アルティマミレーヌ「逆襲するは我にあり」 (Pixiv Fanbox)
Content
※今作は中編「復讐のD編 機械獣軍団見参」の1作目になります。お楽しみください!
挿絵 ガオン君様
「ちっ…しけてやがる…」
今月の上りを確認し、『俺』は吐き捨てる。
死んだ父親の遺した武器商人としての販売ルートはすぐにハイエナの様な連中に掠め取られ、何も知らないまま世間に放り出された俺は生き馬の目を抜くような闇社会の中で何とか今日まで食い扶持を稼いできた。
それもこれも全ては父親が『アイツ等』に手を出したせいだった。
まぁ、その中で自分もいい思いをさせてもらったのだから文句は言えないが、しかしそれ以降の俺の人生は転落の一途をたどる。
今日も今日とて、つまらない強盗に手を貸しつつ、その分け前を受け取ったわけだが、足元を見られて大した稼ぎにはなっていなかった。
行きつけの酒場でやけ酒でもあおって帰るか…
そう思いながら歩いていると、目の前のビルにホログラムの広告がでかでかと表示される。
「銀河守備隊・聖十字隊はあなたの参加を待っています!」
若い女の凛とした声が響き、ホログラムの中でアイツ等の一人が笑顔で敬礼していた。
「アルティマミレーヌ…!」
やつこそ、俺の人生を狂わせた一人の女…
いまや銀河を守る正義の女神として名を馳せる『アルティマミレーヌ』その人であった。
銀河連邦が出来た後も宇宙はいまだ混沌の中にあり、おかげで俺の様な日陰者も生きていける。
それを正すべく活躍するミレーヌたちも、その仲間を集めるために広告を打っているのだろう…
彼女たちが有名になり話題に上がるたびに、父を殺された悔しさと、奴らを『抱いた』ことがあるという優越感からくる複雑な感情が心の中で渦巻いていた。
「ふん…みてろよ…いつか親父の仇を!」
そう歯噛みした俺の肩を、一人の女が叩いたのは口から恨み言が漏れたのと同時だった。
「あらあら血気盛んだこと…あの娘に恨み骨髄てところね。『ジュニア』ちゃん…」
俺はその手をつかむと一気にひねり上げる。
「俺のことをその名で呼ぶとはいい度胸だな!」
普通の身体をしているならそれなりの痛みがあるはずだったが、女は何も感じないといった顔でせせら笑う。
「悪かったわよDD…でもあなた正式に名前が登録されてないんだから呼びようがないじゃないの…」
俺の母星では、一人前になるとDDの後に番号が振られてその呼称が名前となる。
親父はたしかDD103号だったか…
しかし俺は親父が起こした事件で死んだことになっており、その番号を貰えることは終ぞなかった。
「俺のことを呼ぶときはDDXとでも呼べ。ジュニアと呼んでいいのは死んだおやじだけだ…」
女はハイハイと肩をすくめ、本題を切り出した。
「私の名前はサキュロス星人…この身体は単なる寄生先だから、さっきみたいに痛めつけても私には何の効果もないわよ。」
サキュロス星人…たしか結構ランクの高いテロリストの筈だ。
こんな場末の惑星で燻っている俺に声を掛けるとは、以外と悪の世界も人員不足なのかと半ばあきれてしまう。
「別にアンタの腕を買ってスカウト…ってわけではないわよ。今のクライアントに頼まれて、アンタを案内にきただけ。拒否権は無いからついてらっしゃいな。」
強引な奴だな…と思いながらも、裏社会の稼業で食っていくにはこいつとのパイプは捨て置けない。
そう判断した俺は、サキュロス星人の言うことに頷いた。
「別に断るなんて言ってないだろ。一個貸しにするから今度仕事の一つでも振ってくれよ。」
サキュロス星人は嬉しそうにケタケタと笑う。
「あら!素直な子は大好きよ。それじゃあ早速…」
店を出て女が指をはじいた瞬間、路地裏に謎の空間へとつながるポータルが発生する。
「クライアントは中でお待ちよ。くれぐれも失礼のないようにね!」
サキュロス星人クラスをこんな小間使いに使えるような大物が俺に何の用があるのか…
「せいぜい命を取られないようにしないとな…」
覚悟を決めた俺は、ポータルの中へと一歩を進めるのだった…
ポータルを抜けた先、そこは謎の異空間になっていた。
「ここは一体?」
辺りを見回すと、謎の黒いモヤが人の形をして俺の横にたたずんでいた。
「よく来たな、DDX。我はお前たちの上位に存在する者…固有の名は無いが、それではコミュニケーションが成り立たないのでな。故にこの世界では『アンチスパークル』と名乗らせてもらっている。君もそう呼びたまえ。」
アンチスパークル…ミレーヌたちの母星がたしか『スパークルフラッシュ』とかいうエネルギー源で発展を遂げたと聞いたことがあったが、名の響きとして何か関係があるのだろうか…
怪訝そうな表情を見せた俺に、アンチスパークルは続ける。
「一つの銀河の衰勢など、私たちにとっては余興の一つ程度のものだ。だが、なかなか面白い種族を見つけ、今はそいつらで遊んでいるところなのだ…見るといい。」
そういいながらモヤが指の形を形作り、異空間の先を指す。
そこでは目を疑うような光景が繰り広げられていた…
「くぅっ…放しなさい!」
異空間の先では一人の女が触手にもてあそばれている…
しかしその女の姿を俺は知っていた。
「あれは…アルティマユウリか!?」
アルティマユウリ…それはミレーヌたちの暮らす光の星を束ねる女王のはずだ。
スパークルフラッシュの恩恵を受け、建国の頃から悠久の時を生きる女神のような存在…というのが俺の認識だったが、目の前の彼女にそんな威厳は全く感じられなかった。
まるで新人の銀河守備隊員かのような拙い動きで、触手にもてあそばれている…
信じられないような状況が目の前で展開されて驚いている俺に、アンチスパークルは淡々と話し続けた。
「この女は過去に我に楯突いたことがあってな…それ以来『躾』として、様々な苦難を経験させてやっているのだ。だが…」
言葉を切ったアンチスパークル。
「たぁっ!やあああっ!」
眼前ではユウリが何とか触手をいなし始めていた。
「ああやって抵抗のそぶりを見せているが、あの女の心はもうすでに長年の我による凌辱にて折れてしまっている。見るがいい…」
ユウリを指さしていたアンチスパークルの指が薄くピンクに光る。
「…!?へぁああっ…」
ピコンピコンピコン…
すると突然ユウリのエナジータイマーがピンクに点滅をはじめ、ほほも同じく桜色に上気する。
動きを止めたユウリに再度触手が殺到し、その体をまさぐり始めた。
「ああん…いやぁああ…」
甘い声を上げ始めたユウリの胸には乳首まで浮かび上がり、抵抗の意思を失ったのか触手にされるがままとなってしまう。
「ふん…遠隔で淫気をあててやっただけでこのザマよ。もはや抵抗の素振りすら見せなくなって久しいのだ…」
心底蔑んだような声で冷たく言い放つアンチスパークル。
「もはやこの銀河への興味も失せてな…そろそろ滅ぼそうかと思っておったのだ。だが…」
上位存在からの言葉に背筋の凍る思いをさせられ、冷や汗をかいてしまう。
しかし、アンチスパークルは嬉しそうに続けた。
「最近活きのいい小娘が現れた…そう、お前も痛い目にあった相手…アルティマミレーヌ…今はあやつを育てようと目論んでおるところよ。」
唐突に仇敵・アルティマミレーヌの名前が出たことで俺の身体に緊張が走る。
アルティマミレーヌ…父はこの女やその家族に手を出したがために破滅した。
その最後の瞬間、同行していた俺を逃がしたものの、身一つで裏社会へ放り出された子供の末路など、悲惨なものでしかなかった。
当然逆恨みだとわかっていても、ミレーヌには思うところがあるというのが正直な気持であった。
「そこでミレーヌを恨むお前に、奴やその家族を傷めつけてもらいたいのだ…あの娘に試練を与え、そこの女王をもしのぐ存在になったときにこの手で直々に手折る。それがいまの私の目的なのでな…」
奴ら、光の星の最高権威であるはずのユウリは、もうすでにアンチスパークルの手に落ちている…
「あああっ…そこ、らめぇ…いじめないでぇ…」
壁に手をつき、触手の愛撫に嬌声を挙げる姿には、光の星の女王の威厳はどこにも見て取れなかった。
自分とは次元の違う存在の計画は理解しがたいものだったが、憎きミレーヌに一矢報いることが出来るのなら…
そう思いながらも、現在は自らの力不足に歯噛みしていた俺を、アンチスパークルが後押しする。
「ふふふ…力は我がくれてやる。貴様たちの種族は機械の扱いに長けると聞く。こいつらを好きに使うがいい…」
そういってアンチスパークルが開けた新たなポータルの中を見た俺は、口角がぐぐっと上がっていくのを止められなかった。
「こいつは…メカロイドに宇宙黄金竜…それにスペースロボットまで…強力な機械獣軍団じゃないか!」
武器商人の父なら見たことあるのだろうか…大宇宙に名をはせた機械の戦士たちに、俺は子供のように目を輝かせてしまう。
「気に入ったようなら何より…どれ、お前色に染めてやろう…」
アンチスパークルが指を鳴らすと、機械獣軍団の色が白黒の幾何学模様へと変わる。
それは俺たち種族の体表に現れる特徴的な模様であった。
「へああああっ!」
もう一つのポータルの中では、触手の先端から放たれた白濁液に身を染めたアルティマユウリが嬌声を上げる。
自分の手であんな屈辱をミレーヌたちに味わわせる事が出来たならどれだけ痛快だろうか。
「いろいろ思う所もあるだろう。殺すつもりでやるがよい…その程度で壊れるならそこまでの器という事よ。」
アンチスパークルからのお墨付きをもらい、俺は機械獣たちの待つポータルへと足を進めていく。
「俺を選んだこと、後悔させないぜ!アンチスパークルの旦那!」
先程迄の鬱屈した気持ちはどこへやら…
俺は足取りも軽く、復讐への道を歩き出すのだった…
続く…