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下級淫魔の巣は新人冒険家にとって最も危険な存在の一つと言って差し支えないだろう。 下級淫魔はダンジョンの中腹ほどに巣を構える、ヤギの頭と体毛、蛇の鱗を纏った手と尾を持つ魔物だ。見た目の巨大さに比してそこまで討伐難度は高くない。彼等は物理攻撃を殆ど行わず、詠唱の長い催淫魔法と同族化魔法を用いる。そのため、詠唱の隙を突けば簡単に倒すことが出来る。では何故、危険であるとされるのか。 新人冒険家の中で、この下級という言葉の意味を真に理解しているものは少ない。 実際のところ、この下級淫魔は肉体も内包する魔力も高いレベルを誇っており、単純な力較べをすればこの辺りで遭遇しうる魔物の中でも上位に肩を並べる実力を持っている。 だが、それを活かす「頭」を持たないから下級なのである。 彼等は恵まれた身体の機能を淫の快楽を最大限得るという点にのみ注力している。 豊満な肉体は揉み揉まれる為に、鼻はフェロモンを感じるために、耳は相手が感じているかを確認するために、目は目交う同族とそれ以外を見分けるために、舌は精液の甘さを享受するために。 乱暴なまでにシンプルな役割分担が徹底された、そんな脳構造をしているのだ。 だからこそ、「洗脳」と「同族化」が恐ろしい。 彼等の同族化魔法を食らうと、まずは肉体が驚異的な速度で彼等と同じものになる。豊富な魔力量が為せる技だ。内部の筋肉が発達を始め、ボコボコと身体が膨らみだす。急激な膨張に耐えられなくなった皮膚がばくり、と割れると全身からヤギの柔らかい獣毛が顕になる。それはたった今生えたばかりなのに、元の淫魔のと変わらないような獣臭さを放つ。腕の先では硬い鱗が顔を出す。淫魔の求める快楽は並では済まない。自身の大砲を扱く際も硬い鱗を用いなければ達する事が出来ないのだ。その大砲、陰茎の変化は最後に訪れる。皮を押しのけ勃起とは異なる異様な膨張を続け、少しずつヒトのそれの概形から離れていく。亀頭は潰れたような平たい形を成し、ぷっくりと膨れた鈴口から淫臭を放つ我慢汁を吹く。高い雁首をもつ黒鉄の熱源体は見た目通りに剛健であり、大ぶりの桃のような睾丸から造られる精液を一滴足りとも残さず打ち切る機構を備えている。この睾丸の製造性能も相当なもので、魔力を注がれなくとも単体で三日三晩出し続けるほどのものである。それ故、淫魔は絶えず発情し、鎮める為に交尾を続けているのだ。まあ、陰茎に手を触れずとも溜まれば勝手に吹き上げてしまうので、シているかシていないかはそんなに関係ないことである。 そんな強力な同族化魔法であるが、洗脳効率はそこまで高くない。肉体を変化させ催淫魔法を使い交尾を強要するだけで、魂まで直接干渉してはこない。そのため魂の完全な塗り替えには1ヶ月ほどを要する。物理的な拘束もそこまで強くなく、脱走を試みれば簡単に出し抜く事が出来るだろう。そのまま浄化を受ければ元通りの人間に戻ることも可能だ。 だが、淫魔の脳がその意思を持たせる隙を作らない。 同族化における最も顕著で致命的な変化は、胴体でも手足でも尾でも陰茎でもない、脳の変化だ。 普通の生物なら強い刺激に対してそれを抑えるように全身の感覚が働くものだが、こと快楽信号においては淫魔は逆だ。 性交に関わる全ての刺激…簡単な愛撫から接吻、挿入、ピストン。それら全ての悦びを振り切れるほどに増幅させるのだ。結果、刺激の度に稲光が走るような視界の明滅、脳内に響くヤギの絶叫。人間にしてみれば失神が延々と繰り返されていくようなものだ。 単純で、単調な、ただ強大な快楽が脳の九割を占めるだけ。 精神力の育っていない冒険者ならば、数分で自力で自分の名前すら思い出せなくなるだろう。厄介なのが、残った一割だけはこれまで通り冒険者としての思考を行えるということだ。自分の存在すら分からないまま何故かこの快楽に抵抗しなければならないような気がする。冒険者としての、人間としてのプライドを保たなければならない気がする。そんな苦しみを抱かされたまま、低俗な鞭でなじられ続ける。苦悩とは裏腹に自らの淫魔の脳は次の行為を求め、中毒性の高い幸福を食んではそれを全身で味わう。こうなってしまってはどんな精神力の強い戦士であってもこのループから逃れる事は不可能だろう。 だがやはり、魂の一割はどうしても抗う事を諦められない。もしかしたら、耐えていれば、誰かの助けが来るかもしれないと。 だが、残酷なことに、この状態に陥った冒険者が助かる術はほぼ存在しないといえる。 前述の通り自力での脱出は困難である。ではなぜ外部からの救助、他の冒険者の助けは期待出来ないのか? まず第一に、この下級淫魔は没個性な身体を持つことで知られる。大量生産品のように揃いのシルエットで、揃いの淫紋を両肩と又座に刻まれ、同じような下品な声と表情を持つ。それらのどれが少し前まで人間だったのかなど、手練の冒険者でも見分けがつくはずがないのだ。もしかしたら、高級な魔道士やネクロマンサーであれば魂を見分ける事が可能かもしれない。だがそんな上級冒険者がこんな巣にわざわざ赴く理由がない。これが二つ目の理由だ。淫魔の巣に捕まった冒険者をいちいち助けるような、非効率な仕事をする人間などいないということだ。 また、淫魔化した若い冒険者が、与えられた極太の竿から大量の悦汁を噴き上げる。もう何度の射精を行ったかも分からない。そんな事を考える間に次の交尾が始まるし、そんな事を考えられる脳じゃない。 バディであった冒険者と濃厚に舌を絡ませ、兜合わせをし、他の淫魔に突かれながら射精して、ヤギの嬌声を上げる。 延々と繰り返す中で、自分と相手が溶け合ってどちらがどちらか分からなくなるような違和感を覚えた。それも一瞬で、消えてしまった。相手が仲間だろうが淫魔だろうが、古かろうが新しいかろうが、気持ち良ければそれでいい。 その内一月が経って、人間の魂は無様に塗り替えられ、完全に淫魔のそれになるだろう。嬉しくも悲しくもない。それが当然、いや、当然とも考えない。快楽に溺れ、幸福なだけ。それが思考の全てである。

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