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”草食系男子”

そう、表現するのが正しいのだろうか。


何事にも”奥手”な男子高校生・高本 良太(たかもと りょうた)は、

ある日の昼休みに、

友人の塚井 啓利(つかい はるとし)に呼び出されていたー。

自販機で購入したペットボトルのお茶を緊張した様子で一口飲むと、

呼び出された空き教室の扉を見つめるー。


啓利は、明るく元気な、お調子者男子高校生だー。


いつもオドオドしているタイプの良太とは正反対の男子高校生ー


びくびくしながら、指定された空き教室の扉に手をかける良太ー

扉を開けるとー


「---お~!良太!遅いじゃないか~!」

と、啓利が笑みを浮かべたー


良太は、啓利にいじめられているわけではないー。

性格は正反対だが、二人は”親友”の間柄だー。

無理やり友達にさせられているわけでもないー


二人は幼馴染で、

小さいころから一緒だったー。


だからー

活発で明るい性格でクラスの中心にいるような啓利と、

控えめで奥手・臆病でクラスの隅っこにいるような良太ー

そんな、正反対なふたりでも、

”親友”と呼べるような固い絆で結ばれていたー


「--ちょっとお腹が痛くなっちゃって」

良太がそう言いながら、空き教室の真ん中まで歩いていくと、

「それで、話って…?」と首を傾げたー


啓利は「ふっふっふ」と呟きながらー

あるものを見せたー


「--じゃ~ん!先週の2連休で、じいちゃんの蔵を

 整理していたら出てきたすっげぇお宝だぜ!」


そう言いながら、啓利はニヤニヤしているー


しかしー


「----…ナニコレ?」

良太は、首を傾げることしかできなかったー


小さな容器に、透明の液体が少しだけ入っているー

それが、2つ並べられているー


「---ははは、分からないか?

 ま、無理もないな!


 聞いて驚くなよ!これはなぁ…」


啓利が満面の笑みで叫んだー


「他人の身体に憑依することができる

 夢の”憑依薬”なんだ!!!」


とー。


「----」

「----」

満面の笑みの啓利と、

ドン引きした様子の良太ー


「---え?ノーリアクション???」

お調子者の啓利が、ニヤニヤしながら

困った顔をしているー


「-----え…いや、、、

 あの、、、僕、どういう反応すれば?」

良太が苦笑いしながら言うー


「--いや、「すげー!」とか、

 「わー!」とか、そういう反応ないのかよ!」

啓利の言葉に、

良太は「他の人間に憑依とか、無理に決まってるじゃん!

僕だって、そんなのに騙されるほど、お人好しじゃないよ!」と、

反論したー。


「--はっはー!さては良太、俺が

 わざわざ小さな容器に水を入れて、

 ”これは憑依薬だー”なんて、嘘をついていると

 思ってるんだな?」

啓利が笑いながら言うー。


「--え、、、いや、、その…」

良太が気まずそうに目を逸らすー

臆病な良太は、すぐにそうなってしまうー


「---俺がそんな面倒なこと、すると思うか~?」

啓利の言葉に、良太は頷いたー


確かにー

啓利は、考えるよりも身体が先に動くタイプだー

そんなこと、できないし、しないだろう。


良太は口を開くー


「---確かに、塚井くんに、そんなことできないよね。

 いつも何も考えずに行動するし」

と、良太は悪気なく、満面の笑みで答えたー


「--あ、、あのなぁ…言い方…!

 それじゃ、俺がまるで単細胞みたいな…!」


そこまで言うと、啓利は「って、そんな話したいんじゃなくて!

これ!憑依薬!」と

指をさしたー


「--お前、女子とか苦手だろ?

 この憑依薬を飲むと、2時間だけ、他の人の身体を

 奪って、思うままに動かすことができるんだ」

啓利は得意げに説明するー


「--え???嘘、、、ホントに?」

良太の言葉に、啓利は頷くー


「マジさ。じーちゃんの汚い字でそう書いてあったから。

 

 どうだ良太?

 俺と一緒に、女子に憑依してみないか?


 お前、図書委員の片桐さん、好きだろ?」


啓利の言葉に、

良太は、飲んでいたお茶を噴き出したー


「--ぶーっ!か、、か、か、、かたぎり、、かた、、」

真っ赤になってパニックを起こす良太ー


「はは、分かりやすすぎる反応だな。

 この憑依薬を使えば、片桐さんに憑依して、

 お前が2時間だけ片桐さんになれるんだ」


「ぼ、、ぼ、、ぼ、、ぼくが、、片桐さんに!?」

エッチな妄想をしてしまって、

良太は顔をトマトのように赤くしながら

アタフタしているー


「--はははははは!やっぱ良太は面白いな」

啓利が愉快そうに笑うー。


「ちょ、、か、、からかわないでよ!」

良太は顔を赤らめたまま、必死にそう口にするー

ズボンがパンパンに膨らんでいるー

勃起してしまっているのだー


「ふ~ん…やっぱお前もいろいろ変なこと想像してるんだなぁ」

啓利がニヤニヤしながら言うー。


良太は大人しいので、女子ともあまり絡みはないし、

エッチな素振りや、恋愛に興味がありそうな雰囲気も

普段は見せていないー


「---どうだ?良太。

 憑依薬は2本ある。お前に1本やるからさ。

 俺とお前で、楽しまないか?」

啓利の言葉に、

良太は「え!?えぇ!?で、、でもなんで僕に!?」

と、声を上げるー


啓利は「いやぁ、せっかく2本あるし、誰かと一緒に、って

思ったんだけど、やっぱ俺にとって一番の親友はお前だからさ」

と、笑いながら言ったー


”ほんとは、もっとエロイやつとか、喜びそうな友達に

 声かけたほうが面白いのかもしれないけどさ”と、

苦笑いしながら付け加える啓利ー


「塚井君…」

”一番の親友”と呼ばれて、凄く嬉しくなってしま良太ー


「---あ、でも!」

啓利が付け加えるー


「--憑依しても、あんま悪さはするなよ!

 例えばネットに裸晒したりとか、

 家から飛び出したりとか…

 あくまでも、部屋の中でちょっと楽しむだけにしろよな!」

啓利が言うー


良太は「わ、、わかってるよ!」と返事をしたー。


啓利はあくまでも”憑依を楽しむ”のが目的で、

大事にする気も、乗っ取った身体を傷つけるつもりも、ない。

平和的に憑依したい。

単なる好奇心からの憑依だー。


乗っ取られている側からすればたまったものでは

ないだろうけれど、それでも、啓利は

最低限の配慮を、乗っ取られる側に対してもしていたー


「--ルールを決めよう」

啓利が言うー


”本人の評判が落ちるようなことは禁止”

”相手が自分の部屋にいるときに憑依して、部屋からは出ない”

”乗っ取った身体を傷つけるようなことはしない”


「--こんな感じかな」

啓利の言葉に、良太は「あ、、当たり前じゃないか!」と呟いたー。


「さてさて、じゃあ、今日の放課後、俺の家で、やるか」

啓利は、”憑依薬を飲むと、自分の身体が抜け殻になるから、

飲む場所は選ばないとな”と付け加えた。


今日は啓利の両親の帰宅が遅いため、啓利の部屋で憑依薬を

飲むのが一番安全なのだと言う。


「--2時間の間に、どんなことをしたのか、憑依が終わったら

 お互いに反省会しようぜ!」

啓利は、そう言うと、楽しそうに笑ったー


イタズラをする前の、無邪気な小学生のようにー


・・・・・・・・・・・・・・・


そして、放課後ー。


啓利の家にやってきた良太は、

緊張した様子だったー


「--そ、そういえば、塚井くんは誰に憑依するの…?」

良太が尋ねるーー


啓利は「へへ、ひみつさ」と、笑ったー

”少なくとも、片桐さんじゃないから安心しろ”とー。


「ずるい!僕が憑依する相手は知ってるのに!」

良太の言葉に、啓利は「へへ、反省会のときに教えてやるよ!」と

笑みを浮かべたー


「---……ゴクリ」

良太は緊張した様子で憑依薬を見つめるー


図書委員の片桐 萌奈(かたぎり もな)ー


良太の憧れの女子生徒で、

話しかけられるだけで、良太は心臓が止まりそうになってしまいー


「--僕が…僕が片桐さんにー」

憑依ー


夢のようなことが、

本当にできるなんてー。


良太は、萌奈に憑依しても、悪さをするつもりはなかったー

ただ、鏡の前でほほ笑んだりー

ちょっと、女の子らしい仕草をしてみたり、

そのぐらいで、十分だし、

それでも、本当にドキドキしてしまうー


後は髪の毛をいじってみたりー。

そういう、日常的なことを、萌奈として、やってみたいー


「---さぁ…飲もうぜ」

啓利が憑依薬の容器を1本渡してくるー。


「--…でもさ、、本当に憑依できるのかな?」

良太が不安そうに呟くー


”じーちゃんの汚い字でそう書いてあった”だけじゃ、

信用できないー


「-----」

啓利が目を逸らすー


「---ちょっと!何その不安な反応!」

良太が叫ぶと、

「あぁ…いや、、実は憑依薬は最初3本あってな…

 俺、もう1回試したんだ」

と、啓利は頭を掻きながら呟いたー


「--え…!?!?た、、試した!?」

良太が叫ぶと、啓利は頷いたー


「--だ、、誰に憑依したの!?」

良太が言うと、啓利は目を逸らしながら答えたー


「そ、、その、、、そ、、、うん…妹で…」

とー。


「--出たー!シスコン!」

良太が叫ぶー


啓利は妹を溺愛していて、よく学校でもシスコンとか

揶揄われているー


「--おい!シスコン言うな!」

顔を真っ赤にする啓利ー


「だ、、だから!憑依はちゃんとできるってことさ」

啓利の言葉に、良太は頷いたー


”憧れの片桐さんになるー”

良太は、ドキドキしながら憑依薬を飲むー


「---効果は2時間だからな!変なタイミングで片桐さんから

 出ないように、注意しろよ!」


それだけ叫ぶとー

良太と啓利は、目を瞑ったー


・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


霊体になった良太は、

萌奈の家に向かったー


萌奈の家は、啓利が知っていたー


何故知ってるの?という言葉に、

良太は、”妹の同級生に片桐さんの妹がいてな”と、

説明していたー


萌奈の家に到着すると、

萌奈は部屋で勉強をしていたー


「うっ!?!?」

良太は思わず目を逸らすー


”女の子の部屋を見るなんて”

と、顔を真っ赤にして、目を逸らすー


霊体の状態だから、萌奈に気付かれる心配はないのにー

良太は顔を真っ赤にして「ごめんなさい!ごめんなさい!」と

叫んでいるー。


萌奈を直視できないー

萌奈の部屋を直視できないー


目を瞑りながら、萌奈の部屋に入っていくー


「-----う~ん…難しい~」

萌奈が、勉強しながら、何かを呟いているー


”うぅぅぅぅ…罪悪感が凄すぎる”

良太は”女の子の部屋に侵入している”ような気分に

なって、強い罪悪感を感じていたー


”効果は2時間”

その言葉を思い出して、良太は”は、、早く憑依しないと”と

呟くー


「---わかった!やった♡!」

萌奈が問題を解いて、嬉しそうに呟くー


”か、、かわいい…ダメだ…僕の体力が…”

霊体の良太は、そう呟いて、

また目を逸らすー


憑依しに来たはずなのに、

そもそも憑依出来てないまま、30分が経過したー


”うぅぅぅぅぅぅぅ…どうしようどうしよう”

良太は霊体のまま、萌奈の部屋に居座っていたー


「--塚井くんには悪いけど…

 やっぱり、僕、、憑依なんて…」


”憑依したことにして、適当に感想言おうかな”

などと、憑依を諦めかけたその時だったー


「--あ、そういえば~」

萌奈が机から立ち上がってー

歩き出したー


霊体の良太がいる方向に向かってー


「--あ!」

良太が気付いた時には、手遅れだったー


「--うっ!」

霊体の良太に偶然接触してしまった萌奈がビクンと震えるー


「---…」

立ち尽くす萌奈ー


「---あ…あぁぁあああ…」

萌奈の顔が真っ赤になっていくー


「ど、、ど、、どどどどどどどどど、どうしよう…

 ぼ、、、僕、、、ぼく、、憑依できちゃった…」


口から出たのは萌奈の可愛い声ー


「--むぐっ!」

自分の口をふさぐ萌奈ー


”ぼ、、僕の声が、片桐さんの声に…”


萌奈は口を塞ぎながら真っ赤になってあたふたしているー


「ど、、どうしよう、、僕…うあああああああ!」

恥ずかしそうに両手で顔を覆う萌奈ー


”草食系男子”の、

過酷な憑依タイムは、始まったばかりだったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


奥手な男子が憑依したら…?を描くお話デス~!


”憑依しても恥ずかしくて何もできなさそう”みたいなお話を

ツイッターで、他の方がしているのを見て

浮かんだアイデアですネ笑


この物語の良太くんは、どうなっちゃうのでしょうか~?

続きはまた後日!


※FANBOX小説は長編と週1連載(主にリメイク)を除き

 出来る限り、月を跨がないようにしています!

 「草食系男子の憑依事情」も、今月中に完結予定デス!

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