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 ごとんとイングリッドの着ていた服が客車の床に落ちる。

「はぁぁ~~~っ・・・よかったぁ」

 アルドリッジは安堵のため息を長く吐き出しながら座席に腰を下ろそうとし、すんでの所で踏みとどまった。

 勢いよく腰を下ろすと、その振動で外の2人に気づかれかねない。

 改めてそっと腰を下ろす。

 その両脇に座っていた2人の女性の姿は既に無く、代わりに2つの箱が座席に残っていた。

 ヘザーとミルドレッドを縛っていた魔法縄の内、完全に物質化した部分はそのまま席に残っている。

 アルドリッジは大仕事をやり遂げた余韻に浸ること無く、一息だけつくと床に散らばっている自分の荷物を片付け始めた。

 パトリスの服を残してしまったことがどれだけ自分にとって不利になったのかは分からないが、念のためイングリッドの服も鞄に押し込む。

 食料調達のため南の村に向かいという話をしていたため、到着してしまう前に次の行動を起こさなければならない。

 シャンニでキトリーに両手を縛られた時点で、アルドリッジはそのこと自体が切り札になると考えていた。

 物質を操作できるアルドリッジに取ってそれが縄であれ鉄であれ、手で触れられる状態での拘束なら拘束となり得なかった。

 その場で縄を解いても即座に捕まり直すだけなので、一行がマジャリに向かうと言うこともあり、この際なので逃げ出す隙が出来るまで大人しく連行して貰う事にした。

 馬車内で詰問され、隠していた能力を追求されそうになりもしたが何とかはぐらかし、そのまま念願のマジャリに戻ることが出来た。

 アルドリッジに取って誤算だったのは、同行していたイングリッドと言う魔法少女が同業者のミルドレッドや、異業種のヘザーからも畏れを抱かれるほど有名な魔法使いらしいと言うことだった。

 アルドリッジ自身は全く聞き覚えの無い名前だったが、その能力に関しては目の前で容易くビラチーナを改造した技を見たことによって認めざるを得なくなった。

 ヘザーとミルドレッドの封印を解かれてしまっただけでもかなり予定外だったが、それに加えその2人が素直に言うことを聞くほどの魔法使いに監視されているとなるとただ隙を突いて逃げ出したところでどうにもならない。

 結局アルドリッジはイングリッドを封印してしまうことに決めた。

 封印する為には当然素材が必要になる。しかも3人分。

 客車の中には所々金属が使われていたが、自由を奪われているふりをしながら手を伸ばすことなど出来るはずもなく、外に出して貰えない状態で何かを探すしかなかった。

 封印法が発動してしてしまえば事が終わるまで瞬き数回分の時間しか掛からないが、素材から箱、或いは何らかの罠を封印器として作成し、そこに抽出封印術を転写するのは一瞬というわけにはいかない。

 セドリックの封印法は封印器を対象に直接触れさせる必要があるため、行動を起こす前に全ての準備を終えておく必要があった。

 腹が鳴り、空腹と小用を訴えたのは作戦ではなく本心だった。

 イングリッドが後ろを振り向き御者台の2人に話しかけている時もまだ決行するつもりはなかった。

 しかし意外と話が長引いたためアルドリッジは意を決して縄を分解し、今朝ようやく完成した3つの箱の内の2つを両隣の裸の女の大きな胸にぐにゃりと押しつけた。

 ヘザーとミルドレッドは何が起こったのか理解する間もなく、一日ぶりに箱の中へ戻っていった。

 2人がしっかり封印されたのか確認する余裕もなく、アルドリッジは最後の箱を取り出した。

 後ろを向いたままのイングリッドに触れられれば一番簡単だったが、ギリギリになってイングリッドが振り向きそうになったため、アルドリッジはあえて声を掛けた。

 イングリッドはきょとんと振り向き、アルドリッジが当然の様に差し出した箱を、当然の様に受け取った。

 そして箱の中に消えていった。

 小さなクリトリスだけを表面に残して。

 イングリッド達が眠ってくれたのはアルドリッジに取って幸運だったが、もっと幸運だったのは漁られた鞄の中身を床に放置されたことだった。

 その中にいずれ使うかもしてないと折を見て集めていたいくつかの製作用素材が、布にくるまれて混ざっていた。

 それに気づいた瞬間にアルドリッジは事が成ったと安心したが、実際はそううまく行かなかった。

 3人が完全に寝入るまで静かに待ったため、こちらに尻を向けて横になっているイングリッドはともかく、左右の2人がアルドリッジに寄りかかり、床の素材を取ることが出来なくなった。

 寝入ってしまえば縄を解いて悠々と箱を作り、そのまま3人を封印出来ると思っていたが、やむなくアルドリッジはヘザーとミルドレッドを起こさないように少しずつゆっくりと座席から尻をずらし、つま先を使って引きずる音を立てないよう慎重にがらくたを足下まで引き寄せた。

 そこから手で掴むまでが更に難しかった。

 いっそのこと縄を解いてしまおうかとも考えたが、ほどくわけではなく分解することになるので万一元通りにする必要に迫られても叶わず、解いたところで自由になった両手を裸の2人の肌に触れながら起こすことなく脇をすり抜けさせられるとも思えなかった。

 しかたなくアルドリッジは時間が掛かるのを承知で靴を脱ぎ、足の指を使ってがらくたの中の金属を生きた針金の様に細く変化させ、少しずつ手元に移動させていった。

 アルドリッジの能力は手袋や靴越しには使えないが、直接触れることが出来さえすれば効果を発揮することが出来る。ただし鉄くずを細く延ばす程度の加工なら足の指でも出来るが、箱やそれ以上に精密な加工は指でなければ行えない。

 時間を掛け3つの箱が完成する頃にはミルドレッドが目を覚ましてしまい、アルドリッジは次の機会を待つしかなかった。

 持っていくべき荷物を全て鞄に詰め込み、最後に向かいの席に落ちている箱を拾う。

 蓋は開いたままになっており、その下にイングリッドのクリトリスが生えている。

 アルドリッジがつんつんと2度触れてみると、クリトリスは同じくピクピクと2度震えた。

 新たに手に入れてしまったクリトリスで遊んでいる暇はなく、アルドリッジは蓋を閉じてその箱も鞄にしまう。

 後は外の2人を何とかしなければならない。

 アルドリッジはほんの少しだけ先ほどイングリッドが使っていた小窓を開け、キトリーとギャエルの様子を確認した。

 客車に乗せられてから始めて外を見たが、いつの間にか2人が白い鎧を纏っている。

「お・・・ありがたい」

 アルドリッジは馬車を止める止める方法を考える。

 御者に何かが起こった際、馬たちが大人しく止まってくれるか分からないので走行中に事は起こすのは避けたく、また2人同時に客室来られても対処が出来ないため、1人ずつ呼び出したい。

 アルドリッジはそっと小窓の隙間を閉じ、そこを開かなく加工した。

―コンコン。

「…呼んでるぞ」

「はぁ、なんです…ん?開かない」

「なんなのよもう。いいよ、止めるから見て来いよ」

 ギャエルは馬たちに指示し、ゆっくりと馬車を止めた。キトリーは御者台から降り客車の様子を見に行く。

「なっ!?おい!どうしたっ!?」

 赤毛の少年だけが床に倒れ、車内には他に誰もいない。

 キトリーは客車に乗り込み俯せに倒れているアルドリッジを抱え起こす。

 気を失っているふりをしているアルドリッジは頬をはたかれても何とか耐える。

「ギャエル!来てくれ!面倒な事になってる!」

 キトリーは立ち上がろうとして、そのまま倒れ込んだ。

「な、何だっ!?」

 脛を保護している左右の甲冑が1つに繋がっていた。

 アルドリッジは素早く起き上がり、両手の装甲も肘を曲げられないように加工し、更にそのまま胴の甲冑に繋げてしまう。

「おまえっ!!なにをしているっ!!」

 駆けつけたギャエルはその様子を見、外から一気にアルドリッジに飛びかかる。アルドリッジは押さえ込まれてしまったが全く慌てていなかった。何しろ相手のどこに触れても、金属に覆われている。

 アルドリッジは押さえ込まれながらギャエルに抱きつき、いくつかに分かれている胴の鎧を1つに繋げてしまう。

 背骨の可動域がなくなったギャエルは押さえ込む力を急激に失い、更にキトリーと同様に手足の装甲も繋げられてしまう。

 マジャリの騎士の中でも精鋭として集められた聖女騎士2人は、少年1人にあっけなく拘束されてしまった。

「ふうぅぅ・・・」

 アルドリッジはギャエルの下から這い出て立ち上がり、微かに目眩を感じて座席に腰を下ろす。

「な、なにをしたんだ!?これをほどっ…外せ?脱がせ?」

「他の3人はどこに行った?お前が消したのか?」

 アルドリッジは鞄の中に手を突っ込み、指先に触れた箱を取り出す。

「ここに居るよ、みんなは」

「・・・なんだこれは?…そうか、封印という奴だな?・・・で、なんだこれは?」

「クリトリス・・・ヘザーかミルドレッドの」

 昨夜不自由な状態で箱を作ったため形にこだわっている余裕はなく、3つとも同じような箱が出来上がった。取り出した箱には大きく赤いクリトリスが生えていたが、見ただけではヘザーとミルドレッドどちらのモノなのか分からない。

「くりっ!?…な、何を言って」

「言っておくけど俺の趣味じゃないよ?こういう風にしか封印出来ないんだよ。何故か分からないけど」

「まさか、パトリスも?」

「そう、こんな感じでね」

 アルドリッジは頬を染めている2人の目の前でどちらのモノか分からないクリトリスを弄り始める。大きなクリトリスの両側を親指と中指で挟み、人差し指で裏側をカリカリと擦る。

 やがてクリトリスはビクリと硬直し、ピクピクと細かく痙攣しながらアルドリッジの指にもたれ掛かる。

「この封印だとこんな風にクリトリスを好き勝手に弄られても何の抵抗も出来ないんだけど、君たちも鎧で拘束されるよりこの方がいい?」

「・・・」

 2人は同時に目を伏せる。

「ま、これ以上クリトリスを増やしてもしょうが無いから君たちはこのままにして置くけど・・・とにかくさぁ、もう追って来ないでくれる?たぶん君らは俺がシャンタル様の何かを知ってると思ってるんだろうけど、何も知らないから」

 理解出来ない力で鎧を拘束具に変え、目の前でクリトリスだけを外に出した状態の封印を見せられた後で何も知らないと言われても2人には信じられなかった。しかし反論して怒らせ、自分のクリトリスを弄ばれることになっても堪らないので口をつぐんでおく。

「じゃ、俺はもう行くから。ここなら道沿いだし検問所からもそんなに離れてないから、誰か見つけてくれるでしょ。その人に助けて貰って」

 アルドリッジは動けないキトリーとギャエルを中に残し、客車から降りていった。

「ま、待てっ!せめてパトリスだけでも置いていけっ!」

 アルドリッジは懇願を無視して走り去る。パトリスに対する怒りはもう消えていたが、せっかくイングリッドに改造されたビラチーナによってより過酷になった絶頂阻害責めを味わっているので、もうしばらくその様子を楽しみたい。

 小走りで馬車から離れていたアルドリッジはふと足を止め振り返る。

「・・・馬かぁ」

 三頭の馬が引く馬車、或いはせめて馬だけでも使えれば旅が格段に楽になるのにとアルドリッジは考える。

 しかし残念ながらその扱い方を知らない。

 後ろ髪を引かれながら、アルドリッジは改めて南に向かって走って行った。

「はぁ、はぁ…な、何だよ、こっちに村があるって言ってたのに…」

 馬車から逃げ出した後、アルドリッジはギャエル達が向かおうとしていた村で食料を調達しようとしていた。鞄に残っていた僅かな携帯食料は既に食べ終えたが、腹の足しになっていない。

 マジャリ出身とはいえアルドリッジは首都周辺の土地勘しかなく、どこにその村があるのか知らなかった。

 走っていられたのは最初の十数分で、すぐに早歩きになり、やがてただの徒歩になった。

 空腹に加え、アルドリッジは力を使ったことにより消費していた。昨夜から朝方にかけ馬車内で金属片を細長く加工したのを始めに、箱を3つ作りそこに封印術を転写し、更に女性2人分の鎧を拘束具に加工した。

 これまで力を使っても疲れなど感じたことがなかったアルドリッジは、今回初めて自分の力が無条件に使い続けられる物ではないことを知った。

 ギャエルが向かおうとしていた村は検問所から馬車で半日ほどの位置にあるため、アルドリッジが徒歩で半日歩いたところでたどり着けるはずもなかった。

 イングリッドは多少驚きはしたものの、全く慌ててはいなかった。

 2回ほど外に出ているクリトリスをつつかれて以降音沙汰がなくなったため、その時間を利用して封印空間を考察していた。

 封印内の特性はすぐに理解出来た。要はイングリッドが自分自身に施している代謝停止術と同じような効果が封印された者に与えられる。ただし脳内の変化まで抑え、精神の破たんを防ぐ代わりに新たな思考まで抑制してしまうほど強固な変化の阻害力はイングリッドの停止術には含まれていない。

 イングリッドは自身の老化を防止しているだけなので、仮に毒を盛られ解毒を放棄した場合死に至るが、封印術の場合服毒直後に封印されると、毒による苦しみは延々続くが死ぬこともない。

 封印空間の特性はすぐに見抜いたイングリッドも、アルドリッジが自分を封印出来た理由は分からずにいた。

 アルドリッジが魔法使いでないことは確かで、イングリッドはそもそもパトリスを封印している箱を確認した時点で、それが術器だという告白が嘘であるということも分かっていた。

 その上で少年がどうやって女達を封印しているのか気になり、イングリッドはあえて何度か隙を作ってやり、アルドリッジにその方法を使わせようとしていた。

 つまり現在イングリッドはわざと封印されてやっており、出ようと思えばすぐにでも自力で脱出できる。

「う~ん・・・私に分からないような方法を使うなんて、やるわねぇあの坊や」

 一度目は眠りにくい体勢なのを我慢してわざわざ尻を向けてやったのにも関わらず、なにやらごそごそとしていた気配は伝わってきたが結局行動を起こさず、二度目、御者台の2人に用がなくなってもしばらく振り向かずにいてやると、漸く行動を起こした。

 振り向いた時には既にヘザーとミルドレッドは封印されており、自分自身も箱を渡され、そこに吸い込まれる様もしっかりと目に焼き付けている。

 にもかかわらずどういう方法を用いたのかが分からず、イングリッドはプライドを傷つけられながらも大いに好奇心をかき立てられた。

 見ればすぐに方法が分かると思い、本来なら封印された直後脱出し、力の差を見せつけてやろうと考えていたが、少年に興味がわいてきたイングリッドはこのまま箱に留まり、アルドリッジの力を見極めることにした。

「ホントに助かったよおじさん」

 後ろから蹄の音が聞こえ、アルドリッジは一旦身を隠したが、それが牛車だと分かると必死に呼び止め同乗を求めた。

 町から村へ戻る途中の農夫に拾って貰い、漸くアルドリッジは検問所から近い方の村を通り過ぎてしまっている事を知った。

 言われてみればしばらく前に二叉があった気もするが、少しでも首都の方へと言う気持ちが働いたのか、自然と東側の道を選んでしまっていた。


 拾ってくれた農夫は遠い方の村へ戻るため到着までに更に時間が掛かってしまうが、アルドリッジは構わずそこへ連れて行って貰う事にした。

 釘は刺しておいたもののいずれ追って来るはずのキトリーとギャエルが、向かうはずたっだ村で自分を尋ねた際、訪れた形跡がなければ少しは次の捜索場所を迷うかも知れない。

「それで兄ちゃん、こっちに何の用なんだい?」

「むぐむぐ・・・えっ?」

 荷台に乗り、分けて貰った食べ物を頬張りながら、それ以外の理由でアルドリッジは答えに窮した。

 馬車を止めた地点から北は山、西は元に戻ることになる為最初から選択肢になく、東に行けば首都に近づく上に町もあったはずだが、空腹だったため町より近くに村があると言う理由だけで南を選んだ。

 結局その村は通りすぎてしまい、空腹も親切な農夫のおかげで今まさに満たしている最中なので、これ以上南に進む理由がない。

「・・・・村を回って行商してるんだよ、俺」

「行商?」農夫は振り向いて肩掛け鞄しか荷物のないアルドリッジを見る「何を売って歩いてるんだ?」

「装飾品とか…」

「装飾品?そりゃ可哀想だけど、ウチの村じゃ商売になんねぇぞ。なんせ爺さんと婆さんしかいないもんな」

「・・・後は、農具の修理とか」

「修理?なんだ兄ちゃん、鍛冶が出来るのか?そりゃあいい」

 言い反応が返ってきたため、アルドリッジは無料で修理をする代わりに村に付いたら泊めて欲しいと頼み、農夫は快諾した。

「でもこっちで行商するなら兄ちゃん、バパナの連中とはかち合わないようにしろよ。あいつ等も同業者みたいなもんだからな」

 シャンニに向かう道中で野宿して以来眠っていなかったアルドリッジは腹が満たされ、いつの間にか荷台で眠っていた。

 農夫に起こされ辺りを見回すと、そこは本当に田舎の村だった。

 アルドリッジがこれまで路銀を稼いだり食料を交換して貰う為に立ち寄ってきた村々は人口は少ないものの小さな宿や食料品店、場所によっては鍛冶屋や医院まであったりしたが、農夫が帰ってきた村は全て民家のみの完全な農村だった。

 装飾品類が商売にならないと言い切られた意味が分かった。

 農夫はアルドリッジを小屋に案内してやる。

「後で布団を持ってきてやるからな。…兄ちゃんの事を村の衆に話していいか?みんなだいぶ古い道具を使ってっから」

「いいけど…その人達からはお金取るよ?」

 農夫は笑いながら去って行った。アルドリッジは木の床に直接腰を下ろす。

 小屋の中は過疎化と高齢化が進みすぎているせいか、物置としてすら使われておらず殆ど何もなかった。

 長く留まる気は無いが、少なくともどこをどう通ってムラドハナへ向かうかを落ち着いて考えられる場所を与えられ、アルドリッジは農夫に感謝した。

 無音だった空間にカチャリと言う音が響いた。

「・・・お、漸く開けたか」

 イングリッドはあまりにも長く少年からの接触がないため、まさか捨てられたのではと疑い始めていた。もう本当に捨てていればイングリッドは自力で脱出し、どこへ逃げていようとも見つけ出しアルドリッジを塵に変えていた。

『イングリッドちゃん?…聞こえる?』

 アルドリッジはイングリッドがとにかく凄い魔法使いらしいと言うことは認識していたが、300年以上生きていると言うことは理解しておらず、未だに自分より年下だと思っている。

 イングリッドもそう思われて悪い気はしない。そもそも若く見られたいので、自分の素性を知らない人間にわざわざ実際の年齢を告げるようなまねもしない。

「散々見て来たどころかアレの改造までしてるんだから良く分かってると思うけど、ほら」

 イングリッドのクリトリスにアルドリッジの指が触れる。

 ヘザーやミルドレッドと比べるとどんなクリトリスでも小さくなってしまうが、封印した直後のパトリスと比べるとイングリッドのクリトリスは二回りほど大きい。

「お!・・・んふふふふ♫」

 触れた指がクリトリスをなで始め、イングリッドは思わず笑みを浮かべる。

『凄い魔法使いなんだから言わなくても分かると思うけど、封印されちゃったらもう抵抗出来ないからね?ここをこんな風にされても』

「ふふふ…そうかそうか、アタシは抵抗出来ないのか。・・・ンふっ、あっ♫」

 指の動きが変わり、イングリッドは少年が自分をイかせようとしているのが分かった。

 先端に当てた指でくいとクリトリスを反らせ、さらけ出された腹をすりすりと細かく撫でていく。

「ん~っ♫流石に3人分のクリトリスで遊んできただけあって慣れてるなぁ坊やは。…んっ♫んっ♫」

『・・・なんか…もしかして気持ちいい?他の人たちは俺みたいな知らない人に触られるの嫌だって反応してたけど…最初だけは』

「そんなことはいいからもっとつよ…そうか、中の声は聞こえないんだったな」

 イングリッドは封印空間の特性を理解した時点で中の音が外に漏れないことに気付いていた。

「しかたないな…あまり驚かせてもつまらないんだけど・・・おい、坊や」

『!!!???うえぇぇっ!?』

 アルドリッジは飛び跳ねてクリトリスから指を放し、そのまま後ずさった。

「え・・・えぇぇ???嘘でしょ?・・・・・」

 アルドリッジは耳を澄ましてみたがもう声は聞こえない。もしかしてと思い、もう一度クリトリスに触れてみる。

「そんなに驚くな、坊や。さっきアタシが凄い魔法使いだって自分で言ってただろ?このくらい出来ると思わないか?」

「・・・」

 アルドリッジはクリトリスを介して、というよりもクリトリス云々ではなく直接頭に喋りかけられるということ自体が初めてだったため、その感覚に大いに戸惑う。

「・・・いや、他の2人がそう言ってたから凄いんだろうなって…こんな事が出来るとは…全然」

 イングリッドはクリトリスを介さなくてもアルドリッジに声を聞かせることすら出来たが、しばらく少年には自分が優位に立っていると思っていて欲しいので、この程度でやめておいた。どの道少年の力の秘密を探るには会話する必要があるので多少驚かせて仕舞うのはやむを得ない。

「とにかく、すぐにここからアタシを出しなさい。痛い目に遭わせるよ!」

「・・・あれ?凄い魔法使いなのに自分で出て来られない?…出て来られないのにどうやって痛い目に遭わせるの?」

 アルドリッジは改めてイングリッドのクリトリスをつまみ、こね始める」

「あっ♫こっ、こらぁ!人のクリトリス勝手に弄るなぁ♫」

『・・・なんか嫌がってるように聞こえないんだよなぁ…』

「弄られたくなかったら抵抗してみたら?じゃないとこのままイかせちゃうよ?」

「いやぁぁん♫アタシのクリトリス勝手にイかせないでぇっ♫」

 アルドリッジはイングリッドのクリトリスをこねながら、考えてみると封じられた女達の声を聞いたことはこれまで無く、クリトリスの反応だけで中の様子を想像していたに過ぎないため、実際はどの女達もこんな感じだったのだろうかと戸惑う。それほどイングリッドの声には余裕があった。

「あぁんっ、いやぁっ♫…あっ、あっ、んっ♫イクぅぅぅ~~~っ♫♫♫」

 指の下で他の女達と同様にクリトリスが跳ね、絶頂が演技で無いことは分かる。

「結局出てこられなかったね。抵抗出来ないの分かった?」

「うぅ…わかったぁ」

「分かってくれたなら良かった。せっかくミルドレッドより凄い魔法使いが手に入ったんだから色々協力して貰いたいしね。協力してくれるでしょ?」

「協力?協力なんて絶対しないぞ!」

「・・・だったらいじめなくちゃいけなくなるよ?」

「え?…いじめるの?」

「うん、こんな風に」

 アルドリッジはかつてパトリスにしたようにイングリッドのクリトリスをつねり、捻り上げる。

「いぃ~~~っ!?痛い痛いいたいぃぃっ!やめてぇっ♫」

「止めて欲しい?じゃあ協力してくれる?」

「いやだぁぁっ!しないぃぃぃっ!」

 アルドリッジは更に力を込めてクリトリスを引っ張り上げる。

「あぎゃぁぁぁ~~っっっ!!やめてぇぇぇぇちぎれるぅぅぅぅっっっ♫」

「千切れちゃう前に素直に協力した方がいいよ?してくれる?」

「すっ、するぅぅぅっ!協力するから止めてぇぇ♫」

 アルドリッジは指を放し、一転して痛みで震えているクリトリスを優しく撫でてやる。

「協力してくれるなら痛いことはしないから、いい?」

「うん、いい」

「凄い魔法使いなのは確かなんだろうけど、もう抵抗出来ないの分かった?」

「うん、分かった♫」

 アルドリッジは内心ほっとした。ミルドレッド達が恐れるほどの魔法使いの協力は欲しかったが、ミルドレッド達が恐れるほどの魔法使いなら封印されている状態でも何が出来るから分からない。

 しかしあっけないほど簡単に納得してくれた上、驚きはしたものの出来ることが頭に直接喋りかけてくるくらいなら問題無い。むしろ知恵を分けて貰うならその方が都合がいい。

「あ、それから、坊や…じゃない・・・なんて名前だっけ?お前」

「・・・お前って…アレクシスだけど」

「じゃあアレクシス様ぁ♫、今からもう一つ魔法使うけど驚かないでね?」

「えっ?」

 イングリッドのクリトリスがピクピクと動き始めたかと思うと、やがてその表面に何かの紋様が浮かび上がってくる。

「え?・・・何これ?何の魔法?・・・もしかして、これ…目?目の模様?」

「うん」

 紋様を浮かび上がらせたイングリッドのクリトリスは、きょろきょろと辺りを見回す。

「・・・もしかして、見えて…る?」

「うん、見えてる♫」


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 イングリッドのクリトリスに現れた紋様は本来壁や天井に記し特定の場所を監視する魔法で、シャンニでアルドリッジを捜索するために使用した操作術のように頭に映像が送られてくる。こちらは監視することしか出来ないためより単純で、ミルドレッドでも使用できる。

 ミルドレッドが使用しなかったのは第一に20年に及ぶ強烈な痒み責めのせいでそれどころではなかったという事もあるが、推論ではあるものの封印空間に関してイングリッドと同じ結論に達しており、外にあるクリトリスで何らかの魔法を使ってしまうとエネルギーが循環せず、少しずつでも代謝、すなわち老化が進んでしまうことが分かっていたためだった。

 監視術は1度紋様を記して仕舞えば済むわけではなく、見る度に魔力を消費する。

 現にイングリッドの魔力は消費され始めているが、全く意に介してはいなかった。

 イングリッドとミルドレッドでは生産・蓄積共に魔力の量に大きな差があった。しかもイングリッドはしばらく箱の中に居ることは決めたが、用が済めば出て行くつもりなので少々エネルギーが拡散していっても何の問題も無い。

 更に常時魔力を消費し続ける代謝停止術を封印空間では使う必要が無いため、なおさら僅かな消費を気にする必要が無かった。

 イングリッドはクリトリスで辺りを見回し、アルドリッジが何処かの小屋にいる事を知った。

 しばらくは指を介してしか喋らないと決めたので、クリトリスをくいくいと動かし触れるように催促する。

 アルドリッジの指がちょんと先端に乗せられる。

「上手く逃げられたのね?」

「・・・一応はね、たぶんまた追って来るだろうけど・・・そうじゃなくて、見えちゃってるんだ」

 アルドリッジは紋様に触れてみようとして手を止める。

「これ触って大丈夫?」

 紋様が目の形を模しているため、眼球に直接触るような気がして一瞬躊躇う。

「いいよぉ♫」

 イングリッドはぴくりとクリトリスを動かして差し出す。アルドリッジは改めて、特に紋様の部分に触れてみる。魔力を帯びているため若干発光しているが、特に熱くもなく、感触も他の部分と変わらない。

「これって…こうしたらどうなるの?」

 アルドリッジは指で目の紋様を隠してみる。

「見えない」

「じゃあ蓋をすれば問題無いって事か」

「いやぁん、中退屈だから閉めないでぇ、アレクシス様ぁ♫」

「…とりあえず何にせよ、最初にクリトリスを大きくしておこうと思ってたんだけど、見えちゃってて大丈夫?」

「ん?アタシのクリトリス大きくするの?どうやって」

「それは形を・・・」

 アルドリッジはふと、これといった根拠はないがまだイングリッドには自分の力を知られない方がいいような気がした。

「とにかく大きくなったらまた遊んであげるから、しばらく退屈でも我慢しててよ」

「ここ大きくなったら遊んでくれるの?」

 イングリッドはクリトリスをピクピクと動かす。

「うん、だから大きくしていい?」

「いいよぉ遊んでくれるなら♫アタシのクリトリス大きくしてぇ♫」

 蓋を閉じ、動き続けているクリトリスを隠す。指を放したのでイングリッドからの声はもう聞こえない。

 アルドリッジはそのまま箱の形状を変化させていく。パトリスのクリトリスを育てる際に使用した真空式吸引箱だが、蓋の部分もガラスでなく鉄で作る。

 単純な魔法である監視術は遮蔽物を越えてモノを見ることは出来ないらしいので、蓋を不透過物質で作っておけばイングリッドのクリトリスを育てながでも力を使って村人の農具を修理することが出来る。

「くそ~蓋を閉じられたか」

 イングリッドはクリトリスで辺りを見回してみたが、蓋と土台の隙間から極細い光りが漏れているのみだった。

「まあいいか、面白いし♫」

 魔法使いの頂点に立ち、何人も手を出せなくなって久しいイングリッドはこの状況を楽しみ始めていた。

 最初は単にアルドリッジが隠している封印法を探るために箱の中に留まっていただけだったが、相手に合わせているうちに何百年と忘れていた感覚を思い出し、浸ってしまっていた。

「ん?」

 隙間からの光りがぐねぐねと形を変えているよう見えだした。暗がりでの錯覚かと思ったが、光りはどんどん少なくなりやがて蓋の中は完全な暗闇に包まれた。

「何かしたのか?…いや、何かで覆っただけ…?」

『イングリッドちゃん、それじゃあ今から始めるからね。実はこれが痛いのかどうか分からないから、後で教えて』

「えぇ~っ!?何する気なのぉ?」

 アルドリッジの声が聞こえるとイングリッドはまた人格を切り替える。馬車内で鞄を漁った際に魔法薬の類いは何も持っていなかった事は分かっているが、どうやってクリトリスを大きくする気なのかは分からない。

―しゅこっ。

「んっ!?」

 アルドリッジは蓋の内側の空気を抜くため伸縮柱を稼働させる。

―しゅこっ…しゅこっ。

 蓋内部に音が谺する旅にイングリッドのクリトリスが感じる違和感が大きくなる。

「あぁんっ、なんだこれぇ?なにしてるのぉ♫」

―しゅこっ…しゅこっ。

 一定数柱が上下に往復し中の空気が元の半分の量になると、漸くクリトリスは自身が膨らんでいるという感覚を覚え始める。

「んあっ!?ホントに膨らんでるぅぅ、アタシのクリトリス大きくされちゃうぅぅ♫

 あぅっ、あぅっ、あうぅぅっ、あ~~~ん、なにで吸ってるのぉぉぉっ♫」

 中の空気が完全になくなると柱は動きを止め、クリトリスを膨張させたまましばらく待つ。

 箱の中に組み込まれている歯車の回転数で経過時間を判断し、空気を戻す。

「はふぅぅぅ~~~・・・・・んあっ!またぁぁぁ♫」


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 中のイングリッドはアルドリッジの力を探るという本来の目的を忘れ、膨らまされては元に戻り、また膨らまされるクリトリスからの感覚を楽しむ。

 馬車で封印された際に手渡された箱は極単純な形をしており、今クリトリスに施している様な処置が出来る仕掛けは間違い無くなかった。その点が解明の足掛かりになるはずだが、今のイングリッドは気にも留めない。

「いやぁぁん♫ホントに大きくなっちゃうぅ、許してぇアレクシス様ぁ♫」

 イングリッドは300年以上年の離れた赤子同然の少年に自由を奪われ無抵抗で弄ばれる囚われの魔法少女ごっこをすっかり気に入ってしまい、アルドリッジの秘密の解明を同時進行どころか後回しにし、しばらくこのまま遊ぶことに決めてしまっていた。

 鍬の錆を取り、折れた鋤を繋げ、切れなくなった鎌に切れ味を戻す。

 農夫がどういう伝え方をしたのか、村人達は遠慮なく直して欲しい農具を持ち込んできた。

 力を使いすぎると疲れることが発覚したため一気に全て終えることは出来ず、アルドリッジは頻繁に休息を取りながら痛んだ農具を修理する。

 そして休憩の度に新入りのクリトリスの成長具合を確かめる。

「なんか大きくなるの早い気がするなぁ」

 アルドリッジはクリトリスをつまみ、観察する。パトリスのクリトリスは満足いく大きさに育つまである程度の日数を要したが、イングリッドのクリトリスは僅か一日で目に見えて大きくなっている。

「・・・もしかして、また何かしてる?」

「だってぇ、大きくならないと遊んでくれないんでしょ?」

 イングリッドはアルドリッジに協力し自らクリトリスを大きくしていた。吸引が止まったところがアルドリッジが望む大きさなのだと判断し、代謝を操作しながら成長を早めていく。

「そんなことが出来るなら先に言ってくれればいいのに」

 アルドリッジは摘んだクリトリスを引っ張り、どうやれば自分の意志で大きく出来たりするのだろうかと不思議がる。

「うぅん、引っ張るのやめてぇ♫」

「じゃあきゅ…ゴホン、俺が大きくしないでも自分でもっと大きく出来たりするの?」

「出来るよ、した方がいい?」

「うん、してみせて」

 イングリッドが血流を通じて魔力と術を送ると、クリトリスはむくむくと大きくなり、僅かな間にヘザーやミルドレッドに匹敵するほどに成長した。イングリッドは現在の容姿を14歳程度で止めているが、生まれてからたった14年で魔法使いの頂点に立ったわけではなく、クリトリスを肥大させたような1つの系に属する代謝術を駆使し、一旦若返ってから老化を止めている。

「このくらいでいい?」

「ホント凄い魔法使いなんだなぁ、イングリッドは。まだ子供なのに」

「うふ♫うふふふふ♫…あんっ」

 アルドリッジは大きくなったクリトリスを撫でて誉めてやる。

「いやぁん、勝手に触らないでぇ♫」

「なにを今更…触らないと声聞こえないし」

「なでなでされたら気持ち良くなっちゃう…」

「こう?」

 アルドリッジは先端から根元へと指を滑らせ、キュッキュと磨き上げるようにすりあげる。

「あぁんっ、イかせようとしないでぇ」

「あれ?イキたくない?」

「今はイキたくなぁぁぁい♫…あっ、あっ、あん~っ♫」

 アルドリッジは指を止めず開いた手でクリトリスを左右から摘み、根元の窪みに指の腹をはめ込みながらぐにぐにと刺激を与え始める。

「やだぁ、イキたくないって言ってるのにぃ♫ん~~~っ♫」

「すぐに理解してくれてると思ってたんだけど、まだだった?もうイングリッドはクリトリスに何されても受け入れるしかないんだってば。ほらほら」

「ああぁぁ~~~~っ♫イかされちゃうぅぅぅ~~~っ♫んはぁぁぁぁっ♫」

 クリトリスがビクリと震え絶頂を知らせる。

 アルドリッジは鞄の中から2冊ノートを取り出し、目的の頁を開いてイングリッドのクリトリスに見せる。

「封印されててもそんなにいろんな事が出来るなら、こういうのも作れちゃったりする?」

「ん~?」

 イングリッドは絶頂の余韻に浸りながら気怠そうにクリトリスを動かし、差し出された頁を見る。

「あ~、作れるよぉ」

「ホント?こういうのも?」

 アルドリッジはパラパラと頁をめくり、鋭敏薬や掻痒薬、肥大薬などの作り方が走り書きされている頁を見せていく。

「出来る出来る、簡単よぉ、こんなの」

「中に居たままで?…出ないと無理って言われても出さないけど」

「うん、クリトリス使ってつくれるよぉ♫」

「すごい!そういうことなら素材集めて来ないと・・・でも聞いたことない物ばっかりだな…意外とここの人たちが持ってたりしないかな…」

「素材なんて要らないよ?水と炭があれば出来る」

「え?…どうやって?」

「それはねぇ・・・」

 イングリッド達が使う魔法は加療や物理操作、空間掌握や召喚などいくつかの系統に分けられているが、それらはあくまで目的別の分類で、それらは全て魔力の行使という1つの大系に含まれている。

 少なくともベシーナ地方に於いては最強の魔法使いであるイングリッドはその全てに精通しており、当然錬金術も習得している。

「じゃ、じゃあ今ここに水と炭を貰ってきたらこういう薬作れちゃうの?」

「もちろん♫・・・でもつくらないよ?」

「え・・・なんで?」

「だってそんなの作ったらそれ使ってアタシや他のお嬢ちゃんいじめて遊ぶんでしょ?」

「そりゃ…そうするために誰かが考えたものだから」

「お嬢ちゃん達はともかく、作らせといてアタシにも使うんでしょ?絶対作らない!」

「しょうがないなぁ、もう・・・」

 アルドリッジはもう一度鞄を漁り、パトリスの箱を取り出し蓋を開ける。

「お!?」

 箱の表面を球体がころんと転がり、アルドリッジは危うく落としてしまいそうになる。

「これってこんなにすぐ次が生まれるんだ」

 馬車の中でイングリッドが改造の成果を見せるために1度産ませてから2日ほどで、ビラチーナは新しい卵を産み落としていた。

 ビラチーナはイングリッドによって様々な改良をされたが、最も大きな点は生殖能力でも魔力自給能力でもなく、それらを効率よく機能させるための知能を与えられた点だった。

「いぎゅぅぅぅぅっっっ!んひっんひっんひぃぃぃぃぃぃっ!!」

 ぐいんぐいんと左右に大きく腰を振り、パトリスはクリトリスへ与え続けらる快感から逃れようとしていた。体力が減らないため苦しみが続く限りいつまででも惨めな動きを続けられてしまう。

 イくことが封じられているパトリスは悶々と続く焦燥感を解消すべくカクカクと腰を前後に動かしたり、肛門に力を入れて触手に翻弄されるクリトリスを固定したり、わざと放尿し下半身に開放感を与えてみたりと、何とか絶頂を得るために様々な事を試していた。

 しかししばらく前、突然ビラチーナの挙動が変化してからはそれらの試みは全て意味を無くし、パトリスは純粋に悶えるだけの生き物になっていた。


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 尿道口に達した繊毛はそこを塞ぎ、自身の生命維持に必要な分以外の排尿を禁じ、イくことが出来ずに焦れ続けている性器に更に恒常的な尿意も加えてしまった。

「おひっ、おっおあっ、こはっ、こっ…ンぐぅいぃぃぃぃっ」

 弛緩液によってほぐされたクリトリスは刺激に対する単純な反射すら奪われ、どんなに身体を力ませたり肛門を締めてもぴくりとも反応せず、感度だけが高まったまま一方的に繊毛や触手に這い回られ続けている。

 かつての制作者に与えられた命令を淡々と繰り返すだけだったビラチーナはイングリッドの改良により、刺激する箇所や方法、強度などを自ら考えて変更する程度の知能と機能を与えられていた。

 クリトリス表面下の神経群の発火を常に走査し、全体的に刺激を与えながらも反応が足りない箇所を見つけるとすぐさま繊毛か触手で追加の快感を送る。

 クリトリスを悶えさせるという本来の目的を遂行するために、自身が与えられ、クリトリスが感じ取れる最大限の快感を常に生み出すように試行錯誤しながら蠢動している。

「ふぎゅっ、ほっ、くほっ、んほっっ」

 堰き止められた排尿の代わりのように膣液と腸液を吹き出し、身体からは汗を、赤く染まった顔からは涙と鼻水と涎を垂れ流しながらパトリスの脳は全て絶え間なくクリトリスに与え続けられる大量の快感を処理することのみに使用され、最早止めて欲しいという懇願やイキたいという欲求が沸く余地すらなくなっていた。

「あひっ、あっ、あひっ、おっ、くおっ、きっ、きひっ」

 パトリスは白目を剥きながら痙攣し続ける。

 ビラチーナがクリトリスを悶えさせる為に存在するように、それに包まれたパトリスはクリトリスを悶えさせられるためだけに存在する、言わばビラチーナの部品の一部となっていた。

 逃れる術を一切持たないパトリスは、所有者に解放されない限りこのままビラチーナの存在意義を満たすためだけに自身のクリトリスを差し出し、惨めな姿でひたすら悶え狂い続けるしかなかった。

 アルドリッジは卵をつまむ。もう二つ目が産まれているとは思っていなかったのでパトリスのビラチーナを移し替えようとしていたが、子が使えるならパトリスはそのままにしておく。

「イングリッド、これ卵から孵すにはどうすればいい?確か馬車では魔法か何かかけてたような」

 ビラチーナの卵は勝手に孵ることはなく、その状態でならしばらく保管することも出来る。孵化させるにはきっかけとなる魔力を与えるだけで済み、特別な術は必要ない。ただし尿を生命維持に使用する生物に変えられてしまったため、孵化した後はすぐにクリトリスに被せる必要がある。

「えーっ教えない!!孵してどうする気?」

「どうするって、もちろんここに被せるよ」会話するために乗せていた指にくいと力を入れる「薬作ってくれるなら許してあげるけど」

「やだーっ、どっちも!薬も作らないし孵し方も教えない。教えなかったらアル様は魔法使いじゃないから魔力与えられないし」

「・・・あ、なんだ、魔力与えるだけでいいの?それらなここにあるよ」

 アルドリッジは改造前のビラチーナに与えるためにシャンニで購入していた凝縮魔力を取り出す。

「あ・・・」

 凝縮魔力の結晶を殻に押しつけると徐々に小さくなっていき、代わりに殻にヒビが入り始める。やがて結晶を使い切る前に卵が割れ、小さなビラチーナが孵化した。

 直後は小さかった子ビラチーナは与えられた魔力の残りを使い、親と同じ大きさになっていく。大きくなってしまうともう魔力を細胞分裂に使用することは出来ない。

「へぇ、すぐに成長するんだ。1匹目はこうなる前にイングリッドが殺しちゃったもんね。

 ・・・じゃ、被せるよ」

 アルドリッジはつまんだクリトリスをしっかりと立たせ、その先端にビラチーナの口を導いていく。普通のクリトリスには分からないが、監視術を施しているイングリッドのクリトリスはその口の周囲で蠢く触手や、内側にびっしりと生えている繊毛が見えてしまう。

「まってまってまって、ホントにそれ被せちゃうの?」

「うん、お願い聞いてくれないならお仕置きしないと」

「そんなの被せられたらおかしくなっちゃう♫」

「・・・その点に関しては俺もそう思うよ。でも20年被せられ続けてたヘザーがおかしくなってないから、何故か大丈夫なんだよ。第一君はこれ改造してるんだから、俺より詳しいでしょ」

 ビラチーナの触手がクリトリスに触れる。今のビラチーナは命令による義務だけでなく自身の命も掛かっているため、すぐにそれを取り込もうと暴れ始める。

「あひゃっ♫さきっぽくしゅぐったい♫ぜんぶ食べられちゃったらアタシ死ぬぅ♫」

「素直に作ってくれないから。絶頂までは封じないでおいてあげるから、しばらくこいつにイかせてもらってて」

「いやぁぁぁんっ、やっぱり作るぅぅぅ、いっぱいイかされるのやぁぁぁっ♫」

 アルドリッジは聞く耳を持たずイングリッドのクリトリスをビラチーナの中に沈めていく。湿った内側が蠢く感触だけでなく、触手や繊毛が栄養源を与えられた喜びで蠢き回り始めるぐちゅぐちゅという音も聞こえる。

「あぁ~~~っ!アタシのクリトリス食べられちゃうぅぅぅっ♫」

 イングリッドのクリトリスは難無くビラチーナの中に収まる。アルドリッジは指を放さずそのまま様子を見る。

「なぁぁっ!吸われるぅぅぅ♫」

「きゅぅぅぅっ!ぎゅっとしてくるぅぅぅ♫」

「っひゃ、ひっ、もじょもじょするぅぅぅぅ♫」

 ビラチーナ越しでもイングリッドの声が聞こえることを確認したアルドリッジは指を放し、暗闇の中でしっかりイかせ続けて貰えるよう蓋を閉じた。

 ビラチーナはまずイングリッドのクリトリスを吸引する。

 あえて口を滑らせアルドリッジに卵の孵し方を教えたイングリッドにその気は無いが、もしも代謝術を解いて本来の大きさに戻そうとしても1度吸い上げられ、且つ全方向から締め付けられてしまったクリトリスはビラチーナが責めやすい大きさに保たれてしまう。

「んにゃひゃひゃひゃひゃぁぁぁっ」

 ビラチーナが胴を調整している最中もクリトリスは内側の繊毛にくすぐられている。

 イングリッドは蓋を閉められ無用になったクリトリスの監視紋を消しただけでなく箱の中で本物の目も閉じ、自分が改造した陰核苛虐生物がどんな風に責めてくれるのか楽しみに待ち構えている。

 しかし不満な点が一つあった。

 ビラチーナは準備が整った事を知らせるように振動を始める。最初の数秒こそ微かだった振動が一気に激しくなり、小さな体にも関わらず驚くほどの出力を発揮するビラチーナの振動は外に出ている部分だけでなく中にまで伝わり、イングリットの薄い恥丘の肉を微かに波打たせる。

「ほあぁぁぁっ!?もっ、もうイクぅぅぅぅっ!?」

 イングリッドは開始数秒で最初の絶頂に達した。最初の数回の絶頂はビラチーナにとっては情報収集に過ぎず、今自分が飲み込んでいるクリトリスの神経数や伝導率、その伝導率での刺激の処理速度などを求め、快感と痛みのギリギリの境界を探る。

 ビラチーナの機能を使えばクリトリスを引き裂くことも潰してしまうことも出来るが、ビラチーナはあくまで快楽でクリトリスを悶えさせるために作られており、脳波までは走査出来ないためクリトリスの反応のみで快楽の最大値を探るしかない。

 ぐちゅり、と元々湿っていたビラチーナの内側が更に潤う。

 分泌されたのは鋭敏液で、同時にこれから胴体に伸縮と捻りを加える為の潤滑剤も兼ねる。

「ああぁぁぁぁぁっ・・・あはぁっ!?っっはぁぁぁぁぁ~~~っ!!!」

 ぴったりと密着し震え続けていたビラチーナが上下左右に、中のクリトリスごと動き始める。

「おあぁぁぁっ!!イクぅっイクイクイクぅぅぅっ!!!」

 振動を与えられたまま上下に扱かれ、左右に捏ねられる。鋭敏液が効き始める前にイングリッドは立て続けにイかされた。

 やがて鋭敏液が浸透した証拠に、胴体から与えられる刺激で一旦影を潜めていたくすぐったさをクリトリスが感じ始める。

「んやぁぁぁっ、んっ、んひっ、あっ、あっ、あっ、」

 中のイングリッドは無意識にくねくねと蠢き出す。既にイングリッドは短い周期でイかされ続けている。ビラチーナに緩急の概念はなく、クリトリスの持ち主が誰であれビラチーナが振動を始めた頃から休むことなくイキ続けることは確定しており、後は間隔は短く、快感は多くなり最終的にはパトリスのようにあらゆる体液を垂れ流しながら痙攣し続けるだけの生き物になる。

「んひぃぃぃっ!イクぅぅぅぅっ!ほっ、ほあっ…んっ、イクぅぅぅぅっ!!」

 感度は1度の塗布では最大にならない。それでも繊毛や触手の刺激が始まると十分すぎる刺激を感じ始める。

「あひぃぃぃぃっ!!ずっとイかされるぅぅぅぅ~~~っ♫」

 イングリッドの不満は、最強の魔法使いたる自分がこれほど無抵抗にイかされながら哀れな鳴き声をを上げているにも関わらず、それをアルドリッジに聞かせられないことだった。

 囚われた悲劇の魔法少女は可憐なクリトリスを弄ばれ、その辛さから支配者に許しを請う、というごっこ遊びをもっとしたかった。

 次にアルドリッジが蓋を開いたら問答無用で直接頭に喋りかけられるようにしようと考えられるほど、イングリッドにはまだ余裕があった。

「もぐもぐ…それで…何か変わったことはもぐもぐ…ない?最近」

 農夫が提供したのは寝床と食事だけで鍛冶道具の類いは一切無かったにも関わらず、新品同様になって戻って来た鍬を不思議がることなく、純粋に喜びながら眺めている。

「変わったことは…聞かないなぁ。聖女様もまだご病気だし。早く良くなってくれるといいんだがなぁ」

 聖別式を終えていないためシャンタルはまだ正式には聖女ではないが、大抵の国民は聖女と呼ぶ。本来行われるはずだった式の日から既に5年以上経過しているが、未だに中止ではなく延期扱いになっている。

 アルドリッジはマジャリに入って始めて口をきく民間人の農夫から首都近辺の様子を聞こうとしたが、田舎の小さな村では首都の話など話題になっていないらしかった。

「他の人のも修理するのにもぐもぐ…もうちょっと掛かるからもぐ、しばらく泊まってていい?もぐもぐ」

「ははは、そりゃ構わんよ。いつもは年に1回農閑期にまとめてニラマーヤの鍛冶屋まで持って行ってたんだがこれが大変でな。今年は兄ちゃんのおかげで行かずに済みそうで大助かりだ」

 イングリッドのクリトリスにビラチーナが被されてから数時間が経ち、漸く繊毛の一部が尿道に達し穴を占拠した。

 繊毛は筒状にはなっておらず、漏れ出て来る尿を堰き止めながらその場で生命維持に必要なエネルギーに変換し本体に供給する。

 子ビラチーナが産まれておらず、イングリッドに使用するためアルドリッジがパトリスのビラチーナを剥がしていた場合極細いこの繊毛は千切れてしまっていたはずだが、すぐに戻すか別のクリトリスに被せさえすれば最初からやり直しにはなるが再生しまた尿度入り口を封じる。

「あおぉぉぉぉっ、おしっこしたぁぁぁいっっイクぅぅっ!おしっこぉぉっ!」

 恥丘を震わすほどに強いビラチーナの振動が膀胱にも伝わり、中に溜まっている尿を泡立たせる。

 かつてのビラチーナならこういった際に絶頂しながら失禁することが出来たが、新ビラチーナではそれが叶わない。

 元々ヘザーに被されていた時から外にいるビラチーナごと循環していたエネルギーが、繊毛が空間内部に侵入したことにより一層完全に巡り始め、本来封印された時点で膀胱内に残っていた以上には増えないはずの尿が封印後にも溜まり続けるようになっていた。

 膀胱が限界まで尿で満たされると、栓をされておらず好きなだけ垂れ流すことが出来る膣液や腸液、涎や汗に回される。

 尿が溜まる速度よりもビラチーナがそれを必要とし自身のエネルギーに変換する間隔の方が長いため、被らされるといつか必ず限界量に達する。

 まだ数時間しか経っていないイングリッドでも徐々に尿意を覚え始めており、既に3日近く経過しているパトリスは尿でパンパンに膨らみ自分の意志や自律神経でも排尿できなくなった膀胱に絶えず振動を与えられ、強い尿意を催したままイかされ続けていた。

「あぁぁぁっ!アル様ぁもう許してぇ♫もうイキたくないのぉ♫」

「おっ…おぉ・・・」

 様子を見ようと蓋を開け、ビラチーナに触れようとした直前にイングリッドの声が頭に響き、アルドリッジは多少たじろいだ。しかしもうそれほど驚きはせずにすんなりと受け入れる。封印されている他の女達が出来ない様な事を既にいくつかして見せられ、更に簡単に各種薬品も作れてしまうと豪語しているイングリッドなので、指を経由せず語りかけてくるくらい出来て当然だと考える。むしろ激しく動き回っているビラチーナに指を乗せて喋るよりもこの方が都合がいい。

「どう?自分で改造したこいつは。かなり凄くなってそうな感じはするけど」

「す、すごいぃぃっ♫ずっとイかされてるのぉぉぉ♫今もイキながらしゃべってるぅぅぅうひぃぃっ♫」

 アルドリッジは未だに外から見て分かる生殖能力以外どこに変更が加えられているのか分かっていない。しかしイングリッドの声が聞こえるため、どの程度の責めがクリトリスに与えられているのか推察することは出来る。

「んおぉぉっおしっこぉっ、おぃっこもしたぃぃっ♫イキながらおしっこしたいぃぃぃっ♫?」

「おしっこ?・・・そういえば中ではそういうのどうなってるんだろ…?すればいいんじゃない?今まで箱から何かが漏れてきたこと1回もないし」

「んん~っ!取ってくれないと出来ないのぉっ!おしっこの穴ふさがれてるぅ♫おしっこしたいって思いながらイかされてるのぉ♫?」

「???・・・どうなってるのか良く分からないけど、それも君が自分で改造したんだから…まぁ、自業自得?」

「やぁぁぁっもうとってぇ♫アタシのクリトリス自由にしてぇ♫」

 ビラチーナはまだ弛緩液を分泌していない。改造された時点で既に上限まで感度を高められていたパトリスはすぐにその洗礼を浴びたが、まだ被せられて一日も経過していないイングリッドのクリトリスはまだまだ感度が上がる余地が残っており、最高点に達してから漸く弛緩液は分泌される。

「そんなに取って欲しい?」

「とってとってぇ♫きもちいいのつらいよぉぉっ♫」

「どうやったら取って貰えるか分かってるでしょ?」

「んあっ、んっんっっ!つっ、つくるぅぅっ、なんでも作るからぁ♫いうこときくからゆるしてぇ♫」

「ん~・・・・・じゃあこうしようか。俺のお願い聞いてくれてる間だけ外して休憩させてあげる。それ以外の時は気持ちいいままでいようか?」

「えぇぇ~っっ!?んん~~~っ・・・・・そっ、それでいいぃぃっ、やすめるならもうそれでいいぃっ♫」

「それなら外してあげる」

 アルドリッジはビラチーナをつまんで引き離し始める。

「ほひょぉぉぉぉ~~~っ!!」

 クリトリスが根元から引き延ばされ、イングリッドの背筋に冷たいモノが流れ肛門がきゅっと締まる。

 極細いためこの時点で尿道を塞いでいる繊毛はプチプチとちぎれてしまった。しかし改造したイングリッドも予想していなかったが、既に封印空間に入りその効果の影響下にあった繊毛は本体から切り離されても死ぬことなく、繋がっていた時と変わらずに尿道を塞ぎ続けている。

 繊毛が千切れる感覚は力強く箱の表面に張り付いているビラチーナの足を剥がす作業にかき消され、アルドリッジが気づくことはない。

「あっ、あ、あ、あ・・・ふいぃぃぃ~~~っ♫」

 僅か数時間で真っ赤に染まり、熱を帯びていたクリトリスは外気に触れ心地よい涼しさを感じる。体液に濡れテラテラと光りながらまだピクピクと細かく震え無数の絶頂の余韻に浸っている。

 アルドリッジは外したビラチーナを開いた蓋の裏に置く。ついさっきまで激しく動いていたビラチーナは途端に大人しくなる。エネルギーの供給源を失い無駄に消費しないための生存本能だが、このままでは1時間も保たない。

「それじゃ、ビラチーナが死んじゃわないうちに早速作って貰おうかな」

「薬を作って貰おうと思ってたんだけどさ、その前にやって貰いたいことがあるんだけど」

「なにぃ?」

「今こうやって喋ってる…魔法?それが使える咒器?…が欲しいんだよ。作れる?」

 出来るだけ早くビラチーナをイングリッドのクリトリスに戻す必要があるため、アルドリッジはまだ連続絶頂の余韻が抜けないイングリッドに早速依頼を始める。

 各種薬品は特に目的もなく、作れる人物を入手したので作っておこう程度に考えていたが、リンジーがいない今、箱の中の人物と会話が出来る方法があるのなら優先的に入手しておこうと考えた。

 ヘザーやミルドレッドはともかく、パトリスに関してはマジャリに戻った後父親が埋葬されている場所を聞き出さなければならないため特に必要になる。

「えぇ~?アタシ以外のお嬢ちゃん達とも喋ろうとしてるのぉ?」

「・・・俺にも色々事情があるの!…言っておくけどなにもいやらしいことをしたいだけで君たちを封印して持ち歩いてるわけじゃないからね?

 それに今後俺がイングリッドに用がない時はアレを被せられてイキっぱなしになるんだから、蓋を閉めたままでも中の声を聞きたいんだよ。君の声可愛いから」

「うふ♫」

 イングリッドはおだてられ気をよくする。

「あたしアル様の用がない時はイキっぱなしにされるのぉ?いやぁぁん♫

 でも中でアタシがひぃひぃ泣いてる声聞きたいの?・・・じゃあ作ってあげるぅ♫」

「良かった。それで、咒器はどんな形にすればいい?」

 アルドリッジは気づいていないが、イングリッドは蓋を開けられた際に素早くクリトリスから術を放ち、額に命中させていた。会話している最中はイングリッドのクリトリスの紋様の様に発光しているが、会話中に鏡でも見なければ自分では気づかない。

 思考伝達術は監視術と似ているがやや高度で、言葉だけでなくその気になれば思い描いた映像を送ることも出来る。

 アルドリッジはイングリッドの声を聞いたことがあるため頭の中で送られた思考に音声が割り当てられているが、全く見ず知らずの人間から突然思考術で意志を伝えられた場合、送り主の声では再現されず、自分の声や記憶している誰かの声が適当に割り当てられる。

 イングリッドはアルドリッジの勘違いを踏まえて咒器の形状を指示してやる。

「どんな形でもいいんだけど、頭の近くにあるほうがいいから耳に着けられるような形にしたら?」

 アルドリッジは箱の死角で金属を加工し始める。装飾品の類いは作り慣れているが、イヤリングを着けてるのは恥ずかしいため、耳の上に引っかけて乗せておけるような形状の器具を作り出す。

「こんな感じでいい?」

「!・・・どうやって作ったの?それ」

 しばらく囚われの魔法少女役に浸っていたイングリッドが久しぶりに我に返る。てっきり流用できそうなモノを探してくると思っていたが、目の前から移動することもなく、1分足らずで耳に装着するのに都合の良さそうなそれらしい装具を見せられた。

 まだ当分イングリッドには自分の力を知られずにいようと考えたアルドリッジも油断しており、うっかり簡単に必要な物を作り出してしまった。

「いや…俺手先が器用だから」

 器用で済ませられる制作速度ではないことは口にした本人も分かっている。しかしイングリッドも自分で答えを導き出せないのはプライドが許さないため、追求して解答を聞きだそうとはしない。

「と、とにかく、これに魔法を掛けて貰えばいいんだよね?じゃ、お願い」

 アルドリッジは作成した装具をイングリッドのクリトリスに押し当てる。

 アルドリッジは今まさにイングリッドとやり取りしているような効果を持つ咒器を欲しがっているが、これはあくまでイングリッド自身が術を使って思考を送っているので会話が出来ている。

 装具に同じ効果の魔法を込めた場合、アルドリッジの思考が相手に送られることになる。

 アルドリッジが欲しがっているのはその真逆の用途の咒器なので、伝心術ではなく読心術を付与してやる。

 イングリッドがクリトリスから装具に魔法を送るとその表面に魔法言語か浮かび上がり、数分前までただの金属だった物が咒器へと生まれ変わる。

「それと、これだけじゃなくてもう一ついるよ」

 耳に着ける咒器は受信用なので、クリトリス側に取りつける送信用の咒器も必要になる。これは伝心術でアルドリッジの額に着けられた紋様に相当する。

 アルドリッジは取って付けたように小屋から出て行き、手頃な大きさの輪を見つけて戻ってくる。

 アルドリッジはその能力で術を施された物質の変位要素を解析し記憶することが出来るので、クリトリス側に取り付ける装具は何でも良かった。1度何かに魔法さえ施して貰えればそれを抽出し、封印術や絶頂阻害術のように箱そのものに組み込むことが出来る。

 イングリッドはその輪に送信術を施してやる。

「これでいいのかな?ありがとう、後で試してみるよ。

 ・・・じゃ、これ戻そうか」

 アルドリッジが伸ばした手はイングリッドのクリトリスの上を越え、その後ろにあるビラチーナを掴む。

 ビラチーナを見せられたイングリッドはまた囚われの魔法少女に戻る。

「やだぁ♫もっと休みたぁい♫」

「ダメダメ、早くしないとこいつ死んじゃうから。ほら、大人しくして」

 イングリッドはピクピクとクリトリスを動かし逃げようとするが、簡単にアルドリッジの指に捕まり、そのままビラチーナを被せられてしまう。

「あひゃぁっ♫」

 ビラチーナはクリトリスを感知し、一旦それを調べる。そしてそのクリトリスの状態がが自分が持っている情報と一致すると、すぐさま開発が中断されていた時点の責めから再会する。

 同時に改めて尿道に向かって繊毛を伸ばすが、外と内の境界を越えるとすぐに数十分前まで繋がっていた自分自身の残りと再会し、それと結合する。

「んやぁぁぁぁっっ!!もうイクぅぅぅっ♫はやいぃぃぃぃっ♫」

 ビラチーナが活動を再開するとイングリッドは直ちに一度目の絶頂に達せられる。そうなるともう止まることはなく、後はどんどん間隔は短く、快感も強くなりひたすらイかされ続けるだけとなる。

 ビラチーナは鋭敏液を分泌する。イングリッドのクリトリスはまだ1度しか塗布されておらず、まだまだ感度が高くなる余地を残している。

 振動が消え一旦治まっていた尿意にも再び苛まれ始め、栓をされているため出すことが出来ないまま溜まっていく。

「イクぅぅっ!アル様ぁ♫アタシイカされてるぅ、助けてぇ♫」

「次に用事が出来たらまた休ませてあげるから、それまではそのままイキ続けててね。ちゃんと時々どうなってるか聞いてあげるから。

 でもこの後は作って貰った咒器を試すし、農具の修理もまだ残ってるから、当分薬は作らなくていいよ」

「やぁぁぁっ、薬つくるぅ、イかせたままにしないでぇ♫」

 アルドリッジは箱の蓋を閉じる。

「まってぇぇ♫蓋とじないでぇっ、いぃ~~~っ、イクイクイクぅぅぅ♫」

 イングリッドが術を施した送心輪を解析し抽出した変位情報を箱に転写すると、蓋を閉めてもしっかりと甘ったるいイングリッドの鳴き声が聞こえてきた。

 読心術の情報を得たことによって封じられている相手との意思疎通が容易になっただけでなく、好きな時に中の女達が悶える声を聞くととが出来る様になった。

「くいぃぃぃ~~っ、アル様ぁぁぁっ♫イってるぅぅぅ♫アタシイカされてるよぉぉっ♫」

 アルドリッジは他の箱にも読心術を組み込み、パトリスかイングリッドのビラチーナが新しく卵を産み次第、ヘザーとミルドレッドにも同じ目に遭って貰おうと考え始めた。

 村での滞在期間が丸2日を超えてしまい、アルドリッジは次にどこに向かうかを考え始めた。

 検問所へ繋がる街道は人通りも多いはずなので、キトリーとギャエルはもう既に通行人に助けられ、追ってきているはずだと予想している。

 農夫から地図を借り、布団以外何もない小屋の床に拡げる。

 アルドリッジの当面の目的は父の遺骨を回収し、ウポレのとある村にある母の墓に埋葬することと、その父の死に責任がある者に報復すること。

 そのために首都に戻る必要があり、向かうのは東と決まっている。

 ただし首都まではまだまだ距離があるため、途中何カ所かは町を経由しなければならない。

 アルドリッジは滞在している農村からほぼ同じ距離にある山沿いのビシャンナータか平野のダムタ、どちらを通って首都に向かうかを決めかねていた。


 アルドリッジはパトリス達がどれくらいの規模で自分を追っているのか知らないが、父のことはともかく聖女の何かが関わっているとなると3名だけとは考えられず、最悪の場合マジャリ国内では手配までされているかも知れないと考えていた。

 実際は追っているのは本当に3名のみで、しかもそのうち1人はアルドリッジの手中にある。聖女騎士6名の内もう半分は直接シャンタルパーツの行方を追っているため、アルドリッジの追跡に加わることは出来ない

 農具の修理が終わってしまえば用もないのに滞在し続けるのも気が引ける上、キトリーとギャエルが追跡を再開しているはずなので、そろそろ発たないと追いつかれてしまうかも知れない。

 アルドリッジは耳に受心器を耳に掛ける。

「ほひっ、ンふっ、へっ…ひっ、ンはっんひっ♫」

 昨夜眠る前まではイキながらもまだ意味のある言葉を発せられていたイングリッドだったが、今朝確認してみるともう奇声を発するのみになっていた。

 中がどうなっているのかアルドリッジには分からないが、喘ぎ声の間隔でかなり絶頂周期が短くなっていることは推測できる。

 蓋を開け、声を掛ける。

「イングリッド~、聞こえる?…返事できる?」

「んひょっ!?あいぃぃ~っ♫あうしゃまぁぁぁ~~~っ♫」

「…うわぁ、そんなに気持ちいいの?…じゃあやっぱりヘザーとミルドレッドにもしてあげないとな・・・。

 そんなことよりイングリッド、ちょっと教えて欲しいんだけど」

「んひぃぃぃっ♫とめてぇぇ~~~♫アルしゃまおねがいぃぃぃ~~~っ♫」

「用がある時以外は外さないって約束だからダメ。今はちょっと聞きたいだけだから」

「やぁぁぁぁっ、クリトリスとけてるのぉぉぉっ♫イキすぎてアタシしぬぅぅぅ♫」

 昨夜イングリットのクリトリスの感度は上限に達し、ビラチーナは弛緩液を分泌し始めていた。

 連続でイかされ続け、充血が治まらず真っ赤に勃起していたクリトリスはとろんと柔らかくなり、激しく動く胴体に振り回され、勃起による皮膚表面の張りも消えてしまったため、繊毛や触手が一層深くまで自身を押しつけながらぐりぐりとこねくり回すことが出来る様になってしまっていた。

「いきゅぅ!いきゅいきゅきゅぅぅぅ♫アタシずっとイってるのぉぉぉぉわかってぇアルしゃまぁっ♫」

 ビラチーナの責めは基本的にパトリスと同じだが、決定的に違う点はイングリッドの箱には絶頂阻害術が組み込まれていないことだった。

 イングリッドはアルドリッジにビラチーナによるイカされ方が尋常でないことを伝えたいが、悶えながら言葉にすることは出来ず、アルドリッジも単に連続でイかされ続けている程度にしか想像していない。

「くにゃぁぁっ!きゅぅぅぅ!あひっあひっあひぃぃぃ~~~っ♫」

 ビラチーナに包まれたクリトリスは常時全方位から複数の刺激を受け続けている。

 その動きは一様でなく変化し続けているため、どこ責められた瞬間に絶頂に達するかは定かでは無い。

 クリトリスの先端へ刺激で絶頂に達すると、すぐさま根元の窪みでも絶頂に達する。

 根元で絶頂すると左側面でも絶頂し、右側面で絶頂すると続いて包皮の隙間を擦られて絶頂する。時には2カ所、3カ所と同時に絶頂を引き起こされることもある。

 しかもビラチーナはクリトリスの神経発火を走査しているため、刺激が少ない場所の存在を許さず、自分が支配している範囲全てに常に最大限の快感を与えるよう努めている。

 アルドリッジは波のように絶頂が繰り返されているのだろうと考えているが、実際に責めを受けているイングリッドに取っては連続などと言う生やさしさではなく、常時絶頂状態を維持されている感覚だった。

「んひぃぃっ♫くりっ、クリトリスがっ、クリトリスがぁぁぁアルしゃまぁぁぁ♫」

「・・・イキながらでいいから答えて欲しいんだけど、もしこの先旅の途中で俺が誰かに襲われたら、クリトリスだけでも撃退できる?」

「おほっ、んひょっ、んっ♫なにぃぃぃ???」

「・・・だから、君と一緒にいた2人がいるでしょ?この先またああいう人に襲われたら、箱の中からでも魔法でやつっけられる?」

「くぅぅぅ~~~っイきゅぅぅぅ~っ♫わかんなぃぃぃイクぅぅぅ♫」

「・・・質問が分からないのかやってみないと分からないのかどっちなんだ・・・。

 女の人だったら最悪封印しちゃえば何とかなるけど、男が襲ってきた時効くかどうかわかんないでしょ?クリトリスだけを出すような封印で」

「くぃぃぃ~っおしっこしたぃぃぃ~っ、イキながらおしっこしたいのぉぉ♫」

 一旦ビラチーナを外されても尿道口を堰き止められていたイングリッドの膀胱は尿で完全に満たされ、ビラチーナの振動で泡立ちながら強い尿意を催し続けていた。

 失禁も潮を吹くことも出来ず、イかされ続けているにもかかわらず尿意のせいで焦燥感が消えず、イングリッドの絶頂には常に苦悩が添えられていた。

 14歳相当の小さな膣から白い蜜を垂らし、それが向かう先にある肛門は緩む度に中に溜まった腸液を吹き出す。

 いくら肛門を締めても力みは弛緩したクリトリスには届かず、無抵抗でビラチーナに蹂躙され続ける。

「おしっこさせてぇアルしゃまぁぁぁっ♫おしりの穴もぷちゅぷちゅなのぉ♫アタシつらぃぃぃぃイクぅぅ♫」


ia01

 あらゆる穴から体液を垂れ流しているイングリッドの苦悩は本物だが、同時にその痴態をアルドリッジに聞かせられている事も楽しんでいる。

 100歳くらいまでは様々な種類の性的遊びを楽しんでいたはずだが、大抵のことに飽きてしまって以来久しぶりに味わう感覚に大いに興奮していた。

「・・・ま、この状態の君に質問しようと思った俺が間違ってたよ。今度用がある時はちゃんと外してあげるから、それまではこのままイキ続けてて」

「やぁぁぁん!死んじゃうぅぅぅっ♫たしゅけてぇアルしゃまぁぁっ♫アタシのクリトリスみすてないでぇぇっ♫」

 アルドリッジは蓋を閉じ、耳の咒器も外す。

 明日中には村を出たいため、残っている農具の修理を終わらせ始めた。

「んひぃっ、んやっ!いっ!くぅいぃぃぃもうイクのやぁぁぁっ♫」

 滞在3日目。アルドリッジは頼まれたほぼ全ての農具の修理を終え、イングリッドの蓋を開いた。

「イングリッド?聞いて、お~い」

「ふぁっっっぁぁあああるしゃまぁぁぁっ!もうたしゅけてぇぇ、アタシのクリトリスもぉだめぇぇぇ♫」

「あのね、今日中にこの村を出るから、その前にやっぱりちょっとだけ薬作って貰っておくことにしたよ。次の町までこんなにちゃんとしたところで落ち着ける機会があるかどうかどうか分からないし」

「イクぅぅぅ♫なんもできなぁぃぃぃっ、アタシもうイクしかできなぁぁぁぁぃ♫」

「・・・いや、もちろんそれ外してあげるから。今から最後の修理して水と炭貰ってくるから、それまでに落ち着いててよ?」

 ヘザーに被さっていた頃のビラチーナは1日に500回ほどクリトリスの持ち主に絶頂を与えていたが、改造されたビラチーナは一日前、弛緩液を分泌し始めてからは軽くその3倍イングリッドをイかせていた。

 アルドリッジはイングリッドのクリトリスからビラチーナを外して蓋に置き、手早く折れた鎌を繋げ更に錆まで取ってやると、農夫から甕に入った水と炭を分けて貰い戻って来た。

 その間20分ほどしか経っておらず、1日以上、少なくとも1500回イかせられ続けていれば、いくらイングリッドと言えどすぐに回復できるはずはない。

 小屋のドアを閉める。

 その瞬間、イングリッドのクリトリスに被さっていたビラチーナがはじけ飛んだ。

 更に箱までがカタカタと震えながら宙に浮き、光りを発し始めた。

 その光りが一瞬閃光となってアルドリッジの視界を真っ白に染める。

 目が慣れると、そこに裸のイングリッドが立っていた。

「・・・・・ふぅぅぅ~~~~~っ・・・」

 イングリッドは長く息を吐きながら腰をひねったり身体をかがめて身体の凝りを解し始める。実際には封印されていた身体に疲れなどないが、短い間に恐ろしいほどの回数イかされ続けていた記憶はあるため、疲れている、様な気がしてしまう。

 アルドリッジは目を見開き、イングリッドを凝視している。腰を抜かさずに済んだのが奇跡的と言える。驚きすぎて逃げるという考えも浮かんでこない。

「さぁさぁアルしゃ…じゃない、坊や。とうとう見たわよ。・・・ふふっ…ふふふふふ?私が出て来てびっくりしてるんでしょ?それはもちろんそうでしょうね。でもアタシの方がもっと驚いてるのよ?」

 イングリッドは裸のまま一歩歩み寄り、未だ口もきけずにいるアルドリッジに念のため呪縛術を掛ける。

「驚いてるし、喜んでもいるのよ。・・・実は馬車にいる時から坊やが何か魔法とは違う、このアタシでもすぐに見抜けないような力を生意気にも使ってるのが分かってたから、封印されたふりをしてそれを探ってたの。

 で、突き止めたら驚かせた後マジャリの連中に引き渡すかきつ~いお仕置きをしようと思ってたんだけど、全部止めた。

 ま~さ~か、ドヴェルグの機巧術を使ってたなんて、まだ信じられないわ。

 安心なさいよ、痛い目にも遭わせないし引き渡しもしない。死ぬほどイかせてくれたことも許してあげる。それどころかアタシのモノにしてあげるわ」

 アルドリッジは漸く驚きから回復したが、既に逃げる手段は塞がれている。

「アタシの目に狂いなんてあるはずないけど・・・とはいえ、珍しすぎるから念のためちゃんと検査しないとね」

 イングリッドは太ももに膣液を伝わせたまま小屋の中をうろうろと歩き回る。その顔はまだ上気し、涎や鼻水は乾いてすらなく、裸の全身は汗で輝いている。箱の中に留まったのは自分の意志たが、クリトリスに与えら続けた快楽のふりをした苦悶は全て本物で、アルドリッジはその元凶のはずだが、歩きながら喋る様子からは言葉通り全く怒りの気配は感じられず、本当に喜んでいるように見える。

「さてどこに・・・あ、そうそう」

 イングリッドは呪縛術で動くことが出来ないアルドリッジにぴったり身体を寄せ、見上げて立ったままその足下に放尿を始める。

「はぁぁぁぁぁぁ~~~っ♫誰かさんのせいでずっとおしっこ出来なかったの忘れてたわ」

 イングリッドは目を細めながらアルドリッジの目を覗き込む。排尿できなかったのは正確にはビラチーナのせいで、そのビラチーナのエネルギー源を尿に改造したのはイングリッド自身だが。

「・・・ここは国境のすぐ近くでしょ・・・あそこ…いや、そこの方が…」

 イングリッドは自分の尿を避けてまたうろつき始めたが、アルドリッジの足は浸ってしまっている。

「・・・ね、ねぇ、イングリッド…さん?」

 アルドリッジは足にイングリッドの尿を引っかけられ、漸く声帯を震わせられるまで回復した。

「何かしら?坊や」

「その・・・とりあえずまさか自分で封印を破れるほど凄すぎる魔法使いだったとは思わなかった、って事は置いといて・・・俺のその…力?が何なのか分かるの?」

「あら?・・・あぁ、まあそうかもねぇ。私ですらすぐに分からなかったんだから、自分で知らずに使ってても無理ないか」

「…さっき言ってたよね?何だっけ?」

「ふふふ♫あわてなさんな。これから場所を変えてじっくり教えてあげるし、調べてもあげるから」

 アルドリッジの背筋に冷たい物が流れた。相変わらず怒りは感じないが、イングリッドが大事な実験用動物を見ているようなまなざしを向けてくる。

「・・・うん、そうね。あそこなら確か道具も揃ってる…はず。あそこにしましょう」

 イングリッドは足を止め、ぶつぶつと詠唱を始めた。

 小屋全体がカタカタと揺れ始めた。

 逃げることが出来ないアルドリッジは諦め、何が起こるのかを観察することにした。

 封印されている時でも外にいる時でもアルドリッジはイングリッドが魔法言語を発声して詠唱しているところを初めて見た。

「・・・ん?」

 四角い部屋の角や隅が丸味を帯びてきたように見え、アルドリッジは目を擦りたかったが叶わない。

 更にイングリッドの足下から同心円状に一波のうねりが隆起し、自分の方に向かって来ているように見える。

 小屋は全てが木製だが、そのうねりが通過すると床が木材から土、草地、流れる水、また草地、石畳と移り変わっていく。

 アルドリッジは何が起こっているのかもイングリッドが何をしようとしているのかも分からず、呆然とその様子を見つめる。

 うねりがアルドリッジの足下を通過し、床全体に広がる。

「・・・・・🔥🌀🌌🌏🌙𝖄ꈷ!!」

 首を動かせないまま目だけでうねりを追っていたアルドリッジは、大声に反応してイングリッドを見た。

 視線が床からイングリッドに向かう僅かの間にカタカタと揺れ続けていた小屋ががたんと1度大きく揺れた。

 直後、ピタリと小屋の揺れが治まると、小屋の中にはもう誰もいなかった。

 人だけでなく荷物や借り物の布団も床の上から消え、イングリッドの尿の後だけが残っていた。

 イングリッドに焦点が合っていた目がやがてその背景も認識し始める。

「・・・あ、あれっ?…えっ???」

 きょろきょろと辺りを見回したいが、呪縛術を掛けられたままのアルドリッジは見える範囲だけを凝視する。

 室内には違いないが、簡素な、物置同然の小屋の中からしっかりした造りの屋敷に変わっている。

 アルドリッジはイングリッドの背後から目が離せないが、床もイングリッドの尿を殆ど吸い取ってしまうほどスカスカのささくれ立った古い木材から艶やかに光沢を放つ黒い床材に、しかも細長く切り出されたまま敷き詰められていただけの床から幾何学的な格子状の美しい床に変わっている。

「あ~分かってる分かってる、いちいち尋ねなくていい。あのぼろ小屋から移動しただけだから」

 イングリッドは未だに裸のまま歩き、アルドリッジの視界から外れてしまった。

「い、移動って・・・魔法で?」

「当たり前でしょ。・・・久しぶりに来たけど汚れてないな。けっこうけっこう」

 アルドリッジの横からぺちゃりという、裸の尻が革の椅子に下ろされた音が聞こえてきた。

 イングリッドはベシーナ地方の各地に別宅を所有していた。同じ魔法使いであるミルドレッドは人里離れた森の奥に籠もって研究をしていたが、頂点に立つイングリッドは魔法に関して学ぶことはもう何もなく、老化を停止してからは暇を潰すための日々を送っていた。

 当然1カ所に留まってなどいられるはずもなく、各地を漫遊しながら気に入ったり利便性の高い町に自分の屋敷を構えていた。

 ミルドレッドの様に人目を避けないのは、そもそもイングリッドは魔法を見下しているマジャリの王族・王室の人間が嫌いなだけで悪い魔法使いではないため、基本的にはその素性を知る者からは畏怖、ただの若い魔法使いだと思っている者からは尊敬されており、身を隠す必要が無い。また各地にある別宅に頻繁に通うわけでもないので、人の目が届かないところに大きな屋敷を建てると、放置している間に野盗の類いに荒らされてしまう。そのためイングリッドは町の中に家を購入し、その町の人間を雇って屋敷の管理をさせていた。

「ま、驚くのも無理ないけどねぇ。アタシが知ってるだけでもこの魔法使えるの2,3人くらいしか知らないし。

 ここ何十年かで使った魔法で一番魔力使ったけど、特別に見せてあげたのよ、坊やの方が珍しいから」

「・・・じゃあ・・・ここはさっきの村とは全然別の所…ってこと?・・・ど、どこ?」

 動いて確認できない為部屋の様子が一変した事は幻覚魔法ではと疑うことも出来たが、イングリッドがそんなことをする意味が無いので、アルドリッジは魔法で何処かに移動したという話を素直に信じた。

 イングリッドの凄さは十分に認識していたつもりのアルドリッジだったが、ここまで来るとその認識では全く足りなかったことが分かり、せっかくマジャリに戻って来られたばかりなのに出発点より遠いところに連れてこられた可能性もある。

「ここは・・・サラナだったかな?安心なさいよ、マジャリだから」

 町の名前を告げられてもアルドリッジには位置が分からなかったが、マジャリ国内であると教えられ、イングリッドの言葉通り多少安心した。

「それで・・・驚いててよく覚えてないけど、俺の力を見られちゃったんだよね?それがなんなのか分かったとかって言ってなかった?」

「そうよぉ♫坊やにいじめられた後で大変だったけど、ちゃんと見たわよ。油断しちゃったのね?」

 アルドリッジは数十分前、イングリッドのクリトリスからビラチーナを外し、蓋を開けたまま残っていた農具の修理を始めてしまっていた。ビラチーナに責められていたままなら蓋が開いていてもイかされ続けているイングリッドは見逃していたかも知れないが、数千回分の絶頂の余韻もドヴェルグ機巧術の実演の前では消し飛び、イングリッドはすぐさま箱から出ることにした。

「さてと・・・まずどうしようかしらねぇ」

 アルドリッジが機巧術を使えると目星を付けた以上物質での拘束は避けざるを得ないが、呪縛術で完全に動きを封じたままにするのも不便すぎる。

「何処かにあるわよね…」

 イングリッドは椅子から立つ。尻が乗せられていた部分には汗と膣液が残っている。

 部屋の何処かに拘束生物の卵を保管しているはずだと考えて、農村から近い場所にいくつかある別宅の内からサラナの屋敷を選んでいた。

 尻を振りながら室内を漁り、卵を見つける。

 イングリッドは仮死状態のその卵に魔力を送って活動を再開させ、動けないアルドリッジの赤毛の上に乗せる。頭に乗せる必要は全くないが、指も動かせないので握らせる事が出来ない。

 その状態でもう一度魔力を送ると、卵から細長い紐状の生き物が孵り、頭頂部から首、首から両手と胴、胴から足先へと向かって身体を伸ばしていく。

「馬車で縛られてた縄も機巧術ではずしてたのよねぇ?でも確か生き物には使えないはずよね?アタシも伝説でしか知らないけど」

 拘束生物がアルドリッジの全身に身体を伸ばし終えると、イングリッドは呪縛術を解いてやる。途端に両腕が背中に引っ張られ、後ろ手に縛られる。

「いいわよ?試してみて。もし解けたらまた術を掛けるだけだし」

 アルドリッジは試さなかった。未だに自身が使っている力のことは分からないが、経験上イングリッドの言うとおり生物に影響を与えられないことは分かっている。

「あら、試さないの?…まあいいわ、もう歩くだけなら出来るでしょ?付いてらっしゃい」

 イングリッドはアルドリッジの先を歩き、移動した部屋から出て行こうとする。アルドリッジも足が動くことを確認すると、すぐその後に付いていこうとする。

 しかし、前に進めない。

「あ、そうそう、念のためアタシには3メートル以上近寄れないようにしてあるから」

 開いたドアの前で振り返りそう告げたイングリッドが廊下に出、数歩歩くとそれまで足を締め付けていた拘束生物の細いからだが緩み、アルドリッジは歩けるようになった。

 階段を2度降り、、農村の小屋から別宅の2階へ移動していた2人は地下の部屋に入る。

「坊やにはしばらくここに居て貰うわよ。色々と調べないと。・・・痛いことは…たぶんしないから安心なさい」

 書斎のような2階の部屋とは打って変わって地下は研究室のようだったが、おどろおどろしい雰囲気はなく整然としている。イングリッドはどの屋敷も建てる際に地下に研究用の部屋を設けているが、実際にここで何かを研究したことはない。

 アルドリッジは立て続けに起こった異常事態の驚きからまだ冷めていないが、なにより気になっていることがあった。

「それで・・・俺の力って何なの?俺もずっと知りたいと思ってたんだよ」

「そうねぇ、まずその話からしてあげましょうか」

 およそ三百年前、ベシーナ地方全土を統べていたサマンビータ王国が5つに分裂するに至った戦争に、既に最高の大魔法使いとして参加していたイングリッドは実質400歳近く生き続けている。

 それでも当然魔法を身につける前の子供時代は存在し、ドヴェルグ機巧術はその時点でもう神話やお伽噺として位置づけられており、イングリッドを含め本当に実在したと信じている者はいなかった。

 サマンビータ建国に至る神話では、この世にはかつてアルブ、アルコーン、そしてツワグという三種の古代高等種が存在したとされている。

 三種共が神話にしか登場せず、その姿を見た物は当然現代では誰1人いないが、代わりにアルブが駆使したとされる力は神聖力として聖女に、アルコーンが使用していたとされる力は魔法として幾多の魔法使い達に受け継がれているため、その二種に関しては大昔本当に存在していたのではと考える者も多い。

 しかしツワグの力、物質を自在に操るという機巧術に関しては一切受け継がれもその力によって作られたという物も残っていないため、全くの架空の存在だと長らく考えられてきた。

 現在では多少考え方が変わり、研究者達の間ではツワグとは家を建て道を敷き、家具や武器、装飾品などを作ることが出来る者達、要するに人間達を神話内で暗喩した種族だという考えが通説となっていた。

 イングリッドは必ずしもそうは思っていなかったものの、神話時代の物が何も残っていない、或いは見つかっていない以上検証のしようがなく、分からないならどうでもいい、という立場を取っていた。

 キトリーとギャエルと共にアルドリッジを捕らえて以降、機巧術に結びつきそうなアルドリッジの振る舞いはいくつもあったが、最初から頭になかったため、実際に目の前で物質に操作が加えられる瞬間を目撃するまで機巧術という言葉を思い出しさえしなかった。

「・・・って言うのが俺が使ってる力?・・・ホントにそんな幻みたいな力なの?」

「あなたが魔法使いなら単に錬金術だと思えるんだけどね。あなたは魔力全く無いし。それにアタシの考えでは錬金術自体がツワグの機巧術を再現するために昔の魔法使い達によって生み出されたものだと思うわよ」

「でも・・・なんで俺にそんな力が?」

「ぷっ・・・それはアタシの台詞なんだけど、まあいいわ。力そのものも調べたいけど、どこにその力が残っててどうやって坊やに受け継がれたのかも気になるし」

「・・・」

 アルドリッジは自分の力を調べて貰えるならしばらくイングリッドの好きなようにさせてもいいかもしれないと考え始めた。

「さぁ、早速始めるわよ。まずは血を抜こうかしら…」

 アルドリッジは考えを翻しやはり早急に逃げ出すことにした。殺されることはなさそうだが、最終的に切り刻まれるくらいはされるかも知れない。

 イングリッドはアルドリッジを寝かせて縛り付ける為の台や注射器などを準備し始める。大きい物は魔力で動かし、細かい物は直接手を使う。

 イングリッドが前にかがむと、小さな尻の間から性器や肛門が見える。

「・・・ねぇ、イングリッドちゃん。おしりの穴見えちゃってるし・・・なんか出てるよ?」

「あっ、やだぁ♫まだ残ってる?坊やがむちゃくちゃするからよぉ♫・・・というかアタシ裸なのね。そういえばアタシの服は?」

 アルドリッジは馬車で回収し鞄の中に仕舞ってある事を伝える。

「じゃあ鞄ごと取ってきなさい。坊やを調べながら他のお嬢ちゃん達でも遊ぶことにするわ♫

 言っておくけど、逃げようとしても無駄よ?坊やはこの家から出られないどころか決まった道筋しか移動できないようにその子に命令してあるから」

 イングリッドは拘束生物を卵から孵す為に魔力を送った時点で接近距離や屋敷内での移動範囲などを既に命令していた。

 アルドリッジが許可されている以外の行動を取ると途端に締め付けられ動けなくなる。

 両手の拘束を一時的に解かれ、2階に鞄を取りに向かいながらアルドリッジは試しに玄関に向かおうとしてみたが、やはり足は動かなくなった。

 2階に戻り改めて床を見たアルドリッジはそこに農夫に借りた布団まで付いていることに気付き、礼も言わずに布団ごと消えてしまった申し訳なさと、他の村人達から修理の報酬を貰い損ねた悔しさを同時に感じた。

 鞄を持って地下に戻る。イングリッドは既に採血の準備を終え、アルドリッジが横になる予定の台に座っている。

「その辺に置いて頂戴、アタシには近寄れないんだから」

 アルドリッジが側の机に鞄を置くと、すぐさま元通り両手が後ろ手に縛られる。

「あら?なんか急に不安がってるわねぇ?別に痛いことはしないって言ってるでしょ?そりゃちょっとはちくっとするかも知れないけど」

 イングリッドは鞄を漁り、まず3つの箱を取り出した。

「これも機巧術で作ったのよね?・・・全く、箱もないのに馬車でお嬢ちゃん達を封印出来た時点で気づけないとは…」

 直接機巧術を見る前に気づくことが出来なかったことはまだ誇りを傷つけている。イングリッドは見た目が同じ2つの箱の蓋を開く。

 箱だけでなくその中のクリトリスも同じような大きさ、同じような赤さだった。

「薬を欲しがってたわよね?この子達に使うつもりだったの?」

「・・・うん、まぁ…」

 イングリッドは続けて3冊のノートを取り出し、明らかに古い2冊をパラパラとめくる。

「ふむふむ…あら?別の人間が書いてるわねぇ…こっちはやたら稚拙だわ。でも内容は…ああ、ミルドレッドが考えたのね」

 イングリッドは最も古いと思われるノートを読み込んでいく。

「なるほどねぇ、クリトリスだけを見極めて外に出すなんて結構ややこしいのに、上手くまとめてるわ。中々の魔法士ね、この封印術を考えたのは」

 本来封印術は指定した物に対象の全てを封じる。陰核でも指でも耳でも予め封印の対象外とする印を施しておけば封印した後その部分だけを外に出すことはそれほど難しくはないが、事前の指定なくどの女性に術を掛けても必ずクリトリスだけを特定し外に出すというのはかなり研究と実験を繰り返さなければ完成しない。例えば、12人ほど。

「・・・とはいえ、性魔法士よねぇ。鋭敏薬まで考案してるし…まだ生きてるかしらねぇ、これ書いたヤツ」

 イングリッドはノートを閉じ、パトリスの箱を開ける。ビラチーナがまだ卵を産んでいないことが分かると、水と錬金素材を用意し始めた。

「ふふ、先に約束通り薬を作って挙げましょうか?坊やはアタシのクリトリスからこの子を外してくれたもんねぇ♫」

 白く乾いていたイングリッドの腿に新しい膣液が伝う。老魔法士と前封印者のノートを読んでいる内に興奮し、馬車以降何も施されていないヘザーとミルドレッドのクリトリスを責めたくなっていた。ビラチーナが子を産んでいれば被せて自分が味わった常時絶頂を味わわせるつもりだったが、残念ながらまだ産んでおらず自身のクリトリスを責めていたモノは消し飛ばしてしまったため、性魔法薬を作ることにした。

 イングリッドは水と錬金用に確保していたいくつかの素材を掛け合わせ始めた。田舎の村ではたいした物は手に入らないだろうと炭を要求していたが、まともな素材があるならそれに越したことはない。

 素材がイングリッドの両手の間で魔力と共に混ざりながら別の特性性質を持った新たな物質に変わっていく。薬だけでなくそれを入れる瓶までが作られていく様はアルドリッジの機巧術を彷彿とさせ、錬金術が機巧術を模して作られたのではと言うイングリッドの説もあながち間違いとは思えなかった。

「・・・ハイ♫・・・ハイ♫・・・ハイ♫」

 イングリッドは続けざまに3種類の薬品を作り、鞄の横に並べていく。

「出来たわよ♫これが欲しかったんでしょ?坊や」

 始めて錬金術を見たアルドリッジは確かに自分の力、機巧術とやらに似てはいるとかんがえたが、液体を扱える分錬金術の方がより高度に思えた。

「これが鋭敏薬、これが肥大薬、それからこれが掻痒薬。アタシが作ったんだから、このノートにあるようなモノよりもっと凄いわよ♫」

 イングリッドは三種の性魔薬を作りはしたがノートの記述を参考にはせず、ビラチーナを改造したようにより強力な効果を発揮するように自分の考えで作成していた。

「フフ♫・・・アタシが塗る?それとも坊やがお嬢ちゃん達に塗ってみたい?大人しく血を抜かせてくれたらご褒美に遊ばせてあげてもいいわよ?」

「・・・ねぇ、イングリッドちゃん、モモ」

 アルドリッジに言われイングリッドは自分の足に目を落とす。先ほどあふれ出した膣液が膝にまで達し、白く跡を残している。

「いやん♫そもそも服を持ってこさせたのよね。また忘れてたわ」

 イングリッドは鞄の一番奥に押し込められていた自身の服を取り出した。

 ごとん、とその拍子に何かが床に落ちる。

「・・・あらっ!!…あらあらあら!」

 床には握り拳大の塊が転がっていた。

「・・・すっかり忘れてたわ、これはこれで、坊やの次くらいに大事な物なのに…」

 腰を曲げ、アルドリッジに肛門を見せながらイングリッドはその塊を拾う。

 その瞬間、イングリッドの目の前が歪み、目眩に似た感覚を覚える。

 次の瞬間、イングリッドは真っ暗な暗闇の中に居た。

「・・・あらら、また油断しちゃったわ。アタシも年かなぁ…」

 一時間ほど前まで全く同じ状況にいたイングリッドは自分が封印されてしまったことをすぐに理解した。

「あの坊や、服の袖に抵抗石が入ってることに気づいてたのね。…そりゃ気づくか、重いし」

 イングリッドはどうするか考えた。囚われの魔法少女ごっこは嫌いではないので、いずれまたしてもいいとは考えていたが、今はアルドリッジの検査を優先したい。何よりやめておこうと思っていたが、こうもすぐさま抵抗を試みるなら少しきつめのお仕置きをしなければならない。

 イングリッドはクリトリスに監視紋を浮かび上がらせてみる。しかし周囲は暗く、蓋をされているらしい。

 イングリッドはさっさと外に出でることにした。

 ・・・。

 ・・・・。

 ・・・・・。

「・・・あら?」

 小屋と同じように箱を破壊すべくクリトリスから魔力を放出するが、何も起こらない。

「おかしいわ…ね・・・あ・・・・・あぁっ!?」

 油断して仕掛けられた罠にまんまと掛かってしまった事を恥じ入っていたイングリッドは失念していたが、その罠を仕掛けられていたのは抵抗石だった。

「そっ、そんなはずは・・・ꅳꅹꆔꆰꃭ!!・・・ꄿꅉꆗꇢ!!!」

 200年ぶりに焦りながらイングリッドは本気で魔法を使うが、封印器となった抵抗石を破壊することは出来ない。

「ま、まって、落ち着きなさいアタシ。何か方法があるはず・・・」

 命令主と魔力の供給を失い、拘束生物がその役目を果たさなくなってしばらく経ったが、アルドリッジは床の上に転がっている箱に近づこうとしなかった。

 2時間ほど前にこの屋敷に連れてこられてからアルドリッジはイングリッドの能力に対する評価を完全に改めていたため、箱の蓋を開けた瞬間に何かされるのではと考えている。

 ちらりと、箱の横にある机の上を見る。

 イングリッドが作った3種類の薬が並んでおり、アルドリッジはそれらが使えないか考える。

「・・・・・いや、無理だな」

 アルドリッジはビラチーナに責められ嬌声を上げ続けるイングリッドを本当に悶え苦しんでいるものと思っていたが、実際はいつでも外に出ることが出来るにも関わらず自分の力を探るためにあえて中に留まっていたらしかった。

 イングリッド自身が作った薬がどれほど強力で、それらとビラチーナを合わせて責めてもイングリッドは脱出出来てしまうような気がしてしょうがない。

 アルドリッジは漸く足を動かした。しかし箱には近づかず逆に地下室の入り口にまで下がり、そこで更に様子をうかがう。

 イングリッドの服の中にあった鉱石が抵抗石であることは馬車で拾い上げた時点で分かっていた。

 アルドリッジに取っては懐かしくも忌々しくもある鉱石で、忘れるはずもない。

 一切の魔力を封じる特性を持つことは分かっていたが、小屋に滞在している間はイングリッドの封印器に使うつもりは全く無く、何より1度封印してしまうと形状は変えられるが、素材そのものを変えることは出来なかった。

 しかしイングリッドが自ら封印を解き、逆に捕らえられてしまったアルドリッジは抵抗石に罠を仕掛けもう一度イングリッドを封印しようと画策していた。

 裸で歩き回っていても気にしないイングリッドに服の存在を思い出させる。自分で取りに行ってしまえばどうにもならなかったが、運良くイングリッドは屋敷内で自由に動き回れないことを教えるために、アルドリッジに取りに行くよう命じてくれた。

 アルドリッジはその隙に抵抗石に罠式封印法を仕掛けていた。

 見抜かれないか心配していたアルドリッジの不安をイングリッドは採血される緊張だと受け取り、服を着る前に薬を作り始めた。

「・・・・・よし!」

 イングリッドが罠に掛かってから2時間が経過し、アルドリッジは意を決した。

 箱に歩み寄り、拾い上げる。急いで罠を仕掛けたため握り拳大の抵抗石の塊全てが無骨で単純な箱形に変化している。

 その重い箱を拾ったアルドリッジは、蓋を閉じたまま改めて形を作り替えていく。

 放置して逃げ、イングリッドがそのうち何とかして出て来てしまった場合今度こそ何をされるか分からない。また、やはり想像を絶するイングリッドの能力を手放してしまうのも惜しい。

 魔法を打ち消すという抵抗石の効果は知っていても実際にその効力が発揮されたところを見たことは無く、機巧術を使えるアルドリッジにとっては父やイングリッドがいくら大事そうに扱ってもただの重い鉄にしか思えないため信用しきれない。

 そのためアルドリッジは抵抗石や薬、ビラチーナ以外の方法で封印されているイングリッドを制圧するしかなかった。

 全ての塊を使っては重すぎるため、不要な部分は取り除いてインゴットに加工しながら、箱には仕掛けと抽出術を組み込んでいく。

 やがて封印器はアルドリッジの手の中で元の三分の一ほどの大きさになり、形も整えられた。

 万が一変更の途中でイングリッドが出て来てしまっても、機巧術とやらに興味を持っている以上殺されはしないだろうと考え、ビクビクしながら再造を始めなんとか無事に作り直すことが出来た。

「・・・ごくん」

 ツバを飲み込み、アルドリッジは蓋を開くための機構を作動させる。

 内側の仕掛けが音を立てて動き始め、蓋がぱたぱたと折りたたまれながら開いていく。

「…イングリッドちゃんちゃん、聞こえる?」

 アルドリッジは箱に送信用読心術を転写しているが、返事はない。

「あ、そうか…」

 アルドリッジは着け忘れていた受信器をポケットから取り出し耳に乗せる。

「イングリッドちゃん、聞こえる?・・・もし自力で出られるなら出て来てよ、覚悟してるから。次はもう抵抗しない、好きなようにしてくれていいから・・・」

 やはり応答はなかった。

 アルドリッジはもしや抵抗石が組み込んだ読心術を打ち消してしまっているのでは考え始めた。

「・・・・・やってくれたわね、坊や」

 考え始めた直後、イングリッドの声が聞こえてきた。

「あ、よかった。抵抗石を使ったから声も聞こえなくなったのかと思ったよ」

「・・・それよそれ、よくも抵抗石なんかに封じ込めてくれたわね。…アタシのよ?」

「ごめんね。俺もその機巧術?のこと知りたいから少しくらい協力してもいいかなって思ったんだけど、やっぱり早くムラドハナに向かいたいし、何されるか分からないし…」

「痛いことはしないって言ったわよね?…今からでも出してくれていいのよ?怒らないから」

「あ、やっぱり出られない?」

「・・・出られないわよ。・・・抵抗石なんだから」

「だとは思うんだけど…信用出来ないんだよね。わかるでしょ?」

「今度は本当に出られないの!!」

「…だといいんだけど、それが本当だって分かるまで、悪いけど…」

 アルドリッジはイングリッドのクリトリスをつんつんとつつく。

「ここを拷問しておく事にしたよ」


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「・・・・・何ですって?」

 イングリッドは急いでクリトリスに監視紋を浮かび上がらせる。

「ごうもん。ビラチーナにイカされててもまだ余裕があるって事は薬塗っても意味なさそうだから、拷問するよ」

 クリトリスと脳が繋がった瞬間、目の前にギザギザの歯が見えた。

「なっ…こ、こんなの…」

 クリトリスで前を見ているイングリッドにとってその歯は自分自身と同じ大きさに見える。

「ビラチーナで苦しむのとは種類が違うと思うけど我慢してね。・・・はっきり言って君、怖すぎるから俺も手加減してられない」

「ま、まって、ここまでしなくても本当に出られな…」

「じゃ、始めるよ」

「まってぇぇぇ~~~~~っっっ!!!」

 イングリッドが見ていた歯が、まさに目の前で回転を始め近づいてくる。

 直前に位置していた回転する刃は、動き始めるとすぐにイングリッドのクリトリスに触れた。

「・・・!!!???…っっっぎゃぁぁぁ~~~~っっっ!!」

 読心術を通じてアルドリッジの頭にイングリッドの絶叫が聞こえて来る。思わず指で耳を塞いだが、何の意味も無い。

「イぎっ!イぎっ!きぃぃぃ~~~っ!!とっ、止めてぇぇぇ~~~~っっっ!!」

 真正面から見ていたイングリッドは歯が円形なのを知らない。それが単独で回転しながら裏筋に食い込み、箱の本体に繋がっている仕掛け腕に因って上下に動きながらクリトリスを切り裂こうとする。が、アルドリッジは歯に刃をつけておらず、実際にクリトリスが切れてしまうことはない。

 しかし細かいギザギザの歯を敏感なクリトリスの中でも更に敏感な裏側に数ミリ押しつけられたまま繰り返し繰り返し上下に動かされる痛みは、むしろいっそ切り裂かれて麻痺してしまった方が楽なのではと思えるほどの激痛を与える。


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「いぎゃあぁぁぁぁ~~~っ!!!きっ、きれるぅぅぅぅ~~~っ!!クリトリスさけるぅぅぅぅっっっ!!!」

 元々屹立していたイングリッドのクリトリスはその痛みから逃げようと更に反り返るが、逃げた先には半円状に並んだ棘が待ち構えており、クリトリスの背に刺さる。

「いぎっ!んぎゃっ!ふぎっ!!」

 後ろに逃げれば背を刺され、前に戻ると腹を割かれる。アルドリッジはイングリッドが今度こそ脱出出来ないよう、もしくは脱出を試みることすら出来ないように機巧拷問具でクリトリスを包囲し、徹底して痛みからの逃げ道を塞ぐ配置に箱を作り直していた。

 真正面の歯に気を取られイングリッドは気づかなかったが、そのすぐ両脇にも3本ずつ、6本のトゲが配置されていた。

 回転歯が動き続ける横で、その6本もクリトリスに向けて角度を合わせ抽送を始める。

「んいっっ!?あっ、やっ、いたっ、んっ、やぁぁぁぁ~~~っっっ!!」

 歯で擬似的に切り裂かれ続けている裏側中央脇の先端、中央、根元を、尖った先端が順番に、一定の間隔でつぷつぷと繰り返し刺し始める。


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 先端が尖ってはいるが針のように細くはないので、歯と同じように数ミリ食い込んで痛みだけを与えてまた離れる。

 先端がつついたトゲが元の位置に戻っている最中に中央がつつかれ、根元がつつかれ、また先端が突かれる。

「あぎゃっ!いっっ!んぎぎぎぎぃ~~~っ!!はぐっ!ぃぃぃぃいやぁぁぁとめてぇぇぇ~っ!!!」

 反り返った裏側を痛みのみで制圧されたクリトリスはビクビクとくねりながら逃れられる場所を探そうとするが、背中の根元にも配置されているトゲがそれを許さない。

 クリトリスの逃げ場を塞いでいるのはそのトゲだけではない。

 クリトリスの前方には回転歯と抽送棘、両脇と背後には3本の鞭が配置されていた。

 その鞭が抵抗石製の鉄線で巻き上げられ、ギリギリとしなり反り返っていく。

 ―パチッッッッ…ヒュッ

 クリトリスの大きさに合わせられている小さな鞭の動きは離れて見ているアルドリッジでも目で追えず、正面に監視紋があるイングリッドは何かが当たった感触を覚えた後、微かに風切り恩を耳にする。

「・・・っっっっきゃぁぁぁぁぁぁ~~~~っっっ!!!」

 一瞬送れて、何かが当たった感触が激痛だと分かり、イングリッドは絶叫する。

 肺の空気を全て出し切るかのような悲鳴を上げ続けている最中にも、反対側、後ろと次々に同じ強さでクリトリスが打たれていく。

「ぎあぁぁぁぁっっ!!いがぁっっっ!!んぎっ!がっ!きいぃぃぃぃ~~~~っっ!!」

 回転する歯や突き続ける棘と違い、クリトリスが鞭で打たれる音ははっきりとアルドリッジにも届く。しかし小さな突起を小さな鞭で打つ音は、打たれている本人が感じている激痛とは裏腹に、ぴしぱしと軽く、耳に心地いい。

 左を打たれ衝撃と反射でクリトリスが右に傾くと今度はそちら側を打たれる。更に裏側への責めで反り続けているクリトリスの背中に向けても容赦なく鞭が下ろされる。その頃には既に左の鞭は巻き上げられて力を蓄えており、また一から順番に3カ所を打擲されていく。


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「んがっ!きひっ!んかっっっけっ、きぃぃっっ!いっいきぃぃぃっぃ~~~っ!!!」

 全ての拷問具が作動するとイングリッドはすぐに涙を流し始めた。悔しさを感じる余裕もなく、純粋に痛みのみで涙が溢れてくる。

「いぎゃぁぁぁぁっっっっ!!いだいぃぃぃぃ~~~っ!!ぐひっ!!とっ、あぎゃっ!とめてぇぇぇぇ~~~!!」

 アルドリッジはしっかりとイングリッドの苦痛の叫びを聞き続ける。今思えばイングリッドはビラチーナで責められている最中はやたら甘ったるい喘ぎ声を出し続けており、あれが余裕の現れだったのだろうと自戒している。

 今度は騙されないようにしようと、イングリッドの苦しみの声に余裕が紛れていないか慎重に聞き続ける。

 目の前でイングリッドのクリトリスは拷問具に割かれ突かれ打たれ、猛獣に組み敷かれた哀れな小動物が無駄だと分かっていながら足をばたつかせ生にしがみついているかのようにビクビクと震え苦痛に翻弄されている。

 アルドリッジはまだまだ信用し切れていないが、抵抗石は完全にイングリッドの自力脱出を封じていた。

「どう?イングリッド。痛い?逃げようとか考えられないくらい痛がってくれてると安心できるんだけど」

「いっ、んんぎゃぁぁぁっ、いっ、ぎっ、あっ、いだいいぃぃぃぃぃ~~~とめてぇぇぇっ!!!」

「魔法とかは全く分からないけど、細かい仕掛けにはかなり自信があるんだよ。だから本当に痛いとは思うけど、しばらくこのままにしとくよ」

「やっやめでぇぇぇとめてぇっっこっ、これむりぃぃぃぃ~~~っ!!!」

「イングリッドの場合ホントに無理だったら自分で出てこられるもんね。しばらくこのまま拷問して、それでも出てこなかったら本当に自分の力じゃ出られないって信用してあげる」

「ほっ!ほんんんっっっ!!ほんっっどにっ、むりぃぃぃぃっ!!ご…もんしなぁぁぁっ!!くっ…てもぉぉ!!アダジでれないぃぃぃぃ~~~~っっっ!!!」

 中のイングリッドは本気でのたうち回り、出る出ないでなく、単純にクリトリスの痛みから逃げようととしていた。

 機巧拷問具はビラチーナ同様休むことなく常に動き続け、イングリッドのクリトリスに3種類の激痛を与え続けている。

 痛みが消える前にまた同じ箇所に同じ痛みを与えられ、それが延々と繰り返される。クリトリスは既に真っ赤に染まって熱を帯び、一層痛みに対して敏感になっていく。

「じゃ、また何日後かにね」

「まっ!まっでぇぇぇ!!むっ、むりっ!!たえられないがらぁぁぁぁ~~~っっっ!!」

 たとえ拷問され続けていてもクリトリスの姿が見えているよりは抵抗石製の蓋で覆った方がより安心できるため、アルドリッジは躊躇うことなく開閉用の仕掛けを逆に駆動させた。

 ぱたぱたと、蓋が閉まっていく。

「まっでぇぇ~~~っ!!!ゆるじでぇぇ~~~~っアルしゃまぁぁぁ~~~~っ!!!」

 蓋が閉まりきり、アルドリッジは耳から受信器を外した。

 本当に自力脱出の手段を封じられているイングリッドは、アルドリッジが安心できるまでひたすら無抵抗なクリトリスに拷問を受け、快感を経ない純粋な苦痛でもがき苦しみ続けることになる。


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 アルドリッジはイングリッドが出してしまった物と、作りだした物、そしてイングリッド自身を鞄の中に戻す。仕掛けを仕込んだ箱を作るのは今回が初めてだが、蓋が閉まった状態で掴んでも微かに振動を感じる。もう少し厚みを増やせば消せそうなほど弱い振動だが、イングリッドが悶え苦しんでいる証でもあるので、アルドリッジはそのままにしておく。

 結局着ることのなかったイングリッドの服も念のため鞄にしまう。イングリッドの言から誰かに屋敷を管理させていることが伺えたので、パトリスの先例もあり後々面倒になりそうな品は残さないでおく。

「ふぅぅぅ~~~…」

 完全に安心しきれたとは言えないものの、イングリッドが封印を解いてから3時間分の緊張が解けると、アルドリッジはどっと疲れを感じた。

 いつ来るか分からない管理人と鉢合わせしてしまわないためにもアルドリッジはすぐに屋敷から出ることにしたが、村人から貰えなかった修理の報酬分だけは何か金目の物を貰っていくことにする。

 魔術用具の価値など全く分からないため研究室から2階に戻り、最初に移動した部屋を漁る。

 元々別宅の使用頻度が低い上にイングリッドがお金を持ち歩くはずもなく、部屋の中には殆ど飾りとしてしか使用されていなさそうな書物しかなかった。

 それでもイングリッドが開けたままにしていた棚から拘束生物の卵をいくつか見つけて回収し、お金の代わりに銀の彫像を加工して装飾品を作り、それを売って殆ど底を突いている路銀を補充することにした。

 屋敷から出て日を浴びると一層倦怠感を感じた。

 アルドリッジは重い足取りで大抵の町に設けられている広場に向かった。改めてムラドハナを目指すにせよ、まずは現在位置を確認する必要がある。地図は恐らく書斎の何処かにもあったはずだが、大量の書物を探すよりまず間違い無く広場に設置されている町の地図を見た方が早い。

 住宅街の外れに位置していたイングリッドの別宅から町の中心に向かうと、まだ日が高いこともあり徐々に人通りが多くなってくる。

「・・・・・ウソだろ…」

 広場の入り口には予想通り地図があった。大きく記されているのはサラナ内のどこに何があるかという町の地図だが、その左上にサラナがマジャリのどこに位置するのかという簡素な表示もあった。

 イングリッドの言うとおりサラナはマジャリ国内には違いないが、バーマの国境から南下し、ニチェとの国境近くに位置していた。

 マジャリ、ニチェ間の西側国境は両側を山に挟まれている上に森が広がっているためここより南に大きな町はなく、実質サラナがマジャリ側の国境都市と言える。簡素な地図では数時間前までいた農村など描かれてすらいない。

「・・・勘弁して欲しいなぁ…」

 アルドリッジは肩を落としながらイングリッドに怒りを覚える。しかし既に拷問中のイングリッドには今の所これ以上苦痛を与えようがない。

 疲れに加え首都までの道のりが更に遠のいてしまったことに落胆したアルドリッジだったが、元々この日農村を出立し次の町に向かう予定だったため、作ったばかりの装飾品をお金に換え携帯食料と水、そして母国なので必要ないと思っていたマジャリ全域の地図も結局購入し、北門へと向かった。

 とぼとぼと川沿いを北へ向かう。

 食事は町の食堂で終えているにも関わらず疲れは取れていない。アルドリッジはそれを身体の疲れではなく気疲れだと考えている。

 新しく封印したイングリッドが安全だと分かったら、本人に責任を取らせてサラナに連れてこられた魔法で逆にムラドハナまで一気に移動することも出来るはずだと自分に言い聞かせ、重い足を前に進ませる。

 道中、行商の馬車とすれ違った。

 アルドリッジは歩いて通り過ぎたが、向こうはなにやら揉めている。

 ニチェ国境に近いせいか訛りが強くはっきり聞き取れないものの、どうやら荷物を積み過ぎ後輪の車軸が折れてしまったらしい。

「ダメ、ここじゃ直せない」

「お前サラナ行ってこい。カジヤ連れてこい」

「いやだ、お前いけ。お前が買いすぎた」

「お前いけ、お前が売り残した」

 浅黒い肌の女達が揉める声が少しずつ遠ざかっていく。アルドリッジは足を止めた。

「ねえ、お姉さん達。この馬車何とかして持ち上げられるなら直してあげるけど?」

 女達は一斉に振り返り、一様に声を掛けてきた少年の足先から頭頂までを観察する。

「子供来たぞ?どうする?」

「赤毛だ、いいな」

「子供、お前カジヤか?」

「・・・まぁ、鍛冶屋みたいなものかな。荷物下ろして後ろ持ち上げてくれたら直してあげる」

 車軸は荷物の重量でくの字に折れ曲がっている。少々の歪みならアルドリッジの力だけで直せるが、この状態の馬車の車軸を機巧術で直すには折れた部分を繋げるだけでなく、そこに掛かっている重量を持ち上げる必要がある。体調が万全な状態でもそれほど重いものを直したことはなく、疲れを感じている現状では繋げるのが精一杯に思えた。

「持ち上げればいいか?」

 3人の女達は荷台の左右、後ろに回り、底が地面に付きそうだった馬車をひょいと持ち上げ、車軸を水平に戻す。

「う・・・ち、力持ちだね…」

 薄着の女達の体格がいいことはすれ違う前から分かっていたが、力もその体格に見合っている。

 アルドリッジは馬車の下に潜り込み、折れた車軸を直していく。かなり錆びていたので折れて仕舞うのも無理はないと思ったが、馬車ならサラナまで1時間ほどで着くはずなので接合だけし錆はそのままにしておく。

 箱を作るには1分もあれば十分だが、鉄を繋げるだけの作業に何故かその3倍近く掛かり、アルドリッジはゆっくりと馬車の下から出てくる。

「もう下ろしていいよ…」

 立ち上がりながらそう告げる。が、立ち上がれない。膝を伸ばそうとした瞬間アルドリッジは前のめりに倒れ、馬車の後ろを持ち上げていた女に支えられた。

「?…子供、どうした?」

「・・・ど、どうしたんだ…ろ…」

 アルドリッジが次に意識を取り戻した時にも、まだ女達の声が聞こえていた。

「なんで子供寝た?」

「知らない。眠かったんだろ」

「サラナに置いてくか?」

「ウッラにあげる。ウッラ欲しがってた」

「ウッラ?ウッラ探してたか?」

「この子供いいヤツ。毛も赤い。ウッラよろこぶ」

「そうか、なら連れて帰ろう」

 アルドリッジは馬車の振動に気づかず、今度こそ深く意識を失った。


 機巧術は人間の為の力ではない。

 アルドリッジがもう少しイングリッドの好きにさせていれば自身が使っている力がどのような性質のものなのか分かったはずだが、実験を恐れ早々に再封印してしまったため分からずじまいになってしまった。

 アルドリッジは機巧術を錬金術に劣ると考えていたが、何故自分が組み込んだ仕掛けが動力無しで動き続ける事が出来るのか、施された魔法を抽出し素材そのものの特性として組み込むという現象が本来何に利用できるのかが分かれば決してそうは考えないはずだった。

 それらの力は当然代償なく使用できるはずもなくアルドリッジは自分でも気づかないうちに衰弱していた。

 機巧術に使用される力は魔力や生命力の様に単に食事で回復できる物ではなく、そもそも意図的に回復できる代物ですらなかった。

 3種の古代高等種のうち最も古くから存在していたツワグが最も早く歴史から姿を消したのはそのためだが、人間より寿命が長かったため一旦は機巧術によって繁栄することが出来た。

 アルドリッジが年の割に背が低いのは幼少期から機巧術を使い続けていたせいだが、それでも今回の帰国旅を含め時々、少量ずつしか力を使っていなかったため急激な消耗はなかった。

 しかしシャンニで捕らえられて以降、立て続けに休む間もなく毎日機巧術を使い続けた結果アルドリッジの身体は限界に達し、通りすがりの行商の車軸を直した時点で力尽きてしまった。

「う・・・・・ん・・・?」

 まず天井が見え、アルドリッジは自分が室内にいることが分かった。一瞬その天井が歪んで見えたため目眩を起こしているのかと思ったが、顔を動かして見ると室内自体が四角形ではなく半球の建物、と名状するのも憚られるような、枠組みに藁を貼り付けた質素な部屋だった。

 起きようとして漸くアルドリッジは自分が裸であることに気付いた。

「あ、あれ?・・・病院・・・なわけないよな、こんな部屋じゃ」

 どのくらい気を失っていたのか分からないが、まだしっかりと疲れが残っていたためそれほど経っていないと推測する。

 室内を見渡すと脱がされた服や鞄は壁の脇に置かれていた。少なくとも奪われてはいないことが分かり、アルドリッジはすぐに服を着ることもなく裸のまま何が起こったのかを考える。

 記憶はしっかりと残っているので自分が行商の馬車を修理してやり、直後に気を失った事は分かっている。

 その後一度目を冷まし女達が自分について喋っていたことも覚えているので、あの時馬車に乗せられて何処かに運ばれたのだと思い至ると、途端にゾッとする。立ち往生していた馬車の向きから考えアルドリッジが向かいたかった北に引き返してくれたとは考えにくい。最も近いサラナに運ばれていたとしても数時間歩いた分が帳消しになってしまっている。

 アルドリッジはそれを確かめるべく外に出ようと、服を着るため重い腰を上げた。

「お、子供が起きた」

 部屋の扉、と名状するのも憚られるような簾が持ち上げられ、浅黒い肌の女が入って来た。アルドリッジは慌てて寝具に戻り、掛けられていた布で腰回りを隠す。

「・・・あぁ、やっぱり」

 肌の色と体格しか記憶になかったアルドリッジは個別の顔までは認識できず、入って来た女が馬車にいた3人の内1人なのか分からなかったが、すくなくとも彼女たちが気を失った自分を助けてくれたのだと言うことは分かった。

「アッザ、子供起きた。ウッラ呼んで」

 女は部屋の外にいる誰かに声を掛ける。アルドリッジには女が口にしているのが固有名詞なのか何かを表す彼女たち独自の方言なのか分からない。

「あの、ここが何処か知りたいんだけど」

「ちょっと待て。いま族長くる」

「ぞ、族長?」

 アルドリッジは嫌な予感を覚える。彼女たちが何処かの少数部族なのは川沿いの道ですれ違った時からその容姿で分かっていたが、族長がいると言うことはその部族の村まで連れてこられているのかも知れない。

 やがてもう1人、やはり浅黒く体格のいい、薄着の女が入って来た。

「ほんとだ、起きてる。子供、元気か?」

 まだはっきりと疲れを感じているため元気とは言いがたかったが、アルドリッジは社交辞令として元気だと答える。

「そうか、よかった。おまえ馬車なおしてくれた。しんせつなこども、わたしたちスキ」

「・・・いや、まぁ…すぐ直せると思ったから。その後気絶しちゃうとは思わなかったから逆に迷惑掛けちゃったけど」

「わたしウッラ。バパナの族長。お前と子供作る。いいか?」

「・・・・・・・え?なんて?」

 呼ばれて現れた女、ウッラは完全に室内に入り、そのまま裸同然の尻をアルドリッジが乗っている寝具に乗せる。

「お前いいヤツで、赤毛。わたしたち赤いゼンニン、すき。わたし族長だからすきなの選べる」

「いや、意味が・・・バパナ…族?どっかで聞いた気が・・・」

「おまえ元気ならすぐに交尾する。お前出来るか?」

「・・・いや、出来ない」

 腰に巻いていた布に力を込め、寝具の上で後ずさった瞬間、上手い具合にアルドリッジの腹が鳴ってくれた。

「…なんだ、お前腹へってる。マイィ、メシ持ってきて」

 最初に入って来た女、マイィがウッラに命じられ部屋から出る。

 既にアルドリッジは逃げたくなっていたが、強い倦怠感のせいで頭を使うことも何も考えず行動を起こすことも出来ず、成り行きに身を任せるしかなかった。

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