<入れ替わり>あの世とこの世①~体験~ (Pixiv Fanbox)
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彼は、”死”に興味があったー。
死んでしまった人間はどうなってしまうのだろう。
死後の世界は、あるのだろうか。
それとも、死んだ人間は、等しく土に還り、その先に待つのは
”無”なのだろうかー。
外科医・藤本 佳也(ふじもと けいや)は、
人の死に立ち会うこともあるからか、
”死後の世界”に、人一倍強い興味を持っていたのだ。
そんなある日ー。
「--え?」
佳也は、驚くべき言葉を病院の上層部から聞かされたー。
副院長の増森 隼人(ますもり はやと)が言う。
「-ーー”死後の世界”
きみ、確か、興味あったよな?」
増森副院長の言葉に、
佳也は「あ、はい…。」と答える。
「--その死後の世界を体験することができる、
と、言ったらどうかな?」
増森副院長は、整えられた髭を触りながら
優しく微笑んだー。
「死後の世界の体験…ですか?」
「あぁ。そうだ」
増森副院長は、そう言うと、立ち上がる。
「これからいうことは、全て”極秘事項”だ。
誰にも口外しないと、約束することはできるかな?」
増森副院長の言葉に、佳也は少し考えてから頷いた。
佳也の覚悟を見届けると、増森副院長は
「来たまえ」と告げて、
普段、一般の外科医が立ち入ることのできない
”極秘病棟”と呼ばれる、この病院の秘密の場所へと
佳也を案内したー。
「---これは」
案内された場所に到着した佳也は驚くー。
「--私もね、死後の人間がどうなってしまうのか、
ということに興味があったんだ。昔からね。」
増森副院長はそう言いながら、
装置に繋がれた若い女性の方を見つめる。
「この人は…?」
佳也が言うと、増森副院長は呟いた。
「---先日…この病院で息を引き取った
佐上 里穂(さがみ りほ)さんだ。
まだ若い女子大生だったんだがー
特殊な病気でね。
現代の医療では助けることができなかった」
増森副院長の言葉に、
佳也は寂しそうに、里穂の遺体を見つめたー
この、里穂という人は今、どうしているのだろうか。
何も感じないのだろうか。
それとも、天国にいるのだろうか。
死後の世界に興味のある佳也は、
そんなことを考えてしまうー。
そしてふと、装置の方を見つめる。
里穂の遺体があるベットの横に、もう一つベットがあり、
そこに、装置の一部が取り付けられている。
「---これは…」
佳也が言うと、
増森副院長は頷いた。
「--”精神を入れ替える装置”だ。
私が、10年以上かけて極秘に開発した」
増森副院長の言葉に、佳也は驚く。
「私の独自の研究で、
死んだ人間の”意思”は、身体や脳が完全に機能を停止してからも
その身体の中に残っていることがわかった
信じられないことだと思うが、
まず間違いない。」
増森副院長が言う。
「つまり、そこの佐上里穂さんも、まだ、身体の中に
本人の意識が残っているー。
これは私の推測なのだが、
佐上里穂さんは、おそらく今、夢を見ているような
状態なのだと思う。
そのあとどうなるかは分からないが…
今、佐上里穂さんは、死後の世界にいるのだよ」
増森副院長の言葉をじっと聞いている佳也。
「--つまり。
この入れ替わり装置を使って
佐上里穂さんの遺体と君が入れ替わることで、
君は”死後の世界”を体験することができるー。
里穂さんの身体でね」
増森副院長の言葉に、佳也は驚きを隠せない。
「し、、しかし…安全なのですか?」
佳也が言うと、
増森副院長は頷いた。
「--入れ替わり装置を再度起動すれば、
君の意識は君の身体に戻る。
何も、心配はいらない」
その言葉に、佳也は戸惑いながらも
もう一つ尋ねたー
「入れ替わった後…死んだ里穂さんは
俺の身体に入るってことですよね?」
増森副院長は、「そうだ」と答えるー
つまり、死んだはずの里穂が、
生きた身体を手に入れることによって、
一時的に生き返ることになる。
「--安心しなさい。君の身体は
この装置で、眠らせておくから、
君の身体になった佐上里穂さんが
目を覚ますことはないー」
増森副院長はそう告げると、頷いた。
里穂の身体で”死後の世界”を体験する間、
里穂の意識は”生きている佳也の身体”に入るー
もしも佳也の身体で里穂という子が目を覚ましたら
”死にたくない”という可能性は高いし、
元に戻すときに
”死んだ自分の身体に戻りなさい”というのは
酷な話だ。
だからー
佳也の身体に入った里穂の意識は、眠らせておく、
と、増森副院長は告げたー
「---どうだね?死後の世界の体験…
してみるか?」
増森副院長の言葉に、
佳也は戸惑うー
”絶対に安全”とは言えないー
だが、増森副院長は信頼できる人間だし、
院長の朝田(あさだ)とは違い、
腕前も確かだ。
「---やります」
佳也は答えたー
”死後の世界を体験できる”
その好奇心が、恐怖に打ち勝ったー。
「ーーー君なら、そう言うと思ったよ」
増森副院長は嬉しそうにほほ笑む。
「---半日で、私の方で君を元の身体に
戻すから安心したまえ」
そう言うと、増森副院長は、
佳也に、里穂の横のベットに横たわるように告げたー
死んだ身体と”入れ替わり”をすることで、
死後の世界を体験することができるー
生きて帰れるのであれば、本当に夢のような話だ。
「--本当は、私が自分で体験したかったのだがー
もう私も高齢だし、
それに、装置の操作を完全にできるのは
私だけなのでね…」
増森副院長はそう言いながら、佳也と
里穂の遺体を入れ替える準備をするー。
「--あ、そうだ
…私からは君が何をしているのかは
見えないからー…
その……
まぁ……好きなことしていいんだぞ」
増森副院長は苦笑いしながらそう言うと、
佳也は「…え?」と一瞬首をかしげたが、
すぐに、横のベットで横たわっている
里穂の身体を見て納得したー
「あ、、あぁ…そういうことですか。
まぁ、余裕があったら考えます」
笑う佳也ー。
”エッチなことしてもいいんだぞ”と
増森副院長からのメッセージだったー。
「-----では、入れ替えするが、
心の準備はできたかな?」
増森副院長の言葉に、
佳也は静かに頷いた。
「ええ」
その言葉を確認すると、
増森副院長は、装置を起動したー
”生きている佳也”と
”死んでいる里穂”の身体を入れ替えるー
装置の音がして、
佳也の意識が、瞬間的に飛ぶー
そしてー
激しい光に包まれたー
・・・・・
・・・・・・・・・・・
「-----う…」
佳也が目を覚ますとー
そこは”知らない部屋”だったー。
「--あ……れ…?」
”死後の世界”ってこれなのか?
と、戸惑いながら佳也が周囲を見渡すー。
ごく普通の女子大生らしい部屋ー。
鏡を見ると、
自分が、遺体となっていた里穂の姿に
なっていることに気づく。
「お…おぉ」
里穂になった佳也がそう声を出すと、
可愛い声が口から出たのに気づいて
ドキッとしてしまうー
「な、、なんか、思った以上にかわいい子だな」
里穂(佳也)がそう呟きながら
立ち上がるー
”これは、この子の部屋か…”
そう思いながら周囲を見渡すー。
死後の世界ー
案外、普通なんだな、
と、そんな風に佳也は思ったー
もっと、天空都市みたいな感じとか、
地獄の番犬みたいなのが出て来る感じとか、
花畑とか、そういうのを想像していたのだが
案外、日常的な場所だったー。
里穂の身体になっている、ということは
里穂の身体は既に死んでいたからー
これが、死んだ里穂が、残された意識で
体験していた世界ー
恐らくは、里穂の精神世界ともいうべき場所なのだろう。
「---死んだら、自分の思い出の中で
永遠に過ごすってことか?」
里穂(佳也)はそう呟きながら周囲を見渡した。
何の変哲もない部屋だ。
窓の外を見ると、そこには車や人通りもあるー。
「--う~ん…記憶世界というより…
なんだか、普通の日常って感じだな」
これでは、”死に方”によっては
自分が死んだことにすら気づかない気がする。
この子の場合は病気だったと聞いているし、
増森副院長によれば、闘病生活の末に
息を引き取ったらしいから、
”自分が死んだこと”を認識して
この世界にいたはずだー
だが、ある日、急に発作を起こしたり
急に交通事故に巻き込まれたりして
死んだ人間はどうだろうかー
こんな風に、日常の光景に放り込まれたら、
”自分が死んだ”ことすら、
認識できていないかもしれないー
「--ってか…スカートって落ち着かないな」
里穂(佳也)が呟く。
里穂の姿はスカート姿だったー。
「でも、スースーするとか、そういう感じは
思ったよりないんだな」
そんな風に思いながら、自分の胸を見つめる里穂(佳也)。
佳也は特別エロいわけではないが、
やはり、女性の身体になっているー、
例え死後の世界であっても女の身体になっているとなれば
揉んでみたくもなるものだー。
「--と…ダメだダメだ。
まず死後の世界を探索してからだ」
そう呟くと、里穂(佳也)はそのまま部屋の外に
出たー。
そこで、ふと気づくー
「ん…」
そう言えば、さっき
”スカートのスースーがない”と思ったが、
それは違ったー
「--そうか…そういうことか」
里穂(佳也)は呟くー
スカートを履いたときに、
スースーするような感じを感じなかったのはー
”何も感じていない”からだー。
試しに、里穂(佳也)は自分を叩いてみるー
痛みをまるで感じないー
”夢”のような状態ー
暑さもー
寒さもー
痛みもー
感触もー
空気もー
臭いもー
何も、感じないー
「これが、死後の世界…」
里穂(佳也)は呟くー
恐らく、これは死んだ里穂の身体の中に残っていた
里穂の心…精神のようなものが、見ている
”夢”のようなものなのだろうー。
里穂の身体は死んだー
脳も停止したー。
だが、その身体の中のどこかに
里穂の意識的なものは残っていて、
死んだ身体の中で、夢を見ているような状態ー
そんな感じなのかもしれないー
「---」
”ずっと”このまま なのだろうか。
それとも、少しすると、
天国や地獄のようなところに行くのだろうかー。
ふと、通行人に声をかけてみるー
だが、里穂(佳也)が声をかけても、
通行人は一切反応しなかったー
”里穂の生前の記憶”を元に
この”死後の世界”が作られているのだろうかー
通行人はそこに存在するわけではなく、
生前の里穂が”通行人の歩いているこの町”の光景を
いつも見ていたから、それを再現しているのかもしれないー
「---…なんだか、不気味だな」
里穂(佳也)は呟いたー
普通の日常に見えるのに、
感覚も何もないし、反応もないー
風が吹いている音はするが、
風を感じることもないー
「---…さ…もう少し色々見てみるか」
里穂(佳也)はそう呟いたー
・・・・・・・・・・
「----」
増森副院長は、脳波の様子を確認しながら
慎重に状況を把握していたー
佳也の脳波が反応しているー
佳也は今頃、死後の世界を見ているのだろうー。
佳也の身体は麻酔で眠らせているー
佳也の身体に入った里穂の意識が
目覚めることはないー
「--さて」
増森副院長は時計を見ると、病室の外に出て、
”トイレでも済ませておくか”と呟いたー
・・・
・・・・・
「------!!!」
佳也の身体が目を覚ましたー
佳也の身体になった里穂がーー
意識を取り戻してしまったーー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・
コメント
一風変わった入れ替わりモノですネ~!
入れ替わりは長編を書いている最中ですが、
いつもの長さ形式のも、定期的に出していきます~!
今日もありがとうございました!!