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※『塗り替えられる物語~英雄譚から復讐譚へ~』の続編です。

 よろしければ前作からご覧いただけますと幸いに思います!



 小国の崩壊は、もはや避けられぬ段階にまで至っていた。

 民は暗愚王の暴政への怒りに煽られ、奸臣は名誉欲に煽られ、君臣は義憤に煽られている。


 それら全ての感情が、ただ一人の女によって煽られたものである事も知らず。

 小国の内側に分け入った復讐の炎――――ただ一人の女の重すぎる情念は、たった数週間程度で国土全てを焼き尽くさんばかりに燃え広がった。


「――――おぉ……っ!ぉ、おぉぉ……っ!佳い、佳いぞ、クリームヒルト……!」


 そして、そんな不可避の滅びを間近にした小国の王宮、その奥底にて。

 その滅びを決定づけた愚かさを表すような行いにふける、広がる戦火の真実を何も知らない愚かな王の、悦楽に歪んだ声が薄暗い部屋に響いていた。


「ふ、ふふ、はははは……!随分と上手くなったものではないか……!

 ただ舌を押し当てるだけの稚拙な口淫から、よくぞまぁここまで仕上げてきたものよ……!」


 王の私室。その部屋の主たる醜い男は、巨大なベッドに仰向けに横たわっている。

 そしてそんな男に覆い被さり股間に顔を埋めるようにしながら、一人の女が酷く下品な音を立てながら、硬く屹立して血管を浮かせた男のペニスを小さな口に咥えこんでいた。


 浅黒い男の肌と対を為すような白い肌。醜く肥えた男の体型と対を為すような痩身。

 醜い男に傅くにはどこをとっても美しすぎる女――――クリームヒルトは、しかしそんな美しさを自ら台無しにするように、どこを取っても醜い男へと口での奉仕をし続ける。


「っ、ん……!恐悦、至極に、存じます………っ、ふ……!」


 一度口内からペニスを抜き、唾液の糸で唇と亀頭を結びながらクリームヒルトは恭しく言った。

 女として酷く屈辱的な言葉に、男は「ふん」と上機嫌に鼻を鳴らして、そんな男を内心でひどく見下しながら、クリームヒルトは再びペニスを口内に迎え入れて舌での奉仕を再開する。


 口をすぼめてペニスを吸うようにしながら舌を這わせる――――俗な言葉で"バキュームフェラ"などと言われるらしい、ひどく下品な奉仕の仕方。

 男によって教え込まれたその方法を実践し、表情はあくまでも媚びへつらうように必死さを装いながら、クリームヒルトは心の中で冷えた溜息を吐き出した。


(ここまで愚かだとは、いっそ拍子抜けだとしか思えないわね。

 酒色におぼれた俗物――――なんて言い方すら生温い暗愚ぶり。この程度の男にしてやられた"あの人"の生きざまだって、それこそ笑い話にもならないわ)


 表情と感情を切り離し、行動と感情をもいとも容易く切り離す。

 冷酷な程に冷え切った頭で、今すぐにでも噛み千切ってやりたい口内の異物を舐め取り、下品に啜るような唾液の音を立てて奉仕を続ける。


 クリームヒルトの小さな口に収めるには、男のペニスはあまりにも太く長い。

 醜い脂ぎった腹部と同じように、ぷっくりと膨れ上がった醜悪な亀頭。クリームヒルトの口内を埋め尽くすようなそれは、彼女の舌に掠められるたびにひくひくと不気味に蠢動してその存在を主張した。


「余の恥垢の味はどうだ?存分に飲み下して味わえ。

 余の身を清めるのも側女の仕事であるからなぁ?えぇ?クリームヒルトよ」


 亀頭にねっとりと絡みついた不潔な垢は、生理的嫌悪感を固めたような味がする。

 気を抜けばすぐにでも嘔吐しそうになる塩味とえぐみ。だがそれでもクリームヒルトは感覚と感情を切り離し、嫌悪と侮蔑を表情の奥底に押し隠しながら男に媚びるような奉仕を続ける。


「ふふ、上手いものだ。それでいてとても浅ましい。

 夫を亡くしたばかりとは思えぬが、やはりジークフリートとの間に愛はなかったのかな?」


 男は肉付きの良い手をクリームヒルトの頭に乗せて、気分よさげにそんな事を宣った。

 クリームヒルトの内心を何一つとして解そうとしない、下劣な嗜虐欲と征服欲ばかりが滲んだ上滑りする言葉は、とうに揺らいだ男の立場を暗に示すようでもある。


「っ……ふっ、んぅ……っ!んっ、ふっ、ふぅぅ……っ!」


 下劣な言葉。美しい白金の髪を掻き回すいやらしい男の手の動き。

 それら全てに無視を決め込んで、クリームヒルトはあくまでも復讐のための手段として、自らの身体を完璧に使いこなして舌先による奉仕を続ける。


 恥垢を舐め取り、尿道を舌先でほじるように刺激する。

 そうして男が快楽に僅かに腰を跳ね上げれば、そのままトドメを刺すようにじゅるじゅるじゅるじゅると下品な音を立てて口を窄めながら、ペニスを迎え入れるように吸引してやる。


「お゛……!お゛ぉ…………っ!ふ、ふふふふふふ!

 積極的だなぁ?そんなにも余の子種が欲しいのか?浅ましいなぁクリームヒルト!」


 撫でまわすように髪を掻き回され、不快な言葉を当然のようにぶつけられる。

 けだもの同然の男は、それでも自分がクリームヒルトに――――ひいては勇者と名高いジークフリートに勝るのだと考えて、その考え方に疑念を抱くことすらない。


 愚かしい。心の底から愚かしい。いっそ笑い出しそうになるほど滑稽だ。

 けれどクリームヒルトは笑わない。嘲笑も屈辱も全てを呑みこみ、自らの体の細胞一つに至るまでを復讐の道具にするように、彼女は醜い男のペニスへと奉仕をし続ける。


(愚昧、愚劣……それともやっぱり"暗愚"が一番相応しいかしら。

 こんな男を頭に据えても保てていたなんて、随分と平和な国だったのでしょうけれど)


 口を窄め、勢い良くペニスを吸いながらクリームヒルトは考える。

 髪を掻き回す手が止まり、無遠慮に頭頂を掴むようにされながら聞く呻き声は、どうしようもなく浅ましい男の欲を想起させて酷く不快だった。


 どれだけ愚かであったとしても、男がそれなりに平和な国を維持してきたことには変わりがない。

 大なり小なり不満こそあれ、民たちはこの国で生活基盤を築いて暮らしている。悪政でこそあれ、その内側で生きていく人々がいたからこそ、ジークフリートはこんな国をも護ろうとしたのだろう。


 だがそんな国は、あと数日程度で完膚なきまでに壊される。

 成り立っていた生活も、築き上げてきた歴史や文化も。老いも若きも全てが蹂躙されて、あるいは義憤に呑まれたままで内側でつぶし合って絶滅するように、全てが死にさらばえていく。

 全てはそうなるようにクリームヒルトが――――この国を守った勇者の妻だった女が仕向けたからだ。


 王とその奸臣には自身の身体で取り入り、奪い合いを起こさせるように仕向けた。

 王に不満を抱く君臣には、自らの悲劇性を誇張して伝えることで義憤を煽り、そんな者たちに秘密裏に情報を流させることで民衆たちの不満も煽り立てた。


「側女どもの中には、反乱の報を受けて逃げ出そうとする者も大勢いたというのに……!

 お前は随分と従順だ。ふ、ふふふふ……!やはり女の身にとって、子を為すという誘惑は耐えがたいものか?んん?どうなのだ?クリームヒルトよ?」


「――――っ、んぶ……っ!!」


 心底から気を良くするように、男はクリームヒルトの顔を強く自らに押し付ける。

 整えられていない陰毛の先端――――汚らわしい細針のような感覚が美しい顔に伝わると同時に、華奢な喉奥に、張り詰めて打ち震える亀頭が強く強く押し付けられた。


 数多いた側女たちの全てに、蛇蝎の如くに毛嫌いされていたイラマチオ。

 常人であれば白目を剥いて鼻水を垂れ流すほどの無遠慮な蹂躙を、しかしクリームヒルトは僅かに呼吸を乱す程度で受け止め、あろうことかそのまま音を立ててペニスを吸っていく。


「ぉお……っ!お、んぉぉお……っ!ふ、ふははは!本当に上手くなったものだ……!」


 現実から目を逸らしたまま、暗愚王は肉欲にふけりつづける。


 既に滅びが避けられない事は、口にせずとも理解しているのだろう。

 だからこそそんな恐ろしい現実から目を逸らすように、男は目の前の女を辱しめようとする。


 口を、髪を、胸を、肌を、膣を、心を。それら全てを蹂躙する。

 勇者の妻であった女が自分を見る目の中には、夜毎に女として辱しめ続けても未だに消えない炎が――――理解しがたいほどに熱く滾った炎が燃え続けているから。


 目の奥の炎を消してやりたい――――それを肉欲によって溺れさせて、炎をかき消してやりたい。

 そんなどこまでも下卑た欲望――――あるいは現実逃避の加虐心のままに、男はただクリームヒルトの頭を掴み、彼女を性欲を満たすための道具のように扱い続ける。


「ふ、んぅぅ……っ!く、ん……っ!んぅ……!」


 下から上へと、突き上げるようにグラインドしながら喉奥を穿ってくるペニス。

 気を抜けば呼吸求められてしまいそうな息苦しさの中で、それでもクリームヒルトは感覚と感情を切り離し、自らの身体を道具として復讐のための自分を演じ続ける。


 ペニスを吸い、喉奥でひくひくと蠢く亀頭の不気味さを無視する。

 喉奥に垂れ落ちていく先走り。ねっとりとした不快感を、しかしクリームヒルトは付け入る隙だと認めて、より一層激しく喉奥に抑え込まれたペニスを舌によって刺激しだす。


「お゛……っ!お゛ぉぉおっ!!おっ!おぉぉっ!それ!佳いぞ!クリームヒルトぉ……!」


 下品な唾液の音を立て、口を窄めさせてペニスを吸う。

 どこまでも無様で下品な、”勇者の妻”などとは思えない痴態を晒し、あまつさえそんな行為の中で表情に笑みを模らせながら、クリームヒルトは最後の一押しを仕掛けた。


 ぐじゅ、じゅぶ、ぶじゅじゅ。下品な音が薄暗い寝室の中に響き渡る。

 くぐもった可憐な呻きを覆い隠すように、引き潰される蛙のような惨めで無様な男の呻き声が響く。


(カリの段差に舌を這わせて、同時に勢い良く吸ってやれば――――)


 数日の間に慣れてしまった、男が容易く射精に至る奉仕の仕方。

 目を蕩かすように微笑みを浮かべ、それから思い描いた通りに口をもごもごと蠢かしてやれば、たかがそれだけで男の身体がビクビクと跳ねた。

 そしてそのまま、クリームヒルトの思惑通りに男が切羽詰まった調子で叫ぶ。


「おぉ……!ぉおぉっ!出す、出すぞ!

 全て飲め……!全て飲み込めよ、クリームヒルト……!!」


 がっしりと強く股間部に顔を押さえつけられながら、喉奥を穢す精液を感じ取る。

 生命力そのものを吐き出しているような熱さと量。子孫を残すことに関してだけは王として一人前だと、クリームヒルトは冷めた所見と共に喉奥のそれを呑み下していく。


 こく、こく、と喉を鳴らして呑むそれは、ひどく粘ついていて生臭い。

 けれど後から後から湧き出してくるそれらは、少しでも飲み込むことを躊躇えば瞬く間に口内を埋め尽くし、鼻腔から無様にクリームヒルトの顔を穢すことになってしまう。


「ん……っ!ふ、んぅぅ……っ!ん……っ!!」


 だからクリームヒルトは、あえて精液を絞り出すように亀頭を口内に押し戻して吸った。

 尿道から湧き出してくる精液をあえて迎え入れるように下品な音を立てて吸い、そうすることで媚びへつらう有様を見せつけつつ、男の意識外からそのペースを握り続ける。


 鼻腔から精液が垂れている感覚も、あえてクリームヒルトは無視する。

 そうして長い射精を口内で受け止めて、じゅるじゅるとあえて音を立ててペニスを吸って、その奥から精液の残滓程度しか啜り取れなくなってから、クリームヒルトはゆっくりと男の股から顔を上げた。


「――――ふふ、陛下、お疲れ様でございました」


 汗で乱れて頬に張り付いた、美しい白金色の髪の一房。

 妖艶な微笑み。それを穢すように鼻腔から垂れている白濁した精液。そして口端から垂れ落ちようとする精液を妖艶に舐める、やけに赤々として映る蛇のような舌。


 射精を終え、全てを絞り出し尽くしたはずのペニスがみるみるうちに硬度を取り戻していく。

 天を衝くような肉の楔。赤黒い中に、更に濃く映る黒ずんだ血管を数多浮かせたグロテスクなそれ。


 そもそもが清純な令嬢だったクリームヒルトは、性のグロテスクになど慣れているわけもない。

 未だに生理的な嫌悪感は拭えないそれ。だが男はそれを指し、乱れた息遣いでなおも嗤った。


「いいや、まだまだ夜はこれからであろう?

 余が満足するまでは付き合ってもらうぞ?ジークフリートの妻だった女よ」


 "クリームヒルト"ではなく、あえて彼女の境遇を過去形として男は言う。

 身体を暴かれる事よりも、胸を嬲られる事よりも、口で奉仕を強要される事よりも、クリームヒルトからすれば何よりも腹立たしいその物言いは、きっと男からすれば狙ったものではないのだろう。


 不快感に唇の端が引きつった。怒りに満ちた衝動が心の奥でゆらりと燃える。

 もしもこの場に剣の一振り――――そうでなくとも小刀の一本でもあったならば、このまま無謀にも組み付いて、男の首筋や無防備に晒された陰部を狙うかもしれない。そんな怒りが一瞬で湧く。


「…………はい、陛下」


 だがクリームヒルトは、そんな衝動的な怒りすら心の奥底で抑え込んでしまう。

 ほんの僅かな沈黙と、薄暗い部屋では感知され得ない僅かな頬の引き攣り。それだけで怒りを呑みこんで、彼女は口内に残る精液の酷い味を抱えたまま、次の奉仕へと自らの身体を用いていく。


 申し訳なさはなく、ただ屈辱と煮えるような怒りだけがクリームヒルトの内にはあった。

 ジークフリートを奪った男たちに対してではなく、"このような愚物どものために命を捨てた勇者"に対しての復讐として、女は自らの身体と勇者が守ったものをことごとく台無しにしようとする。


「――――?どうした?」


「いえ、口内にまだ飲み残した子種があったものですから。

 ……そう焦らずとも、夜はまだ長いのです。どうぞ私の身体を用いてお楽しみくださいな?」


 復讐の甘美さに持ち上がった頬を誤魔化すため、クリームヒルトはあえて喉をこくりと鳴らして唾を飲み込み、それから妖艶な微笑みを浮かべた。

 男は仰向けに横たわったまま動こうとはせず、あくまでもクリームヒルトに自ら奉仕させようと、再びそそり立ったペニスをひくひくと蠢動させるばかり。


 醜い男と美しい女は、見目の不釣り合いと裏腹にベッドの上で絡み合う。

 男の股座の上にクリームヒルトは大きく脚を開いた体勢で跨り、その状態で悪魔のように美しい微笑を浮かべたまま、まずはゆっくりと男の手を取ってそこに指を絡みつかせる。


「ふふ…………それでは、失礼させていただきますわ」


 いわゆる"恋人繋ぎ"で指を絡めながら、クリームヒルトは浮かせた腰をゆっくりと下ろしていく。

 見上げた男の眼前に晒されているのは、薄暗い部屋の中で浮かび上がる程に白い肌。柔らかい胸やくびれた腰付きが、ゆっくりと自分の身体に近づけられていく事への興奮が屹立したペニスを打ち震えさせる。


 鎌首をもたげた大蛇のようなペニス。それがゆっくりと近づいてくる感覚。

 率直に言って不快でしかないそれを、それでもクリームヒルトは自分自身の感情を排して、さも”しとやかな側女"としての表情を形作って受け入れようとする。


「んっ…………」


 僅かな吐息と共に、射精したばかりの亀頭の先端がクリームヒルトの秘部に触れた。

 彼女が側女となってから十日ほど。夜毎に閨に呼びつけては陵辱紛いにその身体を乱暴に使い尽くしてきたというのに、その身体は名器の締まりを一切崩す気配がない。


 ゆっくりと焦らすように、引き締まった肉穴の感触が張りつめた亀頭を包み込んでいく。

 僅かに"くちゅ"と音を立てる程度に濡れた膣。ゆっくりと焦らすように――――こじ開けていく感覚を鮮明に意識させるような締まりは、男の支配欲をゆっくりと煽っていく。


「…………本当に佳い膣穴を持っているものだなぁ?

 これをさほども味わわずに逝ったジークフリートの愚かさが知れる」


 くつくつと男がせせら笑えば、締まりの強い膣に僅かな震えが感じ取れるようになる。

 男が少し視線を上向ければ、そこには僅かに引き攣った表情で、それでも媚びるような笑みを浮かべるクリームヒルトの姿があって、そんな快楽と屈辱に耐えようとする表情も男の下劣な興奮をひどく煽った。


「恐悦……っ、至極に、存じます…………っ!

 っ、ふ、うんぅぅ……っ!は、はぁ……っ!ぁ、あぁ……っ!」


 中身のない礼の言葉を述べながら、クリームヒルトは喘ぎ混じりに微笑みながら腰を進める。

 この喘ぎも演技であれば――――そんな事を思うけれど、如何に復讐に駆られた鬼と化していたとしても、その身の奥底に刻み込まれた本能には抗えない。

 復讐者である以前に、クリームヒルトは"女"である。そして"女"であるという事実が、この場においてはもっとも致命的な弱点となってしまう。


(本当……!女を犯すことについてだけは一流の男だこと…………!)


 一度射精をしたにもかかわらず――――湧き出ようとする精液の一滴に至るまでを搾り切ったにもかかわらず、男のペニスは未だ太く硬く屹立しきっている。

 天を衝くように屹立したグロテスクな肉の楔。それはカリの段差の深さもさることながら、なにより浮かび上がった血管に至るまでもが、女を責め立てる肉の凶器と化しているようだった。


「く、ふぅ……っ!ん、ぁ…………っ!」


 カリの段差がゆっくりと、まだ濡れそぼるには足りない膣壁を割り開いていく。

 抵抗のない膣を押し開くよりも、男はまだ抵抗の強い膣を無理矢理に押し広げ、クリームヒルトに苦痛が混ざった喘ぎを零させることを好んでいるらしい。


 最初の数日は、ペニスで犯される前に自慰を強制されたり男性器を模した道具で膣穴を割りほぐされたりしたものだが、おそらくそれはクリームヒルトの叛意を削ぐための行為だったのだろう。

 あえてすべてを受け入れたふりをして、とにかく従順に振る舞うようになってから、男はむしろ口や胸での奉仕を強制こそすれ、彼女自身に性感を与えるような前戯はほとんど行わなくなっていた。


「それにしても、余の魔羅を咥えただけで随分な濡れ様ではないか?」


「ふ……っ!っ、うぅ……!陛、下の……!モノが、逞しすぎて……っ!

 ふぁっ!ぁ、んん……っ!こんなにも、なって、しまいました…………!申し訳、ありませ――っっ!」


 毎夜、クリームヒルトの膣内にペニスを埋めながら行われるお決まりのやり取り。

 本能によって吐き出してしまう喘ぎは止められないけれど、それでもクリームヒルトは内心で、こんな決まりきったやり取りで愉悦に浸れる男の単純さに辟易とした。


 下卑た含み笑いに男が身を揺さぶれば、それに伴う僅かな振動が狭い膣内を震わせる。

 未だ膣の半ばほど――――男のペニスで言えば三割程度しか挿入されていない状態。それでも僅かな身じろぎは膣内に快楽を呼び起こし、クリームヒルトの口から甲高い悲鳴を零させた。


「っく……!んぅぅ……っ!」


 本能的にビクリと跳ねる身体。白い乳房がふるりと揺さぶられて男の目を楽しませる。

 耐える間もなく零れてしまった声を抑え込もうと、クリームヒルトは焦り混じりに両手を口元にやろうとしたけれど、恋人繋ぎの形で両手を拘束されていてはそんな事が出来るはずもない。


「否、余ではなく謝るべきはジークフリートに対してであろう?

 寡婦の身では生きていけぬからと、夫を喪ってすぐにこのように肉欲に耽るような女。勇者として知られた男の妻だった者として、あるまじき失態ではないのか?んん?」


 どこまでも下劣に、男はクリームヒルトの怒りを無自覚に煽っていく。

 苛立ちと呼ぶには重すぎる"怒り"。きっと男はクリームヒルトから羞恥や屈辱――――あるいはそれら全てをかなぐり捨てた淫蕩辺りを引き出したいのだろうが、その狙いは外れている。


 ジークフリートに対してクリームヒルトが抱くのは、万感の怒りだけだ。

 こんな事になって申し訳ない――――そんな風に謝るべきは自分ではなく彼の方。何もかもをかなぐり捨てて、求められるがままに死んでいった男に対する憤怒だけが女の心を満たしている。

 

 そして同時に、クリームヒルトが男の性根へ感じているのも”嘲り”だけだ。

 肉体的な意味で言えば、男は確かにクリームヒルトの本能をも揺らがせるモノを持っている。けれどそれはあくまでそれだけの事。

 どれだけ身体を暴かれようと、屈辱的な言葉をぶつけられようと、きっと自分の中に抱いた所感は変わらないのだろうと、クリームヒルトは既に理解してしまっていた。


「は、はい……っ!私は、浅ましい女です……っ!

 夫に、操も立てられない……っあぁ!ぁ、浅ましく下劣な、女です……っ!」


 そして同時に、クリームヒルトは男が望んでいるのだろう言葉を吐いてやる。

 女としての尊厳を捨て去るような、卑猥で浅ましい言葉。それと共に少し深く腰を押し進めれば、本能的にこみあげてくる喘ぎ声が声音に塗りこめた偽りの惨めさを"それらしく"偽装した。


「あぁ、そうだろうなぁ?お前の膣内は余の魔羅を咥えて蠢いている。

 お前の浅ましさは、お前の膣内が何よりも雄弁に語っているも同然だものなぁ?」


 そして、そんな表層の言葉に男はひどく興奮した様子で言葉を続けた。

 自分がクリームヒルトよりも優位に立っているのだと微塵も疑っていない言葉。それはあくまで男を掌で転がしているクリームヒルトからすれば、心底から滑稽な言葉でしかない。


「そ、う、です……っ!クリームヒルトは、浅ましい、女ですぅ……っ!

 ジークフリート様、への、操を捨てて……っ!肉欲に、耽るような……っ、ぁ、あぁっ!」


 だがそれでも、これこそがクリームヒルトにとっての復讐でもある。

 大英雄が命を賭した守ったものを、その大英雄に捨てられた女が惨めに蹂躙し尽くす。

 だからクリームヒルトは、さも肉欲に耽る浅ましい売女のように淫らな言葉を並べながら、淫欲に狂ったようにずぶりと膣奥の脆い場所に硬く滾ったペニスの先端をぶつけさせた。


「っぐ、ひ……っ!ぁ、うぅうぅぅっ!」


 演技が半分、本能的な喘ぎが半分の惨めな声が薄い唇から零れる。

 細く華奢な身体が男に跨ったまま弓なりに反り上がり、豊かな乳房がふるりと大きく持ち上がって、そのまま重力によって二度三度と男の見上げる先で跳ねまわった。


 薄くではあるが、形が白い腹に透けて見えるほどの太い巨根。

 自らの体重も加える形でそれに膣奥を穿たれ、クリームヒルトは演技ではなく本能的に目を潤ませ、浅ましくガニ股に開いた足をガクガクと震わせる。


「は、ぁ……っ!はぁ……!は、ぁ、う…………っ!」


「ん?どうした?挿れるだけで終わりだとでも言うつもりか?」


 だがそんな本能的な反応――――クリームヒルトが見せてしまった絶対に演技ではありえない淫らな反応を、男は絶対に見逃さない。

 ニタニタと下劣な笑みを浮かべながらクリームヒルトの手を強く握り、男はそのまま僅かに膣奥を押し拉ぐような形で、ゆっくりと腰を蠢かして目の前の女を嬲る。


「ふ、ぁ、あぁ……っ!や、ぁ、滅相も、ございませ――――っ、んぅぅっ!

 は、はぁっ!う、んんっ、ひぅぐっ!?ぁ、や、や、やぁあぁぁぁっっ!!」


 演技ではなく、女としての反応がクリームヒルトの奥底から喘ぎ声を湧きあがらせる。

 道具として自らの身体を使いこなすことは出来ても、最奥の最も脆い場所を執拗に押しひしがれる刺激に対しては、理性が働くよりも先に本能が反応を見せてしまう。


 下劣で、愚かで、だからこそ愉快なほどに自らの手のひらで踊るばかりの男。

 だがクリームヒルトのそんな所感がどれだけ真実を言い当てていたのだとしても、少なくともこの一瞬においては、クリームヒルトはただ膣奥を拉がれて喘ぐ脆い女に過ぎなくなっている。


「ほれ、どうした?そんなに膣奥を嬲られるのが心地よいのか?

 随分と浅ましく子宮口をひくつかせおって。恥すら捨て去らせたつもりはないぞ?」


「ふ、ぅあっ!や、や、だめ……っ!ぁあぁ、だめ、ですっっ!!

 ぁ、あぁぁ、や、や、や、ぁ、んんぅっ!ひ――――っっぁああぁぁぁぁっ!!」


 そしてそのまま、脆い女としてクリームヒルトは絶頂に追いやられた。

 理性はまるで屈服せずに彼女の内に残っていて、けれど夜毎に使い潰すように犯されたことで、その膣奥はひどく鋭敏に男の欲を受け止めようとしてしまっている。


 名器の締まりが一層強まり、巨根を膣肉が絡みつくように締め付ける。

 男の太いペニスが快楽に打ち震え、その僅かな震えがクリームヒルトの膣肉に伝播して、鋭敏な快感神経に夥しく悍ましい性感の信号を帯びさせてしまっていた。


「は……ぁ、あぁぁ……っ!っ、く、ふ、ぅうぅ…………っ!」


 ビクビクと意識とは無関係に跳ねる身体。ふるふると揺さぶられるたわわな胸。

 胸の中心の敏感な肉芽は、触れられてもいない筈なのに心中から湧き出る性感によって硬く屹立し、弓なりに沿った体が跳ねるたびに空気に擦れて、僅かな感覚で性感を助長する。


 疵になりそうなほどの強い力で手を握られて、その状態で跳ねさせられる身体。

 跳ねるたびに膣奥に刺激が加わり、喘ぎが喉奥から零れ落ち、さりとて抵抗らしい抵抗もできぬままに、クリームヒルトはただ女としての身体を弄ばれることになってしまう。


「あ、う、おやめ、くださ――――っっ、陛下……っ!

 わ、私が、ご奉仕いたします……っ!から!その手を、お放し下さ――――っっ、ぁ、あぁんっ!」


「何を言っておるか。お前は口で奉仕をしただろう?

 おかげで余は気分がいい故な?自らが動いて、お前の身を悦ばせてやろうぞ」


 そんな事を宣いながら、男は絶頂したばかりのクリームヒルトの最奥を突き上げるように何度も穿つ。

 絶頂に伴って濡れそぼってしまった膣奥。それをぐちゅぐちゅと淫らな水音を立てながら突き上げられ、目を快楽に蕩かせながらクリームヒルトはただ喘ぎ続けるしかない。


 結ばれた手を必死に放そうとしても、クリームヒルトは男の膂力には抗えない。

 彼女の強さはあくまでも精神的な強さ――――目的のためにあらゆるものを捨てられる精神性であり、つまり今の状況を変える直接的な方法を、彼女自身は一つとて持ち合わせてはいなかった。


「ぁ、あ、あぁっ!や、ぅ、んんっ、く、んぅぅぅっ!」


 肉の音と粘液の音が、一定のリズムで断続的に響き渡る。

 薄暗い部屋の中で白い肌と美しい長い髪が揺れて、彼女自身の意思とは無関係な甲高く媚びるような声が、どうしようもなく空気を揺さぶってしまう。


 屈辱的な性感が、身の内からぞわぞわとクリームヒルトを責め苛む。

 女を犯すこと以外にとりえのない愚かな男。復讐の道具でしかないそれによって身を暴かれて、あまつさえ本能を直接刺激されて喘がされているという屈辱は、次第に彼女の理性をも侵食しようとする。


「膣内が随分と痙攣しているようだな?

 わかっているぞ?一度絶頂をしてしまえば、お前はもう抗えなくなるものなぁ?」


 クリームヒルトの身体をさも熟知しているように男は言って、それから一層深くまで腰をグラインドさせて、子宮口を強く強く下から上へと押し上げた。

 腹の奥に直接響く性感。子宮をそのまま圧迫されるような感覚に、クリームヒルトは喘ぎ声を漏らすこともできず、大きく身体を逸らして強い絶頂に意識を一瞬白く染められるしかない。


「――――っっ!!か、は、ぁあ…………っ!」


 ひくひくと蠢いてペニスに絡みつく肉ヒダ。零れ落ちていく愛液。

 どこまでも浅ましい"女"としての反応――――しかし嗜虐欲に突き動かされる男は、たかが一度や二度程度の絶頂で、クリームヒルトという極上の女を手放そうとするわけもない。


 騎乗位の体勢では、男は小刻みに揺さぶるように腰をグラインドさせる以外にない。

 だがそんな小刻みな膣奥への刺激も、絶頂の直後という状況や、男の太く長いペニスの形状も相まって、それは確かな責めとしてクリームヒルトを苛んでしまう。


「っ、ふぅ……っ!うくっ!ぁ、あぁんっ!や、や、あぁっ!

 陛、下……っ!も、十分、です、から……っ!あ、あとは私に……っ、ひ、んぅぅっ!」


「遠慮をするなクリームヒルト。これは労いであるのだからなぁ。

 ほれ、お前は膣奥をこうして突かれるのが弱かっただろう?遠慮せず絶頂するがよい」


 くちゅくちゅくちゅくちゅと小刻みな音を立てて、揺さぶるように刺激される膣奥の脆い場所。

 女の身である以上は抗えない刺激は、ついぞジークフリートから与えられることはなかった刺激で、クリームヒルトはもはや身を焼く本能に抗えずにただ喘ぎ、身を跳ねさせるばかりになってしまう。


「くっ、ぁ、ぁうっ!ふ、ぅうぅぅぅぅっ!!

 や、や、だめっ!やめ――――っっぁ、あぁあぁぁぁぁっ!」


 そしてそのまま、男の欲望に沿うように絶頂してしまうクリームヒルト。

 ひくひくと跳ねる身体。揺れる乳房。屹立した乳首。きゅうきゅうと締まりながら愛液を垂れ流してしまう、寡婦とは思えないほどの清廉な膣口。


 復讐心は未だある。正気はまだ保っている。快楽に溺れるようなことは断じてない。

 しかし現実として、強く手を掴まれて小刻みに子宮口を突かれ続けていては、それこそ女としての本能が屈服を叫び始めてしまうことは避けられない。


(これ、ちょっと、マズい…………っ!

 早く、どうにかして、ペースを握り直さないと――――!!)


 男の事は見下している。性欲だけが取り柄の暗愚王だとしか思っていない。

 だが閨においては、その"性欲"こそが優劣に直結する。理性を介さずに本能で動くことこそが、目の前の女を犯し辱しめるための最たる手段であると男は本能で理解してしまっている。


「ぁ、あ、あぁぁっ!や、やめ――――っひ!ひぅっ!ああぁっ!

 や、や、お許し、をぉっ!も、もぉ、だめっ!だめですっ!イ、イくっ!あぁぁイくぅっ!」


 小刻みに子宮口を震わせられての絶頂は、重くはないがそれ故に短時間で連続する。

 くちゅくちゅくちゅと響く卑猥な水音も、締め付けを強めてしまっている膣肉も、それら全てがクリームヒルト自身にも明確に伝わって、彼女のプライドをどうしようもなく傷つけてしまう。


 復讐のために自らの身体を用い、その身を辱しめることは望むところではあった。

 けれど、与えられた側女としての陵辱と調教は、クリームヒルトの復讐心を揺らがせることは無くとも、その身体を内側から淫らなものへ作り変えてしまっていた。


 男の目がじっとりと見上げる先で、踊るように跳ねる美しい女の乱れ切った痴態。

 その内面に関する理解は当然のように及んでいないが、しかしそんな理解にはもう意味がない。


「随分と淫らになったなぁ?これも余の調教の賜物か?

 それともお前は元々淫婦だったのかなぁ?どうなのだ、クリームヒルト?」


 "拍子抜け"などというのは誤った所感であったと、クリームヒルトはもう認めざるを得なかった。

 自分の身体の全てを掌握していたつもりになって、けれど夜毎の陵辱の内側で変えられていった自分自身の事を完全に見誤っていたと、もう彼女は認めざるを得なくなっている。


「おゆ、るしをっ!ぁ、あぁんっ!お許しを、陛下っ!

 ぁ、あぁぁっ!だめっ!ぁ、あぁぁや、やめ―――っっ!ぁ、かはっ!ふ、んぅぅあぁっ!」


 何とかしてペースを握り直すのが先か、それとも自分の身体が快楽に屈服し尽くすのが先か。

 クリームヒルトは指を絡めるように握られた手を何とかして自由にしようとするが、しかしそんな僅かな抵抗を叩き潰すように、男は絡めた手を引くようにしながら小刻みに膣奥を突いてしまう。


 痺れるように湧き上がってくる、どうしようもない性感の波濤。

 小刻みな絶頂に蕩かされる中で、クリームヒルトの表情は段々と必死さに歪み、取り澄ましたような美しさは既にほとんど剥ぎ取られたも同然に至っていた。


「ほれ、ほれ、締まりが疎かになってきているぞ?

 名器とはいえ、自ら締めねば側女としては失格だろう?ほれ、もっとよく締めろ」


「あ、あ、あぁぁっ!申し訳……ッ!申し訳、ありませ……っ!

 や、ぁ、ぁうっ!は、あぁんっ!や、や、だめっ!ぁ、あぁぁだめだめだめ奥……っっ!!」


 すでに子宮口の場所は、男の亀頭によって完全に捉えられてしまっている。

 小刻みに何度も何度も、揺さぶるようにその場所ばかりを刺激されては、与えられる性感に対して"耐える"という選択肢を持つことすらも許されない。


「ひ……っ!ぅ、ぁあぁぁっ!だめ、ぁ、だめ、ですっ!

 し、潮っ!ふ、噴いてますっ!出てるんですっ!や、や、ぁ、あぁぁぁぁ動かないでぇっ!」


 太いペニスを咥えこんだ膣口から、男の身体に向けて降り注いでいく淫らな液体。

 耐えられない。耐えられない。耐えられない。もはやクリームヒルトは"奉仕"という建前すらかなぐり捨てるように、拘束のように絡められた指を解くのに必死になっている。


「くく、まだまだ潮噴きと呼ぶには勢いが弱かろう?

 もっと乱れてくれても構わんぞ?ほれ、ほれ、ほれ、ほれぇっっ!!」


 だが男による責めは、クリームヒルトの内心も身体も何もかもを斟酌しようとはしない。

 悲鳴を上げる身体も焦燥に支配されそうになる内心も打ち壊すように、男は愚かなままで何度も何度もクリームヒルトの膣奥を押し上げ、揺さぶるように穿ち抜いてしまう。


 絶頂の最中に上塗りされる性感が、膣口から湧き出す淫液の勢いを強める。

 失禁しているかのような羞恥――――数少ないジークフリートとの触れ合いの中ですら至ったことのない、女としての限界反応を引き出されているという事実が、屈辱を更に煽り立てる。


「も、ぉ、だめっ……!あ、あぁぁ、だめっ!だめですっ!!

 や、ぁ、あぁぁぁぁひっ!だめだめだめだめ出ちゃ――――――っっ!!!」


 ぷしゅ、と勢いよく男の身体に吹き付ける潮の飛沫。

 大きくのけ反るクリームヒルトの身体。豊かな胸と屹立しきったその中心がぶるりと大きく揺さぶられて、跳ねまわるようにクリームヒルトの乱れぶりを表す。

 男はそんな暴れる乳房に手を伸ばし、好き勝手に嬲り尽くしてやりたい衝動に駆られるが、しかしそれでも握り絡めた手指を放すことはなく、何度も小刻みに腰をグラインドさせるばかりだ。


「ぁ、あ、ぁ、あぁぁっ!も、お許し、をっ!お許しをぉっ!

 も、もぉ、ぁ、イって、イってますっ!!もう、もう、何度も、何度もぉっ!」


 いつの間にやら心底からの必死さが滲みだした喘ぎ声。

 それを聞きながら、それでも男は目の前の美女の膣奥を揺さぶり続け、その身と心を完膚なきまでに快楽の渦の中に突き落とさんとする。


 男は確かに王としては暗愚だった。その点についてクリームヒルトの認識は正しい。

 しかし一方で、男はその性根に至るまで愚かだったわけではない。無論、ジークフリートやハーゲン程に聡く賢かったわけではないけれど、男は少なくとも真の意味での"愚者"ではなかった。


「何をだ?何を許せと言うのかな?

 余はお前に粗相をされた覚えはないがな?何か理由でもあるのか?んん?」


 クリームヒルトの内心――――そこに宿った復讐の真意に気づくほど、確かに男は聡明ではなかった。

 しかし一方で、"クリームヒルトという女は、ジークフリートの仇を討ちに来るだろう苛烈な女だ"という程度の事は、男も当然に認識をしている。


 そしてそうであるからこそ、男はクリームヒルトを側女とした。

 亡夫の仇討ちを切望する女が、自らの手練手管によって快楽に溺れ、目的と快楽の狭間で煩悶して苦しむ姿を眺めたい――――そんな欲望を満たすために、男はあえて彼女を夜毎に嬲っている。


「は、ぁ、ぁうっ!これ、では、もう……っ!も、ぁ、うぁっ!だめ、イくぅっ!!

 や、や、ぁぁぁ、ご、ご奉仕も、出来なくな――――っっ、ぁ、あぁんっ!やぁあぁっ!」


 復讐の真意も、あえて危険な女を危険なままで侍らせている理由も。どちらも相手には告げぬまま。

 しかし閨の空気を揺さぶる肉音と水音は、間違いなく男による蹂躙の音であり、同時にそんな蹂躙に対して女が抗い続けている事を示す音だった。


 クリームヒルトの肉体の陥落が先か。それとも彼女の謀略が成るのが先か。

 どちらにせよこの陵辱の日々はもうじき終わる。男の首が跳ねられるか、クリームヒルトの意識が塗り替えられてこれが"陵辱ではなくなるか"の違いではあるが。


「う、ぁ、あぁぁっ!も、もぉ、一度、休ませてぇっ!

 あ、んっ、んぅぅだめっ!ぁぁぁだめだめだめも、や、ご奉仕、できな――――~~っっ!」


「くく、安心せよ。貴様の身体は余に奉仕を続けておるわ。

 よく締まる膣穴。よく揺れる乳房。乳首は随分と屹立し、愛液も留まることなく流れ落ちている」


 "奉仕"などという言葉は、それこそクリームヒルトの繰る最たる詭弁だ。

 復讐のための手段として、恥を忍んでその身を用いているだけの女。けれどここまで身体の奥底を執拗に蕩かされて、それでもなお詭弁を弄せる精神力は特筆に値する。


 だから男は、ニタリと醜悪な笑みを浮かべながら絡めた指を放し、そこから更に拘束を強めるように、クリームヒルトを抱きしめて自身の身体の上へ引き倒した

 勢いよく男の身体に密着するように抱き寄せられ、突かれたままの子宮口が勢いよく拉がれて、クリームヒルトの身体が大きくびくりと跳ね上がった。


「っ、ふぁっ!ぅ、ぐぅっ!!」


 濁った悲鳴がクリームヒルトの口から漏れる。

 汗ばんだ身体と身体が境界線を蕩かすように密着する。

 汗ばんでなお滑らかな乳房と屹立した乳首が、容赦なく男の肌に擦り付けられる。


 唐突に与えられた、目の奥に火花が散るような性感の波濤。

 深く抉られた子宮口から痺れるほどの性感が押し寄せて、クリームヒルトは絶叫する。


「ぁ、あ、ぁ、ぁあぁだめだめだめ深いっ!深、ぁああぁぁっっ!

 い、いやっ!だめっ!だめっ!ぁあぁイくっ!だめですっ!!ぁあぁだめだめだめイっっくぅぅっ!」


 文字通りに抱き潰すように、密着した女の膣奥を殴りつけるように何度も穿つ男の腰遣い。

 身じろぎの度に肌に擦り付けられる乳首。強く抱きしめられていては快楽を逃がすことなどできるわけもなく、クリームヒルトは男の胸板に顔を埋めて、絶叫めいた喘ぎと共に勢いよく潮を噴くしかない。


 華奢な背中に手を回し、必死で逃れようとする抵抗を膂力だけで押し潰す。

 ”復讐鬼”などと呼ぶにはあまりにも華奢すぎる小さな背中。どこまでもただの"女"でしかない脆いそれを腕の中に押し留めながら、男はそれを叩き壊さんばかりに腰を振り続ける。


「ぁ、あ、ぁ、あぁぁだめっ!だめなのっ!だめぇぇっっ!!

 い、いやっ!ぁあぁや、や、や゛っっ!ぁあ゛ぁあああぁぁあぁぁっっ!」


 獣のような喘ぎ声。段々と男の息も荒くなっていく。

 汗ばむ体に屹立した乳首が擦れる。華奢な身体に快楽が容赦なく叩きつけられて、男の胸に埋められたクリームヒルトの表情が段々と優美さを打ち捨てたものへと変わっていく。


「ぁ、あ゛っっ!あぁぁだめっ!だめっ!

 ぁあぁぁぁだめぇっっ!!これだめっ!だめだめだめ…………ぁ、あぁあぁっっ!」


 必死の叫びが薄暗い部屋の湿った空気を揺さぶり、男の劣情を一層高めた。

 強く強く抱き潰すように腕に力を込め、男は自らの欲望を満たすためだけにクリームヒルトの膣奥を突きあげて揺さぶり、そしてとうとうその時が訪れる。


「ふ、ぁ゛っっ!ぁあぁぁっ!っっ、く、んんっ!!」


 身じろぎの一つも許さないように抱きすくめられたまま、最奥を今までより深く穿たれる。

 子宮口を刺激するのではなく、その奥に存在する子宮を押し潰すような一突き。それはクリームヒルトの喉奥から、無様極まる濁った悲鳴を零させて、そして――――


「ぁ゛っっ!あ、あぁぁあぁいやっっ!だ、だめっ!ぁあぁだめだめだめ――――んぅぅぅっ!

 んぐっ!!ん゛っっ!んんん゛っっ!んんん゛ん゛――――――――――――――ッッッッ!!!!」


 男がクリームヒルトの唇を無理矢理に奪い、そのまま膣奥に精液を注ぎ込む。

 同時に、呼吸すら満足にできなくなるほどの、文字通りに貪るような口づけが落とされる。

 無遠慮に舌と舌を絡め、口端から唾液が零れるのにも構わずに、男はクリームヒルトの内側を上下から揺さぶって彼女の口内と膣奥を蹂躙した。


「んぅっ!んっ!ぁ、んぅぅぐぅぅう―――~~っっ!!ぁ、あ、ぁうぅっ!!」


 膣奥に押し寄せる熱く滾った精液。それは口内を満たした時よりも量も粘度も増している。

 子宮口に群がり、絡みつくようにその内側に押し入って、ほとんど無垢なままで愛する男と死に別れた女の奥底を、下劣な欲に駆られた男の遺伝子が蹂躙していく。


「ふ、ぅ、んん゛っっ!ぁ、かふっ!ん…………っうぅ……!」


 そして同時に、口内に流し込まれる男の唾液。

 自らの精液の残滓が存在している可能性すら考えていないかのように、男はきつくクリームヒルトの身体を抱きしめながら、二つの穴を同時に蹂躙して美しい女を辱しめていく。


「ん、ぅ……っ!ふ、ぅぁ……っ!ぁ、かは…………っ!ぁ、あぁ……っ!」


 そうしてやがて、男の腕の中で跳ねていた身体がぐったりと力を抜いた。

 そこで初めて男も腕の力を抜き、起き上がってからゆっくりとその身体からペニスと舌を引き抜き、自身の身体にしなだれかかる痴態をベッドの上に仰向けに払い落とす。


「う、ぁ……………!は、はぁ……っ!ぅ、く、んん…………っ!」


 男はそのまま、覆い被さるようにクリームヒルトの痴態を眺める。

 羞恥で真っ赤に染まった顔を右手で隠そうとしつつ、媚びるために浮かべた口端の持ち上がりはそのままに、手の隙間から見える目だけが怒りと殺意に揺らめいている状態。


 豊かな胸は荒い呼吸に合わせてふるりと揺れ、華奢な膣は押し開かれたままひくひくと蠢いている。

 そして何より、華奢な膣口からゆっくりと精液と愛液の混合物が滴るようにベッドシーツを穢していく有様は、男の下卑た欲情をひどく煽って仕方がなかった。


「っ、あ…………!」


「顔を隠そうとするな。淫らに染まった顔を余の前に晒せ」


 男はクリームヒルトが顔の前にかざした華奢な手を掴み、ベッドシーツに強く押し付ける。

 晒された顔。羞恥と屈辱で真っ赤に染まり、口端だけに媚びるような笑みを貼り付けて、快楽に潤んだ瞳で睨みつけてくるという至極ミスマッチに感じられる表情の動き。


 復讐の炎は目の奥から消えていない。けれどそれは淫蕩によって確かに揺らめきかけている。

 だからこそ男はクリームヒルトを更に追い込むために、その表情にじっとりとした視線を滑らせた。


「あ、あまり、見ないで下さ――――っ、ぁ、うぅぅっ!!」


 浅ましく崩れた表情を、隠すことすら許されない。

 醜く細められた男の目から逃れるように、ふいと目を逸らしたクリームヒルト。だが男はそんな逃れ方も許さないように、彼女の薄い唇に再び貪りつく。


「ふ、んんっ!ん、んぅっ!ぁ、かはっ!ん、ふ、ぅうぅ……っ!んぅ……っ!」


 舌を絡め、唾液を呑ませ、そんな風に口内を蹂躙しながら豊かな乳房に手を伸ばす。

 柔らかく蕩けるような胸。それを強く掴んで弾ませるたびに、クリームヒルトは苦し気な呻きと性感への喘ぎを、くぐもった音で零し始めてしまう。


 舌と舌とを絡められながら、じっとりとした手つきで乳房と乳首を責められる。

 そしてそうしているうちに、段々と腹部に押し付けられるペニスが、またも内側から熱と硬度を帯びていく事がはっきりと理解させられてしまう。


「ふ、ん、ぅうぅぅっ!!ぁ、ひ、ぁ、かは……っ!!

 ん゛っっ!んぅぅっ!んぁ、ぁ、んっっ!!んぅぅうぅぅぅっ!!」


 そしてそこからまた、膣奥に対する蹂躙が始まる。

 唇を奪われ、舌と舌を絡ませながら正常位の体勢で膣奥を穿たれる。


 ぱちゅ、ぐちゅ、ずちゅ、と淫らな水音が反響する。

 膣内に留まった精液がピストンの反復動作によって膣奥へ再び叩き込まれ、愛液や潮を混ぜ合わされながらぐちゅぐちゅと不快な音を立てて膣内で泡立てられていく。


「んぅっ!ぅ、んぅぅっ!ぁ、んぐっ!ん、ん゛ぅうぅぅぅっっ!」


 濁った無様な悲鳴。くぐもった喘ぎ声。深く膣奥を貫かれるたびに高らかな肉の音が響く。

 男の体重で押し潰されるように、ガニ股の無様な体勢でクリームヒルトは犯され続け、何度も何度も何度も何度も、最後の一滴に至るまでを膣奥の深い場所へと注ぎ込まれ続ける。


 正常位で膣奥に精液を注がれて、それが終われば今度は犬のように背後から犯される。

 それが終われば今度は立位。それが終われば測位。それが終われば今度は肛門を指で解されてから犯されて、それが終われば居室の窓に押し付けられて、立ったまま背後から犯される。


 王宮の上層に存在する王の私室。そこからは王都の夜景を一望することが出来る。

 王都を囲む城壁――――その外側から僅かに立ち上る煙が見えている筈なのに、男は最早生存本能ではなく種の保存欲求に従うかのように、クリームヒルトをただ犯しぬこうとするだけだ。


「っ、ふぅ゛っっ!ぁ、あぁっ!ん……っ!く、ぅぅぅっ!ひぁ、あぁんっ!!」


 小国の滅びはもう間近。

 しかしクリームヒルトの女としての陥落ももう間近。


 クリームヒルトという女が描いた復讐の物語の一幕目が、如何様な結末を描くことになったのか。

 それは"その先にも物語が続いている"という一点で、既に保証されているようなものだ。


 けれどその一幕目が、後に続く復讐譚へとどのような影響を与えることになったのか。

 それは復讐譚の主人公である女――――クリームヒルトの内側にしか答えの存在しない、彼女自身にしか知ることのできない、物語の内では絶対に語られぬ蛇足に過ぎなかった。


〈了〉

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