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『──なりたいキミに、いつだってなれる~』


 ワイヤレスイヤホンを通して聞こえてくる、何百回と聞いた女性シンガーの歌声。その透き通ったような声を搔き消すように、ホームに電車が乗り込んできた。

 中途半端な時間帯だったせいか、電車に乗り込むと、車両内はガランとしていた。中にいたのは、腕を組んで貧乏揺すりをするヤンキーに、泥酔して頭をフラフラとさせている髪の毛の薄い中年男性、それと真っ黒に日焼けしたユニフォーム姿の高校球児だけだった。


 助かった──。心の中でそう独り言ちた桐生英人(きりゅうひでと)は、空いている座席にドカッと腰を下ろした。その瞬間、パンパンに張った足が小刻みに震える。大学の柔道部で酷使された太腿の筋肉が、悲鳴を上げていた。


(あ~……、今日もしんどかったぁ……)


 汗だくになった体をシートにもたれかけさせながら、英人はぼんやりと天井を見上げた。大学に入ってからの二年間で、自分の体は随分変わったと思う。特に顕著なのは、下半身だ。太腿と尻の筋肉が付きすぎて、ズボンのサイズは入学時から、ツーサイズ上がってしまった。


 それに体重も、大学入学前からそれなりにあったものの、かれこれ二十キロ以上も増量している。さらには成長期もなかなか終わらず、身長のほうまで入学してから五センチほど伸びてしまい、今では百九十センチだ。その辺りに関しては全面的にコーチや監督に感謝してはいるが、なにぶん練習量が多すぎる。今日もヘトヘトになるくらい走り込みをさせられ、そのうえ乱取りを二時間近くやったのだ。

 しかも相手は警察OBやら、実業団選手やらときたものだから、手加減など一切ない。人目がなければ、このまま座席に横になりたいくらいだ。


 目の前の座席に座っている高校球児をなんとなしに見やると、彼もまた疲れ切っているのか死んだ魚のような目をしていた。もしかすると、目を開けたまま眠っているのかもしれない。


 気持ちは分かるぞ、後輩──。そんなことを思いつつ、英人は小さく苦笑する。同じように鍛え上げられた肉体を持つ者同士だからこそ、共感できることだ。だが、この程度でへこたれてはいられない。近々ある大会に向けて、これからさらに追い込みをかけていく予定なのだ。そのためにも、少しでも英気を養おう。そう考えた彼は、降車する駅までの間と思いつつ、ゆっくりと重くなったまぶたを閉じた。



***


『当車両は、肉体乗り換え車両となっております。お乗り換えの際には、【快感】にご注意ください──』


 いつの間にか、ぐっすりと眠っていたらしい。車内アナウンスによって目を覚ました英人は、垂れていた涎を拭って、キョロキョロと辺りを見回した。窓の外がやたら暗い。夜だから暗いのは当たり前だが、月明かりも街の灯りもない暗闇が広がっている。どうやらトンネルの中に入っているようだ。


(寝過ごしたかな……?)


 慌ててスマホを確認すると、まだ降りる駅まで少しある。ほっとした英人は、もう一度視線を前に向けたところで、違和感を覚えた。車両内は相変わらず人気がないというのに、なぜか自分の前には先ほど座席に座ってウトウトとしていた泥酔親父が立っている。

 そして、高校球児の前には、ヤンキーが両手に吊り革を持って立っていた。どこか薄ら寒い雰囲気を感じ取った英人が顔を上げると、泥酔親父がグヒグヒと気味の悪い笑い声を漏らした。


「なんだよ、オッサン」


 思わず睨みつけるようにガンをつけると、男はニヤリと口元を歪めた。


「お前さん、良い体してんねぇ……。気に入ったよぉ、そのカッコいい顔と筋肉……、おじさんが貰っちゃうよぉ?」


「はあ?」


 このオッサンは、何を言っているんだ?! 英人は反射的に立ち上がろうとした。だが、まるで何かに押さえつけられているかのように、体が動かない。それどころか指一本動かすことができず、ただ口をパクつかせることしかできなかった。理解が追いつかず、額から脂汗が垂れ落ちる。

 視線を動かして高校球児のほうに目をやると、彼もまた動けないのか、怯えたような目つきでヤンキーの顔を見つめている。何か危険なことが起きる。頭の中では、警鐘が鳴り響いている。そんななか、さらに彼を困惑させるようなアナウンスが車両内に流れた。


『お乗り換え相手が決定いたしましたので、目の前のお相手に体液の注入をお願いいたします。なお、今回のお乗り換えで、これまでの肉体とはお別れすることになりますので、くれぐれもご注意ください』


「クヒッ……、聞いたか? 聞こえたよな、じゃあ早速……」


 男はスーツとワイシャツを脱ぎ捨てると、ズボンの前を大きく膨らませながら英人の前に立った。すでに興奮しているのか、息が荒く、頬が紅潮している。


「やめろッ!! 近付くんじゃねえ!!」


 英人は必死になって叫んだが、やはり変わらず、体は言うことを聞かない。でっぷりとした腹肉の乗ったベルトをカチャカチャと外すと、男は下着ごとズボンを一気にズラした。その瞬間、英人の鼻腔に、蒸れた男の臭いが飛び込んできた。

 目の前では、縮れた毛に覆われた汚らしいモノが、天を向いてそそり勃っている。正直勃起しているのかと疑うほどの短さと、怒張していてもなお、亀頭のほとんどが皮を被っている様子に、英人は嫌悪感を露わにする。


「ほれ、いくぞぉ……」


 男がそう呟くと同時に、その先端からドロっとした粘液が溢れ出た。その液体が落ちた先を、英人はつい、目で追いかけた。次の刹那、彼の口の中に生温かいモノが侵入してきた。


「んむぅ~?!!」


 それが男の汚らしいモノの先端だと分かったときには、もう遅かった。ヌルヌルとした感覚とともに、得体の知れない苦味が広がってくる。生ごみのようでもあり、吐瀉物のようにも感じる匂い。強烈な不快感に、英人は顔を背けようとした。だが、首から下は依然としてピクリとも動いてくれない。


「あぁ……、イイッ……♥」


 英人の中で男根をビクビクと震わせながら、男は悦楽に浸っていた。青ひげだらけの醜悪な顔には、だらしなく緩みきった表情が浮かぶ。濁った瞳はへの字に歪み、口の端からは涎がダラダラと溢れ出している。

 気色が悪い! なぜ自分が、男のイチモツを口に含まなければいけないのか。目尻に涙を滲ませている彼のことなど無視するように、口内には変態男の雄汁が注がれ続ける。まるで自分の口が、男専用のオナホになってしまったかのような錯覚すら覚える。いつしか彼は、男の粗末な肉棒を、舌を巧みに操ってしゃぶり始めていた。


「あああっ……、気持ちいいよぉ、マッチョくんのお口オナホ。おじさん出しちゃうっ、出しちゃうよぉ……♥♥♥」


──ドピュルルルーーーッ、ビュルッ、ビュッ、ビューッ、ブビューーーッ!!!


「ンブッ、ゴボォッ……?!」


 この小さなチンポから、どうしてこれほどの精液が出せるのか。そう思うほど、大量のザーメンが喉奥に叩き付けられた。あまりの量の多さに飲み込みきれず、逆流した白濁液が、英人の顎や胸板を伝って滴り落ちていく。


「おほっ……、まだ出るよぉ……、おほっ♥ そのたくましい身体が、私のモノになるんだぁ♥」


 泥酔親父はチンポを引き抜くと、不意に英人のどっしりとした下半身に弛んだ尻を押し付けるように腰を下ろした。ぐにゅっという感触が股間に広がる。


「やめろ、離れろオッサン……。アッ?! あああアァァ……♥♥♥」


 突如として全身を駆け巡った快楽に、英人は思わず喘いだ。快感などという言葉では、言い表せないほどの衝撃。

 その光景は、映画やアニメのような架空の世界で、幽霊が人の身体に憑依するシーンを彷彿とさせた。まさに今、男は別の人間の肉体へと乗り移っているのだ。男の肉体が、陰部への挿入を思わせるような卑猥な音を立てて、英人の肉体の中へと沈み込み始める。


 足が、股間が、上半身が、そして頭が……、二人の肉体が、まるで溶け合うように、徐々に一体化していく。


「い、嫌だっ!! 入ってくるなぁ……! 俺が、俺じゃなくなっちまうぅ! 俺が……私に……、うひっ♥ 私が、オッサンに……、あああぁ! 頭が変になっちゃううううううッッッッッ!!!!!」


 二人の顔が完全にくっついて一つになった瞬間、英人は狂ったような叫び声を上げた。彼は悦楽に満ちた表情を浮かべると、幅広の肩をダランと落とし、白目を剥いて意識を失った。




 高校球児の副島風雅(そえじまふうが)は、その身を震わせていた。きつい部活を終え、電車に乗って居眠りから覚めたところ、突然目の前で異常な光景が繰り広げられたからだ。

 人の身体が、別の人間の身体の中に沈み込んでいく光景。こんな、非現実的なことがあってたまるものか。夢を見ているに違いない。目を覚まそうと頭を振っていると、筋肉質な男の身体から、泥酔親父の身体が飛び出して、車両の床に転がった。おかしい状況であるのには変わりはないが、二人の状態は元に戻ったのだろうか?


 そう思って、筋肉質な男の顔を見た瞬間、風雅は息を呑んだ。さっきまであんなに声を張り上げて、泥酔親父に抗議をしていた男。なのに今は、精悍であった顔をだらしなく崩し、舌を垂らしている。これまで鍛え抜いてきたであろう己の肉体を眺め回すと、彼は「くひっ」と気味の悪い笑い声を漏らした。


「あぁ……、すごいぃ……。これが、新しい私の身体かぁ……♥」


 そう呟くと、彼は両手を頭の後ろに組んで、上体を反らした。まるでボディビルダーのように、その体は見事な曲線美を描いている。そのポーズのまま、今度は腹筋を見せつけるかのように大股開きになった。すると、股間のモノがムクムクと大きくなっていく。

 興奮している、彼は自分の肉体に。彼は、このおかしな車両で、泥酔親父に肉体を乗っ取られてしまったのだ。そして肉体を乗っ取られるのは、彼だけではない。自分もまた──。


「あっちのオッサンは上手い具合に、ガチムチ野郎の身体を手に入れられたようだなぁ。今度は俺たちの番だぜ、坊主」


 風雅の前に立っていたヤンキーはニヤリと笑うと、ゆっくりと彼のほうに近付いてきた。


「ひいっ……、来るな、来ないでくれぇ……」


 必死になって逃げようとするが、手足は動かない。


「クヒヒッ……、大丈夫だ。すぐに終わるからよぉ♥」


 ヤンキーはズボンと下着を脱ぎ捨てると、すでに勃起していたイチモツを露わにした。先ほど、車内アナウンスでも言っていた。これから、目の前の人間に体液を注入しなければならない、と。その相手とは、自分のことだ。


「んぶぅっ!!」


 容赦なく硬い肉棒を口に突っ込まれ、風雅は思わず嘔吐感に襲われる。だが、吐こうにも口の中には、男根が深々と突き刺さっていて吐き出すことができない。それどころか、ヤンキーは腰を振り始め、喉奥にまで亀頭の先が当たるほど激しくピストン運動を始めた。


「おほぉっ!いいぞぉ~、高校球児の口マンコ、最高じゃねえかッ!」


「ンッ、ンンッ……!ンンンンッ!!」


 喉奥にチンポの先端が当たるたびに、吐き気が込み上げてくる。しかし、それと同時に奇妙な感覚も湧いてきた。口の中の粘膜を擦られれば擦られるほど、身体の奥底から何か熱いものが込み上がってくるのだ。女性とセックスしたことなんてない、それどころかキスさえしたことがない。そんな自分が、まさか他人の性器に奉仕させられることになるとは思いもしなかった。だけど──。


「おほっ、イクッ! イキそうだ! おぉっ!おぉぉぉっ♥♥♥」


 ヤンキーが叫んだのと同時に、風雅は喉奥に粘っこい液体が注ぎ込まれるのを感じた。その瞬間、脳天に雷が落ちたかのような衝撃が走った。それは、今まで味わったことのないような強烈な快感だった。身体中が痙攣し、股間からは精液が漏れ出してきた。あまりの快感に、射精してしまったのだ。パンパンに膨らんだ玉袋が縮み、大量の精子が放出されていく。


「なんだお前、イッちまったのかよ、早漏にもほどがあるだろ。チンポしゃぶっただけでイッちまうガキにこれからなるなんて……、それはそれで興奮しちまうぜ♥」


 うっとりとした顔で呟いたヤンキーは、下半身を震わせる高校球児の肉体に、己の肉体を重ね合わせた。やはり先ほどの泥酔親父と英人と同じように、その身体は沈み込んでいく。そして、あっという間に、その全身は風雅の中へと飲み込まれた。

 そして二人の顔が合わさった瞬間、風雅が艶めかしい声を上げる。同時にその肉体からは、異物を吐き出すようにヤンキーの身体が転がり出てきた。


「ふうぅ……、肉体乗り換え成功だな……♥ 相変わらず最高のサービスだぜ、この車両は♥♥」


 再び射精してしまったのか、風雅は惚けた顔を浮かべている。そんな彼の元に、筋肉隆々の男が近付いてきた。


「君、さっきのヤンキー君だよね? 良かったら私とエッチしてくれないかなぁ……♥ この車両に乗ってこの身体になるまでは、女しか好きじゃなかったのに、今じゃあ君みたいな筋肉質な男の子を見ると我慢できなくなっちゃってね。もう、私のアソコは大洪水なんだよぉ……♥」


「ああ、もちろんオーケーっすよ。オレだって、チンポがこんなにデカくなっちまって、収まりがつかなくなってたんです。でも、その口調はどうにかならないっすか? 意識を集中したら、その身体の記憶が流れ込んで、喋り方も変わりますよ」


「……そうなのかい?」


 厳つい顔を不思議そうに歪めた後、しばらくして彼は静かに語り始めた。


「んん……、あ~、俺は桐生英人。大学の柔道部で全国大会優勝を目指してる。よろしくな。って……、おぉ、すげえな。こいつの記憶がバンバン蘇ってきて、頭の中に流れ込んできやがる。やべぇな♥ 記憶が入ってくるたびに、俺の新しいチンポがビンビンになっちまうぜ♥」


 英人は、股間をギンギンにしながら蕩けた笑みを見せた。


「いいっすね、英人さん♥ 身体はめちゃくちゃデカいし、チンポもデカイ。まさに理想的な相手っすよ! それじゃあ、さっそくヤりましょうか! オレのことは、風雅って呼んでくださいね」


「あぁ、頼む……、風雅!」


 風雅は英人の巨大な男根を口に含むと、ゆっくりと舌を這わせて愛撫し始めた。高校生とは思えないほどに巧みに舌を動かされると、それに合わせて英人も腰を振り始める。


「おほぉっ! いいぜぇっ♥ すっごい気持ち良いぜっ! 風雅ぁっ! もっと、もっとしてくれっ!」


「ふぁいっ! わかりましたぁっ! 英人さんのチンポ、汗臭くてしょっぱくて、すごく美味しいですぅっ! んぶぅっ♥」


 ジュポジュポと激しい音を立てて、風雅は英人のデカマラをしゃぶり続ける。左手では、子種をたっぷりと溜め込んで張り詰めた玉袋を揉みながら、右手では乳首をコリコリと弄っている。そのたびに、英人は獣のような喘ぎ声を上げ続けた。

 密林のように毛の生えた腋からは汗がダラダラと垂れ落ちて、その雄臭い匂いが辺りにプンと広がっていく。彼の目は細まり、太い眉は八の字に歪み、口元はだらしなく緩んでしまっている。その姿は誰の目からも、快楽に浸っているようにしか見えないだろう。


 そして絶頂のときは、すぐに訪れた。


「ぐおぉっ! イクッ、イキそうだ! おぉぉぉっ! イッちまうぞぉ、風雅ぁっ! ぬおぉぉぉぉぉッ!!!!!」


 絶叫とともに、英人は盛大に射精した。それは、彼の肉体が今まで経験したことがないほどに凄まじい量だった。風雅の口内から溢れ出た精液は、彼の肉体を伝って、床一面に広がっていく。それでもなお、勢いは衰えない。まるで蛇口を全開にしたかのように、大量の白濁が噴き出し続けている。


「おほぉっ! まだ出るっ! 止まらねぇっ! おぉぉっ! おぉぉぉっ♥♥♥」


「んぶっ! ンッ、ゴクッ、ごくッ……♥」


 風雅は喉奥まで使って、精液を飲み干した。だが、その量はあまりにも多すぎた。体内に流れ込んだ英人のザーメンは逆流し、風雅の鼻の穴からは精液が吹き出している。ようやく長い射精が終わると、英人は名残惜しそうに風雅の口からチンポを取り出した。


「ぬうぅ……、すっげぇ出たな……。こんなに出たのは初めてだぜ……」


「ぷはぁっ♥ オレもこんなに飲んだの、初めてっすよ♥ でも、まだまだ出し足りないんじゃないっすか、英人さん?」


「おう。どうやら、この程度じゃあ満足できねえみたいだな、この身体は……。今度はケツにハメさせてくれよ、風雅♥」


「うっす! ください、オレのケツマンに英人さんのデカマラ♥ この身体はケツ穴使うの初めてっすけど、今ならマンコみたいに解れてるっすよ。なにせ『肉体乗り換え車両』は、特別っすから♥」


 ザーメンで汚れたユニフォームパンツを脱ぎ捨てると、風雅は四つん這いになって尻を高く上げた。彼の未成熟のアナルはすでにヒクついていて、腸壁の奥のほうにはピンク色の肉が見え隠れしている。英人は頬を緩ませると、肉厚な舌を使って、高校生の柔らかな肛門を舐め回した。生温かな刺激を受けて、風雅がビクンと身体を震わせる。


「ひゃうんっ♥ は、早くぅ、英人さん♥♥」


 初々しい彼のその反応に気を良くした英人は、ガチガチに硬くなった己の男根を手に取り、一気にズブズブと挿入していった。


「おほっ♥ きたぁっ! ガチムチ柔道家のデカチンポぉぉっ♥♥」


 『肉体乗り換え車両』内では、性行為が円滑に行われるように、どの乗客のアナルも準備をせずとも万全の状態になっている。それでも風雅は、英人のチンポのあまりの質量に、目を剥いた。その彼の受けた衝撃に呼応するように、英人の巨根はますます勃起してしまう。


「おぉぉっ♥ すげぇぇっ! マジで最高だぜぇっ♥ チンポに肉が絡み付いてきやがるぅ♥ これが、甲子園を目指してる高校球児のケツかよぉぉっ♥♥」


 英人は狂ったように腰を振り始めた。中年になっても女性との性交を体験したことのなかった泥酔親父、そして性行為の経験がなかったのは英人も同様だった。その彼の肉体にとって、男性のモノであれど、温かな肉壺の感触は未知の快感であり、麻薬と言っても過言ではなかった。


「おぉぉっ! イクッ! また出ちまうぞぉぉっ! 高校球児のケツマンコでイクゥッ! ぬおぉぉっ! イグゥウウッ♥♥♥♥♥♥」


 自身の股間を、風雅の尻タブにバチュバチュと激しく打ち付けると、英人は地鳴りのように野太い喘ぎ声を上げて射精した。同時に、風雅も絶頂を迎える。


「はぁんっ♥ 俺もイキますっ! 英人さん、英人さんッ♥♥♥♥♥」


 褐色に日焼けした肌とは違い、ピンク色の皮被りのチンポがビクンと反り返って、亀頭から噴水のように濃厚な白濁液が吐き出される。それはビュウビュウと音を立てながら、目の前の座席と床をドロドロになるまで汚していった。


「くはぁぁぁ……、すっげぇぇぇ……♥ セックスって、こんなに気持ち良かったのかよ。こんな快感、生まれて初めてだぜぇぇ……♥」


 風雅の硬い胸板を揉みながら、満足そうな笑みを浮かべると、英人は彼の口元に自分の唇を押し付けた。卑猥な水音を立てて、二人は舌を絡めて唾液を交換し合う。長いディープキスを終えると、二人の舌先には唾液でできた透明の橋がかかった。


「んふぅ……♥ ぷはぁ……♥ 英人さぁん……、もっとぉ……、もっともっとしましょうよぉ♥♥」


 恍惚とした表情で風雅が呟いたとき、再び車両アナウンスが流れた。




『まもなく、終点に到着いたします。目を覚ましたお乗り換え相手のお客様に、再度体液注入を行い、お乗り換えを完了していただきますようお願い申し上げます』


 相変わらずの意味不明な車両アナウンスで、泥酔親父──、先ほどまで【桐生英人】という存在だった男は、意識を取り戻した。身体はなんだか熱っぽく、全身が汗ばんでいる。


「んん……、ここは……? 俺はいったい何を……?」


 まだ酔いが醒めきっていないのだろうか。そう思案しつつ、泥酔親父は頭を軽く振った。ガンガンと頭痛が響いて、思考が定まらない。


「確か、電車に乗っていて……。そうだ、誰かに口の中にチンポを突っ込まれて……。いや、チンポを突っ込んだのは……、私?」


 回転しない脳味噌を、必死に働かせようとする。だが、アルコール漬けになった脳では、それ以上のことは思い出せなかった。


「うぅ……、駄目だ。何も思い出せない……。それにしても、体が心なしか熱いような……」


 そこまで考えたところで、自分が全裸であることに気付いた。いつもであれば、股間で弛んだ肉に埋もれるように包まれているはずの男根が、硬くそそり立っている。


「な、なんで私は裸になっているんだ!? しかも、こんなにチンポが大きくなって……。ううっ!」


 急に、下腹部が疼き始めた。まるで身体中の血流がそこに集まっているかのように、ドクンドクンと脈打っている。彼が戸惑っていると、目の前に立った男に、その根元を掴まれた。


「目ぇ、覚めたかオッサン? さっきチンポしゃぶらせてくれたお返しに、俺のデカマラでアンタのことイカせてやるよ♥」


 そう言って、そのガチムチの男──、【桐生英人】が不敵な笑みを浮かべた。彼の鍛え抜かれたたくましい肉体を見ていると、何かが思い出せそうだったが、うまく頭が回らない。心臓はまるで初恋をした少女のようにドキドキと高鳴っている。


「お、お前さんはさっきの……。私をイカせるっていうのはいったい……?」


「へっ、以前の自分のことも忘れちまったのかよ。だが、そのほうが気持ち良くイケるかもしれねえな。ほら、早くその汚いケツこっちに突き出せよ、オッサン♥」


「あ、ああ……」


 言われるままに、泥酔親父は窓に両手を当てて、英人に尻を向けた。彼のアナルはすでにヒクついていて、腸壁の奥のほうにはピンク色の肉が見え隠れしている。異性愛者でありながら、彼は日常的にアナルオナニーをしていたため、その尻穴は指で解す必要などないほどに口を開けて、パクパクと餌を求めている。


「おおっ! オッサンのケツマンコ、エロいじゃねぇか! もう我慢できねぇ! いくぞぉっ! おぉぉっ♥♥」


 英人は一気に腰を突き出した。すでに臨戦態勢だった彼の巨根が、抵抗なくズブズブと肉の穴の中へと飲み込まれていく。デコボコの腸内を押し進めながら奥に突き当たると、英人はブルッと震えて吐息を漏らした。弛みきった、だらしない中年親父の身体。ブリンと突き出た汚らしい尻タブを、彼は鷲掴みにして、腰を激しく動かし始める。

 股間を打ち付けるたびに、泥酔親父の脂肪がブルンと揺れる。まるで豚のようだ。


 だが、その肉体はつい先ほどまでの己の身体だ。目の前の黒くなった窓には、今の自分のたくましい姿が映っていて、それがまた一層興奮を掻き立てる。たまたま乗り合わせた電車で、こんなにも理想的な身体を手に入れられたなんて。最高だっ!!


 かつての自分の肉体に覆い被さり、ブヨブヨの胸を揉みながら、パンパンと音を立てて激しくピストン運動を繰り返す。醜い肉体と体を交えれば交えるほどに、自分が新しく生まれ変わったことを実感して、脳から快楽物質がドバドバと溢れ出すのを感じる。


「はぁぁぁっ♥ すげぇぇっ♥ このデカイ腹も、たるんだ胸も、もう俺のモンじゃねえんだな♥ ありがとな、オッサン。こんな立派な身体をくれて♥♥」


 英人は、かつて自分のモノだった贅肉だらけの身体を抱き締めると、首筋や背中に舌を這わせて、ベチャベチャと唾液を塗り付けていった。それはまるで、かつての自分との別れを名残惜しんでいるかのようだった。


「立派な身体をくれてって、いったい……。うっ! 私は……、俺は……」


 尻の穴を突かれながらも、泥酔親父は徐々に記憶を取り戻しつつあった。【泥酔親父】に、無理やりチンポをしゃぶらされたこと。そして今、後ろから己を犯しているのが、さっきまでの自分だったということを。


「ああああっ、思い出してきたぞ……! 返せ、返せぇっ、俺の身体を!!」


「おっ、どうやら思い出したみてえだな。でもまあ、とりあえず今は気持ち良くなろうぜ? ほれ、ベロチューしようぜ、オッサン?」


「んむぅ……、んちゅ……、ぷはぁ……、んん……♥♥」


 背後からの強引なキス。それを受け入れてしまうほどに、彼の肉体は快感に飢えていた。相手が男といえど、初めてのセックス。これまでに感じたことのないような強烈な刺激が、彼の全身を駆け巡り、抗うことを許さない。気が付くと、自ら舌を差し出して、英人のそれと絡め合っていた。


「ハハッ、いい顔になったなあ、オッサン♥ そんなエロいツラしてたら、すぐにイッちまいそうだ。イクときは、一緒にイこうな?」


「あ、ああ……。い、嫌だ……。イッたら、俺が俺じゃなくなっちまう……。頼む、止めてく……ヒグゥ♥♥♥」


 泥酔親父が最後まで言い終える前に、英人は再び腰の動きを速めた。彼が苦痛に顔を歪ませるのを楽しむように、精悍な顔をほころばせて、その太ましい体を蹂躙し続ける。先ほどよりもさらに身体を密着させ、強引に硬くなった肉棒を奥の奥まで捻じ込みながら。人気のない車両内に響く、肌と肌がぶつかる音は、ますます大きくなっていった。


「うぉぉぉっ! お、俺の頭が……! 頭がおかしくなっちまうぅっ……♥♥♥」


「フン、フンッ!! ははっ、いいじゃねぇか。もっと狂っちまえよ。俺たちはこのまま入れ替わっちまうんだからなっ!」


 そう言って英人は、自らの唇を泥酔親父の耳元に寄せた。彼の荒い吐息が、親父の鼓膜を刺激する。首筋を舐められ、脂肪で垂れた胸を揉みしだかれ、さらには乳首を摘ままれて、彼の身体はビクビクと痙攣する。もう何も考えられない。


 硬くなったかつての自分の男根が何度も何度も、尻の穴に出し入れされるたびに、頭の中で火花のような光が散っている。さっきまで自分のモノでなかったチンポからは、押し出されるように透明の汁がピュルピュルと飛び散って、座席を汚し続けている。

 今の彼の身体は、どうしようもなくたくましい雄のチンポを欲しがっているのだ。


「ああぁっ! も、もうダメっ! わ、私が……、【俺】でなくなっちゃうぅっ! イグゥッ! イキますぅっっっっ♥♥♥」


 英人が腰を思いきり打ち付けた瞬間、親父の身体が大きく跳ねた。前立腺に英人の亀頭の先端がゴリゴリと擦り付けられ、そのあまりの衝撃に親父の理性は完全に吹き飛んでしまった。


「あっ、あっ♥ あへぇ……♥♥」


 親父は座席に向かってビュルビュルと勢いよく射精すると、そのまま床へと倒れ込んだ。重なったまま彼と一緒に横倒しになった英人は、親父の尻の穴から、絶頂の余韻に浸るようにゆっくりと肉棒を引き抜くと、満足げにため息を吐いた。

 後ろを振り返ってみれば、風雅もまたかつての自分の肉体に射精を終えたようで、竿の先から精液を垂れ流していて、ヤンキーの尻の穴にはゼリーのように濃い白濁液がべっとりとこびり付いていた。



***


『本日もご乗車ありがとうございました。当車両はまもなく終点に到着します』


 車内アナウンスが流れると同時に、電車は減速を始めた。オーガズムを感じながら、床でピクピクと痙攣していた泥酔親父とヤンキーは、超常的な力で座席に座らされ、衣服を整えられていく。傍目から見れば、もはや彼らは、車両内で居眠りをしている乗客にしか見えないだろう。

 そんな彼らの姿を横目に、英人と風雅もまた、脱ぎ散らかされていた自分の服を身に着けていった。


 やがて電車が完全に停止すると、二人は無言のまま立ち上がり、車両の扉へと向かう。ドアが開くと、そこには見慣れたホームの風景が広がっていた。見慣れたホームだが、彼らにとっては新しい世界への第一歩だ。泥酔親父は大学生柔道家の【桐生英人】へ、そしてヤンキーは高校球児の【副島風雅】へと生まれ変わったのだ。


「せっかく、こんな場所で出会えたんだ。連絡先交換しておこうぜ、風雅。お前のケツマンコ、もう一回味わってみたいしな」


「うっす! オレも英人さんのチンポ、また味わいたいっす! それにこの身体に飽きたら、お互いの部活の部員たちを、『肉体乗り換え車両』に乗せてやりましょう! きっと、みんな喜びますよ!」


「おお、いいアイデアじゃねえか! 今から楽しみだ。想像しただけでチンポが勃ってきたぜ♥」


 理想の肉体を手に入れた男二人は、唇を重ねながら熱い抱擁を交わすと、これから先の未来を想像して股間を膨らませるのだった。


(了)



以下、差分イラストです





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