながら徐々に消えていく少女。


憑依した瞬間は

”無”から始まる。

霊体であるうちは、

暑さも寒さも、痛みもかゆみも感触も空気も、

何も感じないからだー


だが、憑依すると、

少しずつ、そういった感覚が流れ込んでくるー

少しずつー、これから乗っ取る身体の感覚を

五感を支配することができる。


「たまらないーー」

麻理は口元をゆがめて笑った。


ーー!?

麻理は驚くー

男の意思に既に支配されつつある麻理。


自分の口から、勝手に言葉が出たー。

麻理は、言いようのない恐怖を感じるー


「いや…やめて…」

麻理も必死だったー。

一瞬で乗っ取られてしまうなら、話は別だが

今、この瞬間、麻理にはまだ”自我”が残されている。

自我が残っているうちは、抵抗することだって、できるー


頭の中に、何故だかエッチな感情が爆発しそうなほど

湧き出て来るー

これも、”何か”が入り込んできている影響だろうかー


麻理は、そんな自分の変化に戸惑いながらも、

スマホに手を伸ばすー。

”希望”という名の光に、手を伸ばすー


でもー

途中で手の感覚は消えうせた。


まるで、麻理の最後の希望を

あざ笑うかのようにー。


麻理は表情を歪めるー

”どうして…どうして!?!?”


スマホを掴みたいのにー

手の感覚がー

まるで、手が取れてしまったかのように、

消えてしまったー


”手の感覚”が、

完全に乗っ取られてしまったー


麻理の手はスマホをつかみ、

助けを求めるのではなくー

スマホを遠くに放り投げる。


「うふふ・・・ははははははっ♡」

笑う麻理。


どうして、わたしは笑っているのー?

次第に麻理の感覚が壊れていくー

狂っていくー


おかしいよー

助けてよー

だれかーー。


憑依されるとき、人は

次第に狂っていくー


憑依されるという非現実的なことに、

対応できず、狂っていくー。


壊れていくー。


”脳”が、入り込んでくる”別の意思”に

対応しきることができず、

一種の”エラー”を起こしたような状態になってしまう。


そこを

完全に肉体も精神も掌握するー

それが、”憑依”だー。


「あと少しだ」


男は思う。

この、乗っ取られる側の最後の砦を壊す

瞬間ー。


全てを手中に収める瞬間ー。

何度、味わってもやめられないー


「---この身体は、俺のものだ!!!」

麻理は叫んだー


そして大笑いする


「あはははははははっ♡ ひゃははははははっ♡」

麻理が両手を広げて笑うー

生まれてから、今まで出したこともないような

”狂った笑い声”を出すー。


いや、やめて!

心の中で麻理は叫ぶ。


既に、身体は全く言うことを聞かずー

思考もまとまらないー

ただ、”混沌”とした感情だけが、麻理を焦らせているー


だがー。

なんだか、楽しくなってきた。


あれ?あれ…あ、、あは、、あははははははは!


麻理は心の中で笑うー

楽しいー

楽しいーーー


楽しいぃィぃィぃィぃィぃ!!!!


そう思いながらー

麻理の意識は途切れたー



記憶が流れ込んでくるー

これまでの16年の人生を、

数秒で追体験するこの感覚ー。


やめられないー


16年分の人生を一気にー

走馬灯?

いや、そんなものより、もっと早いー


一瞬にして、流れ込んでくるー

”奇妙”な体験だー


麻理は笑ったー


「うふふ・・・♡ 今日からわたし、生まれ変わっちゃう!」


そう、呟く麻理ー


しばらくは、この身体で生きようー

優等生のこの子が、

悪女に転落するまでをー

存分に楽しむとしようー


優等生を無理やり不良少女に変えていくー

その過程も、また、たまらなくゾクゾクするー


憑依の醍醐味は、

憑依の快感はー

何度味わってもやめられないー


だから、彼は繰り返すー


何度でも、

何度でもーーー

何度でも…!


おわり


・・・・・・・・・・・・


コメント


以前、体調不良の際に、それでも毎日更新しようと思って

書いた900文字ちょっとの作品をリメイクしてみました!


リメイク後は2300文字ちょっと…2倍以上になりました!


ただ、毎週火曜日おなじみの

”いつもよりボリュームの少ないお話”なので、

今日のお話も、100円プランで読めるようにしてあります!

(いつもは4000文字~6000文字ぐらい 時々8000超えることも…。)

お読み下さり、ありがとうございました!!

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