真面目なガチムチサラリーマン、 自分の姿を乗っ取ったヤクザに、 中出しされ人生や尊厳も 乗っ取られる (Pixiv Fanbox)
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◆◆PIXIVリクエストの小説です。合計文字数1万4千字ほどになる、肉体コピー、自分自身との強制雄交尾。そして人生強奪ものです。◆◆
渡された地図の行く先は、古びた怪しげなホテルだった。
外観はまるで改装中のようにそっけなく、駅からの距離もずいぶんとある。そのくせ二十階を超える高さを有しており、なんとなく寂れた理由が窺えた。
普段利用するビジネスホテルとは大違いだ。施設も、立地も、そしてなによりこれから向かう私の心持ちも。
「……誰も、いないんだな」
私は大きな体をできるだけ隠すように、背を丸め、スーツのなかで縮こまりながらホテルの中へとすべりこんだ。
視線がないのは幸いだったが、それに人影のなさは不自然なほどだった。客どころかホテルのロビーには従業員の姿もなく、ただ監視カメラばかりが静かにこちらをみているだけだ。受付もなにもない。ありがたさと同時に、その静けさは私の不安をさらに煽った。
しかし今の私に選択権などない。私は指示された通りにエレベーターに乗り、指定された部屋へと向かった。道のりは短く、しかし足取りは重かった。鍛え上げた重量級の肉体が、いつも以上にずっしりと感じる。
「――山岸、剛司です」
扉の前で私は自分の名を名乗った。
扉の向こう側で気配が動くのがわかった。鍵が開き、ドアノブが曲がる。部屋の中から現れたのは、想像よりはるかに若い男だった。
「おー写真で見るよりいい男じゃん、いいね、俄然楽しみになってきた」
「キミが……その、今日の……かい?」
「ん、問題ないだろ?」
「――本日は、よろしくおねがいします」
「あー、固い。かったいねー、サラリーマンってみんなそうなの? 固いのはナニだけでいいから、なんてなヒヒヒ、ま、入って入って」
私より一回りは年下の男は、細くしなやかな体格を颯爽と翻して私を部屋へ招いた。
筋肉も脂肪もたっぷりついた私とは対照的な体つき。
どんなときでも品位や冷静さを重んじる私とは対象的な態度。
そして、スーツ姿の私とは対照的なラフな格好。
なにもかもが、嫌味なほどに違う。
「ほら、とっとと入れって。それともなに? 外でのほうがお好み?」
「………。失礼します」
距離感のおかしな喋り方に、飄々とした態度、平時であればムッとして軽く言葉遣いの説教でもしたかもしれない。
だが、男と私の立場は、抗いがたい大きな隔たりがある。
男はただの若者ではない。部だけ脱色した髪に、人を見る目のあの鋭さ。そしてこの態度。彼は間違いなく、闇金と繋がるヤクザの構成員に違いなかった。
「――なにかと不慣れなので、不手際も多くあると思います。色々と、ご教授のほど――」
「オイオイオイオイ、まるでビジネスされてるみてーだな。これがアンタなりの処世術? これからセックスしようって相手にソレは壁作りすぎだろ」
「………」
「とはいえ黙られても困るんだよなー、セックスってのはコミュニケーションだろ、ちゃんと色々語ってくれないと、な」
セックス。
男であるヤクザが、男である自分の胸板を触りながらそう言った。部屋を埋め尽くすような巨大ベッドと、その下で妖しく光る紫の間接照明、部屋中に充満する香が、これから起きることを示唆している。
「わ、わかり、ました」
私は頷いた。
男の発言は、ただの嫌味や挑発ではない。
ベッドボードに取り付けられたカメラがじっとこちらを見ている。映像は撮られている。不用意な発言や、非協力的態度は許されないだろう。
借金の額を考えれば、何をされるか分かったものではない。
「わ、私は、その……ぬぅ……」
「そう不安に思うなって、何も同意もねえのにネットに流そうってんじゃねえよ。そこまでは契約になかったろ? おっさんビビりすぎよ。俺らってそんななんでもかんでも自由じゃねえから、色々誓約あるんだよ。この世界ってのはな、ヘヘ」
契約。そう、私がした契約は一つだ。
この男との性交渉で、弟のした借金をチャラにする。それだけだ。
若いヤクザの言葉は到底安心できるようなものではなかった。だが、尻込みしているわけにはいかない。私は意を決して、自らのネクタイに手をかけた。
――何故こうなってしまったんだ。
自分の体を売り物にするなどという、娼婦のような人生は送ってこなかった。
借金などしてない。少なくても私自身は、どこかから金を借りなければならないような人生設計は建てていなかった。後ろ暗いところなどないはずだった。
放蕩息子ならぬ放蕩弟の借金先が、まさかヤクザと繋がっているような闇金だとは思わなかったのだ。
相談は何度かされた。だがその度に叱咤するばかりで、親身になってやらなかった。それがいけなかったのだろうか。
40代の貴重な時間、会社と役職のキャリアアップに夢中で、親族の悩みを二の次にしていたのか問題だったのだろうか。
弟は雲隠れし、勝手に保証人にされていた私にその債務がのしかかってきた。
到底払えない額と利子。
私に選択肢はなかった。
こうして体を差し出すことだけが、唯一飲み込めた条件だった。
「――ハァ~、大変っすねえ」
ヤクザはまるで同情するような口ぶりで言った。だがその言葉に心がないことは、私にも彼にもわかっている。男は態度を変えず、指先でちょいちょいと私に向けて指示をするのはやめていない。
早く脱げ、もっと見せろ、そういうことだろう。
私は言われてるがままにベルトを外した。
下着と靴下だけの姿になると、目の前のヤクザは愉しそうに笑うのが聞こえた。決して嘲笑ではない笑い方だ。以前に比べて腹は出たが、胸板は以前分厚く、肩幅や太ももの大きさなどは現役のスポーツ選手にも負けていない。情けない体ではないと思う。だが、これはなにも男を発情させて性交するために鍛えたわけではない。しかしながら、その価値が己を救っているとも言える。複雑な気持ちだった。
「こ、こんなもので、よろしいですか」
「よろしいよろしい。おっさん正直自分で思わない? 雄として色気あるって、さ」
「――そんなことは、私は……考えたことも……いや、偏見があるわけではないのだが……とにかく、ありません」
「ほんとに? そのガタイと顔で? 手ェ出されたこと何度もあるだろ?」
「……まあ、その、銭湯や電車で、その筋の方に声をかけられることは……ありますが」
「そりゃあそうだろ、だって見ろよ、この立派な腰に分厚い胸板。ケツもガチガチに固くてデカイし……それで……ここに隠れてるのはどんなかな?」
股間の膨らみを見つめながら、男は最後の一枚まで脱げと暗に要求してきた。
尻込みしていても仕方がない。私は思い切り下着をずり下ろし、堂々と一糸まとわぬ姿となった。
「はーー、おいおいオッサン、体だけじゃなくって、そっちも極太かよ。なんだなんだこの立派な竿」
ヤクザは私の男性器を褒め称えながら、やはり態度は軟化させることなく次の要求を出した。
カメラの正面、巨大ベッドの中央、そこに寝そべり俺とまぐわえ。いよいよだ。私は固く目をつぶり、ただ「よろしくおねがいします」と固く返した。
「ン……ハァ、ハァッ!」
「どうだオッサン、男の口の味は……ヘヘ」
「ン、あ、ッ、そのぉ……」
「へへへ……まあ言わなくてもわかるけどなあ、どんどんでかくなってるぜ俺の口でよぉ~、しっかしこのデカさじゃあフェラなんてなかなかしてもらえないだろ」
「あ……っ、くっ、は、はい、久しぶり……ですっ」
フェラチオなど本当に久しぶりだった。
すぐ目の前には男の頭部ということを除けば、股間を覆い尽くす滑らかで温かい舌の感触は嫌ではなかった。
正直なところ、拍子抜けだった。
てっきりもっと激しい行為や、派手なプレイを求められるのを覚悟していた。
「ガタイもデケえし、チンポもデケえ、顔もゴツいし、おっさん本気でホモになれって絶対人生得するって」
そのうえさっきから随分と気分の上がることを言ってくれる。そもそも、こんな親父との性交渉でで借金をチャラにしようというのだから、よほど私の外見が好みなのかもしれない。
「ハァ、ン、ヌゥ……フゥゥ……!」
「むぉ……、まふまふデカふなってひはな」
ああ、もっと大きくなってしまう。
男のクチの中だというのに、肉棒がガチガチに勃起してしまう。
久しく味わっていなかった暴力的な衝動。興奮。雄の本能。
下半身の奥底からグツグツと湧き上がり、腰が勝手に動き始める。滾る。ガチガチに滾る。
「う――ふふぅう!?」
ベロベロと亀頭を舐められながら乳首や玉の裏側を撫でられて、私の体は激しく跳ね上がった。弱い部分を刺激されながらのフェラ、溜め込んでいた精液が昇ってくる。快感で頭が痺れ、口が緩む。あぁ……、イク。イッてしまう……。
「あ、ああ、も、もう……出てしまうっ」
「いいぜ、俺のクチに出しなよ、おっさんを出せ、出せ出せ」
許可が出た。もう我慢する理由もない。
「あぁ……!」
私は力なく喘ぐと、呆気なく精液を放った。
男の口の中に、私の雄汁が流れ込んでいく。ヤクザは待ち望んでいたかのように、激しく私の精液を啜った。ズルズルと派手な音が聞こえた。正直恥ずかしくはあったが、同時に安堵していた。
たったこれだけでいいのならば、そう不安に思うことはなかった。
これでもう大丈夫だ。
男の要求をあと何度か聞いて、彼を射精させれば終わる。
怯えることなくもとの人生に戻れるのだ。
私は射精の快感で弛緩した思考力のまま、そんな事を考えていた。
だが、その心地よさは一瞬で奪われた。
「ンンッ、オ、キタ……キタ……ゾ……ッ!」
「―――!?」
私の精液を飲み込んだヤクザが、背中を丸めて震えだした。
見るからに尋常ではない震え、いや痙攣。私は相手の素性も忘れて、自分がなにかをしでかしたのではないかと心配に思った。
「な、なんだこれは!?」
だが、私の心配など吹き飛ぶような光景が目の前で起こり始めた。
ヤクザの細く筋肉質な体が、ぼんやりと発光を始めた。ちょうど、この部屋のベッドの下にあった間接照明と同じ、妖しげな紫色だ。全身が輝き、飴のように透き通って、光を放ちながら同時に屈折していた。
「だ、大丈夫ですか! これは、一体何が!?」
その光は男を飲み込み、男と世界の境界がボケていった。
やがて、丸まっていた肉体が変化を始めた。
細く筋の通っていた肉体が、ゴツゴツと岩のように盛り上がる。
脱色していた髪の毛がすべて黒く戻り、刈り上げたように短くなった。
首が太くなる。肩幅が広がっていく。胸が迫り上がる。腹がパンパンに膨れ、筋肉と脂肪でガッチリと覆われる。足も腕もどんどん太く、力強く男臭くなっていく。全身が筋肉の鎧で守られたような、屈強な雄のガタイだ。
すん……と、汗臭い香りが立ち昇ってきた。
「――これは」
私はその姿に見覚えがあった。この世界中のどんな人間よりも見覚えがあった。
「へへへ………」
男は顔を上げた。
太い眉。太い無精髭。ゴツい鼻筋。筋肉質な顔面。
目の前の男は、鏡でいつも見る私、山岸剛司の姿になっていた。
「へへ……よし、うまくいったぜ」
若いヤクザは私の声で、男の口調まま喋った。トリックや映像ではない。確かに、私の声で喋った。
「いったい、これは…………なにを…………」
「はは、驚くのはムリもねえな」
40のゴツい親父にして軽薄な口調で、私の姿をしたヤクザは語った。
「ここはな、そういう場所なんだよ」
私の姿をしたヤクザは、シーツをまくってベッドの下を指差した。
私は恐る恐る紫色の光を覗いた。そこにあったのは機械などではなく、みたこともない理解不能の円形の図形だった。
ファンタジーなど嗜んでいないオヤジの自分にも、映画や一般知識でわかる。
これはいわゆる、魔法陣だとか……そんなように呼ばれるものだ。
しかも、おそらくは禍々しいもの。知識ではなく、人間の本能がそれを理解した。
「契約成立ってことだ」
ヤクザは依然語り続ける。
「この陣の上で大事な体液を飲み込むと、相手に肉体を明け渡すっていう同意にみなされるんだよ。ま、細かいことは下っ端の俺にもわからねえけど、とにかくそういうように出来てるんだ、神か悪魔かしらねえけどな」
「そ、そんなこと、私は聞いてないぞ! どういうことですか!」
「聞いてないって、当たり前だろ。たった今『契約』をしたんだから、な」
そんな屁理屈が通るものか。
こんな異常が起こるものか。
私は目の前の現実を否定したかった。だが………。
「………」
すぐ目の前の男は、触れられる実体に違いなかった。
この体の厚み、この汗の臭い、この毛の生え方に至るまで、なにもかもが山岸剛司そのものだ。
悪魔の契約。
言葉にすれば冗談のようだが、紛れもない事実に違いなかった。
「キミの姿は……いったいどこにいったんだ」
「ん? キミの姿とは、一体何を仰っているのかな? 私は……山岸剛司だが?」
「や、やめてくれ!」
ヤクザは唐突に口調を変えて、私のように自分を騙った。
そうなるといよいよ違いがわからなくなる。それ恐ろしく、私は声を荒げた。
「こんなにも立派な体格、渋い面相、この低く落ち着いた声、ううーん、なんて魅力的なんだ、この私という男は」
「―――ッ!」
考えたこともないようなことを言いながら、目の前の自分は筋肉を見せ付けるように、脂肪の分厚さを誇るように、カメラの前でポーズを取った。
自分の姿をした男の痴態に、私は目を覆いたくなるような羞恥心を覚えた。ひどい卑猥さだ。
「か、返すんだ、やめてくれ、それ以上私の体で――」
「おっと、いつもの口調が乱れてないですか?」
「ん、ぐ、ど、どうしたら、返していただけるのですか、こんな――聞いていない……あんまりです、借金の額を考えても……ここまでのことは」
「ええもちろん、なにも同意なく……ずっと奪ったままってことはないですよ」
さっきまで軽薄な喋りをしていた男は、ベテランのサラリーマンのような態度で私に語った。
「この陣の上にいる限り契約は誰でも可能、そう、つまり同じことをすれば……ということです」
男――私の姿をした男は、口での説明を早々と終えて……自分の肉棒をグイと突き出した。
突き付けられた自分の肉棒。
太く長く固く、立派な……密かな自慢。
「自分の体の感じる場所なら、よくわかっているでしょう?」
ヤクザはもとの口調など少しも感じさせないような、柔和で冷静な言葉遣いで私に言った。似ている。けれども私の発言とは思えないようないやらしい声色と態度だ。
頭かおかしくなりそうなほど、屈辱的な体験だった。
自分のチンポを咥えて、自分の体を愛撫して、自分の体とセックスしろ。男同士で絡み合え。そういうことなのだ。
――だが、やはり私に選択肢はない。
こんな淫乱な私をこの世に残しておくわけにはいかない。取り戻すのだ。山岸剛司というたった一人の男、必死に鍛えたこの肉体と精神を、私だけのものに。
私は目をつむり、自分の姿に覆いかぶさった。
「ンーむ……ふぅ、むぅっぅ………!」
「おぉぉう、こんな姿をしているのに、こんなに乳首が感じるとは……、ハハハ、意外といえば意外ですね」
出来得る限り目を強く閉じ、何も見えないようにした。
だが、手や舌で味わう姿は、やはりどうしようもなく『自分』でしかなかった。初めて味わう男の味が、よりにもよって自分のもの。
「あぁあぁ~キモチイィ、腰が揺れてしまうぅ」
そのうえ頭上から降る声もまぎれもなく私のものなのだ。喋っていないのに自分の声がする。脳の奥でスケベな喘ぎ声が反響する。頭がどうにかなりそうだ。
「そうそう、ソレが感じてしまうんだよな、私は先端を優しく弾くようにするのが感じるんだ、ああ、チンポがどんどん大きくなってしまうッ!」
どんどん自分の声色に似てくる。そのうえ、肉体の弱点まであれこれと暴露されてしまう。そうだ、男のくせに乳首が感じる。玉の裏も敏感だ。やめてくれ、言わないでくれ。誰にも言ってこなかったんだぞ。
「ぬ、ぅぉお――!?」
「ハハ、あまり一方的だと申し訳ないですから、お互い気持ちよくなりましょうよ、山岸剛司同士ね」
「ふ、ふざけ――あぁあ!!」
目の前の自分が、鏡のように私を真似し始めた。体を反転させて、お互いがお互いのチンポをしゃぶり合ういわゆる69の姿勢。乳首を刺激し合いながらの亀頭攻め、玉の裏を優しく触り、竿を舌でベロベロと上下にこする。
私が今してきたように、自分の感じる部分を重点的に責め立てる。
セックスなのにオナニーのよう。しかしオナニーと違い、自分が手を緩めても相手はまったくそうでない。責めが続く。快感が続く。
他人でありながら自分でもある。
まるで自分の知識を吸い取っているかのようだ。なんて恐ろしい。恐ろしいほど感じてしまう。
「あ、あ、だ、駄目だ……舌は、あっぁあッ」
「おぉぉおお互いのデカマラがぬるぬるになってきましたねえ。そうだ、このヌルヌル山岸剛司チンポ同士で兜合わせしたら、興奮するんじゃあないですか。ハハハ、私はホモだからすぐ興奮でイッてしまうかもしれないなあ」
「や、やめ、やめてくれ……私は、ホモではないぞッ」
「ン、それはそうだろう。私は私のことを語ったまでですよ? 一体何をそんなムキになって、自分のことのように否定しているんですか?」
「あ、あああ、しゃ、喋らないでくれ、頭が、おかしくなりそうだ………!!!」
なにがなんだかわからない。
快感と混乱で頭がどうにかなりそうだ。どうして私の舌はこんなに分厚いんだ。どうして私の乳首はこんなに感じるんだ。どうして私の指先は私を刺激するのにこんなに最適なんだ。
「あ、ぁぁッ、きもちぃぃ………!」
私の声で私が叫ぶ。
いや、今叫んだのは私だったか?
何を言っているんだ。何を考えているんだ。
ああ、駄目だイキそうだ。いつのまにか兜合わせまでしている。こんなホモのような姿を、自分自身と行ってしまっている。自分の顔だからこそわかる、射精が近い。興奮に赤らんだ顔はまるで猿のようだ。こんな顔を晒していたのかと思うと羞恥でおかしくなりそうだ。それなのに感じてしまっている。ああイキそうだ。イかせなくてはならないのに。駄目だ、イキそう。イク、イッてしまう。
「どうだ、男とチンポをこすりつけているぞ。なんだこの大きさは、ハハハ、私のチンポは立派だなあ、ああぁぁきもちぃぃいい!!」
「や、やめ、うぉお、うぉぉおおッ!!! きもちぃぃいい!!」
そして、私達は同時に射精した。
同じチンポ、同じ手、同じテクなのだ。勝敗などつくはずがない。
イカ臭い雄汁まみれになった肌でヌルヌルと抱き合いながら、私はそこでようやく気がついた。
「ああ、同時……でしたからね。ははは、そうなると契約が二重に働いて、すぐに交換が行われるから……無効ということになりますね」
「そ、そんな、どうしたら……いったいどうしたら」
絶望的だ。
私にはもうどうしたらいいかがわからない。
「た、頼む、返してくれ、それは私の体だ……お願いだ、お願いします……」
「いいじゃないですか、このまま二人で楽しめるなんて、最高の人生ですよ」
「そ、そんなことはない、間違っている! 私の声で、そんなことを言わないでくれ……!」
こんな退廃的な快楽など、求めていない。ああ、そうだ、こんなものは間違っている。自分自身と性行為するのが気持ちいいなんてあるはずがない。今射精したのは、溜まっていたから、やらなくてはいけなかったから、それだけだ。
「しょうがねえな……それじゃあ」
私は唐突に口調を戻して、悩むような素振りを見せた。
「このデカマラをずっぽりケツに入れさせてもらえれば、すぐにイッてしまうかも、しれないなあ」
そして再び私の口調を真似て、そういった。
「………」
その提案は、仮初の自分を消し去るという条件を鑑みても、即答できないものだった。
同性愛者が行為に際して尻の穴を使うことは知っていた。だが、今までためそうなどと考えたことはなかったし、女性相手でもケツなど触らせたことはなかった。
「ほ、他に方法は」
「俺を縛り付けて一方的にヤるか? 言っておくが全部撮影中だぞ」
突然ヤクザの口調に戻って、目の前の私は邪悪な笑顔を浮かべた。
命令はしていない。ただそれだけであって、やはり私に選択肢はない。ズルズルと引きずり込まれていく。このホテルに、この部屋に、この男に、この契約に。
私はしばらく硬直したまま考えた。そして観念し、自分の尻に手を伸ばした。
「……う、おぉお、ケツが、ケツがぁ………!」
自分の舌が自分のケツを舐めている。
その生暖かさは、言いようのない奇妙さと不快感と、そして気持ちよさがあった。
自分の吐息を感じながら何度も何度もケツを舐められた。そうしてとろとろになったところに、私のチンポがズブリと突き立てられた。
「う―――!?」
なんて太さだ。とんでもないデカさだ。
今日ほど自分の巨根を恨んだことはない。
こんなものを俺は使っていたのか。
「――おぉぉ~デカイのが入っているのがわかりますか? この山岸剛司のチンポが、ズンズン入っていってますよ」
ヤクザが自分の口調を真似て、自分のように肉棒をグイグイと押し付けてくる。
わかる。
わかるに決まっている。
こんなデカさ。
こんな……奥に奥に入ってくる凶悪なチンポ。
ああ、私が私に犯されている。
チンポとケツ穴ががっちりと絡みついている。
「ハァ、ヌ、う、はぁぁぁぁっ!」
尻の奥ズンズンと突き上げて、私は仰け反り大きく叫んだ。
「う、うっぉ……いい、イイィッ!」
苦悶する私と対照的に、私を犯すヤクザはキモチが良さそうだ。ケダモノのようなうめき声を上げているのが聞こえる。
ああ、なんて声だ。
しかし、これでいい。
コレで終わる。
これでもとに戻る。
これきりだ。
すぐに終わる。
「「ハァ、ハァ、ン、ハァ……ハァ」」
密着した体同士、荒い息遣いだけが二人の間で響いた。
興奮が体温となり、体温が汗となり私の肌にポタポタと垂れてきた。
自分と同じ姿の男が、男同士絡み合っている。境界が曖昧になってくる。汗だくの筋肉が、熱された肌と肌が、ムッチリとした脂肪が、境目がなくなるほどにグチョグチョに絡み合う。
「ああぁ、私のデカマラがこんなに感じるなんて、ああ、デカすぎる、気持ちいい、ケツが気持ちいい!」
これは私の声ではない。
私を犯しているくせに、犯されている私の声を代弁してヤクザが喋っているのだ。
「あ、わ、私の何を知っている……! そんなことを、考えていない!」
「早くイケ、イッてしまえ……!」
「なんだなんだ、ハハッ、そんなに私の種汁がほしいのか」
「ば、かをいえ……! そんな、あぁ、ク、おぉぉお気持ちいい!」
「おお、締付けが強くなったぞ、そんなに興奮したんだなあ」
ヤクザが私を代弁するせいで、もはやどちらがなにを喋っているかわからなかった。
頭を使わずに声が出る。脳を通さず言葉が出る。
これは人間の声ではない。ただ興奮と快感と焦燥で、獣のように吠えているだけだ。
「あ、ぐ、あぁぁあ、ケツが、ケツが感じる」
「ああぁ、私は、犯されて感じる、犯して感じる、ホモセックスで感じている!」
「ハァぁチンポ、チンポが、チンポがすごい、すごすぎるッ!!」
ああ込み上げてくる、強烈な突き上げだ。
ああ、まずい。
なにをやっている。そうだ。イかせるんだ。イくわけにはいかない。もっとケツを絞り込り、腰を振って、先にイかせるしかない。誘ってでも、無様でもなんでもやるしかない。私を取り戻すんだ。
「そ、そうだ、わ、私は、自分とのセックスが興奮するんだ、ああ、感じる!」
「ああ、もう効いてきたか、先走りがたっぷり中にはいってきたもんなァ」
唐突に。
降ってきたのは、ヤクザの口調だった。
「―――え。な、ナニを……言っている」
「精液を上から飲めば、姿が写る。それが、契約だ」
私を押し倒す私の顔は、見たこともない邪悪な笑みを浮かべていた。
「口で飲めば姿が貰える。そう。でも、精液を下から入れても同じ契約とは……、俺ァ説明してねえよ、なあ」
なんだ、一体何を言っている。
中出しされたら、そうしたら姿が戻るんじゃないのか。
「さて、しっかりと説明、致しましょうか」
男は再び、私の口調に戻って朗々と語りだした。
「この魔方陣に書いてある契約というのは、実は2つありましてね。上から体液を摂取したものは肉体を得る、では下からは……? 下から体液を摂取すれば心を得るというのが、この魔方陣に書いてある契約なんですよ。まあ、実際なんて書いてあるかなんてのは、私も読めないんですがね」
「………」
「そう、つまり、私に中出しをされたら、あなたは私の心や価値観を植え付けられるということです」
「あ……なっ、えっ…………」
「私の価値観。そう、この山岸剛司のような姿に興奮し、体を乗っ取った相手の命令に服従するのが大好きで、我々の組の忠実な構成員として働く、その心が、あなたにも……どっぷりと植え付けられるわけです、この種と一緒にね」
「…………」
声が出なかった。
ニヤニヤと笑う自分の声を顔を見ながら、私は呆然とただ犯されていた。
逃げ出さなくては。
感情が悲鳴を上げる。だが、頭では分かっていた。
逃げられない。
なにせ、相手は私だ。
同じ体格同じ力、そして、上をとっているのは私だ。
このまま中出しされる。
契約される。
心や価値観が写り込む。
この見た目の自分に、自分の姿を乗っ取った相手に命令され、それに従うようになる。完全に人生を奪われるのだ。
「――やめて………く」
「さあ出すぞ、全部出すぞお、これで一緒だ、私たちは、ハハッ、同じ変態ホモ親父の山岸剛司になるんだ」
「ああ!!!!! ぬあぁぁああああああああやめてくれ、やめてくれええ、中、中だめだ、出さないでくれええええ!!!」
「ハハハ、大丈夫だッ、すぐに良くなるぞ、さ、さあ出すぞッ! 私の中に全部、全部出すぞおッ!!」
「ああ、入ってくる、入ってくる、やめてくれえ、やめてくれ、私は、ああ、変わらないぞ、そんな、そんなものには……決して、かわらな、あぁぁ―――」
悲鳴はそこでとまった。
中に、入ってきたのだ。
「あ、あ」
色々なことが変わっていく、急速に変化していく。
ああ、流れ込んでくる。
私が、あのヤクザの思考、価値観、性格、過去、ああ混ざる流れる、とろける
なんて気持ちがいいんだ。脳が輝いている。あの紫色に。
契約だ。成立してしまった。抵抗できない。頭がどんどん鈍くなっていく。
目の前の私が、最後に嬉しそうに嗤った。
「さあなにをするかはわかっていますな、ハハ」
私の次の返答は、決まっていた。
カメラが回っている。これは録画ではなくライブであることが今ならわかる。知っている。このホテルがなにかも、この組がなにかも。すべてわかる。すべて終わったことなのだ。
「あぁ……」
私は恍惚の表情でカメラのレンズを見つめた。
その向こう側にいるお方を頭の中で『思い出し』とろけるような快感を感じていた。
「さあ、ほら……」
「はい……はい、します、なんでもします……」
私はすぐ真横にいる自分の顔を見つめ返して微笑んだ。
「私、山岸剛司は、自分の姿を奪い取った相手のチンポに……自分のチンポに完全に堕とされてしまいましたッ。これより先の人生は、自分を騙る偽物の発言に服従する喜びを感じながら生きていたく思います。だからどうか、ン、ハァ……会社員を仮の姿として、皆様の組織のお役に立てるよう、自分の体と……自分の姿を……組織に役立てたいと思いますゥ……!」
自らの姿を複製したヤクザと肩を組み、ニッコリと笑い剛司は言った。
あぁ、自分の唇とキスをしている。興奮する。男同士どころのはなしではない。こんなガチムチの男臭い自分自身と交尾したがる変態だ、私は。
「あぁ、わ、私は変態だ」
「ああぁ、私は、変態だぁ」
どちらがより酔いしれている声なのかはもうわからなかった。どうでもよかった。
『あぁぁ、私のチンポが、チンポが、飲み込まれていく……! あぁ、私のケツは、こ、こんなに気持ちよかったのか……!』
『ハァハァ、どうですかあ、自分の姿を完全に一緒になった男のケツに種付けするのは気持ちいいですか!』
『は、ハイ、気持ちいいです! 気持ちよすぎて、も、もう、やめられないッ、あぁぁ!』
モニターがずらりと並んだ部屋に男がいた。
山岸剛司という名前の筋肉質なサラリーマンが、見せ付けるように絡んでいるのが見える。完全に堕ちた姿だ。部屋に入ったときとは姿も立場も淫らさもなにもかも変わってしまった山岸剛司。あの男はもう身も心も組のものとなった。
「これから先、一生自分の姿に興奮できるんだから、アイツは幸せモンだなぁ」
男はゴツい顔でニヤけながら言った。
「これで405号室も完成だな。さて307の方はどうだ」
そのまま視線をずらりと別のモニターに向ける。
『お、オレが、オレが本物だ、どうなってやがるんだ、真似をするんじゃねえ!』
『オ、オマエこそ、なんだ、クソ、俺の声でしゃべるな! しゃべるなあ!』
『早くイけ、イけよ! オレの体を返せ!』
『何いってんだ、オマエこそ』
制服姿のニキビヅラの高校生が、ムッチリとした体を重ね合わせながら短いチンポを必死にこすり合わせている。
少し目を離しているうちに、どちらがもとの姿で、どちらが構成員だったかわからなくなってしまった。
だが、どのみち問題はなさそうだ。
あの表情、かなり混ざってきている。
高校生の性欲に負けて、じきに中出しが行われるだろう。
『うぅ……ハァハァ、ケツ、ケツが……感じちまう、キャッチャーのケツって、はは、すげえ感じるんだなぁあ』
『う、うるせ、は、早く、早くザーメンよこせ……俺の体、ああぁぁ、俺だけの体……』
『あぁそうだよなあキャッチャーは体が資本だもんな、あぁぁ、イイガタイだなぁ俺ってよぉ』
『俺、俺じゃない、オマエは俺じゃな、ンンンッ、ケツ、ケツが、あぁぁッ!』
もう一つの部屋では、テレビで度々顔を見るキャッチャーが、二人そろってケツを刺激しあいながら肉棒をベロベロと舐め合っている。
この映像だけで、出すところに出せば相当な額が稼げるだろう。
まあ焦ることはない。ケツをイジられながらの69だ。このキャッチャーもザーメンを尻に流し込まれて、じきに契約が完了するだろう。球界の契約よりはるかに重く強いものが、今後の彼を支配するのだ。
『それで、わしたちをどうするって言ってたっけ、お巡りさんよ』
『な、ナニを、わしは、わしはお前たちの、こんな契約だかなんだか知らんが、そんなものには負けんぞォ』
『そのとおり、わしは任務なんて忘れて、自分の厳つい角刈り顔と交尾するのが大好きなんだぁ』
『――ハァ……あぁぁ……やめろぉその顔をわしにむけるの、あっぁぁ……ンン――』
組に対して攻撃的だった警察官もすでにとろとろになっている。
あの欲望に飲み込まれた顔。雄汁が完全に馴染んで、契約が進んでいる。制服姿の自分とグチョグチョに絡み合うのが大好物、といった顔だ。
「どいつもこいつも、クク、簡単なもんだぜ。なあ、そうだろう。オマエも……そうだったもんなァ??」
男はそうイイながら、すぐ下に目をやった。
自分の肉棒をケツの奥まで咥えこんだ屈強な大男がいた。
たくましい背中の紋紋、厳つい顔立ち、ゴリラのようにマッチョな体格の大男だ。
それは、モニターを眺める男と全く同じものだった。
「嬉しいだろう。嬉しいはずだ。自分の顔もガタイものっとられるだけじゃなく大事な『組』までのっとられて、イイように使われて、だいっきらいだったはずの変態ホモ野郎の組織に改造されて……。ああ長年の俺の夢そのものだ……つまり……だ。今はオマエの夢でもあるんだもんなァ、なあ俺よォ」
「あ、あぁぁ……あぁぁたまんねえ……、自分のチンポに犯されてるだけで、ああぁ、頭ふっとぶ、頭が、ああぁあ、俺は、俺ァ『カシラ』なのに……あぁあだ、だめだぁぁホモ野郎になっちまうぅぅ」
「かつてはマトモなヤクザの若頭だった男。ホモに対して蔑視の感情さえ持っていた男が、今ではこうだもんなぁ、ああすげえ興奮するぜえ、オマエのガタイと真珠チンポ、何発でもイケて最高だあ。オマエもそう思うだろ、オイ、返事しろ、オイ」
「あ、ああ、ハイ、ハイ、あぁぁあ俺のチンポ感じる……感じちまうぅぅッッ!!!! 俺、ホモ野郎になっちまうぅぅうッ!!!」
『あぁあ、自分のチンポと兜合わせ、さ、最高すぎる、あぁ、私はなんて変態のホモなんだ』
『オレ、オレ、なんでだよぉお……ハァハァ、小さいチンポ感じる、感じるゥ』
『あ、あ、入ってくる、俺の中になにか、入ってくる、契約、契約ってなんだよぉお、俺、あ―――』
『わしは、わしのケツアナが、こんなにエロいなんて、あぁぁ……気づいてしまったぁぁもうもう駄目だああ』
「俺、俺は……ぁぁ変態ホモ……てめえの真珠入りチンポに犯されて、おっおっおかしくなる変態ホモヤクザァ……」
いくつのも声がホテルの中で、二重になって響いている。
どこの誰とも知らぬ男に乗っ取られた組は、こうして次々に男を乗っ取って構成員を増やし続けている。そして同時に同化していく。
「どんどん契約して、バンバン増やしていくぜえ……! 俺たちをよぉお……! ん、人間の種類で言えば、減らしていってるのか、まぁ、どっちでも同じこと、か。ガハハハッ!!」
元の自分の声形など完全に忘れた男は、嬉しそうに元若頭の中に雄汁をぶちまけ、高笑いを続けるのだった。