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女子高生・上杉 純玲(うえすぎ すみれ)は、

どこにでもいるようなごく普通の女子高生ー


可愛らしい容姿と明るい性格から

友達も多く

素行も良いために、先生たちからの評判も良い。


家族とも仲良しで、

母・留美子(るみこ)、父・太一(たいち)、姉・海美(うみみ)とも

とても仲良しだー。


だがー


「-----」

純玲は、最近、悩んでいたー


”ある男”に”ストーカー”されているのだー。

ストーカー男の素性は分からないー。

だがー、”ストーカーされている”のは

間違いないー。


「---へへへ」

男が笑うー


純玲は、親友の和枝(かずえ)と共に

高校の中に入っていくー


”とにかく、一人にならないように”

”人通りの少ない場所を歩かないように”


”ストーカー”の存在に気づき、純玲は

そうして、自分の身を守っていたー


先生や家族にも相談はしてあるものの、

先生や家族に出来ることにも限界があったー


ストーカー男が、直接的な行動に出ないからだー。


純玲は”確実にストーカー”だと判断しているものの、

距離も保っているしー

声を掛けて来るわけでもなければー

何らかのリアクションを起こすわけでもないー


だから、手を出せなかったのだー。

もちろん、両親と一緒に警察にも相談した。

だが、”現時点でその男に対して何かするのは難しい”というのが

警察の判断だった。


「----大丈夫?」

親友の和枝が心配そうに言うー。


学校でも、家でも、必要以上に悩むことはしないー

彼女は、何事もポジティブに考えるタイプだからだー。


しかしー

それでも、やはり、気になってしまうー

一体何が目的なのかー


とー。


もう数か月は続いているー


でもー

”何も”してこないー


声をかけてくるわけでもないし

近づいてくるわけでもないー

盗撮などをしている様子もないー。


それでもー

確実に”純玲”についてきているのだけは、

間違いなかったー。


・・・・・・・・・・・・


「----へへっ」

男は笑みを浮かべたー


汚らしい身なりの男ー

湯河原 譲治(ゆがわら じょうじ)は

笑みを浮かべるー


”今日も、ご馳走様”

とー。


彼は、ホームレスだったー。

数か月前に、彼が住処にしている場所の前を

下校中に通りがかった純玲を見て、

彼は”一目ぼれ”をしたー。


それからの譲治の楽しみはー

”純玲を見ること”になった。

毎日極限状態で生き、何の楽しみもないような

生活の中、”純玲を見ること”だけが

唯一の楽しみだったー


「---あぁ、純玲ちゃんは目の保養になるなぁ」

譲治が、拾った空き缶をビニール袋に入れながら呟くー


”何もする気はないー”


ただー

純玲を見ていることができれば、それで満足だー。


譲治はー

純玲を襲うつもりなんてなかったし、

純玲を盗撮するつもりもなければ

個人情報目的でも、なんでもなかったー


”ただ、純玲を見れればそれで幸せ”


それ以外に、何もなかったー


とは言え、やっていることは

ストーカーと同じー

純玲からすれば”恐怖”でしかないー。


下校時間になると、譲治は再び学校の近く潜みー

純玲がやって来るのを待ったー


“来た!”

譲治は笑うー


「--今度の文化祭だけど、一緒に回らない~?」

親友の和枝と一緒だー。


純玲が「うん!いいよ~!」と返事をするー

ストーカー男に恐怖を感じながらも、

それでも純玲は持ち前のポジティブさで、

友達や家族の前では、決して弱いところを見せなかったー


相談するべきところは、すぐに相談しー

自身も警戒しながら行動しー

それでいて、必要以上にふさぎ込んだりしないー


純玲の対処法にー

”ミス”は見当たらないー


何もしてこない以上、”最善”とも言える対応ー


「----」

純玲が、学校の影に譲治が潜んでいるのを

横目で確認したー


”人通りのある道”を歩きー

そして、”親友の和枝と一緒に下校している”


抜け目は、ないー

そう簡単に、手出しはできないー。


だがー

長い間付き纏われていることに

純玲の我慢は限界だった。


純玲は”ある行動”に出ることを決意していたー

もちろん、リスクは承知の上でー。


親友・和枝と別れてー

純玲は、大通りまでたどり着くと、立ち止まって振り返ったー


「あの!!!」

純玲の言葉に、ホームレスの譲治は驚いた表情を浮かべたー


今まで、純玲は、譲治に対し”無反応”を貫いていたー

その純玲が声をかけてきたという事実に、

譲治は驚いたのだ。


「----最近ずっと、わたしのこと、見てますけど、

 何か御用ですか?」

純玲の言葉に、譲治は「え…」と言葉を詰まらせるー。


「---お、、お、、俺は、君を傷つける気はないんだ!」

譲治は、そう言ったー

これは、本心だー


目的は”純玲を見て癒されること”

もちろん、それだけでもおかしな行動だと言うのは

譲治も理解しているー


「---じゃあ、何の御用なんですか!?」

純玲が語気を強めるー


我慢の限界だったー

ずっとシカトしていれば、いつかはいなくなる、

そう信じていたけれど

数か月間ずっと、このままだー。

もう、耐えられない。


「--そ、、それは…」

譲治は言葉に詰まる


”ただ、君を遠くから見ていたいだけだ”

と、でも言えばよいのだろうかー。


譲治は、困り果てた表情で純玲の方を見つめるー


純玲は”やっぱり、この人ストーカーだ”と確信するー


「--警察にも、お父さんにも、お母さんにも、

 学校にも、相談しますから!」

純玲が言い放ったー


既に相談はしているのだが、

譲治にストーカーをやめさせるため、

あえてそう口にしたー


「ーー変態!」

純玲が怒りの言葉を口にしたー


相手を余計に刺激するような発言は

控えるべきだと思いつつも、

ここ数か月の怒りが爆発したー。


「--へ、、へんた…」

譲治は唖然としているー


小さいころ、いじめっ子たちに

変態扱いされた過去と重なりー

譲治は、逆切れしそうになったー


「---」

純玲が交差点を渡っていくー

譲治はとっさに走ったー


「--俺は変態じゃない!俺は、、俺はーーーーー!」


次の瞬間ーーー


譲治は激しい衝撃を感じてー

気付いた時には、自分の身体が、

まるでボールのように、宙を飛んでいたー


そして、地面に叩きつけられるー


「--え……?」

譲治が唖然としているー

なんだか湿った感じがするー


驚いた譲治が地面に視線を落とすとー

そこには、真っ赤な血だまりが出来ていたー


目の前には、トラックー


「あ……」

譲治は、自分が”トラックにはねられた”ことを悟ったー


純玲に”変態”と言われて逆上した譲治は、

赤信号を無視して純玲を追いかけてしまいー

トラックにひかれたのだー


「---あ…あ……あ……」


”死にたくない”

譲治は震えるー


””こんなことになったのは、あいつのせいだー”

譲治の純玲に対する想いはー

憎悪に変わったー


”あいつのせいでーー

 俺は死ぬー?”

譲治の全身が激しい痛みを発しているー


譲治はぶるぶると震えながら、

やがてー力が抜けていく感触を覚えたー


”死ぬ…あいつの、、せいで…


 ゆるせ…ない”


譲治はー

逆切れのような憎悪を抱いたままー

そのまま救急車が駆けつける前に、死亡したー


・・・・・・・・・・・・・


純玲は、ストーカー男がはねられて死んだことを

知らなかったー

交通事故が起きて死者が出たことは、

翌日のニュースで知っていたが、

まさか、あの男がはねられたとまでは思っていなかったー


ホームレス・譲治に「変態」と言い放って

足早に立ち去った純玲は、

その背後でトラックにはねられた譲治に気づかず、

そのまま移動していたー


だから、あの男が死んだことも知らなかったー


「-------」

純玲が背後を振り返るー


”ストーカー”の気配が消えたー。


「---ふぅ…」

純玲は安堵のため息をつくー


”わたしが、警察に言うって言ったから

 やめてくれたのかな”


安心したような表情を浮かべると、

とたんに力が抜けるような感じがしてきたー


”まだ、油断はできない”


でもー、

この数か月間にわたるストーカー行為から、

純玲はようやく解放された。


それだけでも、

心がすぅっと、軽くなったような気がするー


「---は~~~、よかった」

これで、心おきなく文化祭を楽しむことができるー


そう、思っていたー


だがー


ズズズズ…


”男”は、成仏していなかったー

トラックにはねられて死んだホームレスの譲治はー

悪霊と化してー

この世に残っていたー


純玲の背後の地面から、譲治の霊が生えて来るー


”お前のせいで、俺は、死んだー”

譲治が憎しみの声で呟くー


だがー

憎悪と同時に、譲治はまだーー

”純玲”のことが好きだったー

純玲をずっとずっと、見ていたいー


生前よりも、歪んでしまったその想いー


それが、暴走するのは、時間の問題だったー



「おはよ~!」

教室に入ると、純玲はいつものように親友の和枝と

談笑し始めたー

クラスメイトの美由子(みゆこ)、比奈(ひな)も

混ぜて楽しそうに話をするー。


”------”

その様子を譲治の霊はじっと見つめていたー


譲治の霊には、

誰も気づかないー


しかしー

譲治は、”あること”を思いついたー


それはー

”純玲の身近な人間になればー

 純玲のことをずっと見ていることができるのではないかー”


とー。


「--あ、ちょっとトイレに行って来る~」

純玲の友人の一人、比奈が、ツインテールを揺らしながらトイレに向かうー


譲治の悪霊は、笑みを浮かべたー


「---え~~~?でも、美由子は彼氏がいるでしょ~?」


「いいのいいの~!修三とはいつも一緒だし、たまにはね~」


「--修三君かわいそ~!」


純玲・和枝・美由子が教室で談笑を続けているー


「--あれ?そういえばさ~、比奈、遅くない?」

純玲の親友・和枝が言うと、

お調子者でショートヘアーな美由子は

「--お腹痛くなっちゃったんじゃないの~?」と

一人で笑っているー


純玲が「もう少しすれば戻ってくると思うよ~」と

口を開いた直後ー

比奈は戻ってきたー


自分のツインテールを触ってー

少しだけ口元を三日月のような形に

歪めると、

比奈はそのまま歩いてくるー。


「-----純玲」

比奈がにこっと笑うー


「--え?」

純玲が首をかしげると、

比奈は「ずっとずっとずっとずっと、見てるからね♡」と

不気味な笑みを浮かべたー


「え???ど、どういうこと?」

純玲は首を傾げたー


親友の和枝と友人の美由子も、不思議そうな顔をしているー


”ふふふふー”

比奈は、座席に戻ったあとも、純玲の方を見続けているー


純玲を見て、興奮しているー


「---俺を殺した女ーーー」

比奈が静かにそう呟いたー


・・・・・・・・・・


放課後ー


純玲は、親友の和枝と下校しているとー

ふと”気配”を感じたー


背後をとっさに振り返るー


”またあの男!?”

そう思って、周囲を見回すー


木の影に、ツインテールの友人・比奈が見えたー


純玲が「あ、比奈!」と手を振るがー

比奈は、木の影に身を隠して、反応しなかったー


「あれれ?」

純玲は不思議に思いながらも、周囲を見渡すー


”ストーカー男”はいないー。

純玲は、比奈に見られてたからかなぁ…と、首を傾げながら歩き出すー


純玲が歩き出したのを確認すると

比奈は、よだれを垂らしながら、純玲の後をついていくー


「すみれ…純玲…すみれ…ひひ、、ふひひひ♡」

よたよたと歩く比奈ー


比奈の表情はー

顔芸と、表現してしまうのが正しいぐらいに、

歪んでいたー


”ストーカー”は、死してー

”最悪のストーカー”へと変貌したー


純玲の更なる恐怖はーー

これからだったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


恐怖の憑依ストーカー…!

次回から恐ろしいことになりそうですネ…!


今日もありがとうございました!

暑いので、気を付けて過ごしてくださいネ~!

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