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文哉は、不安を感じながら学校に登校したー。


最近、彼女の穂乃香の様子がおかしいー。


三人組の不良

龍一郎、卓、達平に何か脅されているのではないか。

そんな風に、文哉は考えているー。


「----どうにか…どうにかしないと…」


もし、あの3人に脅されているのであれば、

早くどうにかしないといけないー

実際に、穂乃香は”喫煙”させられていたー。

穂乃香が自分の意思で煙草を吸うなんてありえないー


あいつらが、絶対何かーー


「---最近、何かあったの…?」


一人、悩んでいると背後から

クラスメイトで演劇部部長の順子が声を掛けてきたー


順子も、穂乃香の異変に気付いているようだー。


「--……俺にもわからないんだー」

文哉は、最近のことを隠さず話したー


穂乃香の、喫煙のこともー。


順子は、穂乃香の親友だー。

信頼も出来るー

だからこそ、相談したー


「-----」

順子が深刻な表情で、文哉の方を見るー


「---穂乃香が、脅されてるってこと?」

順子の言葉に、文哉は

「--それしか考えられない」

と、答えたー


「---…」

順子が口を開こうとしたその時だったーー


「---!!!」

教室に入ってきた穂乃香の姿を見てー

唖然としたー


明らかに化粧の濃くなった穂乃香ー

髪型も少し派手になっているー

耳にはピアスのようなものが光っているー


「--!」

順子も穂乃香に気づいて唖然とするー


「--ちょっと」

穂乃香が低い声で順子を睨むー


「え…?」

順子が困惑していると、

穂乃香は、「わたしの彼氏、取らないでくれる?」と

敵意むき出しで順子を睨みつけたー


「--え、、ち、、違うよ、、、」

順子は、必死に弁明しようとしたー

文哉を取る気なんて、全くないー


「---どいて。わたしの方が可愛いんだから」

そう言うと、穂乃香は順子を突き飛ばして、

文哉の前に座った。


「おはよ♡」

穂乃香が文哉の方を見て、嬉しそうに言う。


「お、、、おはよう…

 あ、、あのな?穂乃香…

 金崎さんとは、ただ話してただけで…」

順子と話していたことを弁明する文哉。

当然、文哉も順子に異性としての好意はないし、

そもそも、穂乃香と順子は親友の間柄であり、

文哉を交えていつも話していたー。

当然、文哉と順子が話していても、穂乃香は

「わたしの”彼氏”と”親友”が話しているー」ぐらいの考えで

何か言ってくることはなかったー


「--あんなブスより、わたしでしょ?」

穂乃香が可愛らしい仕草を交えながら言うー


「--ほ、穂乃香…?本気で言ってるのか?」

文哉は戸惑いを隠せないー


順子は、少し離れて様子をうかがっているー


「--当たり前でしょ?わたし、誰よりもかわいいんだから!」

穂乃香の表情は”本気”だー

”言わされている”感じではないー


「---…ほ、、穂乃香…」

文哉は困り果ててしまうー。


「----…」

穂乃香が勝ち誇った表情で順子の方を見るー


そして、文哉に視線を戻すと少しだけ表情を暗くしたー


「---…そ、そんな顔しないで…

 ごめんね…?」

とー。


その様子を教室の外からB組の不良三人が見つめていたー

龍一郎と眼鏡をかけた卓、ロン毛の達平の三人だー。


「---…へへへ…」

リーダー格の龍一郎が笑うー


「---お前は悪い子だ

 先生は敵だ。反抗しろ」


「---俺たち、読みたい漫画があってさぁ…

 ちょっと万引きしてきてくれよー」


「--お前は可愛いー

 他の女子たちはブスだー。

 徹底的に見下してやれ-。

 わたしは可愛いって思いこめー」


達平が施した”洗脳”が聞いているー

今まで、自分の容姿を自慢するような、鼻につく

振舞いは絶対にしなかった穂乃香が、

自分の容姿を自慢して、周囲を見下しているー


洗脳されている証拠だー


「すげぇだろ?」

ロン毛の達平が笑うー。


「--すげぇ力だよ。そんなもん、どうやって覚えたんだ?」

龍一郎が言うと、

「お前にもそのうちやるよ」

と達平は答えたー


眼鏡をかけた卓は、少し引き気味だー

”洗脳”して、真面目な子を変えてしまうー

”非・人道的”であると、卓は思っていたー


「---”アイツ”への、感情だけそのままー

 ゾクゾクするだろ?」

達平が笑うー


達平はあえてー

穂乃香に対して”彼氏の文哉”に関係する洗脳はしていないー


文哉に対する好意はそのままだし、

仲良しなのも、そのままー


だからー

悪いことをしておきながら、

文哉に対しては謝ったりするー


そんな穂乃香と

困惑する文哉を見てー

達平たちは、不気味な笑みを浮かべていたー


「--よぉ」

少し前を置いてから達平が、C組の教室に入っていくー。


「--あ!おはよ~!」

穂乃香が嬉しそうに笑うー


戸惑う文哉ー


そしてー

”回収”の時間だー


「---俺たち、読みたい漫画があってさぁ…

 ちょっと万引きしてきてくれよー」


昨日の放課後に”洗脳”して、やらせた”犯罪”-


「盗って来たか?」

達平が聞くと、

穂乃香は「うん!」と鞄から、漫画本を取り出したー


「--へへ、どうだ?人生初の万引きは?」

達平が言うと、

穂乃香は「ふふ、スリルがあって最高!」と

笑みを浮かべたー


「ま…万引き!?!?」

文哉が声を荒げるー


周囲のクラスメイト達が一瞬、振り向くー


順子も、気にしているー


「----」

”穂乃香のために”文哉は小声に変えて

龍一郎たちの方を見るー


「--お前ら…穂乃香に万引きさせたのか?」

文哉が拳を震わせながら言うー


「--文哉、違うよ!

 わたしが自分でやったの。

 みんなが、読みたい漫画があるって言ってたから!

 わたし、優しいでしょ?」

穂乃香が、”何の罪の意識もなく”ほほ笑むー


「--ほ、、穂乃香…やらされてるのか…?こいつらに!」

文哉が言うと、

穂乃香は首を振ったー


「--ごめんね!でも、自分の意思でやってるの!ほんとだよ!

 脅されたりなんかしてないから!」


”嘘だー”

そう思いつつも、

穂乃香の表情に”曇り”はないー

脅されていればーこんな笑顔で淡々と言えるはずがないー


「--おい」

龍一郎が、文哉の肩に手を置くー


「--”彼女”が”万引き”したんだぞ?

 先生に言わないのかよ?

 万引きは”犯罪”だぜ?」

龍一郎の言葉に、文哉は「く…」と表情を歪めるー


「--正義の生徒会副会長さんよ?

 お前の彼女が、俺たちのパシリになって

 万引きしたんだぜ???

 それも、自分の意思で。

 どうするよ?あ????」


龍一郎が文哉を睨むー


「--何とか言えよ、偽善者野郎!!!

 自分の彼女だと、目を瞑るのか!」

机をたたく龍一郎ー


文哉は、涙ぐんだ目で龍一郎を睨み返したー


「--お前らが…やらせてるんだ」

とー。


自分に言い聞かせるように、そう言い放ったー

泣いているのは、怖いからじゃないー


脅されているにせよ、穂乃香に裏切られた悲しみー

穂乃香を救ってやれないー、

相談もしてもらえない悔しさー

そして、穂乃香に万引きまでさせた龍一郎らに対する怒りー


その、涙だー


「はん」

龍一郎は鼻で笑ったー


「-もっともっと、パシッてやるから、覚悟しとけ」

そう言うと、龍一郎たちは立ち去って行ったー


「----」

立ち去り際に、眼鏡をかけた卓が、文哉の方を振り返ったー


文哉のあらゆる感情が込められた強い目を見てー

卓はため息をついたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


穂乃香は、空き教室で龍一郎・達平と共に

煙草を吸っていたー


「へへ、すっかり悪い女になっちゃってなぁ」

龍一郎が穂乃香の胸を触りながら言うー


穂乃香はそれを気にする様子も見せずに、

「ふふふ、わたしはかわいいもん。

 ルールとかさ、そういうもの、うざいだけでしょ?」と

笑いながら答えたー


・・・・・・・・


校舎裏ー


文哉は、不良の一人・卓に呼び出されていたー


「--話ってなんだ?」

文哉が怒りの形相でやってくると、

卓は、気まずそうに眼鏡をいじったー。


「--お前の彼女…」

卓が口を開くー


周囲を気にしながらー


「---”洗脳”されてるー」


「--!?」

文哉が表情を歪めた。


空気が凍り付くー

一瞬、世界の音が何もなくなったかのようにー

何も、感じられなくなってしまうほどの衝撃を、

文哉は受けた。


「--俺のダチのロン毛のやつ…

 達平が、人を洗脳する力を身に着けていてさ…

 あいつが、お前の彼女を洗脳したんだー」


卓が早口で言う。


「--ふ、、ふざけるな!」

文哉は卓の胸倉をつかんだー


「--お、、お、、俺だって、

 こんなことになるとは思わなかったんだ!

 俺は止めた!やりすぎだって!!

 

 でも、達平と龍一郎は、やめる気なんて全くねぇ…


 既にお前の彼女は、かなり洗脳されてる…

 早くどうにかしないと、手遅れになるぞ!」


卓が叫ぶー。


「--…せ、、洗脳って…いったい何をしたんだ!!!」

文哉が叫ぶと、

卓は今まで達平が命令していたことを思い出しながら

全てを伝えたー


「--このことは誰にも言うなよ!」

それだけ言うと、卓は足早に立ち去って行ったー


”洗脳”


「そんな……

 穂乃香……」


文哉は膝を折るー。

穂乃香が、アイツらに洗脳されているなんてー


でもー

それなら、穂乃香の豹変の説明もつくー


穂乃香は、アイツらに、洗脳されているー


「---穂乃香…必ず…

 必ず、、、助けるから…」


そう呟いて、決意の眼差しで立ち上がった文哉ー


そんな文哉が

学校の正門から出ていくのをー

体育の教師・穂塚(ほづか)が、見つめていたー


・・・・・・・・・・・・


翌日ー


文哉は穂乃香を呼び出したー


「なぁに、話って?」

ネイルされた爪をいじりながら、

穂乃香が近づいてくるー。


朝早くー

登校時間の前に、話をつけたいー


文哉は、口を開いたー


「---……あいつらに、洗脳されたのか?」

とー。


単刀直入に聞いた。


穂乃香が「え?」と、半分笑いながら返事をするー


「---穂乃香……

 あいつらに、洗脳されてるのか?」

文哉が言うと、穂乃香は笑い出したー


「あははははっ!文哉~!

 急に呼び出して、洗脳って、、どうしたの?」


穂乃香には”洗脳されている自覚”が全くないー。

自覚ないまま、変えられているー


「--穂乃香……最近、自分で自分をおかしいと思わないか?」


文哉が言うー

穂乃香は、文哉の話を真剣に聞くー


”文哉が好きな感情”は

”あえて”そのままにされているからだー。


「---自分を可愛いと言い始めたり…

 金崎さんに、乱暴なことしたり…

 不良たちと付き合いだしたり、

 万引きしたり…

 そんなこと今まで一度もなかったじゃないか!!」


文哉が言うー


穂乃香は鞄から煙草を取り出すと、

屋上の端で煙草を吸い始めたー


「---……う~ん……」

穂乃香が考えるー。


確かに、そういうことは今までなかったー


「---なんでかな~?

 ほら、わたしも年ごろだし、いろいろ変わる時期だから!」

穂乃香が、無理やり頭の中で理由を作って笑みを浮かべるー


「--万引きは犯罪だろ!穂乃香!しっかりしろ!」

穂乃香に向かって叫ぶー


「--ふふ、ルールなんてくだらないって思わない?

 文哉も一緒に、もっと楽しもうよ!

 真面目にやるなんて、馬鹿みたいでしょ?」

穂乃香が煙草の煙を吹かしながら言うー。


「--穂乃香!煙草だって、、どうしてそんな急に吸い始めたんだ!

 ……洗脳されてるからだろ!!」

文哉が言うー


なんとか、正気に戻ってほしいと願いを込めながらー


「----…美味しいんだもん」

穂乃香はそう言うと、煙草をポイ捨てして、それを踏みにじるー。


「--穂乃香!頼む!…穂乃香はアイツらに洗脳されてるんだ…

 気づいてくれ…頼む…」

文哉が言うと、

穂乃香が近づいてきたー


そしてーー


「---ねぇ…さすがにちょっと…うざいよ?」

穂乃香が舌打ちするー


「--穂乃香…」

文哉が穂乃香を見るー


文哉に対する感情は、何も洗脳されていないー

しかしー

”朝早く、彼氏に呼び出されて、急に洗脳されている!などと

 言われて、まるで自分が悪いかのように言われた”

ことで、穂乃香は純粋に腹を立てていたー


「----急に朝早く呼び出して、

 いきなり洗脳とか、あり得ないでしょ!?!?

 いくら文哉だからって、わたし、怒るよ!?」

穂乃香が声を荒げるー


「--違うんだ!穂乃香!本当に…!」

文哉が必死に叫ぶー


「-ーもういいよ。文哉なんて知らない!」

穂乃香は不貞腐れた様子で、そのまま屋上から

立ち去ってしまったー


「穂乃香…」

文哉が唖然とするー



”ククク”


廊下で穂乃香と合流した達平は笑うー


龍一郎・達平・卓を見て

穂乃香は嬉しそうにほほ笑んだー



”洗脳して、”彼氏を嫌い”にするのは簡単だー”


だがー


こうしてー

自然と絆が壊れてくれた方がー

さらに、面白いー


壊れろー

崩れろー


絶望がー、

物語をフィナーレへと向かわせるのだからー。



④へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


どんどん状況は悪化…

続きはまた後日デスー!


今日もありがとうございました!!

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