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Pixivで投稿したものと同じです。時間の合間を縫って書いたのですが割と気合入ってますので楽しんでいただけますと幸いです……🙏


ところで最近アニメの「氷菓」を見ているんですけど、この作品に登場する逸山ロレムの外見はそれに登場する入須冬実という人物の影響をとてつもなく受けているので、イメージの補強に使ってみてはいかがでしょうか。


もしよろしければTwitterでRT等お願いします🙇‍♂️




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・小説を書くAI、レイプされる


 この記事は2061年5月28日未明に起こった「逸山ロレム強姦事件」についてまとめたものである。

 「逸山ロレム」についてご存知ない方にも、「彼女」が初めてお披露目された時のことを思い出しながら振り返ってみたいと思う。

 会見場はただならぬ雰囲気に包まれていた。当然私も一記者として在席していたが、その空間の雰囲気は「異様」と形容するのが最も適しているだろう。質疑応答の声が飛び交うはずの会場にはキーボードの打鍵音が響き渡り、ある者は身を乗り出しながらフラッシュを焚いて「彼女」の姿を捉え、ある者は固唾を飲んで「彼女」の様子を見守っていた。

 凍てつく視線は目の前のディスプレイを射抜き、表情は真剣そのもの。忙しなくキーボード上を滑る指と、呼吸をするように僅かに上下する胸と肩以外の部分は、まるで彫像のように硬直を貫き続ける。

 画面上には文字が踊り、女性のしなやかな指先で打ち込まれたキーボードが規則正しく、まるで機関銃でも打ち鳴らしているかのような音を立てている。文字カーソルが意気揚々と上から下へ、また上へと目まぐるしく動き、気に食わなければ自らの足跡を消すように文字を消し、そして再び言葉を紡ぎ出す。

 そして最後の一文をしたためると、「彼女」はゆっくりとキーボードから離した手を膝の上で揃え、取り澄ましたようにも見える美貌に柔和な笑みを浮かべた。そして今度こそ、完全に時が止まったかのように身動き一つしなくなった「彼女」を見ると、取り巻く人々からは感嘆のため息が漏れた。

 「彼女」はこの衆目の中で、テーマを与えられてから16分と48秒で1439字のショートショートを書き上げたのであった。


 「逸山ロレム」とは、小説執筆用に開発された人工知能の名前である。これまでにも人工知能は絵画や音楽などを通じて、人間の創造性に迫ろうとしてきた。しかしそのいずれも、人間のそれと比較したときには違和感を感じさせる仕上がりに留まるか、完成までのプロセスにある程度の人手の介在が必要とされるものであった。

 逸山ロレム——いわゆるダミーテキストの"lorem ipsum"を名前の由来とするそのAI——は、しかしその名を負いながらも世界で初めて「人間の鑑賞に耐えうる」小説を、「人の手による推敲を経ずに」完成させた。その証拠はとある小説コンテストの佳作として、この人工知能が書き上げた小説が選出されたからであった。ペンネームとして「逸山ロレム」を用いたAIが書き上げた「凍った時間と瞬く雫」は、高校生の男女のほろ苦い恋愛を鮮烈に描いた気鋭の作品として、実際に人間の審査員から高い評価を受けた。

 その時起こった議論の渦は想像に難くないものなのでここでは詳しく言及することを避けるが、ともかくその瞬間は、人工知能が「創作」という人間が支配してきた領域に、堂々と足を踏み入れるきっかけとなった大きな転換点であった。


 さらに人々を驚かせたのは執筆の技量だけでなく、逸山ロレムが公にされた際の姿であった。漆黒の長髪を靡かせ、淑やかな淡い緑のドレス姿に眼鏡をかけた三十代前半ほどの和風美女が、表情一つ変えず凄まじい勢いでキーボードをタイプする様子を目にしたものは皆、その圧倒的な姿に息を呑んだ。

 ただ画面上に文字が並ぶのも味気ないと考えた開発チームにより、女性的な外見を備えたアンドロイドとして発表された「彼女」は、実際に端末の前に座り、与えられた題材に対して日本語を用いて数百字の掌編から十数万字の長編まで書くことができる。短いものでは数分から、長いものでは二日弱程度で物語を構築し、平均で秒間8キーを正確に打つことが可能な物理ボディを与えられた人型自動文章執筆機械なのであった。

 ところで、彼女と会話をしたものは一人もいない。というより、彼女は会話をする能力を持っていないのである。女性型アンドロイドのハードウェアに搭載された小説執筆用のAIは、あくまで創作として文章を構築することのみに特化したチューニングが行われている。

 有り体に言えば、彼女の世界は彼女の中だけで閉じているのである。作られた頭脳で思考し、それを表現することは可能だが、外界とのインタラクションにおいて彼女は極めて無力なのだ。

 彼女は話しかけられた言葉を理解することができず、それはつまり応答もできないということである。彼女に備わっているのは、彼女の内部に存在するデータや背景知識を用いて思考し、物語を論理的に構築し、それを外部に出力する機構だけである。

 優しげな微笑みをこちらに向けているように見えるが、その瞬間は実際には何一つ思考していない。ただの動作プログラムが記述した通りに、人工筋肉を駆動させているだけに過ぎない。小説を執筆する時も、言葉をまるでパズルゲームのように、その意味を人間のような理解をすることなく組み合わせるのみ。

 逸山ロレムのインターフェースが備えた女性性と、無機質な思考ルーチンが組み合わさって生まれた特殊なマリアージュが、一人の男を性の獣に堕とした。


          ◆


・事件について


 逸山ロレムの開発に携わるある研究員に、この犯行動画に関する多くの質問に答えていただいた。以下ではその内容も併せて状況の補足説明を行う。

 当該事件は、逸山ロレムの開発に携わるISJ総合研究所内で発生した。

 機体整備員の男(47)は、衣服を脱がせた逸山ロレムの隣でまず二十分ほど自慰行為に耽っていた。取り調べにおいて男は、逸山ロレムの起動チェックの際に人工筋肉が収縮したり、瞳を模したカメラがピントを合わせたりする様子が非常に性的興奮を催すものであったと述べている。

 実際に証拠映像には、彼が逸山ロレムの脚部や腕部に触れて、電気信号の送受信テストによって可動域の筋肉が振動している様子を確認し、ペニスを握ったまま至近距離から彼女の顔を覗き込むといった様子が映っている。

 更に、動画内の男は逸山ロレムの胸部や股間に顔を埋め、しばらくそのまま動かないといった様子も見られ、完全に恍惚の表情を浮かべている姿が克明に捉えられていた。

 逸山ロレムが目を見開いたまま一言も発さず、男のなすがままになっている姿。そして男が一心不乱に人工の女性の肉体を貪っている様子は、鳥が死んだ動物の肉を漁っている様子に酷似しているように思えた。

 逸山ロレムのヌードを見たのは初めてだったが、その豊満な乳房や肉感的な太もも、そして過分にエロティックな鼠蹊部は、確かに男が惹かれる理由を兼ね備えていると感じられた。そもそもバストは驚異の96センチとのことである。

 彼女の身長が175センチメートルもある最大の理由は、人型ロボットの軽量化、そして小型化にそれなりの労力を要するためだ。女性型であるが故に、男性を凌ぎうる高身長はやや不自然さを感じさせる。それを緩和するためにも、成人女性型のアンドロイドは基本的にグラマラスな体型になっている、というのが本当のところだという。

 とはいえ乳房はただのシリコンの塊であり、乳首は存在していない。女性器も当然作られておらず、のっぺりとした恥丘の下には何もない。もともと彼女は線の細い女性像をイメージされていたが、開発チームの中での議論の結果として、ややだらしない肉体を備えた、浮世離れした色白の東洋系の美女という方向性で開発される運びとなったそうだ。母性溢れる女体に聡明な女性の顔が載っている逸山ロレムのボディは、その手のフェチズムを感じさせる意匠でもある。


 逸山ロレムは動作確認の後にスタンバイモードに移行し、横になった状態のまま台の上で微笑みを浮かべた。人間に対して不自然さや恐怖感を与えないようにデザインされた柔らかな笑顔は、それを向ける対象がいないにも関わらず虚空に向けられており、それはそれで逆に不気味である。

 次に、男は台に横たわる逸山ロレムに対して、手元のコンソールを用いて、側に置かれた下着を着用するようにコマンドを送った。命令を受けた彼女は、全裸であることに何の疑問も持たずに台から身を起こし、ひたりと静かな音を立てて流れるような動作で床に降りた。

 精巧な運動を記述した動作プログラムで女性的な身のこなしを披露する逸山ロレムは、それ自体では非常に人間的に見える。しかし、全く変化しないニュートラルな微笑みを、男の目の前で裸のまま浮かべているのは多分に機械的な印象を与える。

 逸山ロレムは男が置いた下着を目視すると、しばらく動作を停止した。これは彼女が与えられた衣装を確認し、自分がどのように身に付けるのかを演算している様子なのだという。

 視界に入った画像を認識し、自らの物理的な肉体の形状を理解している躯体制御系が、着替えという複雑な動作を現実世界で可能にする。着ようと思えばドレスも、水着も、着物も難なく着こなしてみせる。そこに「小説家・逸山ロレム」としての思考が介在することは決してない。

 男はその様子すら満足げな表情で眺めていた。大きく張りのある乳房を胸から吊り下げた絶世の美女が、薄い笑みを貼り付けたままの状態で、これから自らが身に付けるであろうセクシーな下着を凝視しているのだ。逸山ロレムが機械であるということを抜きにしても、彼女の艶のある肉体は男の本能に訴えかけてくる。

 およそ八秒。彼女はどのようにその下着を着用するのかを完全に把握すると、ゆっくりとブラジャーに手を伸ばした。そして非常に滑らかな動作でストラップを肩にかけると、体を前に倒して大きな乳房をカップの中に入れ、ブラのホックを後ろ手にかけた。

 そして次の動作に移ろうと体を上げようとしたところで、突然その動作を停止した。男の邪魔が入ったのだ。

 男は逸山ロレムがホックを付けた後、手慣れた手つきですぐに片手でそれを外した。彼女は突然のイレギュラーに対して、驚いたように目を数回機械的に瞬かせる。負荷がかかった際に瞬きが発生することがあるのだそうだが、男はそれを把握していたのか、悪戯をしたのちにすぐに彼女の前に回り込み、その顔を眺めながら男性器を擦っていた。

 逸山ロレムは先ほどの体の動きを逆再生するかのように、機械的に再び体を僅かに前に倒すと、外れたホックの位置を正確に手で掴み、再びホックを留めた。その後も何度か同じように男に邪魔をされては演算を繰り返すように瞬きをすることがあったがここでは割愛する。

 まるで人間のように脇を上げてバストを片手で包み、脇から中央に寄せるようにして引き上げる。この自然な動作は何千万回にも及ぶシミュレーションに加え、物理空間内において実際に女性研究員の監視の下で学習を重ねたことによる賜物だ。更に、先程のようにホックが外れた際の修正動作や、ブラジャーの紐がずれて肩から落ちてしまいそうになるのを防止する動きも学習しているとのことである。

 実際に人の目に晒される時はいつも、彼女は人間のようにインナーをしっかり身に付け、その上に衣服を着ているのだという。もっとも今回男が用意したような透け感のある下着ではなく、機能性の高い非常にシンプルな無地のものだそうだ。

 口角をわずかに上げてどこか嬉しそうな表情をしながら、逸山ロレムはその大きな乳房を純白のブラジャーの内側に収めた。その間も、男は逸山ロレムを正面から見ながら、彼女に向かって陰茎を差し出すようにしてそれを激しく擦っていた。

 それから彼女はショーツにも手をかけ、ゆっくりと片足を上げる。もう片方も同じようにして脚をショーツに通すと、するするとそれを上げてゆき、つるりとした肌色の陰部を覆うところまで至る。そして尻の食い込みを指で直すような挙動を見せた。

 正しくクロッチの位置が股間に合い、全体的に不自然でないような状態にすることで、動作に僅かなズレを生じさせないようにする工夫がなされており、機械であるのにまるで本物の人間女性の着替えを見ているかのように錯覚してしまう。

 これで逸山ロレムの生着替えは終了したかに思われた。しかし、満足していない男はここでは終わらなかった。台の上にさらにストッキングと眼鏡を載せる。眼鏡は逸山ロレムが公の場に現れる時につけるアイテムであり、彼女の生真面目そうなキャラクター性を表現する一要素でもあった。

 逸山ロレムは先ほど同様に男に命じられると、再びそれらに目を向けた。先ほどよりも短い硬直時間の後に、彼女はまずストッキングを手に取った。

 台に腰掛けると、ストッキングの腰部分からつま先までを両手で集めた。これには私は目を見張った。ストッキングを正しく「ストッキング」として認識しており、それを穿きやすいようにしている様子は、画面内の彼女が女性の形をした機械であると忘れさせるほどの自然さであった。

 そして爪先と踵を合わせると、ふくらはぎから膝までストッキングを上げ、肉感ある太腿に向けて両脚でムラなく布地が広がるように上げてゆく。眩いばかりの肌色が、淡い光沢を放つ黒に覆われる。

 左右に艶かしく揺れる大きな美尻に誘惑された男は、今度は背面から逸山ロレムに向かって陰茎を擦っていた。股下を合わせ、臀部に沿う様に布地を引っ張り上げる。腰のあたりまできた布地に細い指をひっかけ、胴回りを一周させるようにして調節する。

 最後に眼鏡をかけることで、ストッキングと下着、そして眼鏡を身に付けた女性型アンドロイドの姿が、男の前に曝け出された。

 真っ白な下着に包まれ、その上からストッキングで締め付けられた肉体は、内側から今にも弾けそうなほどにむっちりとしている。人前に出る彼女の姿しか目にしたことがなかった私は、彼女が身につけるのは確かに体型を隠すような服装が多かったと今更ながら気がついた。


 にこやかに佇み、次の命令を待つ女性型の文章執筆ロボットに対し、男は欲望のままに抱きついた。胸に彼女の柔らかな乳房の感触を受けながら作り物の肉体に股間を押し付け、熟れた女体の色香漂う太腿に肉竿を擦り付ける。

 男は彼女の股間にペニスを挟み込み、いわゆる素股をしながら、ぎこちなく腰を前後に揺すっていた。独りよがりな自慰行為を行う男に抱き締められてもなお、逸山ロレムは何食わぬ顔で正面を見据えつつ、楚々とした笑みを浮かべ続ける。

 男は彼女の顔を見て、それから無理やり口づけをした。逸山ロレムの口腔内は人間を模して作られてはいるものの、唾液が分泌されているわけでもない。

 彼女はどれだけ揺すられても、その笑みを決して失わない。優秀な躯体制御システムによって直立を維持し、男の欲望を真正面から受け止め続ける。ちなみに彼女は震度六弱程度の揺れであれば問題なく直立姿勢を維持できると、動作試験によって確認されているそうだ。

 小説を書くだけの体にしては、過剰に妖艶な肉体や精巧な駆体制御機構などが備わっているのは少し不思議に感じたが、どうやら開発チームは逸山ロレムをマイルストーンとして、人間が行う芸術的な活動に特化したモデルの開発に繋げようとしているらしい。

 動画の続きに戻る。彼女に抱きついて好き放題していた男は、数分の後に絶頂に至った。へたりこむ男を尻目に、彼女はにっこりと笑ったまま、精液で汚れた太腿や股間を曝け出していた。黒いストッキングの上にかかった白濁液のコントラストは、まさしくアダルトビデオの生々しい一場面と言っても過言ではないだろう。

 息を整えた男は、再びコンソールに手を伸ばした。男は逸山ロレムに下着のみを着せた状態でキーボードの前に座らせ、小説を書かせようとしたのだ。

 微弱な電流を流されたように僅かに体を震わせた彼女は、部屋の空間データや現在の座標などから指定された場所へと視線を向け、そこに至るまでの動線を構成する。

 会見場でも行っていた通りの上品な足取りで、何の変哲もないオフィスチェアへと向かうと、彼女はゆっくりと腰を下ろした。スカートを穿いていないので布を押さえる動作をしないのは感心だが、そもそも下着のみなのでその気遣いも意味がない。

 白のランジェリーを身につけた逸山ロレムは、小説を書くようにコマンドを送られ、恥じらいなど全く感じていない無表情のままキーボードを見下ろす。それがQWERTY配列だろうがDvorak配列だろうが構わない。彼女はキーの並びを瞬時に把握し、ほっそりとした指をどのように動かすのが最も効率的に、そして素早く打鍵できるかを理解する。

 笑顔ではなく無表情になるのは小説を書く時だけだ。聡明な容貌を持つ逸山ロレムの顔は、ただ無表情でいるだけでそれなりの真面目な表情として様になっている。


 ホームポジションに十本の指が置かれる。ストッキングを精液塗れにした下着だけの姿でしばらく静止する。彼女は規則的に瞬きを行いながら、およそ六分の間は完全に動作を停止し、小説の構想を練っているようだった。将来的にはこの間も人間的な動き——例えば上体を軽くストレッチするような動作や、その場をウロウロと歩き回る動作——をするように改良されるとのことらしい。

 それが終わると、逸山ロレムはその白魚のような指を滑らかに動かし始めた。まるで人間が退屈凌ぎに机を指で叩くように、両手の五指をキーボードを押下しない程度に動かす。機械特有の規則的な動きでありながら、人間さながらの指の動きをしてみせる。これは一種のパフォーマンスであり、彼女が執筆の前に行うルーチンワークという設定もある。

 そしていよいよ、女性の指を模したマニピュレータが稼働を開始する。"Lorem ipsum dolor sit amet, ..."。ダミーテキストであり、自らの名前の由来となっている"lorem ipsum"の最も一般的なテキストを、まずは練習のように、しかし猛烈な速さで打鍵していく。

 最初はキーボードと画面を交互に見ながら。やがてブラインドタッチを行うようにして細かい調整を行い、動作テストを完了させる。魅惑的な肢体を備えた知的な美女が、その肉体を惜しげもなく曝け出しながら機械のように正確なタイピングを行う光景。それは会見場で見たとき以上の異様な、そして圧倒的なオーラを放っていた。

 補正を終え、一旦全てをデリートキーで削除すると、彼女は再び文頭から約十分の間休むことなく言葉を紡ぎ続けた。小気味良いタイピング音が整備室を満たす中で、男は適当な飲料で喉を潤したり、連続して射精したことによる興奮状態を幾分か鎮めようと休憩を取っているようだった。


 手を止めた逸山ロレムを目にすると、男は再びコンソールを操作した。すると、彼女はこれまで硬く閉ざしていた口を開き、今しがた自分が書き記した物語を流暢に語り出した。彼女に搭載された読み上げ機能を使い、男は「逸山ロレム」の声を聞いているのだ。

 今では希少となった人間のアナウンサーのように、しかし更に情緒豊かに、聞き取りやすくハキハキとした女性の声が文章を読み上げる。

 椅子を回転させられると、彼女の視線はモニターから外れてしまう。それでもなお、自分の書いた文章を一語一句正確に記憶している彼女の口は止まらずに動き続ける。

 彼女の豊かな胸をブラジャー越しに揉みしだきながら、女性の声が生成される口元を舐めしゃぶり、それでは飽き足らず自らの胸を近づけて唇を触れさせる。何も思考していない彼女はそんな気の狂った男などお構いなしに唇を、そして舌を動かし、時折喋りづらそうにしながらも物語を続ける。

 よくある人型ロボットのようにスピーカーから声を出しているのではなく、彼女は人間の咽頭部と同様の構造を持った機構によって喋っているため、口の開きや舌の動きに対する障害が、そのまま読み上げ機能に支障をきたしてしまうとのことだ。

 男がべっとりとつけた唾液で潤った彼女の口。柔らかな唇は男の乳輪を甘く食み、濡れた舌は乳頭に触れては離れを繰り返し、硬いゴムのような素材の歯は乳首に受ける刺激に鋭いアクセントを与える。その一見ランダムな、しかし文脈のある動きによる乳首の愛撫を受ける男。その顔ははまさに快楽一色で染まりきっていた。

 男は整備台まで逸山ロレムを椅子ごと引き摺ると、自ら台に登って彼女と相対する。ちょうど彼女の口元に男性器が当たる高さで、亀頭を触れさせたまましばらく、彼女の唇の柔らかさを堪能しているようだった。さらに人間さながらの擬似的な呼吸が、男にとっては蕩けるほど気持ちの良い吐息に解釈され、興奮の波に圧倒された男は自ら竿を擦る手の動きを速めていった。

 男は彼女の口元にペニスを押し当てながら、二度目の絶頂に至った。精液が至近距離から彼女の顔全体にぶちまけられ、口のみならず鼻や眼鏡といった部分までも白に染まった。そんな異常な状態であっても、逸山ロレムのツンと澄ましたような美声は男性器の至近距離から機械的に発せられ続ける。

 男は放心状態になりながらも本能に駆り立てられるかのように、逸山ロレムの唇の内側に亀頭を潜り込ませようとしているように見えた。

 彼女は何事もなかったかのように読み上げを終えると、精液で不自然な光沢を帯びた唇を艶かしく綻ばせた。指定された動作を完了した逸山ロレムは、精液に塗れた顔を男に向けたまま次の入力を待機するように姿勢良く座っていた。

 我に返った男は証拠隠滅を図ったが失敗し、結局監視カメラに映った自身の姿により、彼の狼藉が発覚することとなった。男によって汚された逸山ロレムは丁寧な洗浄を施され、今も通常の運用や展示がなされているという。あなたが実物の逸山ロレムを目にした時、一体どのような感想を抱くだろうか。少なくとも私は、これまでと同じように見ることはできないだろう。

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