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「---俺は、お前たちを応援するぜ」


応援など、していないー。


俺はー

初めて”親友”に嘘をついたー


”俺、亜優美と付き合うことになったんだー”


和哉ー

お前から、亜優美ちゃんと付き合うと聞いた日ー


俺の心は、凍り付いたー。


俺とー

和哉とー

亜優美ちゃんはーー

”小さいころから仲良し”な、

幼馴染三人組だったー。


でもー

でもさ、

分かるんだよ。


俺は、所詮、”邪魔者”だってー。

亜優美ちゃんは、和哉を見てるー

和哉は、亜優美ちゃんを見てるー


俺がどんなに亜優美ちゃんのことを想ってもー

亜優美ちゃんは、俺のほうなんか、見てくれやしないー


そうー

生き地獄だ。


”仲良し三人組の3番手”

この上ない、生き地獄ー。


「あ~あ、亜優美ちゃんは和哉を選んだか~」


凍り付いた心を無理やり溶かしー

俺は、そう答えたー


俺がこの時、拳を握りしめていたことに、

和哉は気づかなかっただろうー。


あいつはー

俺のことなんて、何とも思っちゃいないのだからー


「和哉ーー

 どんな時でもーー

 亜優美ちゃんが困っていたらー

 ちゃんと、助けてやれよ?」


俺は、和哉にそう言ったー。


「--はは、言われなくても、そうするさ。

 でもー

 約束するー

 亜優美が困っていたらー

 俺は、どこでも駆けつけるー」


和哉のやつは、そう答えていたー


「--約束破ったら、俺が亜優美ちゃんを貰うからな~?」


そうだー

俺がーー

”亜優美ちゃんを貰う”んだー…。


この、異世界でー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。その正体は不明。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


黒い霧に包まれたガラム海岸ではー

激戦が繰り広げられていたー。


「---何故だ!?何故、王国を裏切った!?」

騎士団長・ユーリスは、炎の剣を振るいながらー

闇の帝国のNo2・グール伯爵と激しい対決を繰り広げていたー


ユーリスの剣に切裂かれるグール伯爵ー


だが、それは”幻影ー”


”幻影のグール”-

彼は”エナジー”の力により、自らの幻影を作り出し、

さらには、”ワープ”能力を駆使して、

変幻自在の戦いを繰り広げるー。


「---ミリアが、どんな思いをしてきたかー…

 お前は知っているのか?!」


現騎士団長の一人・ミリアの実の父親である

グール伯爵は、15年前、アクア王国を裏切り

闇の帝国についたー。

そのせいで、ミリアは、激しい差別的な扱いを受け、

アリシア姫に助けられるまでは、”裏切り者の娘”として

激しい弾圧を受けていたー


「--ー娘には悪いことをしたー」

グール伯爵はそう呟くー


すかさず、グール伯爵を、ユーリスの炎の剣が貫くー


だが、グール伯爵は、流水のような動きで、

ユーリスの背後に出現するー。


ユーリスが、炎の竜巻のようなものを発生させー、

ユーリスを取り囲む、グール伯爵の姿を一掃するー。


しかしー

それすらも本体ではないー。


グール伯爵が、再びユーリスの正面に現れると、

ユーリスが叫ぶー


「--だったら、何故!」

グール伯爵が裏切ったのは、15年前ー

当時、ユーリスも幼く、あまり、王国に仕えていた時代の

グール伯爵のことは知らないー


「---贖罪ーー」

グール伯爵は、そう呟くー


「--なに?」

ユーリスは、意味が分からず聞き返すー


「--くくく、これは私なりの”贖罪”なのだー」

グール伯爵が、その手に、闇のエネルギーを蓄積し始めるー

すかさず、ユーリスの炎が、グール伯爵を引き裂くー


「--騎士団長ユーリスよ…

 そのような炎では、私を貫くことは、できぬー」


・・・・・・・・・・・・


「あはははっ!ははははっ!はははははっ!」

”ヒルダ”と名乗る亜優美が、電撃を纏う剣で

アリシア姫の侍女・ラナを攻めているー。


「--あんた…あいつの彼女の

 高梨亜優美…なんでしょ!?」

ラナが、ヒルダの攻撃を避けながら、

和哉から聞いた”高梨亜優美”の名を叫ぶー


ヒルダは、その名前に反応することもなく笑うー


「たかなしあゆみぃ~?あはははははっ!

 わたしはヒルダ!

 皇帝ゼロ様の忠実なしもべ!」

ヒルダが、エナジーの力で、さらに電流を発生させるー


周辺には、雨雲が発生しー

ヒルダとラナを濡らすー


「----あ~~~!もう!

 目を覚ましなさいよ!」

ラナが叫ぶー


和哉とユーリスの会話から、

この”ヒルダ”と名乗る女は

皇帝ゼロに洗脳された、高梨 亜優美で間違いなさそうだー


ラナは、和哉のために、亜優美を説得したいー

そう考えながら、ヒルダ=亜優美の攻撃を避け続けるー。


「---ふふふ…

 あんた、その和哉とかいう変な名前の男、好きなの?」

ヒルダが剣を止めて笑うー。


「--ぶふっ!」

予期せぬ質問に、ラナは思わず吹き出すー


「ち、、ちがっ!ちがっ!

 あんな訳のわかんないやつ、好きになるわけないから!」

ラナは真っ赤になって、そう叫ぶー


ヒルダがニヤリと笑ったー


「--!」

ラナの動揺ー


「--ふふ…馬鹿な子ー」


その一瞬の隙をついて、ヒルダが、ラナの背後に回り込むとー

ラナが、ハッとしたその瞬間に、

強烈な電撃を叩きつけたー


「--きゃあああああああああああっ!」

ラナが吹き飛ばされるー。


「--あははははははっ!バカな小娘ちゃん」

ヒルダは笑いながら、倒れたラナに近づいてくるー


ヒルダはペロリと唇を舐めるとー

「あなたの血…見せてちょうだい…」と

不気味な笑みを浮かべーーー

倒れたラナに向かって、剣を向けーーー


「--!?!?」

ヒルダが気配を感じて、とっさに回避行動をとるー


「---わたし…嫌いだから」

ラナがそう呟きながら立ち上がるー


ラナの方を見つめるヒルダー。

「これが…あんたの”エナジー”…」

そう呟くヒルダに対し、ラナは叫ぶー


「わたし、自分の能力嫌いだから、使いたくないけど!!!」


いつの間にかー

ラナの手と足に”蛇”が巻き付いているー


「--女の子の能力が、蛇とか、ホントあり得ないんだけど!」

ラナは、不満そうにそう呟くー


ヒルダは、クスッと笑うとー

「ふふ…じゃあ、その蛇ごと、殺してあげるー

 蛇女ちゃんーー」と、囁きながら、再び剣をラナの方に向けたー。


・・・・・・・・・・・・・・


「---はは、久しぶりだなぁ、和哉」

ダーク将軍こと、神崎省吾が、

軽い調子で、和哉に手を上げるー


”普段の日常”と同じようにー


だがー

和哉は震えていたー


「--ずいぶん、美人になっちゃって。

 へへー

 どうだ?その身体で、いろいろシたのか?」


省吾は笑いながら、近づいてくるー

兜以外の、漆黒の鎧を身に纏ったままー


「---…し、、省吾」

和哉は唖然としているー


何故ー?

どうして、省吾がここにいるー?

どうして、この異世界にー?


「--お~~お~~…

 胸もこんなに膨らんじゃって」

省吾が笑いながら、女体化した和哉の胸に手を触れようとするー


和哉は「ばかっ!やめろ!」と、とっさに省吾の手を

振り払ったー


「--へへ、なんだよ、つれないなぁ…

 別に元男なんだから、いいじゃねぇか」

と、苦笑いするー


「それともー

 心まで、女になっちまったのか?」

省吾の言葉に、

和哉は「か、からかうなよ」と恥ずかしそうに返事をするー。


そして、和哉は真剣な表情に戻ると、

気になっていることを尋ねたー。


「--そ、、そ…そんなことより…何でここにいる?」


省吾は笑いながら「--お前や、亜優美ちゃんと会いたくてさ!」と、

冗談を口にしたー


「--お、、おい…省吾!真面目に答えてくれ!

 ど、どうなってるんだ!?

 あ、、亜優美は…亜優美はどうして、あんなー!?」


和哉の言葉に、

省吾は「お前はいつもそうだ」と呟くー


「亜優美、亜優美、亜優美、亜優美、亜優美ー」

省吾が茶化すような調子で言うー


「亜優美ちゃんもそうだー」

省吾はニヤァ…と笑うー


「和哉、和哉、和哉、和哉、和哉ー」


そしてー

続けるー


「俺は、どこにも、いないー」

省吾の目に”憎悪”が宿っているー


「---…し、、省吾…?!」

戸惑う和哉ー。


「--お、、お前も…お前も、操られてるのか?」

続けて、和哉がそう問いかけると、

省吾は笑いながら答えたー


「-ーーあ~~、ははっ、亜優美ちゃんはーー

 ”洗脳”されちゃったもんなぁ~?」

省吾がニヤリと笑いながら言うー


「---ど、、どういうことなんだ!?

 教えてくれ!省吾!」

和哉が言うと、

省吾は「ま、親友だしな。教えてやるよ」と、

和哉の方を見つめるー


「---亜優美ちゃんはこの世界に”召喚”されたんだー

 皇帝ゼロの能力でな…


 皇帝ゼロの能力は”異世界から、魔物を召喚する能力”だー。

 魔物の持つ負のオーラを媒介にして、

 異世界から、魔物を召喚して、闇の帝国の戦力にしているー」

省吾の言葉に、

和哉は首を傾げるー


「亜優美は…魔物なんかじゃないぞ」


「--あぁ、分かってるさ。

 でもさーー。

 亜優美ちゃん、何をしようとしてた?」

省吾が言うー


「---え?」

和哉が戸惑うー


「お前も見ただろー?

 だから、助けに入ったんだろ?」

省吾の言葉に、この世界に来る直前ー

亜優美が、車の前に歩いていき”自殺”しようとしていた

光景を思い出すー


「---!」


「--そうー。

 ”これから自殺しようとしている人間”には

 負のオーラが生まれるのさ。

 魔物の持つ負のオーラと同じような波長のものが、なー。


 それを媒介にしてー

 皇帝ゼロは、俺たちの世界からも、

 時々”召喚”しているのさー」


省吾は言うー。

通常の人間をこの世界に召喚することは不可能だが、

絶望し、これから死のうとしている人間が持つ

”負のオーラ”を媒介にすることで、

和哉たちの世界の人間を、この世界に引きずりこむことが出来るー


とー。


「--亜優美が自殺しようとしてたから…

 この世界に引きずり込まれたってのか?」

和哉が言うと、省吾は頷いたー


「--そしてー”洗脳”されたんだよー」

省吾は笑うー。


「-ー皇帝ゼロのもう一つの能力は”洗脳”だ。

 その力で、異世界から召喚した魔物を操って、戦力にしてるー。


 魔物の脳は、俺たち人間より、単純だからなー。


 だが、皇帝ゼロの”洗脳”は、あくまで魔物専用ー

 人間には、通用しないー」


省吾の言葉に、和哉は叫ぶー


「じゃ、、じゃあ…亜優美はなんで!?」

和哉が言うとー

省吾は笑ったー


「--自殺しようと考えるほどに、絶望している人間の心はさー…

 空っぽ…”虚無”なんだよー。

 ”心が弱り切った状態”で”洗脳”されると、

 人間と言えど、簡単に洗脳されちまう。


 だからー自殺しようとしていた時にこの世界に召喚された

 亜優美ちゃんは、何も分からないまま

 皇帝ゼロに洗脳されて、ヒルダになっちまったのさ!

 はははははは!


 ゾクゾクしたぜぇ?戸惑いながら怯える亜優美ちゃんが

 洗脳されて、冷徹な悪女になっちまう様子はぁ!!」


省吾の言葉に、

拳を握りしめながら、

和哉は「だったらお前も洗脳されてるんじゃないか!」と、叫んだー。


省吾の話通りならー

省吾がここにいるのは、

省吾も自殺しようとして、その瞬間に、皇帝ゼロによって

この世界に引きずり込まれて、

さらに洗脳されたことになるはずだー。


省吾は「チッチッチッチ」と、人差し指を振ったー


「和哉、お前、人の話、聞いてたか?」

と、馬鹿にしたように笑うー


「あ?」

和哉が、可愛い声で、不満そうに返事をする。


「心が弱り切った状態で洗脳されたら、人間と言えど

 洗脳されちまう…って言ったじゃねぇか」

そう呟くと、省吾は、にやりと笑いながら

「--俺は、自分からこの世界に来たんだよ…」と、口にしたー


「--なんだって?」

和哉が戸惑うー。


「---自分の意思で、この世界に来たー。

 だから、俺の心は弱ってなんかいねぇ。

 皇帝ゼロが、俺を洗脳しようとしたって、洗脳なんかできねぇんだよ」


省吾はそう言うと、

”この世界に来た理由”を話したー


あの時ー

亜優美が車の前に飛び出して、それに気づいた和哉が

亜優美を突き飛ばして助けようとした際ー


”皇帝ゼロ”の能力により、時空に歪みが生まれたー

それに吸い込まれて、亜優美は、この世界に引きずり込まれたー


しかしー

皇帝ゼロの”計算外”があったー

それは、和哉が、死のうとした亜優美を助けようとしたことー。

亜優美を”この世界”に引きずり込む際に、

巻き沿いを喰らう形で、和哉まで、この異世界に飛ばされてしまったー


和哉が”招かれざるもの”と呼ばれているのは、そのためだー。


そしてー


「-俺はあの時、お前らが”消える”のを見たんだ」

省吾が言うー。


「---」

和哉は、亜優美が自殺しようとする直前、

省吾が、亜優美と話していたのを思い出すー

その後、省吾は立ち去って行ったが、まだ近くにいたのだろうー。


「---だからさ…俺も”後を追った”んだー」

笑いながら言う省吾ー


省吾は、和哉と亜優美が消えた場所にすぐに駆けつけてー

そのまま、皇帝ゼロが発生させた時空のゆがみの”残り火”に

巻き込まれてー

この世界に来たのだと言う。


「--で、俺は亜優美ちゃんが洗脳されるのを、この目で見てー

 俺もそのすぐあとに洗脳されそうになったけど、

 別に心が弱ってなかった俺は、洗脳されなかったってわけさ」


省吾はそこまで言うと”俺は自分から、闇の帝国に協力を

申し出て、こうしてダーク将軍として、皇帝ゼロに力を貸してるんだ”と

説明したー


「---------」

どう答えていいか分からないー

和哉がそんな風に思っていると、

省吾が叫んだー


「この世界は最高だぜ!和哉!


 こうして俺は力を手に入れたー

 亜優美ちゃんも手に入れたーー!

 下らねぇルールも何もねぇ!

 力が全てを決める最高の世界だ!


 知ってるか?

 今の亜優美ちゃんー…いや、ヒルダは

 俺の女だ!!

 

 皇帝ゼロに頼み込んでなぁ…

 俺の女になるように洗脳してもらったのさ」


省吾の言葉に、和哉は唖然として叫ぶー


「---な、、なんだって!?」


「--俺はさぁ、ずっと亜優美ちゃんが好きだったんだよー

 お前なんかより、ずっと、ずっと、ずーっと、

 亜優美ちゃんを愛してた。

 でも、お前も、亜優美ちゃんも、俺のことなんか

 見てなかったもんな?

 俺は、仲良し三人組の”余りモノ”だったもんな?


 でも、この世界じゃ違うー

 余り物はー”お前”だー


 あ~~~~…ぁ、

 気持ちよかったなぁ~…亜優美ちゃんとのキスはー…

 亜優美ちゃんと抱き合うのはーー

 亜優美ちゃんとーーー」


「---黙れ!!!!!!!!!!」

和哉が大声で叫んだー


「お??どうした和哉?嫉妬か?」

省吾が笑うー


「--そうだなぁ~?

 今のお前は十分エロそうだし、

 セフレにぐらいならしてやってもいいぜ?」

省吾が挑発的に言うー


和哉は拳を握りしめて叫ぶー


「省吾!!どうしてだ!?

 どうして!?!?」

信じられないー

親友の省吾が、亜優美を奪おうとするなんてー


「--ははは…お前はさぁ…お人好しすぎだろ。

 俺はずっとずっとずっと、

 お前のこと…憎んでたー

 お前と、亜優美ちゃんのこと、憎んでた。


 あ、でも気づかないよなぁ?

 お前たちは、お互いのことしか見てないんだから。


 俺はいっつも、”おまけ”だったもんなぁ」


省吾が、不貞腐れた様子で言うー


「--そ、、そんなこと…」

和哉は、困り果てた様子で言うー


「--俺はさ、ずっと…お前と亜優美ちゃんを

 引き裂いてやろうって…

 お前をめちゃめちゃにしてやろうって、

 思ってたんだぜー


 …いやー、思ってただけじゃない」


省吾は、間を置いてから呟くー。


「---亜優美ちゃんが自殺しようとしたのは何故だと思うー?

 亜優美ちゃんが転勤になって、お前の元を離れる羽目になったのは何故だと思うー?」

省吾が、ニヤニヤと笑みを浮かべながら言うー


「--あの時、亜優美ちゃんが自殺する直前、俺は亜優美ちゃんに

 なんて言ったと思う?」


省吾の容赦ない言葉ー


「--亜優美ちゃんが入社した職場さぁ…

 俺の叔父さんの会社だったんだよなぁ~

 だからさ、俺が叔父さんに頼み込んで

 亜優美ちゃんを”飛ばして”貰ったんだー


 地元にいられないようにー

 ”お前の側”にいられないようにー」


省吾の言葉に、和哉は「そんな…」と、呟くー

省吾はさらに追い打ちをかけるー


省吾は言うー


”俺さ、亜優美ちゃんに何度も何度も告白してたんだよ”

とー。


その都度、亜優美は、省吾の告白を断っていたー

”わたしには、和哉がいるからー”と、困り果てた様子でー。


だが

亜優美は、和哉にそのことを相談しなかったー


省吾は、亜優美と和哉にとって大切な親友だからー

そして、和哉に心配をかけたくなかったからー。


しかしー

省吾は次第にエスカレートしたー。

和哉と亜優美を、一方的に憎みー


そして、

あの日ー

亜優美が自殺しようとした日ー


「あの日…亜優美ちゃんと俺が喋ってるの、お前、見たんだろ?」

省吾が笑うー


和哉がこの世界に来る直前ー

亜優美と省吾が会話していて、省吾が立ち去っていくのを、

和哉は偶然目撃していたー

そして、亜優美が涙目で、車の方に飛び出していくのを見てー

和哉は咄嗟に亜優美を助けー

この世界に来てしまったー


「---あの日ー」

省吾が言うー。


・・・・・・・・・・


あの日ー


「--偶然だなぁ、亜優美ちゃん」

省吾が、亜優美に近づいてくるー


仕事帰りの亜優美ー

省吾は”偶然を装い”近づいてきたー


「あ、神崎くん」

亜優美がほほ笑むと、

省吾は笑ったー


「東京に行くんだってな?」

とー。


「--うん」

亜優美がうなずくー


「---…でも、半年ぐらいで戻って来れるからー」

亜優美がほほ笑むー


省吾もにっこりとほほ笑んだー


「--戻ってこれないよ」

とー。


「--え?」

亜優美が、不思議そうに聞き返すー


「--半年で戻って来れる?

 はは、無理無理。

 

 亜優美ちゃんさぁ、なんで転勤になったか、知ってる?」


省吾の言葉に、

亜優美は、違和感を感じながら「ど、、どういうこと?」と

聞き返すー


省吾は口元を歪めたー


”--亜優美ちゃんの勤務先の会社さぁ…

 俺の叔父さんの会社なんだぜ?

 知ってた?”


耳打ちする省吾ー


”亜優美ちゃんが転勤になったのは

 俺が叔父さんに頼み込んだからさ。”


「--な、、なにを言ってるの…?」

亜優美が、怯えながら聞き返すと、

省吾はさらにニヤリと笑ったー


「---もう、和哉とは一緒にいられないなぁ?

 どうだ?俺なら、一緒に東京に行ってあげることもできる。

 和哉なんかやめて、俺と付き合おうぜ?な?」


そう呟く省吾ー


だが、亜優美の意思は変わらなかったー


「わたしには、和哉がいるからー

 何度告白されても、…ごめんね…返事は変わらないの」

亜優美の言葉に、省吾は「チッ」と舌打ちしたー


「いつもいつもいつもいつもいつもそうやって

 俺を仲間外れにする!」


省吾の表情から笑みが消えるー


「--”仲良し三人組”余り物だもんな、俺はー」


省吾の自虐的な言葉に、

亜優美は”そんなことない”と言おうとするー


しかしー

省吾は間を開けずに続けたー


”亜優美ちゃんは、もう北海道には戻ってこれないー

 半年で戻れる?笑わせるな。

 二度と和哉のやつと一緒にはさせねぇよ。

 東京で足りねぇなら、関西、いいや、九州…

 沖縄にだって飛ばしてやるぜ”


とー。


「そ、、、そんな…」

亜優美は目から涙をあふれさせながら震えるー


「どうして…?神崎くん…どうしてそんなこと…」

亜優美の言葉に、省吾は呟くー


”亜優美ちゃんには、分からねぇよ…

 逆さ三角形の底辺の気持ちはよ”


そしてー

省吾は、亜優美に耳打ちしたー


”亜優美ちゃんが、俺と付き合ってくれないから、

 和哉のやつ、どんどん不幸になってるー


 和哉の両親、前に事故で二人まとめて死んだよな?

 あれはなんでだと思う?

 和哉のアパートの隣人が、中毒死したよな?

 あれはなんでだと思う??”


省吾の狂気的な発言に、

亜優美は震えるー


「ま、、まさか…」

亜優美の言葉を、省吾は否定も肯定もせずに続けたー


「--亜優美ちゃんが、俺を拒むたびにー

 和哉はこれからもどんどん不幸になるー


 俺だけ不幸なんてずるいじゃねぇか。

 だからー俺が、和哉を同じ目に遭わせてやるー


 これからも、ずっと、ずっと、ずっとだー。


 亜優美ちゃんの選択肢はふたつに一つー


 ”俺をこのまま仲間外れにし続けてー

  和哉を選ぶかー”


 それともー


”俺を選んで、幸せに暮らすかー”


 だー。」


省吾は口元も歪めたー


「--でも、亜優美ちゃんが和哉を選ぶなら

 俺は、この先、容赦はしないーーーー


 亜優美ちゃんのせいで、

 和哉は、どんどん不幸になるー

 何もかも、失うー」


省吾はそれだけ言うと

「いい返事を待ってるよ」と呟いて、

亜優美の元から立ち去って行ったー


”転勤は省吾が仕組んだことー”

”半年で転勤から戻れるのは嘘”


そしてー


”わたしがいる限り、和哉はどんどん不幸にーー?”


既に転勤の件で心が弱っていた亜優美は、

激しく動揺したー

目から涙が溢れるー

呼吸が乱れるー


そしてー


”来週ー

 和哉のアパート、燃えちゃうかもな?

 そんな予感がするんだ”


と、省吾からLINEが届いたー


”俺を受け入れなければ、和哉の家を燃やす”


そういうー

話ー。


「----」

亜優美の心は砕けたー


”わたしが、和哉を不幸にしちゃうー

 ううん…わたしのせいで、神崎くんも

 おかしくなってー”


そう思って、放心状態になってしまった亜優美はー

そのまま車道の方に飛び出してー


・・・・・・・・・・・


”あの日のこと”を語り終えた省吾は笑ったー


「”親友”なのにさー、

 俺だけ仲間外れなんて、ずるいよな?

 俺たちは「逆さ三角形」の関係だ。

 和哉…お前と亜優美ちゃんは

 逆さ三角形の上の2辺だー


 俺だけが…逆さ三角形の先端ー

 下を向いているー。


 お前たちは俺を仲間外れにしたー

 ずっとー

 ずっとずっとずっと!


 亜優美ちゃんを転勤に追い込んだのは俺だー」


省吾の言葉に、和哉は「嘘だろ…」と唖然としているー


「--お前の両親が事故で死んだとき、

 最初にお前に知らせたのは誰だったかな?


 お前のアパートの隣人が死んだとき、

 真っ先にお前の部屋に駆け付けてやったのは誰だったかな?


 お前のーーー」


「--もういい!!!!!」

和哉は大声で叫んだー


「--クク」

省吾は、満足そうに再び馬に乗り込むと、呟いたー


「この世界ならー

 俺は、お前に負けないー

 

 この世界ならー

 俺は、”力”でも、”名誉”でもー

 何もかも、お前に勝つことができるー」


省吾は”ダーク将軍”として馬に乗ると、

和哉の方を見つめたー


「--省吾…俺は…俺は、お前のこと

 仲間はずれにしたことなんて一度もない…!


 お前のこと、ずっと、親友だって…」


和哉が戸惑いながら言うと、

省吾は、「---お前には”底辺”のきもちなんて分からないもんな」と

自虐的に笑ったー


「--さぁ、和哉ー

 亜優美ちゃんは、俺が抱いてやるー

 俺が愛してやるー

 俺がその唇を奪ってやるー


 俺がー

 亜優美ちゃんと子供を作ってやるー


 だから、もう、

 お疲れさんー」


省吾が、斧を持ち、

エナジーを込めるー


「---」

身構える和哉ー


「--この世界なら、俺はお前に負けないー

 いや、全てを手にすることができるー。


 ”仲良し三人組”の、仲間外れはお前になるんだよ!!!和哉!


 さぁ、話はここまでだー

 俺の本音、話せて最高だったよー、和哉」


省吾=ダーク将軍は、笑みを浮かべたー


「---亜優美ちゃんは、俺が幸せにしてやるからさ。

 安心して、死になー

 和哉ー、いやー」


省吾は、女体化した和哉を見て

バカにするような笑みを浮かべたー


「かずやひめ! くはははははは!」

和哉を姫と呼び、挑発する省吾ー


「省吾…」

和哉は、省吾の”憎しみ”知り、困惑するー

亜優美が洗脳されていることを知り、困惑するー


しかし、震えながらもー


「俺は、ここで死ぬわけにはいかないー」

と叫ぶー。


黒い霧に包まれたガラム海岸でーー

”親友”との対決が、始まろうとしていたー



⑮へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


10月最初の女体化X異世界転生長編でした~!


今回はお話が長かったですが、次回はバトルとドキドキ要素が多いと思います~☆


今日もお読み下さり、ありがとうございました!

(Fanbox)


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