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入れ替わりのことを全部白状した哲真になった莉音ー


”試合が終わったらすぐに戻って来るから、

 みんなには、ばれないように適当にお願いしていいかな…?”


哲真は入れ替わる前に、そんなことを言っていたー


でもー


「ふ~ん……分かりました!」

心愛が満面の笑みで手を叩きながらほほ笑むー


「-(ご、ごめんね哲真)」

哲真(莉音)は内心で苦笑いするー。

なんだか、心愛ちゃんが怖いー

そんな風に思いながらー


「---ごめんなさい~!

 わたし、中身が莉音お姉ちゃんだとは思わなくって!」

心愛が舌を出しながら笑うー


哲真の彼女である莉音と、哲真の妹・心愛は面識がある。

心愛は、兄の彼女である莉音のことを

”莉音お姉ちゃん”と呼んで、とてもなついているー。

莉音は高校生で、心愛は中学生であることから、

心愛は莉音には普段、敬語を使っているー


「あ、、う、、うん…心愛ちゃんも元気そうで何より」

哲真(莉音)が言うと、

心愛は「お兄ちゃんの身体で心愛ちゃんとか言われると寒気がしますぅ~」と

震える仕草をしながら、哲真(莉音)の方を見たー


「でも~…本当に入れ替わってるなんてびっくりですよ~!」

心愛は、そう言いながらー

「--お兄ちゃんのワガママに付き合わせて、ごめんなさい!」と

手を合わせて、哲真(莉音)に謝罪したー


哲真(莉音)は「ううんー大丈夫、大丈夫だから!」と

フォローを入れるー


「わ、わたしも哲真の力になれればな~!って思ってたし、

  本当に、気にしなくて大丈夫だから…!」

哲真(莉音)の言葉に、心愛はにっこり微笑んだー


「--でも…莉音お姉ちゃんに

 体調不良の身体を押し付けて、

 女の子の身体でスポーツに出るとか、

 許せねぇですよね~!」

心愛がにこにこしながら言うー


「--ひっ!?」

哲真(莉音)は、思わず怯えた


”心愛ちゃん、なんか敬語と乱暴な口調混じってて怖いよ~!”

莉音は心の中でそう思ったー


「帰ってきたらわたしがお仕置きしちゃうもん!」

心愛はにこにこほほ笑みながら、近くにあった紙を

ぐしゃぐしゃに握りつぶしたー


・・・・・・・・・・・・・


0-6


後半戦が始まったー


”よし、さっきよりはましだ”

莉音(哲真)は思うー

長い髪が邪魔だったから、結んで邪魔にならないようにしたー

胸のあたりに包帯を巻いてー

意味があるかは分からないけれど、とにかく胸を

押さえつけてなるべく気にならないようにしたー


「---」

莉音(哲真)が、相手チームの牙王高校を見つめるー


中学時代の悪友ー竜胆春義が相手のエースだ。


そして、相手チームのキャプテン・織田長信、

相手チームのゴールキーパー・冬目漱石

ハーフのペリー山本とザビエル大河原ー


相手の陣形には隙がなく、

それぞれ、選手としてのスキルも高いー


「くそっ…俺は…俺は負けない!」

莉音(哲真)が走るー


だがー

やっぱり、”身体”が違うー

運動神経が極端に違い過ぎてー

普段通りの能力を出すことができないー


「あぅっ!」

芝生の上に転んでしまう莉音(哲真)


その間に、ペリー山本の強烈なシュートが入りー

0-7。


「---ううぅぅぅ…」

綺麗な手が泥まみれー


”莉音…ごめん…”

そんなことを思いながらもー

”なんとか、なんとかしないと”と、

莉音(哲真)は焦りを感じるー


勝ちたいー

勝ちたいー


焦りだけが募っていくー

莉音(哲真)はゼェゼェ言いながら相手に向かって行くー


「----」

牙王高校のエース・竜胆春義が、莉音(哲真)から

軽くボールを奪うー


”くそっ!いつもなら…”

莉音(哲真)は何度も何度も舌打ちを繰り返すー

結んだ髪も乱れーやがて、再びふわふわ邪魔臭くなってくるー


胸の包帯も正直、意味がないー


「あ~~~~~!髪も胸も邪魔だああああああああああ!」

イライラした様子で叫ぶ莉音(哲真)


「--くそっ!みんな!とにかく!とにかく勝つぞ!

 俺は、、、俺は負けたくねぇんだよ!」

莉音であることも忘れて叫ぶ哲真ー


チームメイトたちは唖然としているー


「--ーー」

相手チームのペリー山本や冬目漱石も唖然としているー


「---負けたく…負けたくない!もう馬鹿にされたくない!」

莉音(哲真)は泣きながら叫んでいるー


「---せっかく、せっかく1年間練習してきたのに…!

 負けたく!負けたくないんだよ!」


0-11

もう、どうにもならないスコアだー


莉音(哲真)は叫ぶー


「--そ、、そうだ、、か、、勝ったら、ほら、

 この、、この身体!いくらでも触らせてやるからー!

 ほら、、みんな、がんばろうよ!ほら、、!」

莉音(哲真)が信じられない行動に出たー


自分の胸を触りながら、勝ったら触らせてやるー、と

言い出したのだ。


思い通りに身体が動かない苛立ちー

1年の練習が水の泡になるかもしれない焦りー

1年前の屈辱ー

あらゆる感情が爆発して、

莉音になった哲真は焦り、暴走していたー


「---ほら!!!足だって、いくらでもーー」


その時だったー


莉音(哲真)をーー

相手チームのエース・竜胆春義が、殴りつけたー


「--!?!?!?」

周囲はさらに唖然とするー


「バカ野郎!!!!!」

春義が叫ぶー


春義は哲真の中学時代の悪友だー。


「--お前、哲真なんだろ!?!?

 いつから、お前、そんなこと言うようになったんだ!??!」

春義が怒りの形相で、莉音(哲真)に向かって叫ぶー


殴られた頬を抑えながら莉音(哲真)が春義の方を見るー


「なんでそんな姿なのかは知らないけどさ…

 お前…いつからそんなになった!?

 中学時代のお前は、いつも、とにかく試合を楽しんでただろ?

 いつからそんな、勝ちに憑りつかれるようになった!?!?


 触らせてやる!?ふざけんな!!

 その身体は、莉音ちゃんのものだろ!?!?!?

  

 俺の知ってる哲真は、そんなこと言うやつじゃなかった!


 俺を失望させないでくれよ!!」


春義の言葉に、

莉音(哲真)は驚きながら、うなだれるー。


「---でも、、俺、、、1年練習してきたのに、

 風邪なんか引いて…

 莉音の身体でここに来ても…全然」


莉音(哲真)の言葉にー

春義は呟いたー


「俺の知ってるお前はー

 どんな不利な状況でも”その時出来る最善手”を見つけて

 頑張ってたじゃねぇか。


 それにー

 仲間をどんな時でも大切にしてたし、

 莉音ちゃんのことだってそうだー。

 

 負け試合でも、楽しむー

 俺の知ってる哲真は、そんなやつだぜ」


春義は、そこまで言うと、莉音(哲真)から

離れて、唖然としている神威高校・牙王高校双方の選手に向かって叫んだー


「わるい。試合を止めて。

 さぁ、最後まで楽しもうぜ」


とー。


莉音(哲真)は立ち上がるー


”そっかー、そうだよな”


莉音(哲真)は少しだけほほ笑むと

「みんな!ごめん!」と叫んでから、

「最後まで楽しもう!」と叫んだー


”この身体で出来ることー”


莉音(哲真)は

キャプテンであり、エースである自分が

率先して攻めることばかり考えていたー


だが、この身体ではそれは無理だー

”仲間をサポートする”

そう決意して、

サポートに徹する立ち回りをする莉音(哲真)-


激しい運動は無理でもー

サポートなら出来る


激しい運動は無理でもー

声を出して応援することはできるー


1-11

2-11

3-11

4-11

5-11


怒涛の追い上げを見せるー


「--ぬぬ」

牙王高校のキャプテン・織田長信が表情を歪めるー。


だがーーー


7-11


試合は、そこで、終了したー


「---負けちまったか…」

莉音(哲真)はへなへなと座り込むー


でもー


そうー

まだ”来年”もあるー


「---いい勝負だった」

春義が莉音(哲真)に手を差し伸べるー


莉音(哲真)は、満足そうに微笑むとー

「来年は、自分の身体で来るからな…」と呟くー


そして、握手を交わすと

「来年は絶対に負けない」と、ほほ笑んだー


「--やっぱり、どんな姿でもキャプテンはキャプテンですね!」

チームメイトたちも、莉音(哲真)に対して

労いの言葉を掛けてくれたー


・・・・・・・・・・・・


勝つことはできなかったけどー

それでもーー

莉音(哲真)は満足していたー


中学時代の悪友・春義が

大事なことに気付かせてくれたー。


「------」

莉音(哲真)は少しだけほほ笑みながらー

家に帰宅したー


「---おかえり、お兄ちゃん」


「---!?」


玄関に、妹の心愛が立っていたー


「--お、、お兄ちゃん!?!?」

莉音(哲真)が、凍り付くー


「な、、な、、なに言ってるのかな~?心愛ちゃん

 わ、、わ、、わたしはり、、り、、莉音だよ♡」


莉音(哲真)が、引きつった笑顔でそう答えるー


”な、なんで入れ替わりのこと、ばれてるんだ!?”と

内心で焦りながらー


「---ふふふ、お兄ちゃん。

 ちょっとツラかして」


ニコニコしながら言う心愛ー


「ひぇぇぇぇ…」

莉音(哲真)は震えるー


殺されるー…

そんな感情すら抱いてしまうほどに

心愛から殺意が放たれているー


心愛に言われるがままに、部屋に連れていかれる莉音(哲真)


部屋では、調子悪そうに寝込んでいる哲真(莉音)の姿があったー


「あ…試合終わったんだね…お疲れさま」

哲真(莉音)の言葉に、

莉音(哲真)は「う、、うん…本当にありがとう」と、お礼を述べたー


「どうだった?」

哲真(莉音)の言葉に、

莉音(哲真)は「負けちゃったけど…いい試合だったよ」と

笑ながら答えたー


髪はボサボサで

頬には、殴られた跡ー

身体も泥まみれー


「---お兄ちゃん。早く元に戻って。」

心愛が、にっこりしながら言う。


「---え、、、あ、、は、、はひっ!」

莉音(哲真)はそう言うと、

チェンジ☆アプリを利用してー

再び入れ替わりー

元の身体に戻ったー


「---は~~~~!って…いたぁ!?」

莉音が叫ぶー


激しい筋肉痛に、

春義に殴られた頬ー


莉音は、「風邪の辛さからは解放されたけど

なんかいろんな意味で痛い…」と苦笑いするー


「ごめんな…色々無理しちゃって」

哲真は咳き込みながら、そう呟くー


「---おに~ちゃん!」

心愛が、布団で辛そうに寝ている哲真の上に乗って来るー


「--ぐぇっ!」

哲真が苦しそうに叫ぶと、

心愛は言う。


「莉音お姉ちゃんの身体と入れ替わって

 試合に出るとかさ、莉音お姉ちゃんに迷惑かけすぎだよ~!

 お兄ちゃん、振られちゃうよ?」


とー。


その言葉に、哲真は「し、、仕方がなかったんだよ…し、、試合がぁ」と

悲鳴を上げながら言うー


その言葉を聞いた

哲真の上に乗った心愛がほほ笑んだー


「--ココアの刑だね!」


「---あ、、あの」

莉音が苦笑いしながら、哲真に声を掛けると

「あ、、り、、莉音は外に出てた方がいいかも!」と叫ぶー


「え???え???」

戸惑う莉音ー


「こ、、、心愛の刑は、この世でもっとも恐ろしーぐぼっ!」

心愛が哲真の口をふさぐと、

莉音の方を見てにっこり微笑んだー


「--ちょっと、莉音お姉ちゃんに迷惑かけた

 お兄ちゃんにお仕置きするんで、部屋の外で待っててくれますかー?」


「--え、、、あ、、うん」


莉音は、慌てた様子で哲真の部屋から出るー


扉が閉まると同時に

哲真の「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」という

悲鳴が聞こえてきたー


「えいっ!ここあ~~~~~♡」

妹の心愛の声が聞こえてくるー


「ぶぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

哲真の悲鳴ー


莉音は、部屋の外で、声を聞きながら

恐怖を感じて、苦笑いしていたー


”仲いいなぁ…”


哲真の悲鳴が聞こえるー


「-ーーここあどろっぷー!」

訳の分からない心愛の声が聞こえてくるー


やがてー

心愛が部屋から出てきて

「全部終了しました!」と、何故か敬礼をして、

そのまま立ち去って行ったー


「----だ、、だいじょうぶ?」

莉音が言うと、

哲真は「は、、、、はぅ…」とだけ、返事をしたー


・・・・・・・・・・


翌週ー

風邪もすっかり治った哲真は、改めて莉音にお礼の言葉を述べたー


「俺は、来年に向けて、また今日から練習だぜ!」

と、嬉しそうに叫ぶ哲真ー


そんな哲真に対して、

莉音は優しく「また、頑張ってね」と、微笑みかけたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わって試合に…!というお話でした~!

翌年も風邪を引かないように、祈りたいところですネ!笑

お読み下さりありがとうございました!!

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