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挿絵 らすP様



エロフェッサーの脅威が去って少しの時が流れ…

アンナはスクールカウンセラーとしての業務に追われ、ルクリアは地球に常駐するアルティマレディたちと連携して特異点の研究等を進めていた。

今日も忙しく業務に勤しんでいたアンナは、家に帰宅するとソファへと倒れ込む。

「お疲れ様です。ふふっ、随分と忙しいようですね、アンナ。」

スマホの中に戻ってきていたルクリアがねぎらいの言葉をかけると、アンナは大きく深呼吸した。

「やっぱりここ最近のあれやこれやは子供達には刺激が強くてね…大人も余裕がないから、私たちもてんてこ舞いってわけ…」

ルクリアとアンナが出会い、ゴーデスとの戦いが始まってからここまで、地球を取り巻く環境は大きく変化していた。

敵味方に関わらず、初めての地球外生命体との接触…

巨大な怪獣の出現による被害の拡大…

特例としての光の国による、地球への支援体制の確立…

月の裏側に発生した特異点による次元ゲートの発生と、さらなる来訪者たち…

これらの大体がゴーデスによって引き起こされたものであったが、地球…特に事の中心となっているここ、春野市にとっては激動の日々であった。

市外への避難や引っ越し、それをめぐる子供たちの学園生活における変化は顕著であり、ストレスをため込む生徒も少なくない。

強いストレスはマイナスエネルギーを生み、ゴーデスの力を増強することにつながりかねない。

今のアンナにできることは、少しでも子供たちの不安を取り除いてあげることだけであった。

「(今は私にできることを…でも、結局私も大事なことに向き合えずにいるのよね…)」

そんな忙しさに忙殺される日々は、アンナにとって一つの懸念事項から目をそらす口実にもなっていた。

「アンナ…また抱え込んでいないといいけれど…」

口には出さないものの、疲れとはまた違った影がアンナの顔に見て取れることに、ルクリアも一抹の不安を覚えていた。

以前互いを気遣うがゆえに窮地に陥った経験から、今ではきちんと悩み事などは共有することにしているアンナとルクリア。

しかしその不安は、ついに新たな危機として二人の前に立ちふさがろうとしていた…


「ふん…こんなものか…」

人里離れた山の中で、新堂タケシは背後を振り返る。

そこには山の岩肌が何者かによって激しく抉られた跡が生々しく残っていた。

「だいぶ馴染んできたようじゃの…おぬしから更なる儂の細胞の注入を頼まれた時はどうなるものかと気をもんだが、上々の結果になったわい。」

タケシの脳内に直接ゴーデスの声が響く。

新堂邸でのアンナとの邂逅・そして決別の後、タケシは人であることを捨てるため、病気の抑制のみに用いられていたゴーデス細胞をさらに身体へと宿していく。

結果としてその力は人の範疇を超え、生身でも変身後のルクリアとも渡り合えるのではないかと思えるほどであった。

しかし、タケシの狙いはさらにその先にある。

「この力だけでもある程度はあの人とも戦えるだろう…でも、僕の目的はこの先にある。まずは今の力でどこまでいけるか試してみるよ。」

そう言って手につかんだフィギュアに視線を落とすタケシ。

タケシからアンナへの挑戦が今、はじまろうとしていた…


「タケシくんのこと…ですね。」

ルクリアからの問いかけにアンナは軽く頷いた。

「ん…あれ以降しばらくゴーデスも音沙汰ないし。」

最後に会った時は、ルクリアとゴーデス不在の時…

その時は、お互いに人から離れていくもの同士として向かい合ったが、今でも彼を救うことがアンナの目標だった。

「次に会った時にどうしたらいいか…結局まだ何も思いついてなくて…」

忙しさにかまけていたわけではないが、『彼の苦悩に寄り添う術を見出すことはできないだろうか』というアンナの気持ちにはまだ具体策が伴っていなかった。

「ゴーデス細胞を浄化して天寿を全うしてもらうのが正しいのか…でも彼の歳でそれを受け入れろっていうのも…」

色々考えてしまうアンナの性格を理解し始めていたルクリアも、この答えは彼女が出すものだと考えて一線を引くようにしていた。

「彼が悪の道に堕ちた時はなんとかして止める…今はそれでいいのではないですか?」

ルクリアも提案は当たり障りのないものに留め、アンナの気を紛らわすことに専念する。

しかし、アンナの迷いは彼女たちを窮地へと追い込んでいくことになるのだった…


ズゥン…ズゥン…

山中を巨大な影が闊歩する。

地底怪獣ゴモラの姿がそこにはあった。

市街地に迫ったその時、立ち塞がるようにアルティマレディ・ルクリアが地上へと降り立つ。

「セヤッ!」

アルティマフィールドを展開し、ゴモラを閉じ込めるルクリア。

「同時に何ヶ所かで怪獣が出現している…他のアルティマレディを釣り出すためだとしたら、あまり私を舐めないでほしいわね!」

正規に滞在しているアルティマレディは、他国に出現した怪獣に対応するため、日本を留守にしていた。

果たして目的はルクリア本人か、春野市か…

疑問は残るが、今は眼前の敵に集中するのみ。

意を決したルクリアは、距離を詰めて打撃を入れていく。

ガキッ…ドガッ…

叩いた拳や足に重い手応えが返ってくる。

地底を掘り進む怪獣ならではの硬質な皮膚がルクリアの打撃を弾き、苦しめていく。

「これじゃ浄化の力が中に届かない…なんとかして皮膚を貫かないと…ミックスアップ!アルティマレディ・メリ…」

「やらせませんよ?」

メリムへのミックスアップから、ソードで皮膚を切り裂いての浄化…

ルクリアの狙いを読み切ったかのように、いきなりゴモラは腕を掴んで捻りあげる。

そしてその口から発せられた冷静な声が、アンナを狼狽させた。

「タ…タケシくん?」

動揺の隙をついて、ルクリアを地面に引き摺り倒すゴモラ。

そのまま強力なストンピングでルクリアにダメージを加えていく。


「ぐぅ…かはっ…」

ピコンピコンピコン…

カラータイマーも赤く点滅し、ぐったりとしていくルクリア。

「全く…僕の声が聞こえたくらいでなんですか…そんなんで僕を止めるなんてよく言えましたね?」

そのまま足をルクリアの腹部に当ててグリグリと踏み込んでいく。

「タケシくん…うぁ…なんで…」

痛みで掠れそうになる意識をなんとか維持し、アンナはタケシに問いかける。

「身体のゴーデス細胞の割合を増やしてね…今は怪獣の人形に細胞を入れるんじゃなくて、僕自身が人形と同化することで能力を高めているのさ…当然これまでのものとはモノが違うよ?まぁそれは今、味わってくれていると思うけどね…」

動かなくなったルクリアの頭部を掴み、持ち上げるゴモラ。


「ぅ…ぁ…」

窮地にさらされたルクリアは、弛緩した身体を震わせることしかできずにされるがままになってしまう。

「さて…どうしてくれようか…」

新たなる力を手にルクリアを追い詰めるタケシ…

果たしてルクリアとアンナは対抗策を模索することができるのだろうか…


後編に続く…

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