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昨今のアニメは原作尊重の名の下にあまりアニメオリジナルな展開や演出というのは少し敬遠されがちなイメージがあります。

何故なんでしょうか?


『アニメは見たことあるけど原作は知らない』なんて人はよくいます。最近でこそウェブコミックアプリなどのアニメ化記念企画で無料で原作が読めたりする機会が増えましたが、昔はそういうものがありませんでしたから、アニメは見てても原作は知らない人は今よりずっと多かったろうと思います。


私が愛してやまない作品の中にうる星やつらという作品があります。浪人時代にハマり、アニメから見始め、原作も読破しました。しかし原作だとメガネ、パーマ、カクガリ、チビは出てきません。あの4人はアニメオリジナルのキャラです。他にもアニメだとすぐ出てきたジャリ天も、原作だと割と経ってからの登場だったり。


ドラゴンボールの地獄の設定も実はアニオリ要素が強いです。原作では地獄に堕ちたものは肉体は無となり魂は洗われ新しい生命体になると言っています。しかし、アニメだと死んだセルは地獄で大暴れしていたり、フリーザも地獄でノミのようにずっと木に吊るされてたりしました。


昔のアニメが改変が多い理由に今のようにアニメが1クールで終わるものではなく基本的には放送が長続きする形態だったのも関係しているのかもしれません。ある程度アニオリ要素を入れないと原作に追いついてしまいますしね。脚本家や演出家の腕の見せ所でもあったのだと思います。


その流れの中でるろ剣やハガレンのように作者の不満を買ってしまうようなものも生まれには生まれてしまいましたが、今あげた二つなんかはアニメの方がむしろ好きといった愛好者がいるくらいですから、これはこれでありだと個人的には思います。


アニメはアニメ、漫画は漫画、両者は別物、というのが昔は見る側にもとってもある種、暗黙の了解であった気がします。


この流れが変わってきたのはいつ頃くらいなのでしょうか?


正確にはわかりませんが、原作者が堂々とアニメ制作に関わった例で言うとドラゴンボールの神と神を思い出します。当時はアニメ放送はとっくの昔に終了し、ゲームくらいでしか盛り上がってないイメージでしたが、あの時期くらいから、アニメのDVDを制作し出したり、ドラゴンボール改の放送など、もういちどドラゴンボールを盛り上げようとする動きが顕著に現れてたように思えました。鳥山明が制作に関わるということでファンもどよめいていたことを記憶しています。


他にもワンピースフィルムとか。ドラゴンボールはとにかくアニメスタッフが優秀すぎたため、アニメオリジナルのクウラ、ブロリーといったキャラが原作キャラ以上に人気が出たり、スーパーサイヤ人4のような作者も認めるほどカッコイイ進化形態が生まれたりしました。しかし、ワンピースは残念ながらアニメスタッフにはあまり恵まれなかった印象があります。作画もですがキャラデザがそもそも良くなかったですね。最近になって急激にクオリティが上がりましたが。そんなアニメの状況を鑑みてなのか尾田栄一郎自らアニメに参戦し、アニメのワンピースを盛り上げた印象があります。特に、ワンピースはドラゴンボールとは違い、物語中に様々な謎を含むため作者が関わることでワンピースの物語の根幹に触れられたりもするわけですからファンにとってはとても嬉しい演出なわけです。


SNSの発展も大きいと思います。基本的に原作好きな方達のようなコアな愛好家の声はSNS内では大きく感じます。原作と違うことをされると彼らはバチクソぶちギレます。そういう意見に目を通してしまうとあまりアニメで改変するのは良くないのではと思えてしまうのです。SNSの評判が悪いだけでなんとなく作品の評価も悪くなったように感じてしまいますからね。

また愛好家の方達、俗にオタクやファンと呼ばれるような人達というのは基本的には保守的です。今まで見たことないものよりは、安心感を得られるものを好む傾向が昨今は特に強いです。わかりやすいのは日本映画。最近のアニメ映画は基本的に原作準拠なため内容が見る前から大体想像がつきます。ある程度内容がわかって安心感を得られる前提があるからこそ、数字もそれなりに伸びる印象があります。逆に前情報が少ないアニオリはもちろん実写映画などは近年とくに伸び悩んでるイメージがあります。というよりアニメに客が流れすぎてるような。


個人的にSNSでマーケティングをするのは結構危険だと思っています。SNSで可視化される意見を元に作品制作をして上手くいくなら、駄作なんてそう簡単には生まれないでしょうから。声は出さないけど、作品を愛してくれてるファンというのはものすごくいるんです。サイレントマジョリティ的な。メインターゲット層というのはそういう人たちだったりするので、ファンの意見に耳を傾けすぎるというのは実はものすごく危険だったりするのです。


少し言いにくいですが、爆焔もそれで少しコケたイメージがあります。いくらめぐみんが1番人気のキャラだからといってそのキャラがメインの話が面白くなるわけでは決してないのです。ウォルバク戦に向けて話を膨らましたかったのだとは思いますが、やはりアクアやカズマ(あと一応ダクネスも)が出ないとなるとパンチにかけたりテンポが悪くなるというのはやはりか避けられなかったなという印象です。


そんなこともあってか最近の原作準拠すぎるアニメ演出、私はというと


正直、あまり好きではありません。


原作好きなら原作読んでりゃええですし。

現代版このすばなんかはまさにそうですが多少脚色されたもののほうが個人的には好きです。絵柄なんかもそう。すこしいじってくれるくらいが好き。せっかく原作者じゃない人たちが作品に触れるのですから違うテイストが入ってもむしろいいんじゃないかと思ってます。


このすばのアニメなんかは割とそうです。たとえば、この前牛乳を浄化するアクアの絵を描きましたが、あの辺のシーンでもアニメ側の演出が冴えまくってます。相手が小説というのもあるでしょうがアニメオリジナルな演出が光って成功した作品の一つと言えるのではないでしょうか。


またアニメと漫画で観た時、どうしても避けては通れない問題があります。


それはアニメは絵が動いてて漫画は止まっているということです。


そんなの当たり前じゃねえかと思うかもしれませんが、これは話のテンポに大きく影響します。特にその影響が顕著に現れるのはスポーツ漫画。


巨人の星というスポ根野球漫画があります。主人公の星飛雄馬は大リーグボール2号という必殺技を生みました。通称“消える魔球”。原理はというと球の回転によりグラウンドの土埃が起きそれが球に被ることで球が景色と同化して球が消えるという寸法。あまりにも荒唐無稽ですが、今は置いときます。こんなとこで突っ込んでたら話が終わりませんからね。

この消える魔球、ライバルキャラの一人である左門豊作という男が破ります。その打法とは?

なんと球を投げてからキャッチャーに届くまでの間、バットを何回も振り、風を巻き起こし、球にについた土を払い、打つという方法。小学校低学年で初めてこのシーンを見た時は大層感動しましたが、それに対しうちの親父は『ピッチャーからキャッチャーにボールが届くほんのわずかな間にそんなにバット振れるわけねえだろう』というツッコミで我にかえりました。そりゃそうだ、と。


日本のアニメや漫画ではこのように時間と空間に対ししばし無秩序になるシーンがあります。これは宮崎駿曰く日本人独特の感覚なんだとか。黒子のバスケやアイシールド21なんかも見てるとそう。ほんのコンマ何秒のプレイの間にどんだけしゃべんねんってシーンがたくさんあります。ハイキューなんかは少し抵抗してる印象がありますが、それでもセリフがないコマが続くというのは漫画を描く上では結構勇気がいるし、それが面白いかと言われればたまにやる分にはいいですが、そういつもいつもやってるわけにはいきません。


ただ、漫画の場合セリフは文字ですし、漫画の絵は基本的に止まってますから、読んでるとそこまで違和感がありませんが、アニメだとセリフの間も時間は流れてしまいます。漫画のように同時にみんなが別々のこと喋ってるみたいな演出もアニメだと難しいです。一人一人カットを繋げて表現するしかありません。当然その間、時間は経つわけでキャラは動いています。しかしボールは運動法則に従って移動を続けますから空間と時間の辻褄があわなくなってきます。その場合、いわゆるスローモーション的な演出が入ることがあります。キャラはスローモーションにしてセリフは普通に喋るみたいな。ただ、アニメ演出というのは動かない絵というのを基本的には嫌います。絵がつまらなくなってしまいますから。そのためスローモーション中でもある程度動きを見せないといけないんですが、たとえば、体はゆっくり動いてるのに髪だけバサバサ動いてるみたいな現実的ではない作画をしたりします。髪は繰り返しで動かせますし、動かすことがそんなに難しいパーツではないので、とりあえず動きを出すには塩梅が良かったりします。しかしこういうのも個人的のは少し違和感があったり、やはりどうしてもテンポ悪くなるなとか思ったりします。


そういう意味で挑戦的だったのは“THE FIRST SLAM DUNK”


あの映画では原作では印象的だったセリフやシーンも試合のテンポ優先で気持ちいいくらいバッサリ切っています。最後の「左手は添えるだけ」のセリフもぼそっとは言ってましたが、あの名シーンもほぼカットです。もちろんこれは不高の名作と呼ばれるスラムダンクだからこそできるやり方ではあります。お前らもう死ぬほど原作読んできてるよな!?というメッセージが作品内のいたるところに見え隠れします。

公開前は声優の変更などでいろいろ不安が飛び交う作品でしたが結果的には大成功。古きファンも新しく獲得したファンも満足できる結果になったのではないでしょうか。


最初にも言いましたが、どこまでいこうとアニメと漫画は別物です。アニメは25分くらいを想定した構成に対し、漫画は雑誌の関係で1話あたりのページ数は決まってます。漫画通りアニメを作ってもどこかで齟齬が生まれるでしょうから、バッサリ切るところは切る。原作でイマイチなとこはアニメ側で脚色や補完をする。あるいは全く別の切り口で作品にアプローチをかけてみるなど。アニメ演出にはもうすこし幅を待てせてほしいなという今日この頃でした。それではまた。




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