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俺の名はボルド。


このファーラ村で畑を耕すのを生業としている村人だ。


そんな俺は村の自警団に所属していて

今は村周辺を自警団の仲間と見回りを終え

家に帰ってきたところだったりする。


「いつもならこんな疲れないんだけどな……

 "いる"かもしれないと思うと、こうも違うか」


普段この村周辺ではシャドウが現れることは滅多にない。


だが数日前に大事件…いや大災害が起きた。


シャドウが大量発生したのだ。


嘘だろ?俺はこの村に生まれて18年になるが

そんなことは一度も起こらなかった。


だが、村長の娘さんであるエリザが涙ながらに

村人たちに事実だと語り、避難したのだった。


あのときはどうなるかと思ったが…。


避難してから数時間経ったあと

信じられないことが起きた。


女の子が"あのヒルダ"を抱えて避難した洞窟の前に現れた。


小さい頃よく腕試しと称して、村中の男をボコボコにしたり


魔法の練習感覚で氷漬けにしてきた"あのヒルダ"を、だ。


あのときは俺を含めた村人のみんなが驚いた。

とくに男共は混乱しただろうな……。


弱っているヒルダを初めて見たのもそうだが

そのヒルダを軽々と抱えていた女の子。


あの娘は……なんだ?


いや、村長から記憶を失った少女のことは聞いてはいたが


あの格好……いやダメだろ?あんな格好で外に出たら。


街に行ったことがある友人から聞いたことがある。


大胆に胸の空いた服。

そして短すぎるスカート。

フリルたくさん。


あきらかに男を誘惑する目的で作られたであろう服。


フリフリ……。


あれはどう見ても娼館で見る服だ。


俺は実際に見たことはないが……。


「フリフリ……」


あのときの光景を思い出し、呟いたとき


コンコン


家のドアが叩かれハッとした俺は

急いで外に出てみると。


「フリフリの救世主…!?」


「は?」


目の前には、あの娼館の服を得意げな顔で着ていた

村の救世主である可愛い少女が立っていた。


「フリフリ…?」


「あ!いやなんでもないッ!」


慌てて俺は誤魔化そうとするが

少女が怪訝そうな表情でこちらを見ている。


落ち着け俺。


たしかこの娘の名前は【マナ】だったか。


「えーっと…俺になにか用かい?」


落ち着きを取り戻した俺は、少女にそう尋ねる。


「あ、ちょっとヒルダさんを探していて

どこかで見かけませんでしたか?」


そう言いながら、笑顔を俺に向ける少女。


ドキッ


「み、見てないな。俺はさっき森から帰ってきたとこなんだが

北側のほうにはいなかったと思う」



かわいい……。



村の女たちと比べるのも失礼だが

この少女はレベルが違う。


対抗できそうなエリザやヒルダは美人だが

この少女は"可愛らしい"のだ。


「あ~…そうなんですか

うーん…どこ行ったんだヒルダさん?」


そう言いながら少女は腕組をした。


で、でかいッ…!!!


腕の上に乗ったそれは、ローブの上からでもわかる。


俺の目の前には男特化の暴力の化身が降臨していた。


エリザ……あのとき君が

慌ててこの少女に渡したローブは機能していないぞ。





「……ん?」


俺が目の前の暴力に目を奪われていることに気付いたのか

少女は腕組をやめ、一歩下がって露骨に顔を歪めた。


「……ありがとうございました

ヒルダさんを探すので失礼します」


そう言ってそそくさとどこかへ行ってしまった。


「……やっちまった」


村を救ってくれた救世主になんてことを…。

俺の目線で不快にさせてしまった。


でもしょうがないじゃないか。


可愛いうえにあの暴力の化身のせいだ。


俺の目線を操る魔法かなにかだと思う。


魔性の女だ。


「……あれは他の男共にも狙われるだろうな」


シャドウ大量発生の前から

村長が集会で男たちに伝えていた。



『記憶喪失の少女には無暗に接触するなよ。

 慣れない環境で、不安を抱えているはずだ。

 今はそっと見守ってやってくれ。


 ……おい、そんな残念そうな顔するな!


 はぁ……まぁそうだな。一応男に興味ないか聞いたり

 交流しないか聞いてみるが、期待はするなよ?』



村長はあぁ言っていたが抜け駆けする男が

現れるのではないかと、俺は気が気でない。


……アピールするか?

偶然を装って出会い頭にとか。


どうすれば少女に好意を向けて貰えるだろうか…。


俺はあのフリフリを纏った暴力の化身。

可愛らしい少女【マナ】の虜になり。

すでに結婚したいと考えていた。


「まだ時間はある…これからだ」


未来の嫁のことを考えながら

俺はひとり、食事の準備をするのであった。







【マナとヒルダが旅立つ三日前の出来事】



END

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