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「そろそろ、警察のほうにもなにかしらのダメージを与えてやらないといけないな……」


 誰もいない、星の瞬く夜空にふわふわと浮かびながら、私はひとり呟いた。この状態になってから、明らかに独り言が増えたと思う。誰かに聞いてほしいのかもしれない。どこか心の奥底で、寂しいと感じる気持ちがあるからだろうか──。



 一年前、私は自宅のマンションから転落して死んだ。正確に言えば、殺害されたのだ。


 フリーのジャーナリストとして、とある大物政治家の不正を暴こうとしていた矢先の出来事だった。自宅で原稿の仕上げをしている最中、不意に鳴ったインターホンに、特に警戒することもなく扉を開けると、すぐさま屈強な男たちに囲まれ、身動きをとれない状態にされてしまった。その後ろからひょいと顔を出したのは、件の政治家の秘書だった。パソコンから不正に関するデータは削除され、記録していたUSBも持ち去られてしまった。こんなドラマのようなことが本当にあるのだなと思いながら、私はベランダから呆気なく突き落とされたのだった。


 気が付けば、私は宙に浮いて、横たわる自分の死体を見下ろしていた。いわゆる幽霊になったのだ。死ねば天国か地獄に直行するか、無に帰するものだと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。かと言って、周りには自分と同じような幽霊仲間が徘徊していなさそうなので、もしかすると自分は特別な存在なのか。


 元来、生に執着もなかった私が、死んだ直後に自分の亡骸のそばで、そんな楽天的なことを考えていると、マンションの入り口から私を殺害した男たちが出てきた。私を突き落としてから、まだ数分も経っていないだろうに手慣れたものだ。おそらく、私が自殺したように見せかけるために、パソコンにとってつけたような遺書でも残したことだろう。私は独り身で、両親はすでに鬼籍に入り天涯孤独の身であったし、数少ない友人や仕事関係の仲間の中には、私がゲイだということに薄々気付いていた者もいると思う。自殺する理由は山ほど考えつくはずだ。


 まるで他人事のように自分の死と向き合っていた私だったのだが、ある光景を見たことで、状況が変わった。秘書が口元を歪め、薄く笑ったのだ。その瞬間、私の心の中はどす黒い感情で塗りつぶされた。復讐だ──。この男たちに、人を殺めたことを後悔させるほどの復讐を。いや、こいつらだけではない。悪事を働くすべての犯罪者たちを、私が処刑するのだ──。それがまさに私の使命であり、彼らに与えられるべき神罰なのだと。


 思えばその時、私は悪霊という存在になってしまったのかもしれない。


 彼らの車に驚くべきスピードで付いていった私が着いた先は、やはりあの政治家の自宅だった。無理だとは分かっていたものの、一撃でも見舞ってやろうと彼に殴りかかった瞬間、私は彼の醜く弛んだ肉体へと吸い込まれてしまった。目を開けると、私は目の前にいる秘書たちに認識される存在となっていた。政治家の肉体を、いや肉体だけでなく脳の中身まで自由に操れるようになっていたのだ。


 私は歓喜に打ち震えた。他者に憑依して、悪事に手を染める人間を、断罪する力を手に入れたことに。動画投稿サイトに【処刑人X】なるアカウントを作成し、憑依した政治家の記憶を隅々まで探って、すぐさますべての悪事をネット上に暴露してやった。それに加えて薬で眠らせた秘書のケツ穴を、男のチンポで犯しに犯してやった。政治家の金玉の中が空になると、彼の下で働く屈強な部下に憑依して。さらにその部下のチンポが萎えると、また別の部下に憑依して……。とにかく、私を死に至らしめた秘書を掘って掘って、掘りに掘りまくってやった。そうして男たちの精子で、腹の中がパンパンになるまで犯された秘書に憑依した私は、私を殺害した罪を警察に告白して、彼を監獄送りにしてやったのだった。



 それから一年。私は悪事を働く者たちに憑依しては、カメラの前で彼らの行ってきたすべての罪をぶちまけ、あとで見返せば死にたくなるほどのハードなオナニープレイや、悪人同士の公開セックスなどの変態行為を行い、彼らに社会的制裁を与えてきた。そして今、私の目は、これまで彼らの不正に目をつぶり続けてきた警察へと向いていた。次の私のターゲットは、彼ら警察組織だ。


 愛する妻子のいる、実直で精悍な顔つきの刑事。ゴリゴリの体育会系の中を過ごしてきたであろう、真面目な男をカメラの前で丸裸にしてやろう。きっと、警察の威信は失墜するに違いない。


「くっくっく……楽しみだ」


 どちらかと言えば、彼の部下である男のほうが好みではあったが、部下に関しては別の方法で楽しませてもらおう。

 その近い未来を想像して頬を緩ませた私は、目の前でパツパツのスーツに身を包んだ、偉丈夫な刑事の肉体の中へと、自身の魂を滑り込ませていった。



***


「ハロー、Yootube! 皆さん、いかがお過ごしでしょうか~?」


 耳馴染みのある声が、薄ぼんやりとした頭の中に響いてくる。どこか安心感を与えてくれるような、低音で男らしい声。英雄はその声がたまらなく好きだった。


「今日断罪されるゲストは、いつもとは趣向を変えて、悪人ではございません。【処刑人X】の正体を追いつめようと奔走していた私、T警察署の刑事、織田信之(おだのぶゆき)警部で~す!」


 その言葉で、一気に英雄の脳が覚醒する。目を開けて、上半身を起き上がらせようとしたところで、もんどりうって地面に倒れ込んだ。両手足が縛られている。おまけに、口には猿轡をかませられてしまっていた。


「ふがっ! ふぐー、へんはいっ!! はひひへふんへふは?!(先輩っ!! 何してるんですか?!)」


「おっと、元気な飛び入りゲストも加わってくれるようですね。紹介しましょう。私の後輩の羽柴英雄(はしばひでお)くんで~す! 今日は我々、刑事コンビで放送をしていきたいと思います。それでは……、Yootube公開生処刑スタート!!」


 生真面目でいつも仏頂面の織田の、満面の笑顔。スーツにワイシャツ、スラックスを脱ぎ捨てた下着姿の彼が、スマホに向かって子供のようにピースサインを作っている。きっとこれは夢なのだ。目が覚めたばかりの英雄は、再び夢から目覚めることを心から祈った。




「おい、起きてるか英雄?」


 威圧感の籠もった先輩の低い声に、背筋がピンと伸びる。ここ数日、張り込みをする機会が重なったせいで疲れが出たのか、少しウトウトとしていたようだ。そんな英雄に溜め息を吐きつつも、しょうがないやつだなと言いながら、織田は缶コーヒーを手渡してきた。顔は強面でいつも表情の読めない彼だが、後輩思いで頼りになる先輩の一人である。


「へへへ、あざっす先輩」


 時間が経って、少し温くなった甘めのコーヒー。いかにもブラックを飲みそうな顔なのに、苦いのは苦手という隣に座る男のギャップに、毎度のことながらグッときてしまう。英雄はチビチビとコーヒーを啜りながら、運転席でハンドルを握る織田を視界の端に収めた。

 重要な現場へと向かっているのだから、真剣な眼差しなのは当然のことではあるが、それも相まって今日の彼は男前度が高い。四十になったばかりというその顔には深いシワが刻まれており、やや老けては見えるものの、肉体は日々のたゆまぬ鍛錬によって鍛え上げられていて、スーツは窮屈なのではと思わせるほどに張り詰めている。

 うっとりとした表情で、ヒゲを蓄えた織田の横顔とパツパツになった太股を眺めていると、静かに車が停止した。


「ここが、被疑者のアジトと思われる建物のひとつだな……」


 織田がスマホのメモ機能を見ながら、独り言のように呟く。険しい顔の眉間にますますシワが寄っていく様子に、英雄はゴクリと生唾を飲み込んだ。


 一年前から、突如としてとある動画投稿サイトで生配信をし始めたアカウント【処刑人X】。悪事を突き止めた人間が、それを暴露するというのなら、それほどインパクトのあるものではない。驚くべきなのは、悪事を犯した人間本人が、自ら【処刑人X】として、自身の罪を曝け出したのである。それも一人や二人ではない。これまでに、のべ五十人近い人間が、カメラの前で己のすべての罪状をカミングアウトしてきたのだ。


 始めは大物政治家。その後を追うように企業の重役や、有名俳優。果ては大リーガー候補の野球選手からJリーガーまでと、なんでもござれだ。なかには体罰教師や、ネグレクトを行う両親などもいたため、【処刑人X】を正義の味方と称して擁護する一般人も少なくない。

 警察もまた、彼だか彼女だか判別のつかない相手の恩恵にあずかりながら、複雑な思いで相手を追い続けてきた。


 だが【処刑人X】を名乗ることになった被害者たちには、ことごとくその前後の記憶が残されていなかった。

 催眠術か洗脳によって被害者を操ったのか、それすらも分からず、雲を掴むような思いで捜査してきたなかで頼ることができたのは、動画が撮影された場所に室内が似ているという一般人からの通報だった。


 そしていま、英雄と織田が目にしている建物が、その内のひとつだった。


「先輩、行きましょう! 俺がホシを引っ捕まえて、みんなをアッと言わせてやりますよ!!」


 強がった物言いが、少しわざとらしく聞こえただろうか。恥ずかしくなり、握った拳の持って行きどころに困っていると、ポカンとしていた織田が柔和な笑みを浮かべて応えた。


「そうだな、任せたぞ。まあ、でもお前はまだ俺にも勝ててないがな」


 織田は口角を上げると、楽しそうにくつくつと笑い声を漏らした。少し心外ではあるものの、緊張の糸はどうやら解れたようだ。


 二人は車から降りると、建物の敷地へと足を踏み入れた。建設ラッシュに湧いた頃に完成間近まで建てられ、放棄された低階層のマンション。時折、ホームレスが住み着いているのではないかという通報がある建物だ。モデルルームとして解放されていた部屋もあるため、家具がある程度揃えられたところもいくつかあるらしい。実際、マンションの外側からも、カーテンが掛けられているのが何部屋か確認できる。


 英雄と織田は視線を合わせると、まず一階で唯一カーテンの掛かった奥の部屋へと向かった。

 鍵は掛かってはいたが、前もって所有者からマスターキーを預かっている。音を立てないように錠前を回すと、静かに固く閉ざした扉を開いた。それと同時に漂ってくる匂い。新築ではあるものの、新しい匂いよりも長らく人が足を踏み入れていない、独特の嫌な香りが鼻をつく。


 二人は手前と奥に分かれて、部屋を確認することにした。英雄の心臓がドクドクと嫌なくらいに高鳴る。あれほど大見得を切ったと言うのに、情けなくなってくる。

 私服警官は、拳銃の貸与も余程のことがない限り許されていない。もしも、扉を開いた瞬間に襲われたら……。脂汗を額に滲ませながら部屋を確認していき、とうとう一番奥の部屋の扉をゆっくりと開いた。


 その部屋からは人の匂いがした。どちらかと言えば、英雄の好みの匂い。男性モノの香水のような、重厚感のありながら落ち着くような大人の香り。それも、どこかで嗅いだことがあるような。


 部屋の真ん中には三脚が立てられており、それは被疑者の遺留物に間違いないものだった。

 ここが、これまでに使用された現場だ。興奮した英雄は、手前の部屋を捜索していた織田を呼ぼうとした。だがその瞬間、膝から崩れ落ちた。何が起きたのか分からなかった。


 部屋には誰もいなかった。神経を麻痺させるようなガスが充満していたのか。それならば、織田にも伝えなければ──。意識を失いそうになるなか、誰かに抱えられるような感覚を覚えた。瞬間、彼の鼻孔をほのかな香りが襲った。そうだ、部屋に漂っていたのはこの匂いだ。


──ああ、英雄。俺のために、ここまで這ってきてくれたのか? なんて可愛いやつなんだ……


 頭上から聞こえてくる、優しく染み渡るようなその低い声を聞きながら、英雄は微睡みの中へと落ちていった。




「ん゙ぬっ、ふっ! ぐうぅ……」


 屈強な中年男の野太い喘ぎ声が、生活感の無い室内に木霊する。その声の発生元である織田は、ローションをたっぷりと馴染ませた太い指を、肛門の奥深くまで挿入して、抜き差しを繰り返していた。二本から三本へと数を増やし、初めて弄るアナルの内部を、拡張するように丹念に解していく。これまでに感じたことのない快感に、ぶらぶらと揺れるイチモツからは、先走り汁が糸を引いて床に垂れ流しになっている。


「ふっ! うぅ……。お待たせっ……してすみません、みなさん。よっぽどケツにモノを入れたくないのか、体のほうが反抗しちゃって……んっ、いるみたいです。でも、そろそろ……いいかな?」


 ダメ押しとばかりに穴の中を掻き回すようにして指を引き抜くと、彼は床に転がっていた大振りのディルドを拾い上げた。それにローションを念入りに馴染ませると、尻の穴へと押し当てて、腰を落としていく。目を瞑り、眉間にシワを寄せると、織田は息を吐きながら少しずつ巨大な肉棒を飲み込んでいった。


「ふうぅ……ぬ゛っ、んん゛っあぁ゙……!」


 柔らかく解れ、ローションをたっぷりと馴染ませていても、その竿は太すぎた。だが、ゆっくりと時間をかけることで、メリメリと音を立てながらも穴の中へと吸い込まれていく。

 やがて、亀頭が腸壁を擦り上げながら押し広げ、張形が根元までズッポリと飲み込まれると、織田は口の端から涎を垂らしながら満足そうな表情を浮かべた。


「はあ゙っ! ああ゙ぁ……、み、みなさん入ってますよぉ。太くて立派なおチンポが、正義感に燃える中年刑事の俺のケツにぃ……!! 被疑者には屈しませんが、太いチンポにはっ……くっ、屈してしまいそうです!」


 そう言うと、織田はゆっくりとした動作でピストンを開始した。


「あ゛、あぁっ、良い゛っ! 気持ち……良い!! 妻も娘もいるっていうのに、なんて俺は淫乱なんだ! デカマラ最高ッ!!」


 精悍な織田の顔はすでに快楽に蕩け、だらしなく舌が口からはみ出している。一心不乱に腰を上下させながら、チンポを揺らす彼の姿は、もはや警察官には到底見えない。

 そんな淫猥な上司の姿を、英雄は床に横たわったまま虚ろな目で眺めていた。催眠術か、それとも洗脳か。どちらにしても、あれほど悦びに満ちた表情でアナルオナニーに興じる彼の姿など、今まで想像だにしたことがなかった。そして見たくもなかった……はずだった。今日この日までは。だが、その狂気じみた光景が、英雄の心をジワリジワリと蝕んでいく。


 織田が巨根ディルドを菊門の中に出し入れする度に、グチュグチュといやらしく響き渡る音。英雄はその音を聞けば聞くほど、自身の下半身が熱を帯びていくのを感じていた。

 あの太く長いペニスの張形が、もしも自分のモノだったとしたら。先輩の尻穴を突き上げるイチモツが自分のモノだったとしても、彼はあんなにも幸せそうな顔をするだろうか?


 こんもりと小山のように膨らんだ英雄のスラックスの表面に、うっすらと黒ずんだ染みが広がっていく。それは紛れもなく、彼が織田の痴態に興奮していることの証明だった。


「んお゛っ、んおおっ! イクぞ、イグッ! みんな見てくれぇ、淫乱中年刑事の俺が、チンポに屈する姿をぉッ!!」


 その叫びと同時に、織田の体がビクンと跳ね上がり、パックリと口を開けた彼の鈴口から勢いよく白濁液が飛び出した。それはまるで噴水のような放物線を描きながら、天井にまで届かんばかりに噴き上がる。練乳のように濃いザーメンが、辺り一面に飛び散り、床にぶつかってビチャビチャという水音を響かせた。


「はーっ、はっ、はっ……。ふぅ……。ハァァ、スッキリした……」


 織田は荒くなった呼吸を整えるように深呼吸すると、ゆっくりと立ち上がった。そして、英雄のほうへと視線を向けると、いつもと変わらない慈愛に満ちた笑みを浮かべた。


「俺のケツオナ楽しんでくれたか、英雄? 楽しんでくれたよな、そんなにチンポ、元気にしてくれてるんだもんな?」


 笑顔のまま英雄の前にしゃがみ込むと、織田は英雄の股間の膨らみに手を置いた。その優しい触れ方に、英雄は思わず体を震わせる。先輩の分厚い掌が、優しく包み込んでくれている。それだけで射精してしまいそうになってしまう。


「こんなにも我慢汁でズボンを濡らして……! 本当に可愛いやつだな、お前は。大丈夫だぞ、すぐに楽にしてやるからな……」


 慣れた手つきでベルトを外し、英雄のスラックスのチャックを開ける織田。そしてパンツをずり下ろすと、中からビンビンに勃起した肉棒が、雫を飛び散らせながら姿を現した。


「ん゛ん~!! むふっ、んむ~~!!」


「あぁ……! 英雄のチンポだ。これがずっと欲しかったんだよ。この太さ……、長さ……。血管の浮き出たグロテスクな形……。着替えのときに見たこの光景が、ずっと目に焼き付いてたんだ。はぁ、はぁ……。堪らん……。あぁぁ、舐めたい……。しゃぶりたい……。喉の奥まで飲み込んで、激しく吸い上げて……!」


 彼は舌舐めずりをしながら、英雄の肉棒に顔を寄せていった。鼻腔いっぱいに広がる濃厚で芳しい雄の香りに、すっかり夢中になった様子で、クンカクンカと鼻を鳴らしながら頬ずりを繰り返す。


 憧れの先輩──、愛する先輩が、今まさに自分のモノを口に含もうとしている! その事実だけで、英雄は達しそうになってしまう。その熱い舌先が、亀頭をねっとりと這い回り、尿道口を押し広げるようにして侵入してくる。


「んん゛っ! ん゛んンむぅッ!!」


「はぁ……! あぁ、美味いなぁ……、英雄のチンポ。俺のことを思って出してくれた我慢汁、しょっぱくて苦味があって……最高の味だぁ……」


 織田は愛おしそうに吐息を漏らすと、貪るように英雄のイチモツにしゃぶりついた。大きく開けた口で極太の竿を頬張り、舌先で裏筋を刺激しながら、喉奥まで使って激しく吸引する。それによって与えられる快感は凄まじく、フェラチオが初めてとは到底思えないテクニックだった。あまりの心地好さに、英雄は腰が抜けそうになる。だが、そんなことはお構いなしといった風に、織田の奉仕は続く。


「んン゙ン゙~~!!!」


「ああ、出るのか? いいぞ、全部飲ませてくれ! 英雄の子種、全部俺にッ!」


 その言葉に次いで、勢いよく吸い上げられた英雄のモノが、一段と膨張しドクンドクンと脈打つ。次の瞬間、織田の口に大量の精液が注ぎ込まれた。その量の多さに、彼の口から溢れ出した精液が顎を伝って床を汚していく。それでもなお、織田は口を離そうとしない。ゴクンゴクンと音を立てながら、英雄の精を飲み干していった。


「ぷあっ、ゲホッ! はぁ……はぁ。すごいな英雄、こんなにいっぱい出して……。まだ、全然萎えてないじゃないか」


 ようやく満足したのか、織田は英雄の口にかませていた猿轡と、手足を縛っていたロープを解いて、顔を近づけてきた。声が自由に出せるようになれば、言いたいことは山ほどあったはずなのに、頭の中がボーッとして言葉にならない。ただ何かを言おうとして開いていただけの英雄の口に、おもむろに織田の口が重なった。生温い彼の舌に自身の舌が絡めとられ、唾液が──、織田のDNAが体内に侵入してくる感覚に恍惚としてしまう。だが──


「んむっ……、んふ。チュッ、クチュッ。プハッ、ハァ……先輩……、やめてくださいっ!」


 英雄の瞳からは涙が溢れ出していた。これまでずっと夢見てきた、愛する人との愛撫。この機会を逃せば、二度とこのようなシチュエーションが訪れることはないだろう。しかし、こんなことはあってはならないのだ。妻子のいる身である織田が、たとえ被疑者によって操られていたとしても、それに便乗してことに及ぶなどということは。


 顔を背けた英雄を見て、織田の表情は一変して暗いものになった。


「すまん、英雄……」


 先輩、そんな顔をしないでください。そんな顔をされると俺は──。


「お前が嫌なら、これ以上は無理強いはせん。だけどな、これだけは言わせてくれ」


 織田は英雄の肩を掴むと、真っ直ぐに彼の目を見つめた。その目は真剣そのもので、これから発する言葉が操られたことによるものではないのだと思わされてしまう。本当に心の奥底から出る言葉なのではないかと。


「俺はお前を愛している。お前のことが好きで好きで仕方がないんだ。だから、お前のためならばなんでもできるし、どんなことでもしたいと思う。それがたとえ、刑事としての信念に反することだとしてもな。それくらい、俺は本気でお前のことが好きなんだ!」


「先輩……」


「俺みたいなおっさんに迫られて、気持ち悪いと思っているかもしれんが、これが俺の本心だ……」


 厳つい顔を赤らめ、恥ずかしげに目を反らした織田。その姿を見た瞬間、英雄の中で抑え込んでいた感情が一気に込み上げてきて、爆発してしまった。


「そんなこと言うなんてズルいっスよ! そんなことを言われたら……。そんな風に思われたら……、俺だって……。俺だって、ずっと前から……!」


 もうどうなってもいい。この自分の情けない姿が全世界に晒されても、今が幸せならそれでいい。そう思いながら、英雄は泣きじゃくりながら自分の想いを吐き出していった。


「俺だって……、先輩のこと大好きなんスからぁ!! 先輩とキスしたり、エッチなことしたいって思ってたんス!! 先輩のチンポしゃぶりたいし、先輩のデカマラ突っ込まれたいって思ってた!! 毎日、先輩のことを考えながらオナニーばっかりしてたんですよッ!!」


「ひ、英雄……?」


「俺のケツ穴に、先輩のぶっとくていきり立ったチンポぶち込んでほしいって! 俺のケツマン犯しまくってほしいって! 俺の中にたっぷり種付けしてほしいって!!」


 英雄はゴロンと仰向けになると、自身の尻の穴に指を入れて、くぱぁっと広げて見せた。そして、ヒクつく蕾を見せつけながら続けた。


「ここに欲しいんです、先輩……。どうか、俺の淫乱な雌犬マンコに、先輩の立派な雄チンポ挿れてください……。おっきいカリで前立腺ゴリゴリ擦られながら、奥まで突かれてイキ狂いたいんです……。お願いします、先輩……。俺の身体めちゃくちゃにして、イカせてください!!」


 その瞬間、体にグッと力を込めた織田が、獣のように覆い被さってきた。英雄は、織田のたくましい背中に腕を回しながら、彼の体重を受け止める。先ほどまで雌の顔を見せて己のアナルを弄んでいた織田の顔は、一転して雄の顔つきになっていた。筋肉に覆われた分厚い胸板が肌に擦れ、硬く膨れた乳首が刺激される度に、英雄は甘い声を上げる。


「あぁ……、先輩のオッパイ……当たってる……。すげぇ、硬くなった乳首コリッコリになってて……ああぁんっ」


「英雄……。ああ、英雄……好きだ、好きすぎておかしくなりそうだ。愛してるぞ、俺はお前のことを……」


 織田は自身の剛直を英雄の秘部にあてがうと、ゆっくりとその巨大なモノを挿し込んできた。


「あっ、入ってくるぅ~~ッ!!! 先輩の極太ちんぽぉ~~~~♥♥ あっ、あっ、あっ、あっ、あ゙っ~~~~~~!!!!」


 太く、硬く、そして大きい──。そのすべてが、今まで経験したことのないほどの感覚だった。これまで自分のケツの穴を慰めてきたディルドなど、比にならないほどの熱く脈打った巨根が、英雄の肉壁を押し拡げるようにして侵入してくる。大好きな織田のカリ首が腸内を刺激する度に、彼と一体になったかのような幸福感が全身を駆け巡る。

 織田の体に染み込んだ香水の匂いが、彼の体臭が鼻腔をくすぐる。相棒としてずっと隣で嗅いできたはずの香りが、今はたまらなく官能的に感じてしまう。舌が絡み合い、甘ったるいコーヒーの味が口内に広がっていく。

 脳が沸き立っている。体が燃えるようだ。溶けてなくなりそうなくらいに、全身が熱い──。


「んふっ、んっ、ん゙っ、んん゙っ……。んむっ、ん゙っ……」


 唇を重ねながら、織田が腰を打ち付ける。激しい音を立てながら、何度も何度も英雄の奥を突き上げる。結合部から溢れる愛液が泡立ち、二人の股間をぐしょ濡れにしている。


「英雄、英雄……! 愛してるぞ、英雄!」


「俺も! 俺も愛してます! 先輩、先輩ぃ!!」


 英雄の頭の中には、もはや理性など微塵も残っていなかった。ただひたすらに、目の前の快楽だけを求めることしか頭にはない。これが現実なわけがない。織田の運転する車の乗り心地の良さのせいで見ている、幸せなひとときの夢なのだ。目が覚めれば泡と消える、刹那の幻想に過ぎないのだ。だから今だけは──。


 決して離すまいと大柄な肉体にしがみつき、脚で彼の体をホールドする。汗まみれになりながら必死に腰を振る織田の表情が、英雄の性欲をさらに掻き立てる。ケツの穴をこれでもかというほどに締め付け、無意識に彼のペニスの形を感じ取ろうとしてしまう。


「先輩! 先輩ッ! もっと、もっと激しく俺を犯してください! 俺の淫乱ケツマンコめちゃくちゃにして! 俺のアナル、先輩専用のチンポケースにして、ザーメンいっぱい注いでください!!」


「おぉ゛っ! お前の望み通り、俺のチンポでお前のケツ穴、俺専用のチンポケースにしてやるぞッ!」


 織田はさらにピストン運動を加速させ、英雄の前立腺目掛けて怒張した剛直を叩きつける。大好きな先輩の硬くなった熱い竿が、体の中を蹂躙する。ゴリゴリと腸壁を擦り上げられる度に、高揚感が増して興奮が高まっていく。眼前には操られているなどとは到底思えないような、うっとりとした顔の織田が口の端から涎を垂らしながらこちらを見つめている。たとえ仮初であっても、愛する人が自分のことを愛していると言ってくれている。その事実に、英雄の胸の奥は燃えるほどに熱くなった。


「先輩、俺の中に全部出してください! 先輩の熱い濃厚ザーメンで俺の腹ン中、満たしてくださいッ!!」


 精子で満タンになった玉がヒクヒクと震え、竿の根元までせり上がってきているのが分かる。出る。チンポから、熱く煮えたぎるようなザーメンが。ずっと思いを寄せてきた先輩に、初めて人に使われる穴を貫かれて、種付けされてしまう。そう思った瞬間、英雄の身体は一気に絶頂へと上りつめていった。


「あぁ、イ゛グッ、イグゥウウッ!!! 先輩のデカマラ突っ込まれて、ケツアクメキメちまうぅ~~~~~~っ♥♥♥」


 ブリッジをするようにビクンと背中を仰け反らせた英雄の、ギチギチに硬くなった肉棒の先端から大量の白濁液が飛び出した。同時に織田の巨根が英雄の最奥にまで押し入り、その先端を腸壁に密着させたまま勢いよく射精した。


「おおお゛っ! 出すぞ、英雄ッ!! 孕め! 俺の子種を受け止めろッ!!」


──ビュルルル~~~ッ!! ドプッドピュッ!! ブビューーッ!! ドクンッ、ドクッ、ドクッ、ドクゥッ!!


「ハッ……、あああっ! 出てる……っ♥♥ 先輩の精子、俺の中にィ♥♥ あぁぁぁぁぁぁっ♥♥♥♥♥」


 体内に流れ込んでくる精液の量の多さに、英雄の全身が歓喜に打ち震える。熱く、濃く、そして大量に放たれた織田の子種が、英雄の腸内を満たしていく。まるで彼の遺伝子が己の細胞に染み渡っていくかのような錯覚に、英雄の脳がさらに蕩けてしまう。


──気持ちいい……。ああ、幸せだ♥ 決して叶わないと思っていたことが、ずっと願っていたことが叶ってしまった。先輩に犯されて、中に出されてる……。俺のケツマンコに、先輩の赤ちゃんの素が流れこんできてるんだ……♥♥


 ビクビクと肉体とイチモツを震わせ、感動のあまり涙と涎を止め処なく垂らした英雄は、その余韻に浸りながら意識を手放した。




「……先生、内科までお願いします──」


 不意に聞こえた声に反応して、英雄は目を覚ました。視界には見慣れない真っ白な天井が広がっている。薬品のような匂いに、どこか息が詰まるような空気感。どうやらここは病院らしい。


「ん、おっ? 目が覚めたか?」


 反射的に飛び起きた英雄は、聞き覚えのある野太い声のしたほうへと目を向けた。そこには、ベッドに横になった彼を見下ろすようにして座っている織田の姿があった。いつも通りの仏頂面で、こちらを見つめている。


「え……先輩!? 大丈夫だったんですか?! その、俺、なんて言ったらいいか……!」


 織田が無事だったことへの安堵感と、あの状況に乗じて、ことに及んでしまった罪悪感が混ざった複雑な感情が入り乱れ、うまく言葉が出てこない。そんな英雄を見て、彼は少し困ったように笑った。


「いや、俺はなんともない。心配かけてすまなかったな。それより、お前は何か覚えてるのか? 俺は車から降りたあたりから記憶がなくてな……、お前もそうなんだろ?」


「えっ……?」


 やはりこれまでの被害者と同様、織田もまた、何も覚えていないようであった。まさかあれは本当に夢だったというのだろうか。しかし、それにしてはあまりにリアルすぎる。英雄はふと、思い出したことを口に出した。


「あの、先輩! 生放送は……、俺たちの、その……、記憶が無いときの映像はネットに流出したんじゃないんですか?」


「ああ、それなんだかな……」


 織田が腕を組んで、神妙な面持ちで眉を顰めたのに、英雄はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「捜査会議でも何度か言われてただろ。あれは生放送じゃなくて、動画を流してるんじゃないかって。どうやら、それが当たりだったらしいんだよ。だけど、どうしてか俺らの動画は残ってなかったみたいでな。運が悪かったのか、良かったのか……。あんまり言いたくないんだが、その……な、鑑識の調べによると俺たちヤッちまったらしいんだよ。ナニをな……?」


 苦笑いしながら尻を擦る織田。どうやら尻穴にディルドを挿入していた余韻が、まだ残っているようだ。自分が挿入された側だと勘違いをしている彼に真実を伝えるべきか否か迷ったが、英雄はあえて黙ることにした。


「そう、なんですか……? それはなんて言ったらいいか……。その、捜査本部はどうでしたか? 進展はありましたか?」


 英雄は努めて平静を保ちながら、話題を逸らすことにした。織田は一瞬だけ表情を曇らせたものの、すぐに元の調子に戻って口を開いた。


──先輩は何も知らないんだ。俺だけが知っている。先輩があんなふうに豹変してしまったことを。覚えていてほしかったという思いと、忘れていてくれて良かったという気持ちがせめぎ合う。俺が今、何を考えているのか、この人はこれっぽっちも気付いていないんだ──。


 英雄が目覚めたことを、上司に電話で伝えている織田の背中を眺めながら、英雄は胸の奥に生まれた小さな疼きを押し殺した。



***


 ここまで英雄のことを愛してしまうとは、思ってもみなかった。私がセックスをしたときのことを覚えていないと言ったときの、彼のホッとしたような、寂しさを感じているような表情。その顔を見た瞬間、私は──、いや俺はこいつに対して罪悪感とともに、今までにないくらいの劣情を抱いてしまった。

 何もかもが想定外だった。この肉体に憑依し続けるつもりなど毛頭なかったし、刑事のあられもない無様な姿を世間に晒し、警察を牽制するだけのつもりだった。だが、あのとき──、英雄が意を決して俺に告白してきたときに、何かが俺の中で弾けたのだ。これまで誰かを愛し、愛されることなどなかった俺は、知ってしまった。人に愛される喜びを。悪人を断罪するという行為が、ちっぽけなことに思えてしまうほどに──。


 幸い【織田信之】の肉体と【私】の魂の相性が良かったのか、数日間憑依していた間に、元からこの肉体が自分のものだったのではないかと思えるほどに馴染んでしまっていた。肝心の復讐はすでに済ませているのだから、もうYootuber【処刑人X】としての役目は捨ててもかまわない。悪人を捕まえるのは、刑事としてでもできる。それに愛する英雄のそばにいられるのなら、ほかに望むことはない。


 【織田信之】本人にとっては不幸でしかないが、旦那が男の部下とデキてしまったことを知った妻は、娘を連れて実家に帰ってしまった。この分だと離婚することになりそうだ。これまでの、織田が妻子と過ごしてきた記憶は手に入れてはいたものの、本質的にゲイである俺としてはどうしたものかと困っていたので、正直助かった。


「先輩、どうしたんですか……?」


 どうやら、俺はいつの間にかニヤついていたらしい。心配そうに見つめてくる英雄の顔が可愛くて、またキスをしたくなってしまう。


「んっ? ああ、なんでもない」


「先輩、俺……」


「なんだ?」


 何かを言いかけたまま、急にモジモジとしだした英雄が可愛い。いったいどうしたというのだろう? 何か大事な話でもあるのだろうか?


「あの、その、えっと……、俺、ずっと前から先輩に憧れてて……、その、好き……、なんですよね……! こんなタイミングで言うなんて卑怯だって分かってますけど……、今言わないともう言う機会が無いんじゃないかって思って……」


「……!」


 大柄な肉体を縮こめ、顔を真っ赤にして必死に想いを伝えようとするその姿に思わずキュンとしてしまい、今すぐにでも抱き締めたくなってしまう。


「先輩はノンケだし、迷惑かもしれないですけど……、でも俺、本気で先輩のことが好きです! 俺じゃダメですか!? 先輩のためならなんでもします!!」


 ああ、なんということか。まさか、こんなにも真っ直ぐに俺のことを想ってくれる存在がいるとは思ってもいなかった。


「せ、先輩……?」


 気が付けば俺は涙ぐんでいた。嬉しいとか悲しいといった感情ではない。あまりにも純粋な愛を向けられたことに感動して、胸がいっぱいになってしまったのだ。


「本当に、俺の想定の範疇を超えてくるやつだな、お前は……。ありがとな……、俺もお前のことが好きだ。お前さえ良ければ、付き合ってほしい。お前の全部が欲しいんだ……、英雄。なんてったって、お前のケツ穴は俺専用のチンポケースだもんな?」


「え? えっ?! 先輩、記憶無かったんじゃ……?」


 俺は英雄をベッドに優しく押し倒すと、その上に覆い被さりながら耳元で囁いた。


「忘れるわけないだろ? 大好きなお前との初めてだったんだからな……」


 驚きのあまり目を丸くしている英雄の唇に軽くキスをすると、俺は椅子に座りなおした。さすがに、病院でこれ以上ヤるわけにはいかない。物足りなさそうな顔をしていた英雄も、俺の意図を察知してくれたようで、おとなしく引いてくれた。まだ何か聞き足りないであろう彼は、再びモジモジとしだしたが、口を開くことはなかった。何が聞きたいのかは、聞かなくても分かる。


 これまでの被害者と違って、記憶の残っている俺は異質過ぎるから──。


 それに聞かれなくても、いつか自分の口から本当のことを話すことになるだろう。どこまでも誠実な英雄に、いつまでも嘘をつき続けておくことなどできない。

 ただ今だけは、許してほしい。こんな紛い物の俺だけれど、もう少しだけ、あとほんの少しだけ、どうか愛してくれ──。


(了)

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