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「健ちゃん、プール行こー」

「あー、うん」

ウチの玄関に、真理奈が現れる。


夏休み。


僕たちはこれから、プールに出掛けることになっていた。

猛暑日の連続で、インドア志向な僕たちも仕方なくアウトドアへ・・・ではなく。


昨今の世情や状況を鑑みて、ウチの中学校では水泳授業が廃止された。

しかし、カリキュラム(教育課程)として『水泳』は残ったままで。


あくまで、授業が廃止されただけであって、自主的に水泳学習はやらないといけないのだ。

ウチの両親や真理奈のご両親は、『何かあった時の責任逃れだ』と憤っていたけど・・・。


といっても、クロールやら平泳ぎで『25m』泳げば良い、みたいな簡単なものなんだけど。

ただ、一人でやるのはダメなので、真理奈と一緒にプールで、となった。


「今日は、その格好なんだ」

Tシャツにハーフズボン、というコンビニに行くかのような僕に対し。


「うん♪ 折角、健ちゃんとお出掛けなんだし」

薄手のブラウスにスカート姿という、夏らしい爽やかな出で立ち。

これから向かうのが、地元民しか来ないような市民プールとは思えない。


「また、背・・・大っきくなった?」

夏休みに入ったこともあり、当然ながら並んで登校しなくなって。

久し振りにこうやって一緒に並んで歩くと、違和感。


衣替え時期の身体測定以降、真理奈の身体サイズは測っていない。

そもそも、幼馴染とはいえ、同学年の女の子を測ることがおかしいんだけど・・・。


「うーん、わかんない」

真理奈は、顎に指を当てて考え込むような可愛い仕草。


女子の平均と比べて身長で13cm、体重で50kg近く大きな真理奈。

流石の真理奈も、自分自身が成長過多なのを自覚しつつはあるようで。


ブラウスやスカートを穿いているのは何も、『御粧(おめか)し』した、というだけではなく。

今まで着なかったようなファッションは、体型を隠す意味合いもあるんじゃ・・・。


「僕とその・・・一緒で、良かったの?」

「うん。友達とかとだと、逆に気後れしちゃって」

そう言って、真理奈は少し寂しそうに笑った。


そう、か。


今の真理奈の身体だと、同年代女子と比較してあらゆる所が大きい。

背だけじゃなく、体格も。まして、『Eカップ』バストなんて羨望の眼差しだろう。


「・・・その、ごめん」

「ん、何が?」


「不用意に、『背が大きくなった?』とか聞いちゃって・・・」

「うぅん。こんな事、話したり聞いたり出来るのって、健ちゃんだけだもん」

真理奈自身じゃ気付かない所もあるから、むしろ何かあれば指摘して欲しい、とまで言われた。


「そ、れ、にぃ~♪」

「・・・ん?」

真理奈は、僕を見て『ニンマリ』と笑う。


「健ちゃん的に、胸は大っきい方が好きだよねぇ?」

「な、なぁっ!?」

天下の往来で突然、何を言い出すんだ。


「だって。いつも、チラチラ見てるし。“そういうの”、わかるんだよ?」

「ちょ。な、何を言って・・・」

街中の普通の道すがら。通行人もそれなりに、居る。


僕は平静を装おうとするも、顔中の穴という穴から汗が噴き出る。

猛暑の日差しが理由・・・ではなく、図星を突かれたせいだった。


「だって、それは・・・」

真理奈は、僕に対してだけなのか、凄く距離感が近い。

『パーソナルスペース』が小さい、とでも言えば良いか。


僕は、これでも只のイチ、中学生男子。

中二病で御馴染み、思春期真っ只中の男の子なのだ。

事あるごとに同学年の可愛い巨乳女子にくっ付かれれば、そりゃ意識もする。


「胸は、大っきくなったよ」

「・・・え」

後のお楽しみ、と真理奈は楽しそうに笑った。



――程なくして、プールに到着。


「・・・ふぅ」

僕は一足先に着替えて、プールサイドに出ていた。


極々普通の、『25mレーン』が10本ぐらいある屋内型の市民プール。

客層は、どちらかというと高年齢層が中心。


何駅か離れた所に、大型商業施設に併設の大規模レジャープールが完成して。

この近辺の若い人や、学校のクラスメイトたちは皆、そっちに行ってる。


「お待たせ―」

「おー。やっと、来・・・っ!?」

真理奈が、ドタドタドタッとプールサイドを走りながら出て来た。


ブルン、ブルンッ。


「お嬢ちゃん、凄いねー」

「アタシも若い頃はー」

周囲のオジサンやオバサンたちが、真理奈を見て口々に呟いた。


ブルン、ブルンッ。


「・・・・・す、っげ」

恐らく、プール内で唯一の若い人だと思われる、監視員さんは唖然としていた。

本来なら、プールサイドで走るのを咎めないといけない筈なのに。


肩幅が広く、胸板も厚くて。明らかに、『水泳で鍛えてます』な監視員のお兄さん。

その監視員さんが、真理奈の超絶ボディを見て、口をあんぐりと開けていた。


「真理奈、走っちゃダメだよ」

「あはは、ごめーん」

真理奈は僕の近くまで来ると、両手を膝に付いて止まった。


ぶるるんっ。


「・・・・・っ」

「あー。また、胸見てるー」

無理を言わないで欲しい。


「ま、今日は“この格好”だから、良いけどっ」

そう言って胸を張ると、またまた胸元が大きく揺れた。


「何で、ビキニなの・・・」

真理奈は何と、ビキニ水着に身を包んでいた。


「学校指定のは・・・」

学校外部で水泳学習を行う際、半ば強制で着用を求められる水着がある。


男子は短パンタイプで、女子はワンピース水着。

残念ながら、いわゆる『スク水』は絶滅し、どちらかというと競泳水着に近い。


「あー、あれ。入らなくなっちゃって・・・」

学校指定のが入らないからと言って、まさか『ビキニ水着』を選択するとは。

回答が、斜め上過ぎる。


「他のワンピースも試したけど、入らなかったんだよね」

「あ・・・あー」

僕はやっと、気付いた。

成人女子より高い170cmという、高身長に加え。


※数ヶ月前


という、超絶ボディ。既製品のワンピース水着が入らないのも仕方ない、のか。


「ってか。それ、サイズ合ってるの?」

ボトムは兎も角、ビキニトップがさっきからバルンバルンッと揺れている。


「胸がまた大っきくなっちゃって、丁度良いサイズが無かったの」

「・・・・っ」

真理奈は両手で、中学生に似つかわしくない巨乳を持ち上げる。


「何センチあるか、聞いて良い?」

「うん。100cm超えちゃった。今、『102cm』あるよ」

真理奈いわく、『Eカップ』はギリギリ変わらないらしい。

だけど、アンダーバストの兼ね合いで、『Gカップ』用を着用。


「筋肉凄いですね、って言われちゃった」

アンダーバストというよりは、どちらかというと背筋が大きいのが影響あるらしく。

一つ上の『Fカップ』用でも、紐が足りないらしい。


「どう、かな?」

真理奈は、その場でクルッと回って見せた。


「・・・・・」

豊満さと逞しさが同居した、正に超絶ボディ。


「水色の水着、似合ってる」

「ホント!? やったー」

赤や黒のビキニだと、イヤらしくなってしまいそうな所だけど。

水色なのが、まだ幼さの残る真理奈の容姿には、ハマっているように見えた。


ズドッ、ズドッ。


「ちょ、真理奈。プールサイドでハシャがない」

「あ、ごめん」

真理奈は、その場で軽く跳んだつもりなんだろうけど。

有り余る脚力が、真理奈の大きな身体を1m以上、浮き上がらせてしまう。


その度に、100kg近い体重が着地して、大きな音を立ててしまう。

・・・体重、増えてないよね?


「・・・あれぇ。何で、浮かないんだろ・・・」

僕の不安は、的中した。

真理奈の体重が増えたかどうかは、置いておいて。


幾ら豊満とはいえ、100kg近い体重の内、恐らく大半が筋肉。

となれば、水に浮かないのだ。いわゆる、『浮き』が出来ない。


「健ちゃん、どうしよ」

水面から上に出ている上半身は、まだ『Eカップ』バストのお陰で浮くんだけど。

水面より下にある真理奈の下半身は筋肉の塊なのか、全く浮かないのだ。


「うーん・・・」

真理奈が水面に顔を浸けて全身を預けても、脚が直ぐに沈んでしまう。


「『バタ足』は出来るんだよね?」

「うん、それなら何とか」

それなら・・・。


「沈んでも良いから、『バタ足』で行ける所まで行ってみようか」

「うん、やってみる」

ただの『浮き』が出来なくても、『バタ足』すれば進んでる間は浮く筈。


「息が苦しくなったら、そこで止まってね」

「うん、わかった」

真理奈はそう言って、周りの迷惑にならないよう真ん中の『中央レーン』に入り。

『浮き』の体勢で沈みそうになる前に、両脚で思い切り『バタ足』した。


バシャバシャバシャッッ!!


「「「っ!!?」」」

僕だけじゃなく。オジサンオバサンだけじゃなく、監視員さんも。

皆、余りに凄まじい水飛沫に、『中央レーン』を大注目。


バシャバシャアァァンッッッ!!!


「うそ」

「すご」

「え、速くない?」

ガシッ!


「あれ?」

当の本人は、今自分が何処に居るのかわからず、水面に立って困惑している。


「健ちゃん、何で“そっち”に居るのー」

真理奈は、“反対側”に居る僕に向かって、そう叫んだ。


「息継ぎ、要らないのか・・・」

真理奈は、両手を伸ばした『バタ足』泳法で、25mを泳ぎ切った。

タイムにして、十数秒ほど。


「・・・はは」

沈む前に進めば、ぐらい。そうやって、徐々にこなして行く予定だった。

しかし、真理奈の筋力は、僕の想像の遥か上を行っていた。


「お嬢ちゃん。君、水泳経験者・・・じゃないよね」

「え、っと。はい」

監視員さんは、複雑な表情で真理奈に質問していた。


少なくとも、泳ぎ方は間違いなく素人のそれだった。

にも関わらず、純粋な泳ぎの速さは、世界レベル。


僕は正直、正確なタイムを計らなくて良かった。

・・・と、そんなことを思っていた、帰り道。


夕方に差し掛かる黄昏時で、過ごし易い気温だったこともあってか。

僕たちは、河川敷の土手を歩いて帰ろう、ってことになった。


「私って、やっぱり力強いのかな・・・」

「あー、うん。まあ・・・」

僕はつい、言葉を濁してしまう。


真理奈の身体の成長はまだ、発育が良い、で済ませられるレベル・・・だと思う。

いや、まあ、筋肉が凄過ぎる気はするんだけど・・・。


だけど、こと、筋力に関しては、凄いだけでは済まなくなりつつある。


――そんな時。


ビュンッ。


「危ないっ!」

僕の顔を覆い被せるように、真理奈の右手が差し出される。


「えっ?」

その手に、バシィッ!とボールらしきものがキャッチされた。


「すみませんーーっ」

遠くの河川敷で、野球のユニフォームに身を包んだ男性が手を振っている。

大声を出しているんだろうけど、辛うじて聞こえるぐらいの距離。


河川敷の端にある野球用のグラウンド。

どうやら、ボールはそこから飛んで来たらしい。かなりの、大飛球。


「・・・良く、捕れたね」

軟式ボールとはいえ、それなりの速度は出てた筈。


「あ、うん。何か、手ぇ出したら捕れちゃった」

真理奈の動体視力って、そんなに良かったっけ・・・。


「ねぇ。試しに、投げ返しても良い?」

「え、良いと思うけど・・・」

確かに、僕らが歩いている土手の上と、河川敷グラウンドは距離がある。

届かないだろうけど、転がって行けば相手の近い所まで行くだろう。


「投げ方、教えて」

「え、っと。じゃあ、“こう”やって・・・」

僕はそう言いながら、動画とかの見様見真似でプロ野球投手の投げ方を見せる。

実際の野球の上手い下手に関係なく、男子は“投げ方だけ”は上手いものなのだ。


「ふん、ふん。えーっと、“こう”して・・・」

真理奈は、大きな身体で豪快に振り被る。


「えいっ!」

ビュゥンッ!


誰が見てもわかる、剛速球。


「え」

ヒュゴゥッッ!!


いや、それは、超剛速球だった。


「うわぁっ!?」

ズゴォッ!!!


真理奈が投げ返した軟式ボールは、手を振っていた男の人。

その立っている“足元に突き刺さった”。


「す、すみませんっ!」

僕は出来るだけ大声で、そう叫んだ。

色んな意味を込めての、『すみません』。


「真理奈、行こっ」

「え、良いの?」

僕と真理奈は、足早にその場を後にした。


「・・・・・」

土手の上から河川敷グラウンドまで、距離にして数十メートル。

いや、もしかすると百メートルを超えてたかも知れない。


真理奈の超剛速球は、その距離を一瞬で進み、土を抉って止まったのだ。


土手の上からの投げ下ろしで勢いが付いたから、とか。

そんな単純な話じゃないのは、僕も河川敷の男の人もわかっていただろう。

“人間離れ”。


幼馴染の女の子に抱いちゃいけないような、そんな印象を持ってしまいそうになるのを。

僕は、何とか堪えたのだった。



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