お絵描きメモ第9回 セットアップの話 (Pixiv Fanbox)
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雑記で書こうとしたカテゴリですが、内容の項目が多くまとまりきるかわからなかったのでお絵描きメモにすることにしました。
今回は最近うまく機能している自己流「セットアップ」について書いていきます。
これまで数年に渡り制作やクオリティに悪影響を及ぼしている、自分の中にある原因不明の精神的な迷いや悩み「イップス」をなくすために、様々な考え方やルーティンを試して記事に共有してきました。
いわば、どういう習慣を実行するかというものでしたが、
つまるところ「イラスト制作前にどれだけ適切なセットアップを完了しているか」に尽きるのだ、という考えに至りました。
つまり実際に制作しながら力づくで改善していくという荒療治なのではなく、その前の準備ができているかどうかの問題だったのだと思います。
これは陸上競技でのクラウチングスタートに似ているかもしれません。
これができると全力で走る(制作する)ことができるようになり、制作中は迷わず非常に快適でラクになります。
「セットアップ」は自分なりの単語なので確たる方法論は出来上がっていませんが、大きく分けて以下の2種類のセットアップがあると思います。
●普段の日常的な制作姿勢を作るセットアップ…習慣の問題
●一枚一枚のイラスト制作ごとに必要なセットアップ…資料や下調べの準備・制作テーマに意義を見出せるかの問題
前者は日ごろのルーティーンから形作られ、後者はイラスト制作にそのつど必要な準備時間ともなります。
確たる方法論も出来ていなければ、セットアップの完了基準も判断が難しくもありますが、現状それらを形成する方法となっている考えなどを挙げていきたいと思います。
以下は様々な角度からアプローチしている、いわば現在の自分なりのセットアップのレシピとも言えます。
セットアップのレシピ(順不同)
●無意識・得意・リラックス
●夜練習と勉強になる絵をじっくり見る
●素直さ
●ハイ&ロー
●恐れという物語
●よい物語をつくる
各項目について解説していきます。
●無意識・得意・リラックス
イラスト制作では依頼においてもこの三点ができているのが理に適っていると考えます。
すなわち「無意識に・得意なものを・リラックスして」描けるという状態です。
これは理想というより、標準的にできていなければまず話にならないというレベルと捉えています。
「無意識」とは以前の雑記でも紹介した動画から触発された考えになります。
そしてそれに基づいて自分なりの考え方を下記リンクにまとめています。
2023.02雑記と進捗2
今月もご支援いただきありがとうございました! 本当は中旬に更新したく下書きを残していましたが、それらを改訂しつつ進捗を載せていきたいと思います。 時間の関係でできなかった振り返りは3月上旬にやりたいと思います。 ■朝型ルーティーンの話 今月9日から朝方の生活になり、心身ともに好調で充実感を覚えていました...
「得意なもの」…これはそのままの意味です。
何かに書かれた言葉で、「苦手なことを克服するより得意なことを伸ばした方がいい」というのを見て考えさせられたことがあります。
「リラックス」…これは定義が曖昧な言葉でしたが、こちらも為末さんの動画で腑に落ちる考えがありました。
動画では筋肉におけるリラックスの話ですが、自分ではそれを「精神的な領域」で置き換えています。
要約すると「余計な部分に力が入っていない状態」を指します。
この無意識・得意・リラックス、当初は目指すものとして考えていましたが、
どちらかというと「上手くセットアップができているかの判断基準」にしやすいと思います。
●夜練習と勉強になる絵をじっくり見る
これも以前の雑記に書きましたが練習を夜、寝る前に移行させました。
2023.02雑記と進捗2
今月もご支援いただきありがとうございました! 本当は中旬に更新したく下書きを残していましたが、それらを改訂しつつ進捗を載せていきたいと思います。 時間の関係でできなかった振り返りは3月上旬にやりたいと思います。 ■朝型ルーティーンの話 今月9日から朝方の生活になり、心身ともに好調で充実感を覚えていました...
一回の練習でポーズマニアックスの30秒ドローイング1~2セットと写真模写1枚。
これは頭の中と感覚で絵を描く準備ができる状態で床に入り、就寝によって体力と気力が回復して起床後にいつでも絵を描ける状態に持っていく良いセットアップでした。
朝や日中の練習だとそこで幾分か体力と気力を持っていかれてしまうので効率の違いを実感しました。
この練習に加え、インプットとして勉強になるなあと思った人の絵をじっくり眺めています。
10年程前と比べ、ネット上で神絵師と呼べる存在は爆発的に増えたのでインプットには困りません。
このインプットは朝と寝る前で一日2回やっています。
↓twitterで活用している秘密のリスト
●素直さ
上記の人の絵を見るというのは勉強のためのインプットですが、
イラストに必要な資料を見るのもインプットになります。
いずれにしても視野が狭かったり、先入観が凝り固まっているとインプットの質が圧倒的に悪くなります。あまりに簡単に何かを拒絶したり、選り好みをしてしまいます。
それでは損をする可能性もあります(しかもその事実にすら気づけません)。
そこで大事になってくるのは何かを見るとき・聞く時の「素直さ」だと気づかされます。
よけいな感情を込めずただ対象を見る・聞く。
そこで得られる感触や着想は大きく返ってきます。
この姿勢をちょっと自分に正しただけで、日常にありふれたものに変化を感じられるようになります。
年齢を重ねると、知らず知らずそのことを忘れてしまいがちです。
今一度素直に立ち返ってみてはどうか。そう自分に問いかけるようにその姿勢を正すことも意識しています。
●ハイ&ロー
上記の他人の絵を見るインプットというのは、ある種の高揚感をもたらします。
あえて言えば「ハイな高揚感」。
その高揚感を強く覚えたのは10年以上前にSNSで絵を投稿し始めていた時でした。
未知のいい絵を描く人がいっぱいいるというワクワク、高揚感。
それが自分で絵を描く原動力の一つでした。
一方で上記に挙げた「素直さ」で日常的にインプットすること、
これは日常のありふれた風景の中に発見や変化をもたらしてくれます。
そういうちょっとした喜びを感じさせてくれることはあえて言えば「ローな高揚感」。
低い姿勢、低い視野の中で見出す秘かな高揚感と言えます。
この2種類の高揚感を持つことが制作をする上でとても大切だと今は考えています。
●恐れという物語
これまた為末さんの動画からですが、日々抱える癖のある見えない不安を的確に言語化した話がありました。
要約すると実際に起こっている危険と、自分が感じる恐れは別物であり、恐れは自分が作り出した物語であるという認識の話です。
これは日ごろから物凄く思い当たるものがあり、確かに自分は見えない不安という恐れの物語を作り続けていました。
遡ると自分の実家がそういう環境で、否定的・悲観的な物語をつくるのに非常に適した場所だったと思います。
●よい物語をつくる
上の話から、自分の認識を変え不必要な恐れという物語を作ることをやめ、
転じて「よい物語」をつくる習慣を手に入れることを意識しました。
「よい物語」…何かを見た時に感じる単純な好奇心や未知の連想、そういったポジティブな着想であればなんでもいいと思います。
日常に新たな着想や視点を与えてくれ、あらゆる点を線にしていく可能性を持っています。
先に挙げた「素直さ」や「ローな高揚感」がその下地となり、絵を描く・インプットする上でそれまでの視点や考え方を大きく好転させてくれます。
ひとまずざっくり並べましたが以上です。
若さなどの要因で突っ走ることができるのであればそれに越したことはないですが、
今の自分は無手で何事にも挑むのはあまりに無謀に感じます。
こういった丁寧なセットアップ・習慣を絶やさないことで、間違った姿勢での制作をかなり回避できるのではないかと思います。
セットアップの仕方も少しずつ必要に応じて変えていくと思います。