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(いつもの事だけど、やっぱり朝の電車は混んでるな…………。

 一駅分で済むとはいえ、この一駅の間が結構長いんだよね…………)


 ミレニアム自治区の朝の電車は、他の自治区とは比較にならない程に混雑する。

 朝早くから活動する者の少ないゲヘナだとか、そもそも寮生が多いトリニティだとか、あるいは元々自治区の人数が少ないアビドスだとか。

 そうした別の自治区を羨む気持ちはないけれど、少なくともこの混雑はどうにかならないものかと、各務チヒロは大きく溜息をついた。


 ヴェリタスの副部長として、キヴォトス全域のサイバーセキュリティにまつわる業務に携わっているとはいえ、チヒロが”学生”である事には変わりがない。

 昨夜もとある企業のセキュリティチェックが忙しくてほとんど徹夜状態ではあるが、それでも生真面目な彼女は授業開始に間に合うように混みあう朝の電車に揺られている。


(今日は授業が終わってから、まずは部室に顔を出して……。

 あぁ、そうだ。セミナーにも予算申請書を出さないと。ヒマリが予算を気にするわけないし、あの子たちに任せたら手直しで余計に時間を食うし)


 ギリギリで電車に滑り込んだせいで、チヒロは椅子に座るどころか身体をほとんど扉にもたれかからせるような体勢になっている。

 チヒロの母性的な気質を知らしめるような豊かな胸が、扉に押し付けられてカーディガンとワイシャツの下でひしゃげて微かな息苦しさをチヒロに感じさせていた。


 だが少なくとも、ミレニアムの学舎に三年も通っている身としては、この程度の息苦しさなどもう慣れ親しんだ恒例行事のようなものだ。

 だからチヒロはそんな息苦しさなんかに頓着することなく思考を回し――――――そしてすぐさま、微かな違和感に少しだけ身を強張らせる。


(太もものところ、誰かの手が当たってる…………?)


 生真面目、貞淑、貞節—―――言ってしまえば”お堅い”印象のチヒロには珍しい、何重にか折られた短いスカートから覗く細く華奢な太もも。

 ヒマリから『チーちゃん、この完璧美少女たる私が羨むほど綺麗な脚なのです。花の女子高生として見せつけなくては損ですよ』と押し切られたままだった太ももに、明らかな体温を帯びた硬い指が蠢きながら触れている。


(…………まぁ、この満員電車だし、当たっちゃうこともあるか。

 ちょっと嫌な気分にはなるけど、変に騒いで大事にしちゃっても可哀そうだし)


 とはいえ、チヒロはどこか楽観的にそんな事を考えていた。

 少し癖のある短めの黒髪に眼鏡。理屈っぽくお堅くて可愛げのない性格。そんな自分が”女”として見られるような事があるわけないと、チヒロは自分をそう評価していたからだ。


 けれどそんな過少すぎる自己評価は、悪意を帯びて太股に触れる手を調子づかせる。

 くすぐるように指先を蠢かしながら、それはゆっくりと這い上るように触れる場所を上へ上へと変えていき、やがてショーツ越しではあるがチヒロの尻を撫でまわしだした。


「ん…………っ!」


 明らかすぎる程に明らかな悪意。明確な意図をもって触れられたことのない場所を撫でまわされて、チヒロは僅かに身を震わせる。

 血の気が引くような恐怖があって、けれど生真面目で慎重なチヒロはまだ”偶然”という可能性を捨てきれず、声を上げる事を躊躇してしまう。


 だがその間にも短いスカートは捲り上げられ、シンプルなデザインのペールグリーンのショーツをさらけ出されながら、チヒロは尻をくすぐるように撫でまわされ続ける。

 声を上げなければならない――――間違いなく悪意をもって辱しめられているのは分かっているのに、生来の慎重さと自己評価の低さが彼女の行動を妨げてしまう。


(落ち着け、落ち着け……!次の駅まで耐えればいいだけの話でしょ……!?

 こんな、この程度の、事で…………!おちつけ、おちついて……!おちつけ……っ!)


 しかし尻を揉みしだく指の蠢きは、段々と調子づくように激しさを増していくばかりだ。

 文字通りの獣欲に支配された男――――猿の顔をしたスーツ姿の男は、まるで抵抗を見せない少女の態度に気を大きくして、そのまま行為を更に下卑たものへと変えていく。


「――――ぅ、ぁ、いや…………っ!」


 柔らかな尻から手を放し、背後から抱きしめるように華奢な身体の前面に手を回してから、男はまずゆっくりとチヒロのパーカーとカーディガンを脱がしていく。

 カジュアルな印象のパーカーと、清楚な印象の水色のカーディガン。それを脱がして清廉なワイシャツだけの姿にすれば、とうとうチヒロは振り返って男を睨みつけた。


「っ、ぁ…………!ゃ、ぁ、やめ…………っ!!」


 だがチヒロにとって誤算だったのは、この行為が彼女にとって、想像していたよりも重く苦しい恐怖であったという事だ。

 強気に跳ねのけるための抵抗の言葉がどういうわけか喉に絡まって吐き出せず、チヒロはむしろ男に対して”抵抗できない女”としての姿を晒すことになってしまった。


 そしてそうなってしまえば、下劣な男の下卑た行為はもう止まらない。

 背後から抱きしめて身じろぎを封じ、体重をかけて扉に身体を押し付けながら、男はチヒロの華奢な身体を包む清廉な白いワイシャツを丁寧に脱がしていく。


 衣擦れの音。ボタンが一つ一つ外されていく感覚。

 チヒロがどれだけ睨んでも――――睨んだつもりでいても、恐怖と羞恥に染まった顔は男の下種な欲望をこれ以上なく煽ってしまうだけだ。


「っっ…………!!やっ……!ぁ、やめ、て……………!」


 そしてワイシャツがはだけられると、男はそのまま間髪を入れずにチヒロの豊満な胸へと手を伸ばし、ブラジャー越しにまずは数度揉みしだいた。

 ショーツとおそろいのペールグリーンの布地に、アクセント程度にストライプ模様が入ったブラジャー。その華奢な布地越しに柔らかな乳房が揉みしだかれると、恐怖がチヒロの全身を駆け抜けていく。


(だめ、これ以上はダメだ……!

 なんとか、何とかして逃げないと、逃げなきゃ――――)


 だがどれだけ恐怖したところで、男の蛮行が終わるわけもなければ、電車がいつもより早く目的地に到着するわけもない。

 電車の扉に身体を押し付けられたチヒロの口から漏れる吐息が、窓ガラスを白く煙らせてその息に込められた熱をチヒロ自身にも知らしめてしまう。


 嫌悪感と屈辱感と、”誰かに見られてしまうかもしれない”という羞恥。

 全身を強張らせて蛮行を受け続けるしかないチヒロに、けれど男は猿そのものの赤ら顔をひどく醜悪に歪ませながら、一層の無体を強い続ける。


「ひ……っ!や、や、だめっ…………!

 ぅ、ぁ、やっ、ぁ、ぁう……っ!ぅぅぅ、だめ、だめ、だってば……っ!」


 可憐なデザインのブラジャーをずり上げ、混雑する満員電車の車内に豊満な乳房をさらけ出させ、挙句にそれを直接掬い上げるように揉みしだく男。

 生真面目で貞淑なチヒロにとって、はじめて意思を持って乳房を揉みしだかれる感覚。欲だけを先走らせる指によって与えられるそれは、残酷に少女の心を抉ってしまう。


「っ、ぁ、ひぅ、ぅぅぅ…………っ!

 やぁ、だ……っ!いや、いや、いや……っ!ぁ、く、ぅうぅ~~~~……っ!!」


 下から掬い上げるように揉みしだかれ、それでも男の手に収まりきらない豊満な乳房と、時折指先で弾き擽るように震わせられる乳首。

 唇を噛み歯を食い縛って、そうしなければ漏れ出る無様な声を堪えきれないほどの性感が、チヒロの細い身体をビクビクと震えさせる。


 豊満で柔らかな乳房に男の骨ばった指が沈み込み、それが緩められるたびにポンプのように全身に性感が浸透していく。

 乳房の豊満さに比して小さな乳首――――薄桃色の小さな肉芽は、男の指の先端に震えさせられるたびに耐えがたい疼きを発し、チヒロの細い脚をガクガクと震えさせていた。


「ぅぁ、ぁ、やだ、や、ぁぁあぁ……っ!ふ、ぁう、ぁ、あぁ……っ!」


 荒くなる息。羞恥と恐怖で纏まらなくなる思考。

 ただただ”耐えなければ”という本能的な感覚にだけ突き動かされて、チヒロは男によって与えられる性感に、ビクビクと身体を震えさせながら声を堪え続ける。


「――――っっ、ぁ、ひぅっ!!や、や、や、あぁぁ……っ!!

 っっ、ふーっ、ふーっ、ふ、ぅ、んぅぅ……っ!は、ぁ、ぁ、や、っっ、ぅうぅ……!」


 だがそんなチヒロの虚しい抵抗は、嗜虐的な男の責めを悪化させるだけだった。

 這い上るように豊満な乳房の中心に責めの基点を移し、男は二本の指で小さな乳首ばかりを徹底的に嬲り、小さなそれをぷくりと膨れるまでに屹立させていってしまう。


 セキュリティの脆弱性を突くクラッカーのように、女の身体を卑劣に嬲る行為に慣れた男の指先は、チヒロの弱点を徹底的に責め続ける。

 小さな薄桃色の肉芽の根元を爪先で柔く引っ掻き、弾力を帯びたそれをふるふると震えさせ、少し引っ張るようにしながら撫でるように扱いていく。

 ただそれだけでチヒロの身体は性感によって屈服させられ、彼女は足を内股にしながら、ただそこに立っているだけで精一杯になるまでに至ってしまう。


「ふ、ぅうぅぅ、くぅぅ……っ!や、や、やめ、て……っ!!

 ぁ、ぅ、ちょっと、まって……っ!そこ、そこ、や、や、やぁ、だ…………っ!」


 そしてそんな風に、チヒロの身体が性感によって限界を迎えかけた頃。

 男は左手を胸の方に残したまま、右手をゆっくりとチヒロの身体に滑らせて、まずは短いスカートのホックを外して、そのまま満員電車の床に落とした。


「や、ぇ、うそ、うそ……っ!まって、や、や、やだ…………!」


 スカートを拾い上げることも出来ずに、真っ青な顔で小さな声を漏らすチヒロ。

 けれど男はその程度で蛮行を止める事はなく、むしろここからが本番とでも言わんばかりに、ペールグリーンのショーツの内側に自身の右手を滑り込ませた。


「――――~~っっ!?や、ぁ、は、ぅぅぅ……っ!!

 ちょっ、と……!これ、ダメっ、ダメだって……っ!これ、以上は、ぁ……っ!」


 細い脚を必死に閉じて抵抗を試みても、その程度は抵抗にもなりはしない。

 男の手がショーツの内側を這い廻り、自分ですら数える程度しか慰めた事のない場所を、ひどく的確かつ淫猥にくすぐってくる。


 元々濃くはないけれど、それでも触れられるには恥ずかしい産毛程度の茂み。

 それを根元からそよがすように撫でられ、痛みがない程度に引っ張られる感覚は、チヒロに強烈な羞恥と焦燥を突き付けてしまう。


「ぅうぅ……や、ぁ、やめ――っ!は、ぁ、んぅぅぅ……っ!!

 ぁ、ぁ、ぁ、あぁ……っ!ん、ぁ、ぁうっ……!はーっ、はーっ、は、ゃ、ぅうぅっ!」


 そしてそのまま、骨ばった指がゆっくりと陰唇へと触れた。

 各務チヒロという少女の性質を示すようなその場所――――生真面目に閉ざされ、一本の線のように貞節に整った未通のクレバス。

 だがそこを男の指がなぞっていくと、チヒロの身体がビクビクと感電するように大きく跳ねて、内側からじわりと淫らな蜜が零れていく。


「や、や、やめ……っ!っ、ぅ、っっ……!!ふ、ぅぅぅっっ……!!

 はぁ゛っ……!ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、っく……!ふぅぅ、ぅ、うぅぅぁぁぁ………っ!」


 そしてそんな事実を認識してしまえば、もう込み上げるように身体を疼かせる性感を無視する事など出来るわけもなかった。

 陰唇を柔く掻かれ、そのままゆっくりと骨ばった指が膣内に滑り込んでくると、奇妙に上擦った声音と共に体全体がヒクヒクと打ち震えてしまう。


 硬く閉ざされた陰唇によって守られていた、柔らかく繊細な媚肉の蜜壺。

 その場所に指が滑り込んできた瞬間、チヒロの内側に淫らな電流が迸り、跳ねる身体の内側が随喜するように蠢いていく。


「っぁ、や、ひぅ……っ!ぁ、ぁ、あ、ぁ、あぁぁ、やだ……っ!」


 パラパラと爪弾くように、収縮した媚肉を男の指先が掻き分ける。

 チヒロの意識を微かに揺さぶる”くちゅ”、”こちゅ”という空耳のような微かな水音は、けれど指の蠢きを意識する度にひどく鮮明に鼓膜を揺さぶった。


「や、ぁ、やめ……っ!ひ、ゃうっ!ぁ、ぁ、ぁ、ん、ん、ん、ん゛ぅっ!

 やめ、て……っ!も、これ、以上は、ダメだって……っ!っっ、ぁ、やぅうぅ……!」


 柔らかく、柔らかく、一つ一つ解きほぐすように陥落させられていく身体。

 これがデジタルの話であればチヒロにはいくつもの対応手段があるのに、現実で自らの身体に与えられる責めは、チヒロに僅かばかりの抵抗すら許さない。


 元々鈍感ではないけれど、そこまで敏感ではない”人並み”の身体。

 ただ少し胸が大きいだけ――――ただそれだけだった筈の、チヒロからすればさほどの価値を感じなかった肉体は、けれど男の欲の前では全てを貪られるがまま、男が望むだけの淫らな反応を返してしまう。


「っっっうぅぅ!……は、ぁ、はぁぁ、は、はぅ…………っ!!

 ふ、ふぅぅ、ぁ、あぁあぁ――――ぁ、あ、ぁ、あ、ぁ、やぅ――っ!!」


 くちゅ、こちゅ、くちゅ、くちゅくちゅくちゅくちゅ。

 既に湧き出てきた愛液によって柔らかく解された処女膣は、滴る蜜によってショーツを濡らしながら男の指を咥えこんでしまっている。


 丁寧に丁寧に、けれど同時に激しく貪るような指遣い。

 痛みはなく、けれど各務チヒロという少女が最も性感と屈辱を感じるやり方で、男は目の前の少女の内側を掻き回していく。


 理解しがたい、理解できない、理解したくない――――――。

 チヒロがどれほどそう願っても、ただ淡々と情報を掘り起こすように、男は徹底的なまでの無慈悲さで成熟しながらも無垢な身体を嬲り続ける。


 乳首はきつく締められるのよりも、緩く撫でまわされる方が感じる。根元を扱かれるより先端を弾かれた方が感じる。爪先よりも指の腹で撫でられた方が感じる。

 秘部は逆に少し乱暴に掻き回された方が感じる。深い場所よりも浅い場所の方が感じる。これ見よがしに水音を立ててやった方が感じる。


 チヒロ自身にはわからなくて、下劣な行為に慣れた男には理解できる”脆弱性”。

 それを偏執的に暴かれ続けて、それでも千尋は抵抗らしい抵抗も出来ぬままに、ゆっくりとだが確実に女としての臨界にまで運ばれていくしかない。


(これ、だめ、だめ、だめなのに……っ!脚、閉じてるのに……!

 なんで、どうして、わかんない……!なんでこんなに――――ぁあぁだめだめだめっ!!)


「――~~~~――っっ!!!ふ、ぁ、や゛…………っっっ!!!」


 そしてとうとう、堰を切ったように淫らな蜜がショーツを突き抜けて、細い美脚を這うようにしながら床へ向かって噴きつけられた。

 眼鏡の奥の目が明らかに潤みながら蕩け、ビクビクと跳ねるように体を震わせるその姿は、どうしようもない程に各務チヒロが女として絶頂に至ったことを示している。


 目の奥で火花が散り、身体が勝手にその場にへたり込もうとする。

 扉に押し付けられた身体――――男によって揉みしだかれていない右胸は窓ガラスに押し付けられて形を変え、その淫靡な有様を変化した形状だけでも十分に物語っていた。


「は、ぁ…………!はぁ、ぁ、ぁう、ぅぅぅ…………!」


 辱しめに伴う羞恥と屈辱は、時間の感覚を引き延ばすようだった。放心するように荒く息を吐きながら、チヒロは纏まらない思考を必死に纏めようと試みる。

 ショーツは脱がされていない筈なのに秘部がやけにすーすーと冷たく感じられて――――そしてそこで、チヒロに”最悪”を感じさせる感覚が届く。


「っっ……!?ぁ、え、や、冗談—―――冗談でしょ……!?」


 クロッチ部分がずらされる事で晒された、とろりとした淫蜜を滴らせる秘裂。そこに硬く滾った肉の楔—―――血管の浮かんだグロテスクなペニスが押し付けられる。

 満員電車の中という状況。振り向くことも出来ない状況では、チヒロの視界に男のペニスは映らない。けれど故にこそ感じられる恐怖はチヒロの心身を瞬く間に染め上げてしまう。


「や……っ!や、や、や、いやだ…………っ!!」


 震える声音は、それでも周囲に助けを求められるほどの音ではなかった。

 満員電車という状況。車輪がレールを揺さぶる音で容易くかき消されるほどに、チヒロの抵抗の言葉は弱々しいものにしかならない


「――――ぅぁ、ぁ、やめて、やだ、や、ぁ、たすけ、たすけて……!」


 助けは来ない。分かっていても縋る事を止められない。

 ヴェリタスの仲間たち。ミレニアムの学友たち。信頼できる”大人”である先生。


 だがどれだけ縋ろうとも、誰もこの状況を知る者はいない。

 例えばヒマリがこの電車の監視カメラをジャックしていたら話は変わったかもしれないが、そんな奇跡がこの場で都合よく起こるわけがない。


「や、や、や、やめ――――っっぁ、う、ぅうぅぅぐぅぅ――――っ!!」


 そして万策が尽きた絶望の中で、チヒロの最奥を残酷な衝撃と痛みが貫いた。

 狭い膣穴を圧し拡げるように、数多の少女を嬲り者にしてきた肉の楔がずるりと奥へ奥へと侵攻し、そのまま最も深い場所を押し拉ぐ。


 漏れ出る悲鳴は男の手で口元を覆われる事で防がれ、チヒロはただ背後から掛けられる体重によって身体を扉に押し付けられながら、激痛に身を震わせた。

 立ったままで背後から、満員電車の中で名前すら知らない男に奪われた処女。どこを取っても残酷な現実は、けれどまだ”最悪”には至っていない。


「ふ、ぁ、ゃ、ゃ、や、待ってっ……!!

 だめ、だめだめだめだめやだっ!や、ぁ、ぁ、んぐぅぅぅ――~~――ッッ!!」


 破瓜の痛みに浸る事も、絶望に浸る事も今のチヒロには許されない。

 膣奥から引かれていくペニス。それは細い膣穴の半ばほどで一度動きを止め、再び膣奥を勢いよく穿っては、また引かれていくという残酷な反復を繰り返す。


 ぱん、ぱん、ぱん、とリズミカルに打ち付けられる腰。

 斜め下から斜め上へ。突き上げるようなピストンがチヒロの華奢な身体を震わせ、押し付けられた窓ガラスにそそり立った乳首を擦り付けさせる。


「んっ、ん、ん、んっ!んぁ、や、ぁうっ!

 ふ、ぅぅぅ、んぁ、ぁ、あぁ……っ!っ、く、ふぅぅぅぁあぁ……っ!」


 歯を食い縛り、必死になってチヒロはこみ上げる喘ぎを響かせぬよう喉奥で抑え込む。

 男は両手でチヒロの細い腰を掴み、それこそ性玩具で欲を解消するかのように身勝手に腰を打ち付け、獣の顔をあからさまに醜悪な恍惚に歪めていた。


「や、や、ぁ、やめ――――っっ、や、ぁ、めて……っ!

 ぁぅ、ぅ、ひぁ、も、やだ……っ!ぁ、あ、ぁ、やだ、やだ、もぉ、やだぁ……っ!」


 逃げる。叫ぶ。足を踏みつける。肘を振り抜いて鳩尾を打つ。

 抵抗するための手段は数多くある筈で、けれどチヒロはそんな単純な手段すら思い浮かべられないほどに、膣奥を抉るペニスの熱に思考を支配されてしまっている。


 熱に浮かされたようなチヒロの心を埋め尽くすのは、羞恥と惨めさと絶望だけだ。

 ヴェリタスの問題児たちを束ねる事実上のリーダーであり、キヴォトス全域を見ても有数のデジタル技術者である優秀な才媛。

 けれどそんな才も技術も人間性も意味を成さず、各務チヒロはただ”欲のはけ口”として、女として当然の幸せな初夜の幻想を打ち壊されてしまった。


『――――次はミレニアムサイエンススクール本棟。ミレニアムサイエンススクール本棟』


 そしてそんな中で、絶望の終わり――――あるいは最大の絶望を告げるアナウンスが響く。

 ミレニアムサイエンススクール本棟は、ここにいる殆どの人間が降車する駅だ。当然チヒロもそこで電車を降りなければならないし、なにより”停車”こそが今のチヒロには致命的だ。


「や、ぁ、だめっ!も、抜いて……っ!おりる、降りる、から……っ!

 やめ、て、みられ、見られちゃう……っ!ねぇ、おねが、お願いぃ………っぁあぁっ!」


 早まられるピストンの中で、チヒロは必死に懇願する。

 駅に電車が止まるより先に、スカートを拾い直して乱されたワイシャツを着直さなければならない。そんな焦りがチヒロの心身を埋め尽くす。


 そしてそれは男にとっても同様だ。

 名残惜しいが今日の愉しみはこれで終わりにしなければならない。想像以上の反応の良さについ盛り上がってしまったが、このまま射精せずに済ませるには興奮が勝ちすぎる。


「ん、ん、んぅ、ぁ、や、やめ――っっ!は、ぁあぁ……っ!

 く、ぁ、や、だめ、だめ、だめ、だめ……っっ!!ぁ、ぁあぁ、ぁ、や、や……っ!」


 肉と肉がぶつかり合う音。粘り気を帯びた淫らな水音。

 細い美脚を伝う愛液の雫や、窓ガラスに押し付けられた豊満な乳房。床に打ち捨てられたまま、知らず知らずに人々に踏みつけられてボロボロになったスカート。

 段々と電車の速度が緩まり、チヒロの背後に降車する乗客たちが並びだし、そしてそんな中で、膣奥に押し付けられたペニスがビクリビクリと不気味に打ち震える。


 そして、その刹那だった。

 今まで感じた事のない粘り気を帯びた奔流が、チヒロの膣奥を一挙に埋め尽くす。


「――――ッッッ!!!ふ、ぁ、ぁぐ…………っっ!は、ぁ、うぁ、あ…………!!」


 身を震わせる程の絶頂が、チヒロに与えられる事はなかった。

 けれどそうであるからこそ、チヒロは自らの最奥に流れ込む穢れた欲の熱を、逃げ場すらない状況でありありと感じさせられてしまう。


 膣奥でピクピクと痙攣するように跳ね、穢れた熱をぶちまけたペニス。

 それは射精を終えるや否や容易く膣から引き抜かれ、既に用済みと言わんばかりの性急さで人混みの中に消えていった。


『まもなくミレニアムサイエンススクール本棟。ミレニアムサイエンススクール本棟です。

 お忘れ物などないようご注意ください。ご乗車ありがとうございました』


 そうしてやがて、電車は残酷に目的地へとたどり着く。

 膣奥に吐き出された欲望の熱に蹂躙され、放心したまま小さな声で啜り泣き、乱された服を着直すことすら出来ないチヒロを最前列に残したまま。


 停車した電車。ホームに並ぶ人々からチヒロに向けられる動揺と好奇の視線と、数人がスマートフォンを取り出してレンズをこちらに向けている光景。

 けれど扉が開いてしまえば、後から後から押し寄せてくる降車客によって押し流されて、チヒロはただ駅のホームに投げ出されるしかない。


「うぁ、ぁ、ぁ、あぁぁ…………っ!」


 脱がされたスカートを取りに戻ることも出来ない。

 行き交う人波はチヒロの絶望など慮る事もなく、ただ放心したまま駅のホームに立ち尽くす彼女を置いて、いつも通りの日常を繰り返す。

 SNSという事実上永久に残り続けるデータの海に、少女の痴態を放流させながら。


 そうして数分—―――駅のホームから人影が消えた頃。


「――――あぁぁ、うぁ、ぅ、ひぅ……っ!ぁ、あぁぁ、うぁあぁぁぁ…………!!」


 チヒロはただ、駅のホームに糸が切れたようにへたり込んですすり泣く。

 そんな彼女の弱々しい姿――――乱れたワイシャツを直すことも出来ずにへたり込む姿には、常の沈着冷静な頼れる副部長としての面影は欠片一つとて残されてはいなかった。


≪了≫



お読みいただきありがとうございました!

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今週は2本更新していますので、よろしければもう一つの作品もご一読いただけると嬉しいです!


次回は1月27日に更新予定。

内容は未定ですが、決まり次第Twitterで告知させていただきます。


それでは次回も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!

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