Home Artists Posts Import Register

Content

「貴様の狙いはこの俺だけなんだろっ……! ならばもう目的は達成されたはずだ!」

直径五メートルほどの魔法陣に囲まれて、一人の雄が激しく雄叫びをあげた。

鼻息荒く叫んだのは、雄々しい肉体の牛獣人だった。

猛々しい白角と黒々とした体毛に、魔術が刻印されたベルトとパンツ。マントこそ羽織っているものの、前面ははちきれんばかりの筋肉がほとんど露出している。

「目的は俺の角か、装備か、それとも魂か、どうなんだ!」

知識のない者が見れば奴隷戦士と誤解されるような出で立ちだ。しかし見るものが見れば、それらすべてが高位の魔術師にしか扱いきれぬ装備であるとわかるだろう。

彼は場所によってはかなりの名声を誇る、希少な雄牛獣人の魔術師だった。高い筋力と体力、それらに付随する無尽蔵の魔力を有した。一級魔術師だ。

――その名声が今、仇となっていた。

「どのみちもう弟子は関係ない、そうだろうッ! 囚えるなら俺だけにしろ!」

猛る彼のマントの影には、怯えた様子の人間の青年がいた。成人はしているようだが、雄牛の体躯があまりに巨大なため、マントに覆われて子供のようにも見える。

「師匠、申し訳ありません……俺ぇ、俺ぇ…………」

「ええいメソメソするな! そのような態度こそ、悪魔は喜び啜るのだ、胸を張れ!」

雄牛の魔術師は弟子を厳しく叱責すると、その発言通りグイと胸を張った。鍛え上げられた大胸筋が、黒い山のように力強く盛り上がる。

「は、はい……このように、ですか」

「うむ、いいぞ。気力体力がなくては魔力は生まれん。何事も基礎だ、いいな」

このような状況にありながらも、雄牛は弟子を導き、そして鼓舞した。そうして再び上空を睨みつけた。

見えるのは地下室の壁と天井ばかりだ。だが、確かにそこには『いる』。一級を含めた魔術師を二人同時に囚えることのできる、高次の存在が。

『そうお慌てにならないでください。なにも永遠に閉じ込めようというつもりではないんですよ』

言葉は虚空から、脳内に直に響いてきた。

雄牛が忌々しげに、角の生えた頭を振る。

姿を見せない悪魔の声は、淡々と……だが確かに喜悦のようなものが混じっていた。

――永遠。

物騒な単語に、いよいよマントの影の弟子が息を呑んだ。

彼をかばうように立ち塞がる師匠は、見てくれこそ闘技場で斧を振っているような戦士だが、魔術の才は本物だ。どのような窮地も、いつも自慢の魔術と機転と、そしてタックルで解決してきた。そんな彼が「弟子は見逃せ」と言うほどに、この足元の魔法陣は強固ということだ。それだけの悪魔であれば、本気なれば定命の者にとって永遠と思えるような時間を囚えられることは難しいことではないだろう。

「おい、悪魔は我らの不安を煽るのだ。お前は耳をかすな。俺に任せておけ」

「は、はい師匠」

振り返った雄牛はそれだけ言うと、再び鼻先を虚空に向け、簡潔に尋ねた。要求は何だ、と。

『そんなものはありません』

「目的もなく存在する悪魔か。ありえんな」

『要求はない、と言ったんです。目的は別です』

「ならばそれを語るがよい!」

悪魔は甲高い笑い声をあげて言った。

『あなた方のような存在が、この結界を破る勇ましい姿こそ、私の目的です』

「………」

雄牛が太いマズルの奥で舌打ちをした。

高位の悪魔が作り上げた結界を破ってみせろ、とは……その要求がいかに困難であるかは、魔術師の経験が長い雄牛にはよくわかった。

たまにいるのだ。ヒトの苦痛や悲しみではなく、足掻きこそが目的の悪魔が。

「さがっておれ」

雄牛は振り返り、弟子を魔法陣の中心で座らせた。マントをバサリと翻し、逞しい両腕を上空に掲げる。円蓋の形になっていた結界を、空を支える巨人のように両掌で掴む。

「フンッ――!!」

黒く立派な二の腕が、筋肉の隆起でいよいよ凶器のような雄々しさを見せる。白い角がわずかに魔力で輝き、稲妻のようなものが迸る。全身を締め付けるベルトが、ミチミチと限界を告げる悲鳴を上げる。

ずん……と低い音が結界の中で轟き、閃光が結界の壁を揺るがした。

「くっ」

しかし、結界にはヒビ一つついていなかった。並の城壁ならば崩れ落ちるほどほどの衝撃も、この結界にとっては些事なのだろう。

「――魔術というのは一日にしてならず、いつも言っておるな」

しかし雄牛は絶望などせず、弟子の頭を掴み堂々とした声で語りかけた。

「まあいいだろう。精々足掻いてやろうではないか」

それから、雄牛はあらゆる手段で結界にぶち当たった。

魔法陣への介入。角を用いて壁への突撃。魔力を弾丸にしての乱打。

どんなに動いても、結界内の魔力の影響か、飢えや眠気は感じなかった。

それこそ、この檻を破壊するためだけに、全生命を集中することができた。

だからこそ焦った。

「師匠、一旦おちついてください! 休憩を!」

「何を言うか、俺はまだ……ッ! む、いや、そうだな。いかんな、冷静にならねば」

雄牛は血気盛んな己を諌め、どっしりと陣の上に座った。深呼吸を二度三度行い気を落ち着かせる。

補給は必要ないが、この体から立ち昇る汗と体臭はどこに行くのだろうか。人間の弟子を前にそんなことを気にかける程度には心の余裕が戻ってきた。

休み、挑み、休み、そしてまた挑む。

その繰り返しが幾度となく続いた。

日の当たらぬ地下では空の模様もわからず、囚われてからどれだけの時間が経ったかも忘れた頃、悪魔が笑うように語りかけてきた。

『ご苦労なさっているようですね』

「………。さぞ満足だろうな」

『いえいえ、そのような』

「孤独であれば心労を感じたかもしれんが、こうして二人でいれば励ましあうことができる。人間を横に置けば、俺の魔力を十全に扱えぬと図ったのだろうが、目論見が外れたな」

『まだ誤解なさっているようですね。私はあなた方の苦痛や失態が目的ではないのです』

台本でも読んでいるかのような冷たい声に聞こえた。こうなることを何千回と夢想してた者に出せる声だ。ここまではヤツの筋書き通りなのだろう。悔しいが仕方がない。雄牛はプライドをすり減らしながら、弟子のために声を荒げたくなるのを抑えた。

『あなた方が脱出されることをこそを望んでいるのです。その工夫、その努力、その魔力、その汗こそが目的なのです』

「延々とこの結界に挑めというか」

『結果そうなってしまうのは、仕方がないことですね』

「笑わせる。我々定命の者は、同じことを繰り返すようにはできておらぬぞ、あっさり諦めてしまうかもわからんな」

『それは困りましたね。では、より強く挑んでいただけるよう、お手伝い致します』

悪魔がそう言うと、魔法陣の中央に光が指した。その輝きは一箇所に集まり、やがてガラスの瓶と化した。儀式に用いられる五角錐の入れ物は、怪しげな輝きを発していた。

「うっ、な、なんだこれはっ!」

蓋のしまっているというのに、鼻に突き刺す異臭が漂っていた。悪魔の禍々しさ、とも違う。栗の花の臭いにも似た濃厚な雄臭だ。

『とある高名な魔導師の精液から作りました。言うなれば、魔力の源です』

弟子が小さく「マジかよ」と声を出すのが聞こえた。

『コレを飲めば、能力のあるものほど一時的にその力を限界まで高める事ができるでしょう』

極限まで。

「つまり、これを、つかえば……」

『ええ、ここを脱出することも、可能かもしれませんね』

「ここを出たら……」

『無論、もう私たちにあなた方を止める力は残っていません、開放します』

悪魔の言葉に偽りはないだろう。この手助けが善意である筈もないが、かといってここで延々ともがき続ける理由もない。

牛獣人であり長年を魔術と共に生きてきた自分と違い、人間の弟子の精神がいつまで保つかわからない。雄牛の魔術師は覚悟を決めた。

「いいだろう。貴様の奸計にのってやろう」

雄牛は大きな手で瓶を拾い上げ、肩から垂れていたマントを脱ぎ捨てた。鍛え抜かれた僧帽筋と広背筋を弟子に見せつけながら、グイと一気に飲み干した。喉仏にどろどろと濃厚な汁が通って行く。男らしい筋肉が、内部からうっすらと発光を始めるのがわかった。

「――ッッ! ……心配するな、このような結界、俺の筋肉と魔力で突破してやる」

そして振り返り、片眉を上げて笑ってみせた。牛のゴツゴツの顔立ちでいささか不恰好であったが、それを感じさせぬほどに頼もしかった。

「フゥーッ……フゥッ……!! おぉ………!」

薬が全身に行き渡ったのか、雄牛は背を丸めて低く咆哮をした。

悪魔から与えられた屈辱とはいえ、漲るその魔力に雄牛は驚き、そして感嘆していた。全身の黒く短い毛が逆立ち、角が伸びていくような感覚さえ覚える。まだ力を込めていないのに、体を締め付けるベルトの圧を感じてしまう。胸板も太腿も、全身にだ。

「いくぞッ……!!」

雄牛は再び天の結界に手を掛け、鼻から鋭く息を吐いた。

「ムゥゥウウン!!!」

雄牛は叫び、両腕を高く突き上げた。

精神と筋肉が一体化するような、己が高次の存在へと高められていくかのような強大な魔力を感じた。悪魔の力ではない。確かに雄牛自身のエネルギーによってだ。

「グオォォオッ!! ハァ……ハァッ!!」

結界はあまりに強力だ。雄牛の力を持ってしても容易には砕けない。だが全身全霊の力と魔力を以ってその壁にぶち当たり続けたことにより、ついに発光する半透明な壁にヒビが入った。

これでまず一歩だ。

だがこれでは足りないということもわかった。

まだだ。まだ足りない。

もっと魔力が必要だ。

「いくぞ、いくぞォォォッッ!!!」

雄牛は叫び、空気をぐっと吸い込んだ。

体を締め付けるベルトの一つがついに弾け飛んだ。

その悲鳴に呼応するかのように、結界のヒビが更に大きくなっていく。

だが、もっとだ、もっと必要なのだ。

「ブゥ、モォオォォオオッ!!」

雄牛はケダモノのように叫んだ。身につけた金具が次々に弾けていく。

力という力を込める。膨れ上がる筋肉。逞しくなる肉体。黒々とした毛が艷やかに光る。

高まる。魔力が高まっていく。

その姿はまさに筋肉の化身。獣性を持ちつつも、あまりの力強さに美しささえ感じる姿であろうと思えた。

「す、すごい……師匠、すげえ……」

思わず弟子が感嘆の声を上げた。

その言葉がすべての始まりになると、誰が予想しただろうか。

弟子になんの咎があっただろうか。

「……もっと、だ」

「え?」

「……もっと、いってくれっ……!」

師匠は弟子に、背を向けながらそう言った。

「もっと、俺のことを……褒めるんだっ」

言葉にするのはさすがにためらったが、しかし言い切った。

「あ、あの、師匠は、すげえッ、ええっと……素晴らしいです、きっと結界も破壊できます!」

「ムゥっ、ブモォオォオオオッ!!」

言葉が耳に入るやいなや、雄牛はさらに両腕を頭上高く持ち上げ吠えた。結界がビキビキと音を立てる。筋肉にさらに力が宿った。

「ぐ、コレだっ、この力があればぁああッ!!」

魔力と精神と肉体は密接に繋がっている。

心が強くなれば、それだけ魔力を生み出せる。

熱した石に水滴をこぼしたように、体から汗と魔力が立ち昇る。

もっとだ。

もっと。

もっと力を。

ここから出るのだ。

こいつをだしてやらねば。

俺こそが、こいつを……!

「もっと、もっとだぁああ!!」

「う、うっす、師匠の筋肉はめちゃくちゃ力強く見事です! パンパンで、魔力の源で、世界中探してもこんな牛獣人見たことないです!」

「ブゥウッウモォォオオ!! 「まだだ、まだ、まだだぁああッ!!」

「し、師匠の胸板とんでもなく分厚いです! 腹筋もボッコンボコンでどんなパンチでも耐えられそうです! それに太ももも分厚くってきっと師匠ならこんな壁ぶち壊せます!」

「臭い! 臭いも嗅いでくれ! この俺はどんな臭いだッ!」

「……えっ」

「はやくしろぉおっ、い、いや、してくれぇッ!!」

「う、うっす……ぐ……、すっげぇ、臭う……臭いますッ」

「オォォッン! どんな、どんな臭いだッ!!」

「いや、すげえクセエッ……と思いますッ! 師匠の、雄の匂いが鼻にぶち当たってくるんです……、黒い毛に覆われた腋も、股間も、ものすごいですッ!」

「ホッ、ホッ、ホンッ!!! グォオオオ!!!」

褒められれば褒められるほど力が宿る。

筋肉に、腋に、股に、全てに。

雄牛は勢いのまま、横の壁にぶち当たった。手応えがあった。

「さあ、もっと、もっとだあ!! 俺のことをもっと褒めるのだッ!!!」

師は興奮の極みにあった。

数十年鍛えあげてきた体と魔力に、新たなる境地が見えてきた。

その興奮で声が勝手に出ていた。腹に収めたあの薬はいまだ消化されきっていないようで、息もどこか雄汁の臭いがした。自らの声と息がマズルの周囲で漂って酷い臭いだった。飲み込んだ精液が逆流しているかのようだ。脳に臭いが入ってくる。いや、精液自体が脳に……頭の中に流れ込んでいる。

かまわん。

これで強くなれる。もっと、もっと逞しくなれるならば……。

「ムッホォン❤」

受け入れた瞬間、頭の奥にゾクゾクとした快感が走った。

どろり。

それは中出しにも似た、生暖かな感触だった。

「も………もっとだぁああ、もっと、もっどぉぉお」

「し、師匠、もう、休憩……俺、いや、師匠がぶったおれちまいますよ!」

「何を言っとるかあ! バカ弟子がッ! この俺様はお前をそぉんな軟弱者に育てたおぼえはないぞぉおッ! もっとはっきり、大声で俺様を褒めんかァあ! 出られんでもいいのか! ここから永遠に出られんゾォ!!」

雄牛は激しく弟子を叱咤し、とにかく己を褒めさせた。

とてつもない快感だった。

――数時間後、結界の中の様子は異様なものに変わり果てていた。

雄牛は既に結界にぶつかるのを止めて、弟子の前で己の筋肉を誇示し続けていた。

そんな師を見上げながら褒め続け、雄牛以上に疲れた様子の弟子がした。

ガニ股でポージングをとる師匠に弟子は何度も呼びかけていた。

「師匠、師匠、落ち着いてください……! ど、どうしちまったんですかぁ」

「俺は、この俺様はッ、最強の筋肉をもってここから脱出しようとしているだけだぁッ! 俺様のちからを持ってすればこんな壁ェッ!!」

「あ、あの薬が、あれが師匠を……」

「なにをゴチャゴチャ言っとるか!! そんなくだらんことを呟く暇があったら、俺のことを褒めんか! そら褒めろ! もっと、もっと、もっとダァあ!!」

「あ、あの、お、俺はそんな……言葉もそんなたくさん知らねえし……!」

「俺の筋肉を褒める言葉なんぞ、この世に無限にあるだろうが!! どうだ、むんッ、この上腕二頭筋!! ほぉぉおお、す、すごい、俺の牛筋肉ぅう、ブモォォオオッ!!」

雄牛は自分の筋肉を見つめ、とろけるような顔になった。

その顔は弟子が今まで見たこともないようなものだった。厳つい牛の顔面が台無しだ。マズルから伸びた舌がべろりと鼻を舐めている。鼻の穴の膨らみようなど酷い有様だ。

「おぉぉ、なめ、なめてもぉおンマアァアイ、さっすが俺の筋肉だぁあン」

そのまま雄牛はベロベロと己の筋肉と腋を舐めだした。

弟子は愕然とした。

これは違う。

確かに師は肉体を誇りとし、日々研鑽を続けていた。

だがこのように筋肉を愛しているなど、他の弟子に聞いたこともなければ見たこともなかった。

これは異常だ。異常なのだ。

「し、師匠、やめろよそんな!」

弟子はたまらずとびついだ。だが全ては遅かった。

「うぇッ!!」

師匠は弟子の腕を軽く掴むと、そのままひょいとゴツい片手で持ち上げた。

そしてニタリと笑った。

「そうかそうか、見るだけが嫌になってしまったのかあ、そんなに我慢ができんかぁあ、なんて駄目な弟子なんだぁあッ」

「し、師匠」

そのまま顔面を体ごと、己の胸板に押し付けた。

「んんんぶッ……!!!!」

「おぉぉおっ、どうだぁああ、師匠の筋肉の素晴らしさはぁ、この逞しい牛の胸板ァァ舌であじわっても、さ、さいこうだろぉおおっ!!」

僅かなベルトとパンツ岳を見に付けた牛魔導師は、ゴツゴツした肉体をいやらしく揺すりながら弟子に胸板を、乳首を、鎖骨を舐めさせた。

顔に浮かぶは至福の表情だ。

極楽一歩手前の、イッてしまった顔をしていた。

「ふひっ❤」

否、事実、イッてしまっていた。

腰がピィんと突き出たまま止まり、パンツがびくんびくんと膨れていた。

「へ、へへへっ、さあどうだあ、こんな間近で味わえたのだあ、褒めろォお、褒め称えるのだぁああ」

師匠はふらふらとつま先立ちで左右に揺れ、弟子の体を開放した。

「う、あぁぁああ……」

弟子は驚きと困惑で言葉もなかった。

「師匠、師匠ぉぉ」

「そうだぁ、もっぉおっと褒めやすくしてやるぞぉお、ほ、っほ、っほっどうだぁ!俺の、俺様のウシデカマラを拝ませてやるぞぉおん!!」

「ああ、ししょうぅぅ」

「あぁぁ汁が、マラ汁がでるゥう、でてるぅうう! どうだあこの吹き出し方、俺の、おっほぉん、俺の顎にまできたあッぁあ、あっひぃぃいっ、たまらんぞぉおお、俺は筋肉もチンポも最強になっていくぅぅうン❤」

パンツから勃起チンポだけをはみ出させ、雄牛はニタニタとポージングを続けた。体の中心にはビクビクと勃ち上がった肉棒。三本目の角のようにガチンガチンに己を主張している。

既に弟子に選択権はなかった。

褒める。ただ変態と化した己の師匠を褒めるしかなかった。

「デカチンポが、ああ、すげえ出てるっ、勝手にビクンビクンうごいて、すげえ間抜けです」

「オォォオオオッ! そうだろぉおぉ! はひっ! 腰がかってにうごくぅんん!! おぉおん!!」

「チンポ触ってる手もゴツいです、あ、あと、尻もすげえ逞しいから、センズリがめちゃくちゃ迫力あります……」

「ハァ、はァっ! どうだ俺の、俺のセンズリィッ! 男ズリだぁ! 筋肉ずりっ!! ズリズリィイイッン!!」

「か、顔も、でれでれの、涎ダラダラで、ベロが出ていて……ぐす、うぅ、こんな、師匠の顔じゃ、ないみてえ、ですっ……」

「ブモォッ! ちんぽダイスキィッ!! 筋肉見せみせェエッ!! ムッヘッヘエンッ!!」

「うぅぅ、ししょぉぉお………」

「ばかもおぉおんもっどぉお、もっどぉお褒めんかぁああン!!!」

数時間、数十時間、いや数日。

結界から与えられる力もあり、師匠は休むことなくポージングとセンズリを続けていた。

地獄と天国が小さな結界の中で濃密に凝縮されていた。

既に雄汁で魔法陣が書けそうな程になっていた。

「あぁぁ……」

今の師匠は腰に手を当てて結界内をぐるぐると回っていた。無論ガニ股、センズリを続け、涎をチンポにダラダラたらしてだ。

弟子が「外周をまわってたら最高にいい」と言ったからだ。もう何度もこんな時間稼ぎをしていた。

既に目的は失われ、師匠は弟子にほめられてチンポをこする、従順な家畜のように成り下がっていた。弟子に褒め称えられる餌に食いつくケモノへと落ちていた。

結界は固く閉ざされている。

もはやどう出ればいいのかもわからない。

「うぅう……!」

弟子は見えぬ壁を無意味に叩いた。

びくともしない堅牢な結界で、掌がただ痛くなった。

「なんじゃくもぉん! 俺様の筋肉をもっとみならぇぇええ、フゥン!!」

そんな姿を見かねて、師匠が頭突きで壁を小突いた。

その瞬間だった。

角が突き刺さったところから、いともたやすく見えぬ壁が崩れてしまった。

「え」

魔術というのは一日にしてならず。その言葉は、師の教えは真実であった。

「開いた……」

結界の外から入ってきた空気を吸ったことで理解した。この内部は雄牛の肉体から発せられた魔力で満ち満ちていたのだ。その膨張についに結界は己を維持できなくなったのだ。

いかに変態に成り下がろうと、クズのように顔をニヤつけようと、その力と魔力は紛れもなくあの師匠のものだった。強く優しく、いつも支えてくれた男のものだったのだ。

「やった……」

弟子の顔に光が戻る。数日ぶりに光だった。

そしてそれは、一瞬で壊された。

「どこへいくかぁああン❤」

立ち上がった弟子の脚を、雄汁まみれの師匠の脚が払った。

「この俺をもっと、もっどほめんかぁああ❤」

ニキニキの笑顔を顔に張り付かせ、師匠は割れた結界を背にしてポージングをとった。黒い牛の筋肉が壁となって立ち塞がる。

「し、師匠! もういいんです! もう出られるんですよ俺達ッ!」

弟子は懸命に師匠に叫んだ。

「なにぃい出るぅ❤ なんでだぁあ?でへへへ……」

だが、師匠はそんな弟子を一蹴した。文字通り。

「でへ、ここにいれば、いつまでも俺のポージングをみられるのだぁあ❤ そとなんでぇもうお前にはひつようないぃい❤ お前は一生、俺のことを褒めていればいいんだぁああン❤ そぉれ筋肉ぅ、筋肉の輝きを見ろォォォッ!!❤」

結界が閉じていく。

閉ざされていく。

「ああ、あああ、あああああ」

「さぁあ、こんどは素っ裸の裸踊りをみせてやろう!! ハァ、ハァ、考えただけで興奮してきたぞオォ……マントをチンポにくくりつけてぇえっとぉ、素晴らしい儀式のだい十五回をお前に見せてやろうぅぅッ❤❤」

師匠は素晴らしい魔術師だった。

雄牛という偏見にも負けず、魔術師という難関職に邁進し、常に世のため人のために戦い、弟子に様々な術を授けてきた。

だからこそ……。

「ありがとうございます、師匠……」

弟子は両手を雄牛に向かって伸ばした。

『どうですか、結界は破れそうですか?』

「も、もちろんダア、このような結界、俺の筋肉にかかれば、いつか必ず破壊してやるぞおおッ❤ さあさあもっと褒め称えるのだあ、この美しき魔力の奔流をぉ、筋肉の輝きをぉお、肉棒の逞しさぉぉお、おぉぉおまた出る❤ 出る出る❤ たくましぃぃぃ❤❤」

結界の中、一人の牛獣人が叫んでいた。

ガニ股になり、鼻の穴を開き、鼻水と涎と雄汁を常に垂らし続けていた。

既に身につけたいたものは魔力の濃さに劣化し、溶けて、残っているのは鋼のような黒い肉体のみだ。この男が高名な魔術師であるなど、だれにもわからないであろう筋肉の変質者だ。

弟子はそこにはいなかった。

残っているのは魔法陣の中心にある、透明な光だけだ。光からは常にこの牛獣人を褒める言葉が流れ続け、閉じた空間に響いていた。

『あの一瞬で素晴らしい機転。やはり、人間の努力と力は素晴らしい、良いものが見れました』

「そうだろうそうだろうぅぅ❤ この筋肉は素晴らしいだろうぅ❤❤ もっともっともっと褒めるのだぁぁ❤ ハァハァ、ああぁぁ、もう触る必要もない最強チンポすぎるぅう❤ 褒める❤ 出す❤ 褒める❤ 出す❤ なんて最強チンポだ❤ 最強チンポの持ち主の俺は最強魔術師だぁぁ❤❤」

師は今も永遠の快感と力に溺れ、終わらぬ射精を味わっている。

ただひたすらに幸福だけを感じながら、閉じた世界で永遠の喜びを感じていた。

一方の弟子は結界の中で長時間魔力を浴び続けた影響か、その能力を飛躍的に伸ばしかつての師匠以上の名声を手に入れているという。

彼の教えを守り、今もヒトを助け続けている。

いずれ結界を外から破壊する術を手に入れるため、彼は今日も人々の笑顔に囲まれながら努力を続けている。

師匠と弟子。

二人はいつまでも幸せに過ごしたという。

Files

Comments

No comments found for this post.