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誰にでも、守りたいものがあるー。


命かー

名誉かー

大切な人かー

大事なモノかー

組織かー


それぞれ、譲れないモノがあるー。


もちろん、俺にもあるー。

大切な彼女である亜優美を守りたいー

異世界に転生した今は、この世界の人々の幸せも、守りたいー


騎士団長のユーリスとミリアは、アリシア姫をー

騎士団長のフェルナンデスは、貧困に苦しむ弱き村人たちをー


”彼”にも、守りたいものがあるのだろうかー


騎士団長・ジーク。

”深淵の毒蜘蛛”の異名を持つ彼にも、

何か”譲れないモノ”がーー。


そしてーーー


”アイツ”にもあったのだろうかー。


元の世界での親友・神崎省吾ー。

アイツはいつも、明るく、笑っていたー


でも、時々ー

アイツは、どこか、儚げだったー


「---お前はいつも、、強いよな…」


アイツのー

神埼省吾の守りたいものは、なんだったのだろうかー。


異世界に来た今、全く気にする必要がないことがー

俺の頭の中から、離れなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)

和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


ダーク将軍

闇の帝国側に所属している「漆黒の鎧を身に纏う」騎士


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「----ー」


王宮内での執務を終えて、部屋に戻ろうとしていた和哉ー


深夜になってしまったー


「--肌荒れとか、やばそうだな…」

和哉は、頬を触りながら呟くー

アリシア姫の姿に女体化した和哉ー。


こんな生活を送っていたらー

肌も汚れてしまうかもしれないー


”姫ってことは、ある程度綺麗じゃないと

 いけないような気もするし…

 肌のケアとかそういうところもちゃんとしないと

 ダメかなぁ…”


「ラナ先生に聞くか」

ラナのことをふざけて先生と呟きながら

離宮の部屋を目指していると、

ふと、武器や防具などが保管されている部屋から

物音が聞こえてきたー


「こんな夜中に?」

和哉がそう思いながら、武器庫を覗くと、

そこには、騎士団長のフェルナンデスがいたー


フェルナンデスは、入り口に背を向けて、

一般兵士が使う武器を1本1本、磨いたり、掃除をしたり

チェックをしたりしているー


「---おや?」

フェルナンデスが和哉の気配に気づき、振り返るー


「これはこれは姫様。今夜もお美しいー」

近くには、いつもフェルナンデスが手にしている薔薇が置かれているー

”貧しい村”で餓死した妹の形見ー。


「---…こんな夜中まで…」

和哉が驚いた様子で言うー


フェルナンデスは、裏で貧しい村や集落を独自に支援しているだけでなく

兵士たちのことも、秘かにこうして、支えているー


「--兵は、命を懸けて戦っているー

 だから、私もそれに応えてやらねばなるまいー…


 --そういうことですよ」


フェルナンデスはそう言うと、苦笑いしながら、

指を口元で立てたー


”しーっ”と言いながら

「--大臣や宰相が気付くとうるさいのでー

 内密にお願いしますよ、姫様」

と、呟くー


”王宮騎士団長らしいふるまいをすべきー”

宰相ローディスや大臣など、王宮も複雑な力関係にあり、

騎士団長が一般兵のことを構っていたりするだけで

イヤな顔をする連中もいるー。

さらには、平民出身のフェルナンデスは

”これだから平民は”などとー

そう、言われることも多く、

普段は”貴族風な振る舞い”を意図的にしているー


「ーーー嫌われ者のままで、良いのですか?」

和哉が言うと、フェルナンデスは笑ったー


「---私は、好かれるために、騎士になったわけではありませんー

 たとえ、嫌われようとも、憎まれようともー

 それが、王国の、姫様の、苦しむ民のためになるのであればー

 このフェルナンデス、

 喜んで嫌われ者になりましょうー」


頭を下げるフェルナンデスー


「----…フェルナンデスー」

和哉は、フェルナンデスの覚悟に心を打たれながらー

その場を後にしたー。


最初は”偉そうにしているイヤな貴族”だと思っていたー

だが、違ったー


「---」

和哉は思うー


”反姫派”と呼ばれる騎士団長・ジークもーー

フェルナンデスやミリアのように、

何か”譲れない信念”を持っているのかもしれないー


とー。


・・・・・・・・・・・・


翌日ー


アクア王国の商業を担う”アクア商会”の商人たちとの

会談に出席するため、アクア商会本部に向かう日がやってきたー


”深淵の毒蜘蛛”の異名を持つ騎士団長・ジークが護衛として同行するー


「--まぁ、こんなところだな」

騎士団長・ユーリスが、和哉に”必要事項”を教えるー

アリシア姫として振舞うための情報や、

アクア商会についてー


”姫が参加する”というのは建前で、

実際のところ、話し合いは、アクア商会が進めるからー

アリシア姫としてすることは、ほとんどない、とのことだったー


「それとーー」

ユーリスが表情を険しくするー


「同行するジークは、お前も分かってると思うが

 ”反姫派”だー。

 …何があるか分からない…用心してくれ」


ユーリスの言葉に、和哉は頷くー

これまでのことを考える和哉ー

確かに、ジークは会議のたびに何かと突っかかっているし

露骨に”敵対”の姿勢を見せているー


「--俺もついていきたいのだが…

 俺の騎士団も別任務があるし、

 宰相ローディスや大臣たちとの兼ね合いもあるしな…」


ユーリスは、和哉のことが心配だったがー

色々事情があり、ついてこれないとのことだったー


騎士団長の一人であるユーリスには、当然、通常の任務や

その他にもいろいろな”役目”を抱えているー。

なかなか時間を確保できないほか、

ユーリス自身、王国のトップというわけではないから

自由に動くにも限界があるー


「いやー、大丈夫だよ。ありがとう」

和哉はそう言うと、ユーリスは「油断はするなよ」と、

ジークに注意するよう告げると、そのまま部屋から去って行ったー。


「-----さてー」

和哉が服装を整えて立ち上がるー


”俺が姫なんて、未だに慣れないなー”

そう、呟きながらー。


「-ーージーク様は、騎士団長の一人で、

 姫様のやり方に異を唱えている反姫派のひとりね。

 騎士団長の中では最年長で、

 実力は確かなんだけど、姫様とは折り合いが悪いみたい」


侍女のラナが突然解説を始めるー


「え?」

和哉が驚いていると、

ラナは頬を膨らませながら、

「聞かれる前に教えてあげたんですよー、だ!」と、

子供のようなことを言うラナー。


和哉は苦笑いしながら

「ありがとう」と、呟くー。


分からないことがあると、なんでもラナに聞く和哉ー

ラナは”ガイドブックじゃないんだけど!”などと、いつも喚いているー


「---ーーー気をつけなさいよ」

部屋から出ていく和哉に向かって呟くラナー。


「--はは、俺の心配、してくれてるのか?」

和哉が言うと、ラナは呟いたー


「--姫様の心配してるの!

 ”影武者”のあんたが死んだら、姫様も困るでしょ!」


とー。


「---はは、だよな」

和哉は、そう言うと、そのまま騎士団長のジークと合流し、

アクア商会本部に向かうため、自分の部屋から外に出たー


・・・・・・・・・・・・・・


アクア商会本部に向かう和哉ー。


騎士団長のジークは、不敵な笑みを浮かべながら、

和哉と共に、馬に乗りながら目的地を目指しているー


”反姫派”

和哉は、ジークを警戒していたー。


ユーリスによれば”さすがに姫を殺そうとはしないはずだ”

とのことだったが、分からないー


RPGゲームだとか、そういう世界では

こういう奴は、裏切るのが定番だー。

和哉はそんな風に思いながら、ジークと共にアクア商会本部に到着したー


”すごい街だなー”

いかにも、”商業の街”という感じの光景が

アクア商会本部では広がっていたー


「--我がアクア王国の商業を担う場所ですからな」

ジークは、そう呟くと、

「さぁ、参りましょう」と、和哉を、アクア商会との会議が

行われる場所へ案内したー。


アクア商会との会議が始まるー


ユーリスの言っていた通りー

アリシア姫の出席は形式的なものー。

騎士団長のジーク共々、”視察”に来ているような感じだったー


”ーーなんだかすごいな”

和哉は、改めて、自分がRPGゲームのような世界にー

しかも、姫になって、この世界にいることを、

不思議に思うー


”一体どうして自分はこのような世界に来たのだろうかー”

とー。


「---では、これにて、第38回アクア商会会議を終了いたしますー」


会議は、無事に終了したー。


アクア商会本部から出る和哉とジーク。


アクア王国一の商業街を視察しー、

全ての役目を果たすと、和哉とジークは

そのまま王国への帰路についたー


”何も、問題はなかった”

和哉が一安心していると、

隣の馬に乗っているジークが口を開いたー


「ところで、姫様…一つお聞きしたい」

ジークの言葉に、和哉は「なんでしょう?」と答えるー


「-----闇の帝国の女…ヒルダとか言いましたかな?

 姫様は、あの女を、”あゆみ”とお呼びになられていた」

ジークは、”レイン村”での戦いの際のことを口にしたー


和哉は咄嗟に”あゆみ”と叫んでしまったのだー


先日、王宮会議でもそれを指摘されているー


「--会議で説明した通りですー」

和哉は言う。


ユーリスと共に

”アリシア姫の幼少期の知り合いに似ていたから”という

言い訳で、通しているー


「---それは、妙ですな」

ジークが笑うー。


「--隠密部隊のカイルに調べさせましたがー…

 ”あゆみ”なる人間は、アクア王国に存在していた記録は、ありません」

ジークが和哉の方を見るー


「ーーー(こいつーー)」

和哉は”どう答えればいい?”と頭をフル回転させるー。


「--闇の帝国の女を”あゆみ”と呼んだー

 失礼ながら姫様、

 あの女とはどのようなご関係で?


 もしやー

 闇の帝国と通じているのではありますまいな?


 そうなればー

 重大なー」


ジークがそこまで言うと、

急に黙り込むー。


「--?」

ジークが近くの森を見ているー

和哉が首を傾げるー


森からーー

魔物の軍勢が出現したーー


月光が輝く中ー

ゴブリンやアンデッド、骸骨の騎士ー

魔物に取り囲まれたジークと和哉ー、

そして、ジークが率いている騎士団ー


「-----…”情報”通りねー」

魔物の軍勢の背後からー

亜優美がーーー

”ヒルダ”が姿を現したー


「---あゆ…」

和哉は咄嗟に”亜優美!”と叫びそうになったー


ヒルダと名乗っているがー

あれは、間違いなく、亜優美ー


「-ーーアクア王国王女・アリシア!

 その命、ここで貰うわー」

ヒルダが、魔物たちに指示を下すー。


魔物たちが一斉に、ジークら騎士団、

そして和哉の方に向かってくるー


「---!」

和哉は必死に剣を振るったー

骸骨の騎士や、ゴブリン、オークのような魔物を

次々と倒していくー


ジークら騎士団も応戦するー


魔物に隠れながら、笑みを浮かべるヒルダ…

いや、亜優美を見つめながら、和哉は思うー


”情報通りー”

とはー?


和哉は、戸惑うー


どういうことだー?


和哉は、骸骨の兵士を倒しながら、ハッとするー


まさかー

騎士団長・ジークが、闇の帝国と共謀してー

俺… いや、姫の命を狙っているのではー?


とー。


闇の帝国…

ヒルダと魔物の出現タイミングが良すぎるー。

アクア商会との会談を終えて、帰路についたタイミングで、

姿を現すなどー


”誰かが情報を流していなければ”


「---!」

和哉が、横から現れたゴブリンにタックルされて

吹き飛ばされるー


「ぐあっ!」

和哉は、慌てて剣を掴むー。


ゴブリンを斬るー


だがー

次から次へと、骸骨の騎士がーー


「----!」

和哉は、自分が息切れしていることに気付いたー


”くそっ!この身体じゃ…”

和哉は未だに”女として”の身体に慣れていないー

つい、自分のー

和哉としての身体の体力を基準に、動いてしまうー


「はぁ…はぁ…」

息切れしながら、魔物たちを見つめるー


この世界のエネルギー”エナジー”もナシにー、

学生時代剣道をやっていただけの自分がー

こんな大量の魔物を相手にー


少し離れた場所から見ていたヒルダが笑うー


「ーーーふふふ、おやり!」

魔物たちに指示を飛ばすヒルダー

”人を殺すことに”何の躊躇も見せない亜優美ー


”きみは、亜優美なのかー?

 それともー?”


和哉が、ヒルダの方を見るー


骸骨騎士たちに囲まれるー


死を覚悟する和哉ー


しかしー

周囲の骸骨が、突然、激しい轟音と共に砕け散ったー


「姫様!」

「--!」

和哉が顔を上げると、

そこには騎士団長のジークがいたー。


骸骨の騎士の攻撃から、和哉を庇いー

ジークが腕に軽い傷を負うー。


「-ジーク」

和哉が呟くー


”ジークが助けてくれた”

それが、意外だったー


「どうやら、待ち伏せされていたようですなーー

 だが、心配には及びませんー」


ジークがそう言うと、笑みを浮かべて

自分の配下の騎士たちに指示を出すー


「--この”深淵の毒蜘蛛”ジークがいる限りー

 魔物どもはー

 指一本、あなたに触れることはできないー」


ジークは、それだけ言うと、和哉を守るようにして

部隊を展開するー


あっという間に魔物たちを蹴散らしていく

ジークの部隊-


「--ど、、どうして?」

和哉が言うと、魔物を倒し終えたジークが呟くー


「--どうして?心外ですな

 私は王宮騎士団長のひとり。

 姫様をお守りするのは、当然のこと」

ジークの言葉に、和哉は

「-ーわたしのやり方に、不満なのでは?」と呟くー


ジークは笑うー


「ええ。不満ですー

 ですが、姫様ー

 私はあなたの命を奪いたいわけではないー

 全ては”王国”を守るためー」


ジークが語っている間にも、

ジークの部隊は魔物たちを蹴散らしているー


和哉がジークを見つめるー


「守るべきは”王国”-


 ---私はーーーー

 ”王国”を守りたいー

 そのためには、手段を択ばないー

 それだけのことー」


月の光に照らされるジークと和哉ー


ジークは続けるー


「ーー”故郷”を失う苦しみー

 姫様には分かりますまい」


そう呟くと、

一瞬ー

ジークの顔に”悲しみ”の色が浮かんだー


ジークはそこまで言うと、

近づいてきたゴブリンを、持っていた剣で、

斬り飛ばしたー


ジークの行動理念はー

あくまでも”王国”を守ることー


守べきは”姫”ではなく”王国”

全体を見据えているー


彼はー

ジークは、知っているからー


”故郷”を失うということをー。


”王国”を守るためであればー

何でもするー

”姫を玉座から下ろしー

 宰相・ローディスを中心に、アクア王国を繁栄させるー”

それが、”王国のために一番良い”のであれば、

迷わず、姫を引きずり下ろすー。


ジークは

”若く、優しすぎるアリシア姫がアクア王国を統治するより、

 姫には、国のシンボルとして、身を引いてもらい、

 国政は、宰相ローディスを中心に行うべきである”

と、そう考えていたー。


「-ーー今一度問います」

ジークは笑みを浮かべるー。


「---」

和哉が険しい表情を浮かべるー


「--あのヒルダとかいう女ー

 本当に、姫様と、何の関係も、ないのですな?」

ジークの言葉に、

和哉は戸惑うー


”異世界から来たー”

なんて、言えないー


ジークはニッと笑みを浮かべたー


雑魚の魔物を、配下たちに任せー

ヒルダの方に向かって行くー。


ヒルダが剣を構えるー。


「ーーーこの俺に勝てるつもりか…面白い」

ジークが笑うと、

ヒルダが、ジークに向かって、走り出したー


ジークとヒルダが剣をぶつけあうー。


”亜優美”

和哉は、ヒルダの方を見つめるー。


”あれは、亜優美なのかー

 それとも、他人の空似なのかー”


いやー。

和哉は、戸惑っていたー


分かっているー

あれは、確実に亜優美だー


どうしてヒルダなんて名乗っているのか、

どうして、俺のことが分からないのかー


「---ふふふふ、王宮騎士団長もこの程度?」

ヒルダが、”エナジー”の力で雷を帯びた剣を振るいながら笑うー


「---くっ」

騎士団長のジークが、ヒルダの激しい攻撃に押されていたー


「(…大丈夫なのかー?)」

和哉は少し離れた場所から、その戦いを見守っていたー


明らかに”少しずつ”ジークが押されているー

剣と剣がぶつかり合うー。


ジークは”エナジー”を使っていないー

いやー

”使えない”


ジークの得意とする”毒の霧”は周囲に味方がいるときには

使うことができないー

味方を、巻き込むからだー。


ヒルダが、ジークの剣を吹き飛ばすー


「---終わりよ」

ヒルダが笑みを浮かべるー

”人殺し”の笑みをー


「---”亜優美”」

そう叫びそうになったー


だがー


「----…仕方がないー」

ジークが不気味な笑みを浮かべたー


「---!?!?!?」

和哉は驚くー


ジークの腕の部分から、突然、吹き矢のようなものが

放たれるー


剣を落とし、無防備になったはずのジークの突然の反撃に

ヒルダも表情を歪めるー。


「--ーーー”深淵”に足を踏み入れた愚か者よー」

ジークは笑っているー


「”深淵”に飲まれる覚悟は、出来ているか?」


ジークの鎧の足の膝のあたりから、鋭い刃が突然出現し、

ジークがそれを手にするー


「--!?」

驚くヒルダー。


さらに、ジークは、鎧の腹部のあたりから、

蜘蛛の糸のようなものを発射し、ヒルダの剣を弾き飛ばしたー


「--くっ!?」

剣を飛ばされたヒルダー。


ジークの身体中から、

武器・武器・武器・武器…

あらゆる攻撃が放たれるー


”深淵の毒蜘蛛”ジークの

本当の奥の手ー


”身体中に仕込まれた暗器”による攻撃ー

そのひとつひとつに、ジークのエナジーが

吹き込まれておりー

”予測不能の箇所”からの攻撃が、相手を襲うー。


「--やれやれ、あまり”奥の手”は、他人に見せたくないのだがー」

ジークはそう言いながら、ヒルダに近づいていくー


「---勝負あったなー」

膝をつくヒルダに、ジークが笑みを浮かべながら剣を向けるー


「---…!」

和哉は、慌ててジークたちに駆け寄るー。


「---殺しなさい」

ヒルダが呟くー


「---…」

ジークは勝ち誇った表情で、ヒルダを見つめると、

和哉の方を見たー


「姫様ーーー

 この者に、とどめを刺しても、構いませんな?」

ジークが笑うー


”亜優美…”

和哉は、膝をついているヒルダの方を見るー


だが、ヒルダは、和哉と目が合っても

反応する素振りを見せないー


”亜優美ーー”


「-------」

ジークが不気味な笑みを浮かべるー


「姫様ー

 この女を、殺しても、構いませんな…???」

ジークがもう一度、和哉に問うー。


まるでー

”和哉と亜優美の関係”を見透かしたかのようにー


「-その者はーー」

”ジークに反応を試されているー”

そう思いながら

和哉が、”なんとか亜優美を殺されないように”必死に

言葉を考えながら、口を開いたその時だったー


「---敵襲!」

ジークの部隊の騎士の一人が叫ぶー


「なに?」

ジークが、その方向に向かって武器を構えるー。


「----あいつは!」

兵士の一人が叫んだー


森から飛び出してきたのはー

闇の帝国の

”漆黒の鎧に身を纏った騎士ー”

和哉たちも、以前対峙したことがあるー


”ダーク将軍”とか呼ばれていた騎士だー。


ダーク将軍が、兵士たちを蹴散らし、

ヒルダに手を差し伸べるー

ヒルダがダーク将軍の手を掴み、

ダーク将軍の馬に飛び乗ると、

ダーク将軍は、ヒルダをうしろに乗せたまま

和哉とジークの方を見つめたー


「-------」

漆黒の鎧を身に纏うダーク将軍は、和哉の方を見ると、

そのまま和哉の方に近づいてきたー


「--姫様には指一本ー」

そう言いかけたジークを、斧で攻撃するダーク将軍ー

咄嗟にガードしたジークは、少し先に吹き飛ばされるー。


そしてー

和哉の目の前に、馬に乗ったダーク将軍と、

その背後にいるヒルダがやってくるー


ダーク将軍は、和哉をしばらく見つめると、

ボソッと呟いたー


”---愛する者を救いたくばーーー

 ”ガラム海岸”へ来いー”


「なに!?」

和哉が反応すると、

ダーク将軍は、もう、馬を走らせて遠ざかっていたー


ヒルダが「とどめを刺せなくて、残念だったわね!」と、

ジークたちに向かって叫んでいるー。


「---くそっ!」

騎士団長のジークが舌打ちしたー


「---ーーー」

ダーク将軍から言われた言葉ー


”---愛する者を救いたくばーーー

 ”ガラム海岸”へ来いー”


それがー

いつまでも和哉の中で繰り返し、響いていたー


⑬へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編第12話でした~!

それぞれの騎士団長の、背景なども分かってきたところで、

次回からは、重大なことがだんだんと明らかになっていきます~!


今日もありがとうございました~! 

(Fanbox)


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