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大学生の三島 昌平(みしま しょうへい)は、

同じ大学に通う彼女の須藤 桃花(すどう ももか)の家の前に

やってきていたー


「大丈夫かなぁ…」

昌平は少し心配そうに、そう呟くー


昌平が心配しているのには”理由”があったー


昨日、桃花が大学を休んだのだー。

ただ、大学を休んだだけであれば、ここまでは心配しない。

誰にだって体調を崩す可能性ぐらい、あるからだー。


だがーー

桃花は”大学に連絡もせず”無断で休んだのだー。

そして、昌平からもいろいろとLINEを送ってみたが

”既読”がつくだけで、返事が来ないー


そのことで、居ても立ってもいられなくなり、

大学が休みの今日ー

片道1時間30分の時間をかけて、

桃花の家の前まではるばるやってきていたのだったー


”既読”が付くのだからー

桃花はスマホを確認できる状況にあるー


…と、思いたい。

しかし、他人が桃花のスマホを見ている可能性も

否定はできない。


確かー

桃花は暗証番号でロックしてあったから、

他人が簡単に桃花のスマホを開くことは

できないはずだが、

知り合いだったり、桃花から聞き出したりしていれば

話は別だー。


”何か事件に巻き込まれたのではないか”

そんな風に思いながら、

昌平は、恐る恐る桃花の部屋のインターホンを鳴らしたー


するとー


ガチャ


玄関の扉が開いたー


「-----あ…昌平…」

桃花が呟くー


「--も、桃花…よかった

 連絡ないから心配したんだぞ」

昌平がそう言うと、

桃花は「ふふ…ごめんごめん」と呟きながら

昌平を部屋の中に招き入れたー


部屋の中に入ると、

机の上に、バナナが置かれていたー


「来てくれると思ってたわよ」

桃花が呟くー。


「----」


昌平は机の上のバナナを見つめるー


ちょうど、桃花が食べている途中だったのか、

食べかけのバナナだー。


「---ど、、どうしたんだよ…昨日は…?」

昌平が不安に思いながらも尋ねるー


少し、部屋が荒れているー

机の上に無造作に置かれたバナナと、

妙に色っぽい桃花の服装も気になる


ショートの赤いワンピース姿の桃花ー

化粧も少ししているだろうかー。

普段の桃花は動きやすい服装であることが多いために

”いつもは見ない雰囲気の桃花”に

昌平は強い違和感を感じていたー


「--どうしたって?んふふ…♡」

桃花は昌平の質問に対して、具体的な回答を

することなく、バナナをくちゅくちゅと、

色っぽく、音を立てながら、食べているー


普通の食べ方ー…ではない。

何度も口に入れたり、出したり、

まるで、男のアレを咥えているかのような

イヤらしい食べ方ー


「んふふふふ…♡」

桃花はしばらくすると、昌平の方を見て、不気味な笑みを浮かべたー


「ねぇ、昌平…バナナって素敵よね」

うっとりとした表情で、自分の唾液のついたバナナを

指でなぞる桃花ー


いつもとは違う妖艶な雰囲気の桃花に、

昌平は思わずドキッとしてしまうー


昨日ー

連絡もなしに大学を休んだ挙句、

昌平や共通の友人がLINEで連絡しても応答がなかったー


そして今日ー

今の桃花の現状に、昌平は”強い違和感”を抱かずには

いられなかった。


何かが、おかしいー。


「---バ…バナナは確かに美味しいけどさ…

 昨日は…何かあったのか?

 俺も、みんなも、心配してたんだぞ?


 桃花が急に大学を休むことなんて、今まで

 一度たりともなかったし…」


昌平が今一度

”昨日、大学を休んだことについて”問いただすー


別に、怒っているわけでは、ないー。

純粋に桃花のことを心配しているのだ。


「---ねぇ…見て」

桃花が、机に置いてあった別のバナナを手に取るとー

バナナの皮をむき始めたー


「皮をむくのって…楽しいよね…?うふふふふふ♡」

桃花が興奮しきったような声を出すー

普段の桃花が絶対に出さない様な声ー


「--も、、桃花…?」

昌平の中の違和感がさらに強まっていくー。


なんだー?

何が、起きたんだー?


「--皮を…こうして…優しく、けれども強くー

 剥くの」


興奮した様子で、バナナの皮を剥く桃花ー


「--いいわよねぇ?バナナ」

桃花が今、剥いたばかりのバナナを咥えて

ペロリと舐めると、

昌平にそのバナナを差し出した。


「昌平も、食べる?」

とー、そう呟く桃花の瞳は、

正気を失っているようにも、見えたー


「た、、食べるって…って、いうか、それより

 昨日はどうしたんだよ…?

 なんで答えてくれないんだよ…?」

昌平は、さらに強い違和感を抱き、

桃花に問いただすー。


「ーーーバナナの気持ち…、わかる?」

桃花が、バナナの実を触るー。


「--皮の中にいる、バナナの気持ち、昌平にわかる?」

桃花が繰り返し同じ言葉を口にするー


「--わ、、わかんないよ…そんなの」

昌平は、激しく戸惑っていたー。


桃花の様子が明らかにおかしいー

気でも触れてしまったのではないかと、

一瞬心配になるー


桃花と付き合いだしてから、

特に桃花が、特別バナナにこだわりを持っていたような

感じはなかったー。

バナナが好き、とも嫌い、とも聞いたことがないー。


「---わたしには、分かるの」

桃花がクスクスと笑いながら呟く。


そして、椅子に座って、色っぽく足を組むと、

「わたしには、バナナの中身の気持ちが分かるのよ」と、

甘い声で囁いたー


「も、、も、、桃花…?

 バ、バナナのことは分かったからー」

昌平が桃花を刺激しないようにして、

穏やかな口調で言うー


酔っぱらってるのか?

いやー

それにしてもお酒のニオイはしないし、

桃花はあまり飲めないはずだー。


「---”皮”って、いいものよ…?うふふふ♡」

桃花が自分の頬や、赤いワンピースから覗く綺麗な足や腕を触るー


まるで、別人の身体を触って

うっとりとしているかのような、そんな”不思議な表情”を浮かべながら

桃花は、さらに別のバナナを手にしたー


「ねぇ、このバナナ、綺麗でしょ?」

黄色い、ごく普通のバナナー

特に目立つ傷みもなく、桃花の言う通り”キレイな”バナナだー。


「--なぁ、バナナの話はもういいから!

 昨日のこと、みんな心配してるんだぞ!?

 怒ったりしないから、何かあったなら言ってくれよ!」

昌平が少しだけ、語気を強めたー


「---この綺麗なバナナ…」

桃花が、綺麗なバナナの皮を剥こうと、手を動かすー


「バナナはもういいから!!!!」

昌平が思わず叫んだー


「バナナじゃなくて、昨日、桃花になにかーー」


「---この綺麗なバナナ!!!!!!!!!!」

桃花が怒鳴り声をあげたー


「--!?」

昌平が、言おうとしていた言葉を遮られてー

そして、普段、穏やかな桃花が大声を出したことに驚いてしまうー


「--この綺麗なバナナ…皮は綺麗でしょ?

 でもねー」

桃花が、まるで”バナナの話を黙って聞け”と言わんばかりに

強引に話を進めるー


昌平が戸惑う前で、

桃花は、3本目のバナナの皮を剥くー。


そのバナナはー

皮は綺麗だったが、中身は”黒く”変色していたー


よくある、見た目が傷んでいるバナナだー


「--”外”は綺麗なのに

 ”皮”をめくると、中には”黒い”ものが潜んでいるー


 なんだか、バナナってー

 わたしみたいじゃない?」


桃花がにやりと笑みを浮かべたー


「は…???な、、何を言って…?」


昌平が冷や汗をかきながら言うと、

桃花は、にっこりとほほ笑んだー


「わたしの”中”にも、この、皮は綺麗だけど

 中身は黒く変色していたバナナみたいに

 ”黒い何か”がいたりして…?ふふふふ」


桃花の言葉に、昌平は首を振るー


「-い、、言ってる意味がよく分からない…

 も、、桃花は実は腹黒だ、、って話か?」

昌平がそう桃花に言い放つと、

桃花は首を振ったー


「違うー

 わたしの中に、今、皮を剥いたバナナのように

 ”黒いバナナ”が潜んでるとしたら?


 ふふふー


 バナナはわたしと同じー

 皮を被って、生きているー」


桃花が黒いバナナをうっとりとした目つきで見つめるー


「---………え…???え???」

昌平には、もはや理解不可能だった。


桃花が何を言いたいのかー

桃花が、何を求めているのか、全く分からないー


それにー

さっきから

”妙な女言葉”なのも気になる


もちろん、桃花は女性だから

女性らしい口調なこともあるが、

なんだか、”言葉では言い表すことのできない”

強い違和感を感じるー。


なんと説明すれば良いのだろうかー。


”男が、無理に女の口調を真似ているような”

そんな、漠然とした違和感を抱くー。


「---ねぇ、今のわたしって、バナナの皮に似てると思わない?」

桃花がクスクスと笑うー


椅子から立ち上がると、桃花は、自分の指をペロリと

舐めながら、不気味にほほ笑むー


「--ど、、どうしちゃったんだよ桃花…?

 な、、なんか、変だぞ?」

昌平は、ついに、単刀直入に、今思っていることを

口にしたー


桃花の様子が、”どう考えてもおかしい”


「---わたしは、バナナの皮と同じー

 うふふふふ…今のわたしは、ただの”皮”なの」

桃花が深紅に染まった唇をペロリと舐めるー


「か…皮…?」

昌平は”恐怖”を抱いたー

目の前にいる桃花に対してー


いつも、一緒に過ごしてきたはずの桃花に対してー

恐怖をー。


「--桃花が…皮…?」

昌平が、困り果てた感情を表すかのように

苦笑いするー


桃花が「そうよ。わたしは、バナナの皮と同じー」

と、にっこり笑うー


「--わたしはねぇ…小さいころから、バナナが大好きだったの」

桃花がモデル歩きをしながら、

部屋の中を歩き回るー


「--バナナは、いつもいつも、皮に守られていて素敵だなぁって」

桃花はそう呟くと、

昌平の方を見て、不気味な笑みを浮かべるー


「--バナナの実になりたい…

 それが、わたしの夢ー くふふふふふふふふ♡」


桃花の笑い方が、おかしいー

桃花は、こんな笑い方をしないーー


「---も、、、も、、、桃花!?

 どうしたんだよ!?おい!」

昌平が叫ぶー


正気じゃないー

”昨日”何かあったのかー?

大学を無断で休み、みんなからの連絡を無視してしまうような

”何か”があったのか?


「---くくく」

桃花は不敵に笑うと、食べかけのバナナをおいしそうに

舐め始めたー


唾液が桃花の手に飛び散るー


「おい!!!桃花!!!」

昌平が声を荒げたー


桃花に対する怒りー、

というよりも”訳の分からないこの状況”に対する恐怖ー


「何があったんだよ!!!頼むから教えてくれー!」


桃花の気が触れたのかー?

それともー?


昌平は、”何かあった”と確信して叫ぶー


「---だったら、目の前にいる、バナナの皮剥いてごらん?」


「は???」

昌平が、困り果てた様子で言うー。


「--わたしを、バナナみたいに、剥いてごらん?」

桃花が挑発的な笑みを浮かべるー


「--い、、意味がわから…」


「---剥けよ!!!!わたしをバナナみたいによぉ!!!!!!」

桃花が突然、怒りの形相で怒鳴りだしたー。


「---な、、、な、、、…」

昌平は、言葉も失ってしまうー


「---む・け」

脅しの口調でそう呟く桃花を前にーーー

昌平は、ただただ混乱することしかできなかったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・


コメント


意味不明な言動を繰り返す彼女ー

”何も分からない”まま、大切なヒトが急にこんな風に

なってたら…びっくり…というより

戸惑っちゃいますよネ…!


じわじわ、ねとねと…な皮モノ、

続きはまた近日中デス~!

(②で完結、月を跨がないように今月中に完結します!)


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