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「皆の者、今ここに聖剣が降臨した! そなたらは、もうこれ以上、魔王に怯える必要は無いっ!!」


──おおぉ……


──本当に聖剣が現れたぞ……


──これで我々も救われるんだ……


 その場に集っていた貴族と兵士たちは、国王の宣言を耳にして、口々に歓喜の声を上げた。


 宮殿の広間。その中央に配置された台座に、確かに神々しいまでの聖剣が姿を現していた。かなり大振りだが、切れ味が恐ろしく鋭そうな銀色の刃。それを支える金色の鍔には美しい装飾が施されており、柄頭の部分にも何かしらのキラキラと煌めく宝石のようなものが見える。この国を建国してから今まで、誰も目にしたことのないような美しい聖剣。それが今まさに、望んでいた人々の目の前に顕現したのだった──。



***


(ま、まぶしいっ!!)


 目が痛くなるくらいにギラギラとした光が、剣を襲った。末成剣(すえなりけん)。彼はつい先ほどまでは、地球の日本で平凡に働くサラリーマンだったのだが、交通事故に巻き込まれ、この世界に転生することになってしまった。しかも、聖剣という形で──。


(な、なんなんだ、この人たち?! どう見ても日本人に見えないし、この場所も映画でしか見たことないような光景だ。おまけに声も出せないし、体も動かせない……。いったいどうなってるんだ!!)


 不安のあまり叫び出したくて仕方がなかった彼だったが、それは叶わなかった。彼のことなどお構いなしといった様子で、その場にいる者たちは拍手喝采し、歓声を上げ続けている。言葉はなぜか理解できるのに、誰にも自分の意思を伝えることができない。気が狂いそうになり、剣が意識を手放そうとしたそのときだった。


「大丈夫か?」


 一人の男が、剣を台座から引き抜き、赤ん坊を抱っこするように優しく抱きかかえた。そして、心配そうな表情で剣の顔──正確には刀身だが──を覗き込んでくる。

 彫りの深い整った顔立ち。年の頃は三十代前半だろうか。オールバックに撫でつけた髪と、顎や口周りにたくわえた髭は金色に染まり、瞳の色はサファイアのように青く澄んでいる。

 筋肉質で大柄な体躯と凛々しいその面差しは、いかにも王国を守護する戦士といったような風貌だ。


(わぁ、かっこいい……。こんな人、現実に存在するんだ)


「お、おい! 大げさに褒めるのはやめてくれ。聖剣でもお世辞を言ったりするのか? 照れるじゃないか……」


(えっ?! 僕の声、あなたには聞こえるんですか?!)


 顔を赤らめて、剣から目を逸らした男を、周囲にいた者たちが興味深そうな目つきで見つめている。おそらく誰にも聞こえなかった剣の声を、ただ一人聞くことができた彼に、興味を抱いているのだろう。


──ほぅ……、これはまた珍しい


──さすがは聖騎士長様です!


──まさか人間の中に、聖剣の声を聞き届ける者がいるとは思いもしませんでしたよ


 男はどうやら、その厳つく精悍な顔に似合わず、恥ずかしがり屋な性格をしているようだ。皆の言葉に対して、どこか居心地悪そうにしている。その彼の表情に、剣は少しだけ親近感を覚えた。


(あのー、すみません。ここはどこですか?)


「ん?……あ、ああ。すまない。ここは聖王国、アヴァロンの王城だよ。私の名前はエドヴァルド。この国の聖騎士長だ。尋ねてもいいかな、聖剣よ。君の名前はなんと呼べばいい?」


 剣は、思わず反射的に自分の本名を口に出そうとした。末成剣だと。だが、彼らによると、自分は聖剣としてこの世界に転生したらしいのだ。もしも自分が、「末成剣です!」と宣言しようものなら、「おおぉ! 聖剣、末成剣万歳!!」と喚き散らすに違いない。剣は深呼吸すると、自分の思いつく【THE 聖剣】とも言うべき名前を口に出した。


(僕の名前は……、エクスカリバーです……!)


 こうして、彼が新しく生きることとなったこの世界に、聖剣エクスカリバーが誕生したのだった。




「炎を巻き起こせ、聖剣エクスカリバーッ!!!」


──ゴォオオオッ!!


 エドヴァルドの掛け声とともに、聖剣から噴き出した凄まじい熱量の火炎が、辺り一面を埋め尽くしていく。その火力たるや、まるで火山の噴火のようである。この攻撃を食らって無事な生物など、恐らくこの世に存在しないであろう。


(うひゃ~、すごい威力ですね!!)


「ハハッ、相変わらず他人事みたいに言うもんだ。これもお前のおかげだよ」


 聖剣エクスカリバーを手にしてからというもの、明らかに彼の戦闘における攻撃力は増していた。今となっては、エドヴァルドの存在はこの国だけでなく、他国においても知らぬ者はいないほどである。


──聖騎士長、お見事です! 聖剣殿も!


──流石は聖剣とその使い手だな


──我々も負けていられませんね!


 兵士たちからは、賞賛の声が次々と上がる。相も変わらず、エドヴァルド以外とは意思の疎通は図れないが、彼が間を取り持ってくれるおかげで、どうにか兵士たちともコミュニケーションが取れていた。


「いや、本当に助かっているよ。お前の──、聖剣の力がなければ、私はとうに死んでいたかもしれん……」


 この世界において、魔族や魔物といった存在は極めて厄介な敵である。彼らは人類にとって共通の敵であり、長年に渡り、争いを繰り広げてきた相手だ。そんな彼らを討伐するために生み出されたのが、聖剣降臨の儀であった。

 人々の祈りによって生まれた聖剣は、持ち主の魔力を糧にして強力な力を発揮することができる。そして、聖剣に選ばれた者は例外なく強大な魔力を有していた。


 しかし、そんな聖剣にも欠点があった。それは、一度でも手にしてしまうと、死ぬまでその繋がりを断てないこと。そしてもうひとつは──。


「んおっ……」


 エドヴァルドが、突然尻もちをついた。すでにその光景を見慣れていた兵士の一人、副聖騎士長のグンナルが苦笑いを浮かべながら、彼に向かって手を差し伸べる。


「お疲れ様です、聖剣殿」


「たはは、すみません。グンナルさん」

 

 先ほどまで眉間にシワの寄った、険しそうな表情をしていたエドヴァルドは、一転して申し訳なさそうにしながらも、爽やかな笑顔を浮かべて彼に応えた。


──まるで別人になったようだ。


 最初の頃は、そう思われていた。だが、実際には本当に別人になっていたのだ。聖剣を使用したことによる代償。それは、一定量の魔力を消耗すると、聖剣とその使用者の肉体の中身が入れ替わることだった。


「大丈夫、エド?」


 エドヴァルドと肉体が入れ替わった剣は、心配そうな表情で彼に問いかける。


(大丈夫だ、問題ない。ただ、ちょっと眠いがな……)


 いつものことだが、聖剣と入れ替わったときは、エドヴァルドに強烈な虚脱感が襲い掛かる。彼はそれを、気丈な態度で隠そうとするのだが、感覚を共有している剣にはその感情が伝わってくる。


「すみませんが、今日はこれくらいで終わりにしましょう」


「ええ、そうですね」


 グンナルが応じると、兵士たちも皆、整列して姿勢を正した。


──お二人とも、ありがとうございました!


 兵士たちが各々の部屋へと散っていく背を見送ると、剣はエドヴァルドを携えて、彼の居室へと向かった。王城二階の日当たりの良い場所にある部屋の扉を開けると、中は綺麗に整頓されており、ベッドの上には書きかけのノートが開いたまま置かれていた。彼は剣に寂しい思いをさせないようにと、日本語の書き方を教えてくれと頼んできたのだ。この世界に転生して以来、不安な日々を過ごしていた剣にとって、その優しさは本当にありがたかった。


(ん……、くすぐったいぞ、剣……)


 剣がベッドに腰をかけて、エドヴァルドを優しく撫でると、気持ち良かったのか彼はそのまま眠りについてしまった。




 机に向かって、剣がこちらの世界の公用語の勉強に勤しんでいるときだった。ノックの音のあとに、グンナルが扉を開いて顔を覗かせた。夜も更けてきて、そろそろ眠りにつこうかというところだったのだが、何か緊急の要件だろうか。ちなみにエドヴァルドとはまだ肉体が入れ替わったままで、彼は聖剣の状態でベッドに横たわり、眠り続けている。


「聖剣殿、ちょっとよろしいでしょうか? 実は折り入ってお願いしたいことがありまして……」


「お願い? 僕にですか? いったい何を……」


 剣の問いに対して、グンナルは真剣な面持ちで口を開いた。


「ここではちょっと……。私についてきてもらえますか?」


 城下町にはまだ赤々とした灯りが所々に点在しており、人々は活気づいているようだ。しかし城内はひっそりと静まり返っており、城郭とその上に広がる、大きな月と満天に輝く星空が織り成す光景が、なんとも神秘的な雰囲気を醸し出している。こんな時間にいったいどこに連れていかれるのだろう。

 グンナルに連れられてやってきた場所は、王城の中庭に建てられた一般兵向けの宿舎であった。そこには、多くの兵士が寝泊まりしているようで、建物の外にまで喧騒が漏れ聞こえてきていた。


「ここって確か、一般兵の人たちが暮らしている場所ですよね?」


 剣の声が届いたのか、にぎやかだった室内が一瞬にして沈黙に包まれた。グンナルが入り口の扉を開けて入ったあとに、剣も続くと、いっせいに兵士たちの視線が彼に向けられた。昼間あれだけ剣術に格闘術にと訓練していたというのに、まだ元気が残っているようで、屈強な男たちの密集した室内は蒸気が上がっているように暑苦しい。


「あ、あの……、すみません。お邪魔します……」


 おずおずと中に入ると、一人の若い兵士が立ち上がって声をかけてきた。


「おお! 聖剣殿、お疲れ様です! 来てくださったということは、あの件は了承してもらえたんですね、副聖騎士長?!」


 彼のその言葉に同調するように、その他の兵士たちもまた喜びに満ち溢れた表情で、「やったぞ!」「ヒャッホー!」などと歓喜の声を上げている。要件をまだ聞いていない剣にとっては、何がなんやらさっぱりである。困惑した様子でグンナルのほうをうかがうと、彼もまた少し参ったという顔になって、剣に耳打ちをしてきた。


「聖剣殿はご存じないかと思いますが、聖騎士長は我々の労をねぎらうために、たびたびですね、その……、我々の夜の相手をしてくださっているのです」


「えっ!?」


 それはもしかして、エッチなことをしているということなのだろうか。男同士で? いや、ここは異世界なのだから地球の──、しかも日本とは違ってそういうところはオープンなのかもしれない。


「それで今夜は聖剣殿に、聖騎士長の代わりに我々の相手をしていただけないかと思いまして……」


「ええぇ~~~!!!」


 剣が驚きの声を上げると、グンナルは申し訳なさそうに頭を掻いた。


「いや、無理にとは言いませんよ。断ってくださってもかまいません。ただですね……、聖剣殿が降臨して以来、聖騎士長は毎日のように疲労困ぱいの状態が続いている状態でして、この数か月相手をしてもらえていないのです。このままでは、兵たちの士気にもかかわりますし……」


 グンナルの言葉を聞いて、剣もようやく理解することができた。つまり、兵士たちは皆、欲求不満になっているのだ。


 剣は生唾をゴクリと飲み込んだ。前世で彼はゲイであり、童貞でもあった。実はエドヴァルドと肉体が入れ替わるようになってから、彼の肉体で何度も自慰行為に及んでいる。もちろんエドヴァルドにはバレないように、細心の注意を払って。


 王国を代表する戦士である彼の肉体はさすがで、鍛え上げられた筋肉は美しい彫刻のようだった。巨大な幹のような極太の手足、分厚く盛り上がった胸板、そして太い首筋にがっちりと引き締まった尻。そんな素晴らしい身体を持つエドヴァルドの股間のイチモツは、超戦士級とも言って過言ではないほどの大きさを誇っていた。


 そんな彼の全身を鏡に映し、オナニーに耽るたびに、剣は罪悪感に苛まれながらも前世では味わったことのない快感に、その身を震わせた。


 オナニーだけでも、あれほどの快楽を得られるのだ。この身体でセックスなんてしたら、どうなるのだろう。


「……わかりました。僕で良ければ協力させてください!」


 剣は意を決して、力強く返事をした。


「ありがとうございます! それじゃあ早速始めましょう!」


 グンナルがパンと手を叩くと、周囲の兵士たちは諸手を挙げて雄たけびを上げた。


「あ……、でもその前に、一応エドに確認を取ったほうがいいですよね?」


 剣がそう尋ねた瞬間、歓声がピタリと止み、場が凍りついた。ギクリという音が聞こえたのではないかと錯覚するほどに。兵士たちの顔を見ると、千切れそうになるくらいの勢いで、首をブンブンと横に振っている。


「ど、どうかしましたか? 皆さんの様子が変ですけど……」


 剣が不思議そうな顔をすると、グンナルは顔面に滝のような汗をかきながら口を開いた。


「いえ、なんでもありませんよ! そう! 聖騎士長に確認など取れば、あの方のことです。きっと、聖剣殿には任せることはできない。自分が相手をするとおっしゃるでしょう。聖剣殿も、聖騎士長に無理をさせたくないと思われませんか?」


 グンナルが必死の形相で捲し立てると、剣は納得したようにポンと手を叩いた。


「確かにそうですよね。分かります。あの人なら絶対そう言うでしょうね! さすがグンナルさん!」


 恐縮です、と言いながら安堵して胸をなで下ろすグンナル。兵士たちも一様にホッとした様子で、明らかに場の空気はおかしかったが、これから体験するであろう未知の出来事に思いを馳せていた剣は、その異様さに気付くことはなかった。




 もともと就寝前だったこともあり、剣は綿素材のタンクトップに長ズボンといったラフな格好をしていた。セックスの経験のない彼がどうすればよいか分からず、とりあえずズボンを下ろすと、その下からエドヴァルド愛用の紐パンが姿を現した。その光景に周囲がどよめく。


 普段、昼間はボクサーパンツ型の下着を穿いている彼だが、自由時間には紐パンに履き替えるというこだわりがあった。そのことを兵士たちは知らなかったのだ。どうにかこうにか男の象徴を隠しているといった感じの小さな面積の布地は、半勃ちになった彼の男根で盛り上がり、先走りで黒々とした染みを作っている。そのあまりに淫靡な雰囲気に、兵士たちが喉を鳴らす。


 恥ずかしい──。自分の肉体ではないものの、こんな大勢に囲まれ一挙手一投足を、しかもストリップ紛いの行為をじっくりと見られるのは耐えがたい。こうなったらもう、エドヴァルドに成りきろう。数か月も寝食をともにしているのだから、やれるはずだ! そう思い立った剣は、腰に手を当てて堂々と宣言した。


「すまんが、私は童貞だ。これから何をすればいいのかも見当がつかん。良ければお前たちがリードしてくれないか?」


 その言葉に、室内は興奮に包まれた。


──どっ、どどど、童貞の聖騎士長?!


──ダメだ! エロ過ぎだろッ!!


──ぬおおぉぉ! た、たまらんっ!


 もちろん、兵士たちは【本当のエドヴァルド】が童貞ではないことを知っている。だが妄想というものは凄まじいもので、目の前の男が頬を染めて「自分は童貞だ」と宣言すると、それがまるで真実であるかのように思えてくるというものだ。なかには剣の宣言に興奮して、鼻血を垂らすものまで現れた。


「誰かいないのか? 私を気持ちよくさせてくれる者は……」


 剣が一歩足を踏み出すと、兵士たちは互いに顔を見合わせ、たじろぐように後退った。


 どういうことだ? いつも行っていた恒例の行事なのではないのか? 久しぶりだということを鑑みても、反応があからさまにおかしい。こちらは、顔が沸騰するほど恥ずかしい思いをしているのに、あんまりではないか。引き受けたときは、あれほど熱狂していたというのに──。


 初めて経験する性行為の予感に、心躍らせていた剣の股間が、萎え始めたときだった。首筋に生温かい吐息がかかり、生の肉棒の感触が、彼の尻の谷間に襲い掛かった。


「聖騎士長……、不肖ながらこのグンナル、全力でご奉仕させていただきます」


 グンナルは剣の耳元で囁くと、彼のタンクトップの中に手を差し入れ、分厚い胸板にチョコンと隆起する二つの乳首を摘まんでコリコリと弄んだ。

 虚を突かれて訪れた快楽に、剣が甘い声を上げると、グンナルは理知的なその表情を崩し、欲情にまみれた目つきで、剣の股間を覆っていた布の紐を解いた。

 スルリと地面に落ちる下着。次の瞬間、窮屈な檻から解放され、ギンギンにいきり立った聖騎士長の剛直がブルンと音を立て、天を求めて飛び出した。もはや何度目かと突っ込みを入れたくなるが、兵士たちは再び色めきだった。


 だが、これまでとは違う。ひとり、またひとりと剣から距離を置いていた兵たちは彼の下に集まり、グンナルに倣って我先にと、しかし優しく、汗ばんだ肌を舐め回す。足先に口づけし、毛の鬱蒼と生えた腋を愛おしそうに嗅ぎ、あるいは乳首をしゃぶったり、時には玉袋を口に含んで転がしたりした。剣はその初めての快感に、身体をビクビクと震わせながら喘ぎ続ける。


「うっ♥ あ、あぁ、お前たち♥♥」


──ああっ! 聖騎士長! 聖騎士長ッ!!


──俺も、俺にもお願いします!


 剣の──、聖騎士長エドヴァルドの肉体を貪る、屈強な男たち。鋼のような肉体を持った、精悍な顔の益荒男たちが、自分の身体を求めて殺到する。それは、前世では感じることのできなかった幸福であり、剣にとって生まれて初めてのその体験は、彼を新しい世界に導くのに十分だった。


(こんなマッチョな男たちに、奉仕されるなんて……。これは……、癖になりそうだ♥♥♥)


 聖騎士長エドヴァルドの、見事とも言える肉棒は最大限にまで怒張し、先端からは止め処なく我慢汁が溢れ出している。それを目にしたグンナルと兵士たちは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「す、すごいです……。これが聖騎士長の……」


「ああ、早く私のこれを鎮めてくれないか?」


 剣が誘うような笑みを浮かべると、グンナルは勢いよく彼の前にひれ伏した。両手で極太の彼の男根を掴むと、恐る恐るといった様子で舌先を這わせる。亀頭をねっとりとした粘膜で包み込まれ、敏感になった尿道口をチロチロと刺激される。その感覚に、剣は腰砕けになるほどの悦楽を覚えた。

 エドヴァルドのごつごつとした掌での手淫とは、まるで違う感触だ。


「ん、ふぅ……♥ 上手だぞ、グンナル。お前は本当に優秀な部下だ。ほら、もっと奥まで飲み込んでくれ」


「はい! 分かりました!」


 グンナルは一度、唇を離すと、今度は喉の奥まで使って剣の男根を根元まで飲み込む。


「ぐぉおおおっ! そ、それだ! もっと強く吸ってくれぇ!!」


 言われた通りに彼が吸い付きを強くすると、ジュルルルッという卑猥な水音が、室内に響き渡る。あまりにも巧みな舌技が、エドヴァルドの肉体に宿った剣の魂を、一気に絶頂へと押し上げていく。ジュポジュポと音を立てて、グンナルの濡れた口内に出し入れを繰り返されるたびに、エラの張ったカリ首が刺激されて強烈な射精衝動が沸き起こる。


 もう止めてくれ! 精子が溜まりきってパンパンに膨らんだ睾丸が、玉袋の中でグリングリンと暴れながら、そう叫んでいるようだ。


 限界が近いことを察してか、グンナルの責めはさらに激しさを増していく。剣は無意識のうちに腰を振り始めており、グンナルの顎に自らの張り詰めた陰嚢を幾度となく打ち付けた。


(あ、あ、あ、イク! イッてしまう……!! 聖騎士長の私が、部下にチンポをしゃぶられて……。い、いや、私はエドヴァルドでは……ないのか? 私は、いったい……。ん、んお゙ほおぉ……♥)


 これまでのようにエドヴァルドの手で行ってきた自慰とは別の、全身の細胞が弾けるかのような激しい快楽が、新しい何かを芽生えさせようとしている。グンナルの──、他人の手によってイッてしまえば、何かが変わってしまう。ゾクゾクとするような不安が背筋を走るが、もはや剣には抗うことはできない。

 射精したい! 頭の中はその一言で埋め尽くされ、自分の心が射精することを望んでいるのか、それともエドヴァルドの肉体がそれを望んでいるのか、どちらなのか分からなくなっていた。そして──。


「ぬおお゛ぉ、イ゛クーーーッ!!!」


 剣の野太い叫びと同時に、しゃぶっていたグンナルが口を離すと、ビクビクと震える極太の肉棒からマグマを彷彿とさせるような濃厚な白濁液が噴き出した。ビュルルと弧を描いた大量の熱い子種が、グンナルや周囲の兵士たちに降り注ぐ。


──こ、これが聖騎士長の……? 聖騎士長の魔力が籠められた聖なるミルク……


──熱い……。それに、すげえ量だぜ……


 あまりにも見事な聖騎士長の射精に、興奮しすぎて意識を失いかける者すら現れる始末だ。グンナルも例外ではなく、ドロドロになるまで顔面に受けた精液を指先で掬い取り、ペロリと舐めると、うっとりとした表情で呟いた。


「聖騎士長、次はどうか私の中に……」


 グンナルは、四つん這いになって剣に背を向けると、副聖騎士長としての己のアナルを彼に見せつける。それを見て喉を鳴らした剣は、大量射精してもなお萎えない肉棒を、グンナルのピンク色の窄まりにあてがい、ゆっくりと挿入していった。




(う~~~ん……)


「大丈夫なの、エド?」


 もはや恒例になってしまった、剣とエドヴァルドの入れ替わり。昨日まで長丁場となっていた、魔族との戦いがようやく済んだ瞬間、聖剣の姿になってしまったエドヴァルドは、丸一日鞘の中で深い眠りについてしまっていたのだ。


(ふあぁ~、んむぅ……。あぁ、問題ないよ)


「でも、丸一日ずっと寝てたじゃない」


(戦いが終わった途端、疲れが出ただけだ。心配することはない。それにな、最近良い夢を見るんだ。目が覚めると忘れているんだが、すごく良いやつだ。もしかすると、剣も同じ夢を見ているんじゃないのか?)


 エドヴァルドの唐突なその質問を耳にした剣は、額から一筋の汗を垂らした。


「う、う~ん……。ちょっと心当たりは……ないかな……」


(……そうか)


 剣の歯切れの悪い返事に、特に疑問に思わなかったのか、エドヴァルドがそれ以上追及することはなかった。


(すまんが、今日一日はそばにいてくれるか? 繋がりがあるお前が近くにいてくれると、回復も早い気がするんだ)


「きょ、今日一日?!」


(なんだ? 何か用でもあるのか?)


「い、いやいや、用なんて何も無いよ! 分かった。今日は一日エドの部屋にずっといるから、安心して眠ってね」


 そう言うと、剣は読んでいた本に目を戻した。王城の図書館から借りてきた分厚い魔法の書だ。


(お前、それ読めてるのか? ついこないだまで、この世界の公用語も単語しか読めなかったっていうのに)


「えっ?! あっ、うん……。勉強法が良かったのかな……? それに、エドが寝ている間に、グンナルさんたちにも教えてもらってるから!」


 魔法書を閉じると、剣は聖剣になったエドヴァルドを膝に置いて撫で始めた。これをされると、気持ち良くてついつい彼は眠りについてしまう。


(そうか。仲良くやってくれてるようで、何よりだ……)


 自分のごつごつとした太い指で撫でられたエドヴァルドは、筋肉で張り詰めた自身の膝枕の上で、微睡みに落ちていった。




「お、おい、お前たち! 今日は相手できないと言っただろう、部屋まで押しかけてくるんじゃないっ!」


 剣は分厚い扉を、全体重をかけて必死に押さえていた。だが、相手は兵士たち数十人。聖騎士長であるエドヴァルドの力をもってすれば、押し返すことは可能だが、建物を破壊してしまう。仕方なく剣が力を抜くと、兵士たちがエドヴァルドの部屋へと雪崩れ込んできた。


──聖騎士長、少しだけで良いんです……


──チンポの先をちょっと舐めるだけでも……。お願いします、聖騎士長……


 一応、聖剣の姿になったエドヴァルドを起こさないようにと気を使っているのか、小声ではあるものの、数十人に詰めかけられた室内は熱気でムンムンとしている。さすがに数十人を一気に相手するのは無理だが、一人ずつならエドヴァルドを起こすこともないだろうか。それに、この肉体の本来の持ち主である彼と同じ空間で、兵士たちとセックスをするのかと想像すると、興奮のあまりイチモツがムクムクと鎌首をもたげ始めてしまった。だが、そのとき──


(剣、どうしたんだ? なんでこんな夜中に、兵士たちが私の部屋に集まっているんだ?)


「うおっほおぉぉ??!!」


──ど、どうしたんです、聖騎士長?!


 エドヴァルドが起きていたことに、驚きのあまり大声を上げた剣。そしてその声に驚いて、聖騎士長の身体を心配し始める兵士たち。そんな彼らに、剣はしどろもどろになりながら言い訳をした。


「え、えっとだな……。その……どうやら、エドが起きていたみたいなんだ……」


「「「「ええええぇぇっ!!!」」」」


 剣の言葉に、一瞬にしてエドヴァルドの寝室内の空気が凍りつく。兵士たち全員が驚愕の声を上げて、顔面を蒼白にしていた。


 こんなことを続けていれば、いつかはエドヴァルドにバレることなど分かりきっていただろうに、いくらなんでも驚きすぎではないか?

 エドヴァルドが起きていたことに対しての、あまりにも過剰な反応に呆れていた剣に、エドヴァルドが再び口を開いた。


(剣。お前、その口調はどうしたんだ? まるで、私みたいじゃないか。それに部下たちもお前のことを、聖騎士長と呼んでいるぞ?)


「ああ、すまん、エド。お前の代わりに兵士たちの夜の相手をするようになったせいか、この身体でいるときは、どうもお前らしくなってしまってな。こいつらとセックスするときなんか、まるで頭の中身までお前になったみたいになったりしてな、ハハハハハ……」


(せ、せ、せ、セックスゥゥ???!!!)


「「「「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!!」」」」


 思わず漏らしてしまった剣の言葉に、再び絶叫する兵士たち。彼らの顔には絶望の色がありありと浮かんでいる。


(ななな、何を言っているんだ、剣! わ、私は男だぞ! 男と──、しかも部下である兵士たちと、セックスなぞするわけないだろうがっ!)


「は? えっ?」


 エドヴァルドのその声を聞いた剣は、兵士たちの顔を見た。彼らは相変わらず血の気の引いた青白い顔で、この世の終わりのような表情をしている。振り返ってエドヴァルドのほうを見ると、表情は当然わからないが、呆然としている感情が伝わってくる。


「も、もしかして、嘘……だったのか? エドが、お前たちの夜の相手をしていたというのは」


 兵士たちの、そして副聖騎士長であるグンナルの顔を覗き見る。その瞬間、彼は土下座の態勢をとって、額を石畳に叩き付けた。


「申し訳ありませんっ!!!」


 兵士たちもまた、グンナルのあとに続いて、頭を垂れて額を石床に擦り付け始めた。


「私が悪いんです! 女性としか性行為を行わない聖騎士長と、肉体を交えたいと思っていた矢先、聖剣殿という存在が現れて……、チャンスだと思ったんです! 何も知らない聖剣殿が、聖騎士長の肉体でいるときなら、もしかすると我々の相手をしてもらえるのでは、と……。本当に申し訳ありませんでした!!」


──副聖騎士長!!


──違うんです! 副聖騎士長だけの一存ではありません! 我々も皆、聖騎士長とエッチなことをしたいと思っていました! みんなで相談した結果なんです!!


「お、お前たち……」


 剣は、頭を下げたままの兵士たちを見下ろした。彼は兵士たちに対して、何も言うことができなかった。たとえ知らなかったとしても、自分もまた、エドヴァルドの肉体を無断で使用して、快楽に身を委ねていたのだから。性行為に及ぶ前に、エドヴァルドに確認しなかった自分も同罪だ。


「すまない、エド……。私のことも彼らのことも、許してくれとは言わない。しかし、こんなことをしてしまったのは、皆お前のことが好きだからなんだ。それだけは、分かってやってほしい……」


(…………)


 エドヴァルドからは返事がない。怒るのも当然だ。言うなれば、自分が寝ている間にレイプされたようなものなのだから。自分の意志と関係なく、己の嗜好から外れた同性とのセックスで肉体を汚されたなら、誰でも怒りを覚えるだろう。


「聖騎士長、いかなる罰でも我々は受けます。もし、我々の顔をこれ以上見たくないというのであれば、すぐにこの城から立ち去り──」


(お前たち、この場でいつも通りセックスをしてみろ)


「へっ???」


 さめざめと涙を流す兵士たち。それに対してのエドヴァルドの返答が、あまりにも予想外だったために、剣は素っ頓狂な声を上げてしまった。


「エ、エド……、それはどういう……?」


(くどいぞ! 今この場で──、私の目の前で、私の身体を使ってセックスしろと言っているんだ)




 結論から言うと、エドヴァルドは剣が彼の肉体を使用して、兵士たちとセックスをしていることを知っていた。それも、初めて性行為が行われた日から。

 では、なぜ彼はそのことを剣に問い詰め、非難しなかったのか。


 聖騎士長エドヴァルドは、無性愛者だった。体裁を保つため、部下たちに威厳を示すために、定期的に女性を抱いてはいた。しかし、異性との性行為で興奮を覚えたことは、ただの一度もなかった。かと言って、同性が相手であっても同様に性的興奮を覚えることはなかった。

 もちろん、肉体的な快感から射精することはできたので、幸いこれまでに相手に不審に思われたことはなかった。だが、そのたびに心の中にぽっかりとした穴が空いていくような虚しさを感じていた。そして、その穴は埋まることなく大きく広がり、いつしかセックスをするという行為が、苦痛になるまでになってしまっていた。


 剣が【聖剣エクスカリバー】として、この地に降臨したのはそんなときだった。


 聖剣の使用で肉体が入れ替わるという体験には心底驚かされたが、剣との感覚共有はエドヴァルドにかつてない悦びを与えてくれた。剣がこの世界で新しいものを発見するたびに伝わってくる感動。剣が人々と触れ合うたびに感じる心の温かさ。剣が楽しそうに笑ったときに感じる幸福感。


 剣が見たり聞いたり感じたりした情報と、そのとき彼に芽生えた感動を、エドヴァルドは毎日のように享受した。彼にとって、これほどまでに刺激的で官能的な日々を過ごすのは、生まれて初めてのことだった。


(んっ♥ はぁ……、んはっ、はぁ……、あ゛ぁっ♥♥)


 そんなエドヴァルドにとって、剣が彼の肉体を使用して初めてのセックスを行った際に、感覚共有で伝わってきた刺激は未知のものだった。


 経験したこともない凄まじいまでの快感と感動の渦に、エドヴァルドは眠りから覚めた瞬間、脳髄が蕩けそうになった。すぐに自分の本来の肉体がセックスしているのだと直感した。今まで自分が行ってきた性行為では味わうことのなかった、圧倒的な快楽。

 剣が兵士たちに肉体を舐め回されるたびに感じる、背筋を駆け上がるゾクゾクした気持ち良さに、口から熱い吐息が漏れるような感覚に陥るエドヴァルド。


(あっ、あ゛ぁっ、すごいぃ……。これが、本当に私の知るセックスなのか……? ああぁっ、あふぅうっ……、ああ゛あ゛ぁ~っ♥)


 聖剣には当然ペニスは無いが、もしもあったとしたら、エドヴァルドはその先端を激しく濡らしていたに違いない。それほどまでに、彼はセックスによる快感に酔い痴れていた。


 剣が兵士に肉棒をしゃぶられる感覚。男のアナルに男根を突き入れるときの、全身を貫くような、痺れるような感覚。そして何より、頭が真っ白になるほどの絶頂感──。


 剣を通して伝わる、数え切れないほど多くの男たちの、欲望が詰まった精液の熱量。そのマグマのような熱さとむせ返るような臭いが、エドヴァルドの心を満たしていく。

 無性愛者である自分ではおそらく永遠に感じることができなかったであろう、強烈な多幸感に包まれながら、エドヴァルドは何度もオルガスムスを味わい続けたのだった。




「聖騎士長、いえ聖剣殿。本当に、このまま聖騎士長の前で性行為に及んでもいいのでしょうか……?」


 いつも冷静な姿勢を崩さない、副聖騎士長のグンナル。しかし今、そんな彼の眉尻は下がり、泥人形が溶けたような情けない表情で剣を見つめている。


「うぅん……、私にもよく分からんが、どうやらエドは怒ってはいないみたいだ。むしろ何かを期待しているような……。だから、きっと大丈夫だと思う」


「そ、そうなんですか? それなら良いのですが……」


 とは言え、グンナルだけではない。数十人いる兵士たち全員が、部屋に押し掛けてきたときの勢いなどどこへやらといった様子で、隅っこに固まって戸惑っている。


(お前たち、何を躊躇ってるんだ? 早くしろ。私が許すと言っているんだぞ)


 このままでは埒が明かない。そう考えた剣は、おもむろに服を脱ぎ始めた。ゆっくりと、筋肉の動きが彼らの目に艶めかしく映るように。


 一日部屋を離れないようエドヴァルドに言われていたせいで、今日は湯浴みもしていない。タンクトップを床に投げ捨てると、汗をかいた剣の体からムワリと雄の臭いが立ち昇った。


 その光景を目にした兵士たちは、獲物を捕らえようとする肉食獣のように、ゴクリと喉仏を動かした。股間はテントを張っており、皆一様に勃起しているのが見て取れる。

 しかし、彼らはなおも動かない。ならばと、剣はさらに露出を増やしていく。ズボンを下ろし、紐パンに手を掛け、ジワジワと紐を引っ張っていく。ついには辛うじて陰部を隠していた布が、ハラリと地面に落ち、聖騎士長の鍛え抜かれた裸体が兵士たちの前に露わになった。


 その瞬間、兵士たち全員の視線が一斉に彼の下腹部へと注がれた。そこにあったのは、天に向かってそそり立つ、巨大な雄の象徴。聖騎士長であるエドヴァルドの体格に見合った太く長い剛直は、臍に届かんばかりに怒張しており、ビクビク脈打ちながら大量の先走り汁を垂れ流している。そのあまりにも淫靡で、匂い立つようなフォルムを見ては、もはや我慢できる者は室内には誰一人としていなかった。


──もう我慢できません、聖騎士長! 失礼しますっ!!


 一人の兵士が剣の背後から抱きつくと、両手を前に回し乳首を摘まみ上げた。


「はああぁんっ……♥」


 突然の刺激に、剣は低く唸るような猫なで声を上げてしまった。さらに別の兵士がダイブするように前から覆い被さってくると、剣の大きな桃尻を掴み、揉みしだいてきた。そしてそのまま首筋に舌を這わせ、さらには太腿を撫で回しながら、尻穴を指先で弄り始める。


「ん゙ぬぅっ……、ふはああぁっ♥♥」


 複数の箇所を同時に責められ、剣は堪らず喘いでしまう。だが、それだけでは終わらない。他の兵士たちも堰を切ったように群がり始め、剣の身体に手を伸ばしたのだ。


──ああぁっ、すごい……。相変わらず、なんて素晴らしい肉体なんだ……


──聖騎士長の立派なおチンポ、たまりません……!


──聖騎士長のでっかいケツ、最高です……ッ!



 あっという間に、剣は兵士たちに取り囲まれてしまった。


 あっちからもこっちからも手が伸びてきて、全身をまさぐられる。筋肉で盛り上がった胸を吸われ、大きく外に張り出した尻肉を揉みしだかれる。丸太のような腕や太腿に、熱く、硬くなったたくましい男たちの肉棒が擦り付けられる。野太い喘ぎ声を漏らすしかない口に貪りつかれ、口内をねっとりとした舌で蹂躙される。


 彼らのセックスを知らない他者が見れば、なんと激しい乱交だろうと驚くことだろう。しかし、性欲の強い兵士たちにとってはこれが当たり前なのだ。


 しかし、剣はいつも以上に興奮していた。全身が蕩けて無くなりそうなほどに心地が好い──。


(んお゛っ♥ ん゙ほっ♥♥ ふぬお゛ぉぉぉ♥♥♥)


 エドヴァルドの感情が、電流のように剣の脳髄に流れ込んでくる。性欲の渦に飲み込まれ、溺れてしまいそうな彼の意識。近くにいるためか、これまでにないほどに彼らの心は同調し、強く結び付いている。まるで、肉体すべてが性感帯になったようだ。


 剣は、今まさに自分が男として最高の快楽を得ていることを実感した。エドヴァルドもまた、今まで味わったことのない多幸感に酔い痴れている。自分の意志とは関係なく、勝手に口から漏れ出るだらしない声。聖騎士長の肉体を操っている自分の口から溢れ出る、色っぽさの欠片もない獣のような喘ぎ声が、ますます剣を昂ぶらせる。

 そして、王国を守護する最強の聖騎士である彼の尻穴が、いとも容易く兵士たちの太い指によって解され、拡張されていく。


「うおおおっ! 聖騎士長のおマンコいただきます!!」


 そう言って兵士の一人が腰を突き出すと、一気に根元まで竿を挿入した。先走りで濡れた彼の肉棒が、剣の腸液と絡み合い、ズブブッと内臓を擦り上げながら侵入してくる。


「んほお゛お゛お゛~~~ッ♥♥♥」


(あ、熱い……♥ 腹の中が、焼けるようだっ……はあぁあんっ♥)


 二人が感じているのは、痛みではなく快感だった。太く硬い男のモノが、自らの中に入ってくる感覚。本来なら、異物を受け入れるべきではないはずの場所を、無理やり押し広げられる圧迫感。自分よりも弱い者に組み敷かれている屈辱と敗北感。そして、それらを上回る圧倒的な充足感。

 聖騎士長である自分が、男のチンポを捻じ込まれ、よがり声を上げてしまっている。その事実が、剣のマゾヒスティックな欲望を満たし、そんな彼の感情がエドヴァルドにも伝播する。


 脳味噌が、直接チンポでかき混ぜられてしまったような錯覚に陥るほどの強烈なエクスタシー。その快楽に、二人の理性は完全に吹き飛んでしまった。


「もっとだ! もっと突いてくれぇえっ! 私を滅茶苦茶にしてくれぇ!!」


 剣が野太い声で叫ぶ。自分の思いか、それとも伝わってきたエドヴァルドの心の声か。もはや区別などつかない。それほどまでに彼らはセックスに狂っていた。


「ああぁっ、聖騎士長……! そんなに締めつけられたら、俺、もう我慢できません……!!」


 兵士の──、精力に満ち溢れた若い雄の猛る肉棒が、聖騎士長の前立腺をゴリゴリと押し潰しながら、一際大きくブルリと震えた。次の瞬間、どぷりと濃厚な白濁液が腹の奥底に注ぎ込まれる。


「ぬぐおおぉおっ♥♥ イクっ!! イッグウゥウッ♥♥♥」


 その衝撃的な熱さと勢いに、剣は一瞬にして絶頂へと昇り詰めてしまった。膨らみに膨らんだ睾丸は陰嚢の中で暴れ回り、血管を浮き上がらせてグロテスクに脈打つ竿が、ビュウビュウと噴水のように大量のザーメンを撒き散らす。そして、その光景を目の当たりにした他の兵士たちも──。


──おおぉっ! 聖騎士長!! 私もイキますっ!!!


──俺も、イクぞぉおッ!!!


──ぬあ゛ぁっ、次は俺が聖騎士長のケツマンコに種付けしてやる……ッッ!!


 次々と剣の肉体に向けて吐き出される、熱くて濃い、男たちの子種汁。それらは聖騎士長エドヴァルドの鍛え上げられた肉体に降りかかり、ドロリとした白い粘液の滝となって彼の肌を汚していく。


 全身が、男たちの体液で染め上げられる。口内を舌で蹂躙される。乳首を摘まれ、尻を揉まれ、肉棒を擦られ、アナルをペニスで貫かれる。全身のありとあらゆる箇所を犯される。人の肌の温かさ、唾液の温かさ、精液の温かさ。そのすべてが、性行為に対して鬱屈としていたエドヴァルドの心を溶かしていく。自分も人を愛することができる、愛されることができるのだ。


──ああぁっ、聖騎士長! 好きです! 大好きです! 愛しています……!!


──ずっと、私たちと一緒にいてください、聖騎士長……!


(あぁ……! 嬉しい……。私は、こんなにも多くの者たちに、求められているのか……)


 彼は、生まれて初めて、誰かを愛したいと思った。同時に、自分が多くの人に必要とされているということを知った。


 心から自分を慕ってくれる兵士たちの言葉に、エドヴァルドの胸が熱くなる。そして、エドヴァルド自身もまた、彼らを心の底から求めていた。彼らのためならば、命を投げ出すことさえ厭わない。そう思ってしまうほどに、彼らのことを深く想っている自分に気が付いた。いつの間にか、自身の肉体に戻っていたエドヴァルドは、その瞳から一筋の涙を流していた。



***


 剣が【聖剣エクスカリバー】として降臨してから、二年の月日が流れた。


 愛を知ったエドヴァルドと剣の繋がりは、ますます強固なものとなり、引き出される魔力も増していった。聖剣を一薙すれば、大地が震え、目の前にいた魔物たちは気付く間もなく両断される。天に向かって剣を振れば、雷雲の中から無数の稲妻が降り注ぎ、邪悪な魔族たちを黒焦げに焼き払う。まさに、神の御業とも言うべき強大な力だった。


 強く結び付いた聖騎士と聖剣の前に、魔王は為す術なく倒され、世界には平和が訪れた──。




(それじゃあ、ちょっとやってみるね~)


 軽いノリで、聖剣の状態の剣が魔法を唱える。次の瞬間、まばゆいまでの光が彼を包み込み、聖剣である彼の形状が変わっていく。周りにいた兵士たちが目をしばたたかせたあとに現れたのは、全裸のエドヴァルドの姿だった。


──おおおぉぉ!! 聖騎士長が二人いるぞっ!


──これが、聖剣殿の新しい力なのか!


「どうだ、エド? これでお前が聖剣になったときも、動けなくて困ることはないぞ」


 普段から仏頂面のエドヴァルドと同じ顔になった剣が、ニッコリと笑う。魔王を討ち倒したとき、【聖剣エクスカリバー】は彼が内包していた膨大な魔力を吸収、自らの糧とし、新たな力を覚醒させた。それが人化の魔法だった。

 エドヴァルドと瓜二つの容姿に変わった剣は、こうして自由に自らの意志で動くことができるようになった。ただし、聖剣としての能力は使えないので、戦闘時には元に戻る必要があるのだが。


「う、うむ……。分かったからとりあえず、服を着てくれないか? 皆が見ているだろ……」


 裸のままニコニコと笑いかけてくる、自分と同じ姿をした剣の前に立ち、兵士たちから隠すようにしながらエドヴァルドは顔を赤くしている。そんな彼に剣は抱きつくと、素早く彼の着ている衣服を剥ぎ取った。


「お、おい! 何をするつもりだ、剣っ?!」


「ちょうどいいじゃないか。この人化の魔法が、どれだけ細かいところまで再現できているのか、試させてくれよ」


 全裸になった、聖騎士長エドヴァルドの肉体。鏡に映したように瓜二つの戦士が、向かい合っている。日々の鍛錬によって鍛え上げられた、無駄な贅肉のない、彫刻のような美しい肉体美に、精悍な顔つき。凛々しい眉も、高い鼻も何もかもが同じ。古傷やほくろの位置、丸太のような極太の腕に浮かんだ血管の太さまでもそっくりである。

 そして、股間のイチモツの大きさや陰毛の生え方もまた、当然のことながら完全に一致していた。ただ一つ違うのは、その表情だけ。剣が浮かべているのは、楽しげに微笑んでいるような明るい笑顔だが、エドヴァルドの顔に浮かんでいたのは、恥ずかしさと困惑が入り混じった複雑なものだった。


「も、もういいだろう、剣。お前の魔法が凄いのはよく分かった。だから、そろそろ服を着ような?」


 エドヴァルドは腰を屈めて、床に放り投げられた自分の服を掴もうとする。それを見た剣は、副聖騎士長のグンナルに目配せをした。頷いたグンナルが、すかさずエドヴァルドの背後に回り、彼を羽交い絞めにする。


「何をしている、グンナル?! 離せっ!!」


 突然の出来事に身を捩りながら抗議しようとするエドヴァルドだったが、その言葉は途中で遮られた。剣が彼の唇を、同じ形の唇で塞いだのだ。


「んっ!んむぅうう……ッ♥」


 そのまま、貪るように激しく口内を犯し始める剣。舌が絡み合い、唾液が混ざる淫らな水音が辺りに響き渡る。生温い、ざらついた感触が口内を刺激し、エドヴァルドの背筋にゾクゾクとした快感が走る。粘膜が触れ合い、二人のDNAが交じり合う。硬くなった同じ太さの二本の肉棒の先端が擦れ合い、同じ濃さ、同じ量の先走りが溢れ出す。


 体温が、唾液の味が、身体から放たれる匂いや遺伝子までもがコピーされている。


 そして目の前にいる自分と生き写しの男が、自分を愛してくれているのだと伝わってくる。その事実に、エドヴァルドは興奮を抑えきれなかった。


(あぁ……。剣、お前も私を愛してくれるのだな)


 心の中でそう思った瞬間、剣のまなじりが緩んだ。それを見て、エドヴァルドも嬉しそうに目を細める。拘束を解かれた彼は、剣を強く抱き締めた。



 王国に仕えて良かった。聖騎士長になって良かった。聖剣エクスカリバーに──、末成剣に出会えて本当に良かった……。


 どこかでずっと感じていた孤独が、完全に癒されたのを感じた。誰かを心の底から愛することができるということを知った今、自分がどれだけ満たされていたのかを彼は理解した。


「ありがとう、剣……。私は幸せ者だな」


「私のほうこそ──、いや僕もだよ、エド」


 二人は再びキスを交わす。今度は触れるだけの優しいものだ。


 周りを見渡すと、全裸の兵士たちが、抱き合っている彼らの姿を見守っていた。うっすらと涙を浮かべる者、笑顔で拍手を送る者、中には股間を膨らませている者もいる。心が繋がっていなくても、彼らが次に望んでいることが分かり、エドヴァルドは苦笑する。


「まったく……。仕方がない奴らだ……」


「ハハハ。どちらが先までもつか、勝負でもするか?」


 剣の言葉にエドヴァルドは小さく笑うと、彼らに手を差し出した。


「よし、じゃあ次はお前たちの番だ──」


(了)

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