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「は、ああ、ああん――」

 衣擦れ。洋子の喘ぎ声にも似た、深く艶めかしい吐息。続いて始まるぱしゃぱしゃと打ち付けられる水音。

「あああああ、いい、いいよぉ、きもちいいー。康一クン、康一クン、聞いてるう? サイコーだよお。ガマン勝負にバッチリ勝ってえ、ちゃーんとガマンしてたおしっこをトイレでするの、ほんっとにサイコーだよお」

 そして、我慢の末の放尿に伴う、開放感に蕩けた声。その全てが康一の鼓膜を、いまだ重い重い荷物から解放されていない膀胱を、刺激する。

「あっ、あっ、ぼ、僕も――僕も、させてよぉ。おちっこ、おちっこさせて、はや、はやくぅ」康一はあの日と同じように、扉を開放したトイレの前で『お預け』を喰らっていた。しかも、すぐ目の前で、勝者である洋子がトイレを堪能する姿を見せびらかされながら。「あっ、う、ま、また、で、でちゃう、おち、おちっこぉ」

 じわわわわわ。

 指で摘んでいてもお構いなしに、おちんちんの根元から先っぽまで熱い液体に満たされる。指に両側から挟まれ、ひしゃげて狭くなった出口を縫って、次から次へと熱い液体が溢れ出してくる。

「あ、ああああ……」

 洋子の放尿音に触発されて、康一はズボンの中で新たな粗相を始めてしまっていた。急いでトイレに駆け込もうにも、トイレには洋子という先客がいる。洋子の後にトイレを利用する予定の美々もいる。康一の道を塞ぐ笹川達もいる。康一はなすすべもなく、トイレできちんと済ませる幼稚園女児の姿を眺めながら、指を食わえて、ズボンの中で本日何度目かも知れないおちびりの味を味わうしかない。

 ――ぱた、ぱたたたた。子供が駆ける足音に似た音を立てて、汚れた水滴が床に落ちる。

「あー!」洋子が勝ち誇るように大声で騒ぐ。「康一クン、またしてる! おもらしおもらし! あははは、いい気味ー。ほーらほら、うらやましいでしょー。洋子はちゃーんとおトイレでやってるんだよお。と・こ・ろ・で、康一クンは、いったいどこでしてるのかなあ? ねえねえ、まさかぁ、六年生にもなってぇ、パンツの中、じゃないよねえ?」

「どうして、すぐにやっちゃうのお、康一クン?」美々が後ろを振り返り、おかしそうに苦笑する。「どうして、いつも、ちゃんとおトイレまでガマンできないのお?」

「ほんとほんとー。洋子がこれだけ見せびらかしても、みーちゃんはちゃーんとガマンしてるんだよお? 康一クンも見習いなよー」

「ふふふ。康一クン、よーちゃんがおトイレでしてるの見ながらおしっこおもらし、きもちいいー? あ、なんか、ふるえてるー。きもちいいんだー。康一クンはよーちゃんと違って、おトイレでやってるんじゃないんだよー? おズボンの中でおもらし、しちゃってるんだよー? わかってるのー?」

 ぽたぽたぽた、と返事をするようにおしっこの雫が床に落ちる。洋子がけたたましく笑う。美々も笑う。笹川達も笑う。

 洋子の番がようやく終わっても、地獄の時間は終わらない。次は洋子と交代でトイレに入った美々が、はにかみながら便座に座り込む。そうして、新たな『見せびらかし』が始まる。

「あ、ううん、ふううううう」

 洋子の時と同じことが、また最初から繰り返される。康一はもう何も考えられなかった。もはや、水を堰き止める力をほとんど失った性器の先端を、真っ白になるまで指で締め上げる。上体をいっぱいに逸らし、腰をくねらせ、足を踏み鳴らして。身体の内側からやって来る責め苦を紛らわせるために、全身をめちゃくちゃに動かしながら、ただただ、待ち続ける。乞い願い続ける。この耐え難い『見せびらかし』の時間が、早く過ぎてくれることを。そして、自分が便器に跨がれるその時が、一刻も早く訪れることを。

 しかし、その時がまだ訪れないうちに――もう何度目かもわからない、新たな温もり。ぽたぽたと垂れる水滴。女の子達の嘲笑。

「もうっ、康一ちゃん、女の子の家でおしっこなんて垂らして! やめなさい、そんな恥ずかしい格好!」

 洋子がした康一のママの口真似。それを聞いた瞬間、康一は朦朧とした意識の中、見慣れたママの姿を想い描いた。厳しく寄せられた眉根。苛立ちを秘めた口元。

「そうよ、康一ちゃん!」笹川が笑いながら後を受け継ぐ。「おしっこの失敗ばっかりして! 赤ちゃんじゃないんだから、ちゃんと大人しく順番待ちしてなさい!」

 実のところ、康一は今までも、十二年の人生を通して何度となくおしっこの失敗をしてきた。学校でしてしまったこともあった。布団の上でしてしまったこともあった。トイレのこと以外でも、ママの要求はいつも高かった。それゆえに、常に康一を叱った。恥ずかしい恥ずかしい、と口癖のように言った。

 今の姿をママが見たら絶対に許さないだろう。康一は思う。今、このままおもらししてしまうかどうかには関わりなく、ママは女の子達にいじめられるだけでは飽き足らず、失禁の危機にまで瀕している現在の康一の姿を恥と感じ、激しく糾弾するだろう。そのことを想った瞬間、康一はたまらなく悲しくなった。口内に苦みが広がり、涙がこみ上げてきた。

 地面を激しく踏み鳴らしながら、思う。

 こんなにも必死で頑張っているのに、ママは誉めてはくれない。恥ずかしい恥ずかしい、と叱られるばかり。

 こんなにも懸命に耐えているのに、女の子達は許してはくれない。恥ずかしい恥ずかしい、と意地悪く笑われるばかり。

 誰にも誉めてもらえない。誰にも許してもらえない。

 誰にも、わかってもらえない。僕はこんなにも頑張っているのに。耐えているのに。

 そう考えた瞬間、切なさに胸がきゅう、と締め付けられる。

 康一の中で一瞬だけ、「おもらししてもしなくても同じ」という諦めの想いが生まれて――。

「はああああ、すごい。おしっこ、きもちいいよお。こんなにしたがってるのにさせてもらえない康一クンの目の前で、美々だけさせてもらえるの、ふふふふ、とっても、とっても、きもちいいよお」

 美々の放水の悦楽に浸り切った声と、しぃぃぃぃぃぃ、ちょろろろろろ、という軽やかな水音も重なって――。

「あぁ……ご、ごめんなさい、ママ、ママ……ぼく、ぼくぅ……」


 地獄の時間が、終わりを告げた。

 天国の時間が、やってきた。


 股間にあてがった手の奥で、じゅいぃぃぃぃぃぃぃ、という盛大な放出音が生まれて。

 先端を挟んでいた指の戒めが水圧に押し広げられて緩み、股間を中心とした下半身だけぬるま湯に浸かったような、えも言われぬ心地良い感覚に包まれて。

 女の子達に屈辱的な落書きを施された男の子の証が、苦痛の元凶となっていた自尊心羞恥心社会的規範その他全てのおもらしを禁じる制約を失う。そうして、ついに、その場にいる女の子達への完全敗北を認める本物の失禁を始めた。

 ばしゃばしゃばしゃ、と康一の足元にだけ盛大な雨が降る。勢いはこれまでとは比較にならないほどであり、見る間に大きな水たまりが形成されていく。

「わあー!」最初に興奮を声に表したのは、やはり洋子だった。わざとらしいほどの大きな声で騒ぎ立てる。「康一クン、やっちゃったあ! ほんとのおもらし、ほんとのおもらししちゃってるー!」

「あららら、結局、またここでしちゃったんだあ」笹川が掃除のことを考えてか、苦笑いを浮かべる。「ざーんねん。惜しかったねえ。もうちょっとだったのにぃ」

「もうっ、いきなりおもらし始めないでよ。女の子におしっこひっかけるつもりぃ?」泉が嘲りの色を口元に浮かべながら、自分に被害が及ばないよう大袈裟に身を引く。「あーあ、ズボンの中で気持ち良く『しーしー』言わせちゃって。なっさけないのー。幼稚園児になんて絶対に負けないんじゃなかったのお? 相手にならないほどの、ひっどい惨敗なんですけどー」

「ふふふ、でも、ほーんと。すっごく気持ちよさそうな顔してるう。おもらしなのに気持ちいいんだあ」森本が嬉しそうににこにこして言う。「もしかしたら、おもらしだからこそ、だったりしてー。康一くん、何度もパンツの中でおもらししちゃってるから、もうクセになってきちゃってるんじゃない? あーあ――、ヨダレまで垂らしちゃって……おズボンの中でじゃあじゃあおちっこおもらしできて、良かったでちゅねー」

「康一クン、おトイレに間に合わずにするおもらしが気持ち良いんだー……」美々が滑稽なものを見るように失笑する。「あはっ。なあに、それ。かっこわるーい。そんなに気持ち良いのなら、これからも毎日そうやって、おトイレ前でおもらししたらぁ?」

 嘲笑の渦の中心にいながらにして、康一は、しかし、いまだ天国にいた。苦痛に満ちた忍耐から、野放図な解放へ。突如、忍耐から解放へと切り替わった時の振り幅の大きさは、想像を絶するものがあった。限界失禁の、脳が焼き切れるほどの暴力的な快感は、康一の全ての感覚を狂わせた。股間いっぱいに広がるおもらしの汚辱に満ちた幼児的な温もりも、身に着けている衣服を台無しにする不潔な液体が脚を伝い落ちる感触も、女の子達の嘲りに満ちた反応にさえも、康一は奇妙な心の慰めを見出していた。

 ああ、また、笑われちゃってる。情けなくて恥ずかしくて切ない――。しかし、おもらしに伴う絶大な開放感が本来あるべき境界を侵食し、それらの負の感情にすら染み込み、快感の色に染め上げていく。ちょうど、漏らしてしまった尿が、衣服を濃く染めるようにして。

 情けなくて恥ずかしくて切ない。でも、と新たな要素が付加されてしまう。でも、どうにもならないほどに、心地良い。

 壊れた蛇口と化した下半身の放水に、康一は身を委ねる。おもらしに、恥ずべき大失敗に、その身全てを委ねる。

 禁止され続けてついに限界を超えてしまった排尿は、終わる気配を見せない。康一は女の子達の前で、女の子達に決して見せてはいけない姿を演じ続ける。女の子達にいじめられて、自らの排泄物で衣服をしとどに濡らす、言い訳一つ利かない、男の子として最低のおもらし劇を。


 ぴちょん、ぽちょん、と。間抜けな音を響かせて、最後の数滴が水たまりに落ちて。

 ようやく、トイレ前からほとんどの音が失われた時だった。

 笹川が不意に、手拍子と共に歌を歌い始めた。

 泉が続き、森本が追随する。そして、幼稚園児二人もそれに合わせる。

「ハッピバースデイトゥーユー、ハッピバースデイトゥーユー……」

 五人が声を合わせて歌うのは、誕生日を祝う歌。

「ハッピバースデイ、ディア、康一くーん。ハッピーバースデイトゥーユー」

 ぱちぱちぱち、と拍手される。

「お誕生日おもらし、おめでとー。康一くん」笹川が言った。くすくすくす、と全員の笑い声が合いの手のようにして入る。どこから持ち出して来たのか、笹川からラッピングされた箱を手渡される。「幼稚園児にも負けちゃったおもらしくんには、はーい、このプレゼントだよ。あははは、残念でしたー。もしも勝ったら、私達全員から素敵な勝利のキスをプレゼントしてあげたのになー」

 いまだ夢見心地の康一がプレゼントを受け取った状態でまごついていると、森本がフォローを入れてくる。

「ああ、おしっこで手が汚れてるから、開けられないんだね。しょうがないなあ。私が開けてあげる」

 森本が勿体ぶった仕草で、箱のラッピングを解く。その中から現れたのは、青いパッケージの特殊な包装をなされた商品。

「じゃじゃーん。はーい、これは何でしょうか」

 いまだ失禁の衝撃から脱却できていない康一にも、それは容易に認識できた。

 女の子達からのプレゼント――それは、男児用の布オムツと布オムツカバーのセットだった。

「康一くんへの12歳のお誕生日プレゼントはこれ――そう、オ・ム・ツ、だよ。あははは、どーお? 嬉しいでしょお? お誕生日に同級生の女の子から布オムツもらえて、とっても嬉しいよね。昼も夜もしちゃう康一くんには、絶対に必要なものだもんね」

「きゃー、ほんとにオムツだー」洋子が目を輝かせた。「すごーい、康一クン、お誕生日プレゼントに女の子からオムツもらうんだあ。うらやましいなー。きゃははは、やあい、オムツオムツー」

「えー、康一クン、オムツするのお? はずかしー」美々も華やかに微笑む。「そうだよね、康一クン、おねしょもおもらしもしちゃうんだし……今日からは寝る前にちゃーんとオムツ当てないとね……ふふふ、かっこわるーいオムツクン」

「洗って何度も使ってねー。毎晩、ちゃーんとそれ着けてお布団に入るんだよ。治るまでいつまででも、ずうっと、使ってくれていいからね。あ、そうそう、着ける時にはいつも私達の顔を思い出してくれたら嬉しいな。同級生の女の子にもらったオムツをちっちゃーいお子ちゃまおちんちんに当てて、同級生の女の子に小馬鹿にされて笑われちゃってるーっていう恥ずかしい口惜しい気持ちを噛み締めながら、毎晩その中で情けなーくおねしょしちゃいなさい」

「あ、じゃあ、洋子からも洋子からも!」洋子が快活に手を挙げて言った。「うちにねえ、洋子が使う予定で、お母さんが買っちゃった紙オムツとかそのまま残っちゃってるの。あたし、おもらしもおねしょもすぐに治っちゃったから。お誕生日プレゼントとして、康一クンにぜーんぶあげる!」

「あ、うちもあるー。美々からもあげるね」

「よかったねー、康一クン。嬉しいでしょお? 洋子とみーちゃんのお下がりオムツの中で、思う存分、しーしーしちゃってね。きゃははは」

 康一は何も言い返せなかった。女の子の家で再度おもらししてしまった時点で、康一の中から現状に抗う意思は完全に失われていた。

 しゃがみこんで、顔を伏せて、こぼれる涙をそのままに。康一は、泣いた。女の子達の残酷な声は、しばらく止むことはなかった。

Comments

エックス

康一君はこれでおもらしの方が気持ちいいことを体に教え込まれてしまいましたね…。 洋子と美々にも新しい性癖が芽生えそうですよねこれ。

無能一文

いつもコメントありがとうございます。 まあ、お互いに、色々と芽生えているのではないでしょうか。 なんせ、おもらしって大事件ですからね。後々の人生に甚大な影響を与える、運命の瞬間。そういう役割をも担えるパワーを秘めているのです、多分……。

Anonymous

幼稚園児達に負けちゃった康一クン… 同級生や年下お姉さんにオムツされちゃいなさい(^^♪