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挿絵 夏乃様 予告イラスト きんぎょにく様


「はぁ…」

道行く学生たちと共に、久瀬灯は寮から学園への道を歩いていた。

最近身体が重く感じることが多くなっていることに、灯は一抹の不安を覚える。

「救聖天使が忙しいからかなぁ…」

ここ数日、オウマが出現するも、浄化後にイヴィルシードの痕跡がないということが続き、成果の出ない戦いが灯の気分を重くしていた。

「灯ちゃん、気にしてもしょーがないデビよ!」

いきなりカバンの中から声が聞こえ、灯は悲鳴を上げそうになってしまう。

「ちょ、ちょっとエンヴィ!なんでいるの?」

カバンの隙間から顔を見せるエンヴィの目がぱちくりと光る。

「お家で待ってても暇デビ!せっかくだから灯ちゃんのガッコーで遊ぶデビよ!」

エンヴィの姿は普通の人からは見えないため、ここで言い争っても自分が白い目で見られるだけ…

そう考えた灯は、先ほどと同じくため息をついた。

「もう…大人しくしててね…あれ?」

校門まであと少しと迫ったところで、生徒たちが列を成していることに灯は気づく。

列の先頭…校門では、ジャージをきた教師が風紀委員を引き連れ、持ち物検査を行っている様子が見てとれた。

「げっ…まじ最悪〜!ゴロツキじゃん!」

列に並んだ生徒たちが口々に悪態をつき始める。

先頭を切って荷物検査を張り切る体育教師の語呂月先生…

生活指導を担当する熱血教師であったが、今時の若い子には当然ウケが悪く、点数稼ぎの持ち物検査を実施することで生徒のヘイトを集めていた。

今も並んでいる女子生徒のカバンに無遠慮に手を突っ込み、校則違反の化粧ポーチを没収している。

「(やっぱり心象は良くないのかなぁ…私は今日も変なものは持ってきてないし…大丈夫!)」

日頃から品行方正を体現したような灯にとって、持ち物検査は特に問題のないイベントであった。

そんなこんなで灯の番が近づき、灯はカバンのファスナーを開ける。

「よし、次!」

語呂月の前にカバンを差し出す灯。

その時、語呂月の眉がぴくりと反応する。

「…久瀬、ちょっとこっちへきなさい。」

そういうと、風紀委員に検査を任せて列を離れる語呂月。

校則に引っかかるようなものは持ってきてないはず…

灯は焦りで挙動不審にならない様、深呼吸しながらその後に続いた。

物陰に入ったところで、語呂月は灯のカバンに手を入れてスッと何かを引き抜いた。

「え…」

語呂月の手が握っていたのは、灯に大人しくしててと言われてカバンに納まっていたエンヴィだった。

「(うそ…エンヴィの姿は普通の人には見えないはず…)」

ぬいぐるみのフリを続けるエンヴィは、冷や汗をかきながらも身体を硬直させて身じろぎひとつせず耐えていた。

「久瀬…どうしたんだ?お前はこういうものを持ってくるような生徒じゃなかっただろう?」

心配そうな顔で灯を見つめる語呂月。

「あ…ええと、朝寝ぼけて、体操着の袋と間違えちゃった的な…」

我ながら苦しい言い訳…

苦笑する灯に、語呂月はため息をつく。

「まぁいい…放課後生徒指導室に取りに来なさい。詳しい話はそこで聞こう。」

そういって語呂月は、エンヴィを持って持ち物検査の列へ戻っていく。

「(助けてデビ〜!)」

目で訴えるエンヴィに灯は口パクで

「(大人しくしてて)」

と伝えるのだった…


ボスッ…

生徒指導室の回収箱に放り込まれたエンヴィ。

語呂月が退室したのを確認すると、ゴソゴソと動き出す。

「酷い目にあったデビ〜…うえ〜、おけしょーひんばっかデビね〜。」

没収されていた物の大半は校則違反の化粧品や色付きのリップクリームで、その匂いに溜息をつくエンヴィ。

「とりあえず誰も居なそうデビね…あーあ、灯ちゃんのカバンの中なら、スマホでフレキュアの動画でも見れたデビのに…」

暇を潰す伝がないことにブーたれながら、エンヴィは机の上にちょこんと座る。

「しばらくはお人形の振りデビねぇ…灯ちゃん早く迎えに来てデビー!…ぐぅ…」

緊張感なくスヤスヤと昼寝を始めるエンヴィ。

誰も来ない生徒指導室の中で、放課後までは何事もなく時が過ぎるのであった…


「まずはエンヴィをかえしてもらうのと…なんでエンヴィが見えるのか…うまく聞き出さないと…」

日中の授業は気もそぞろに受けてきた灯は、生徒指導室の前で確認事項を反芻する。

「失礼しまーす…!?」

しかし、そんな考えは指導室に入った瞬間に別の緊張へと上書きされてしまう。

「これは…なんて強烈なマイナート!どういうこと?」

部屋の中には濃厚なマイナートが渦巻いており、灯は膝をついてしまう。

「ほぅ…普通の生徒ならすぐに倒れ込むんだがな…さすがは救聖天使ということか。」

背後から語呂月の声が聞こえ、灯は驚愕の顔で振り返る。

ガチャン…

鍵かかけられた鈍い音が背後に響き、灯は自分が罠にかかったことを自覚していた。

「なぜ…その名前を…」

一般の人間には自分たちのことを知る機会はないはず…

最悪の事態として、イヴィルシード側にも人間の協力者がいることを想定していなかった自分の認識の甘さに、灯は歯噛みしていた。

「いや、俺はある人の指示でそこのお人形のフリをしているやつを探せと言われてただけだぜ。そいつを捕らえれば、救聖天使も現れるはず…あとは好きにしていいってな…」

そういってジャージの袖を捲った語呂月の腕にはイヴィルシードが埋め込まれていた。

「!?…なんで先生がイヴィルシードを…あぅ…」

困惑する灯をだったが、それ以上にマイナートに満たされた空間のダメージが意識を朦朧とさせていく。

「このままじゃ…仕方ないけど!」

胸元に手を伸ばし、制服の下のコアジュエルに意識を集中する灯。

次の瞬間、一瞬の眩い光と共に、灯の姿が天使の姿へと変貌を遂げる。

「たぁっ!」

エンジェルフォームとなった灯は、全力で扉へとタックルする。

セイヴァーフォームほどではないがプラウスに包まれ、飛翔能力も得ることができるエンジェルフォーム…

しかし、その一撃をもってしても扉はびくともしなかった。

「ほぉ…ずいぶんセクシーな姿になったじゃないか…いや、でももらった映像とはだいぶ違うみたいだが…」

何か確認したげに近づいてくる語呂月。

「先生のイヴィルシードを浄化すればなんとかなるかも…ホーリーライトアップ!ブライトハート!」

胸のコアジュエルが眩く輝き、灯を救聖天使の姿へと変えていく。

「闇夜を照らす一条の光!救聖天使ブライトハート、光臨です!」

更なる変身を遂げた灯の姿に、語呂月の目が輝く。

「おお!そうそう、その姿よ!くく…画面越しでも魅力的だったが、生でホンモノを拝む日が来るとは…さぁ、楽しもうぜ!」

下婢た笑顔を浮かべて腕に力を込める語呂月。

すると埋め込まれたイヴィルシードから謎の波動が発せられる。

「やらせません!エンジェリングスラッ…ぁ…」

いつも通り腕に光輪を纏い、語呂月を制圧しようとしたハートが膝から崩れ落ちる。


この時、コスチュームの下でピンクの淫紋が輝いていることに、ハートは気づいていなかった。

「うあっ…はぁ…んっ…どうして…か、からだが…」

コスチュームの下では乳首が硬く存在を主張し始め、股間が熱く熱を帯びる。

キィン…キィン…


すでにコアジュエルも明滅し始め、ハートが通常の状態ではないことを知らせていた。

「へっへっへ…あいつの言う通り、下地はしっかりできているようだな…よいしょっと…」

ボロン…とファスナーを開けて屹立した逸物を曝け出す語呂月。

見せ槍のように露出されたそのあまりの大きさに、ハートは息を呑んで目を潤ませる。

今までもオウマによって危機を迎えることはあったが、人間に犯される窮地は初めてのことであった。

「あ…うぅ…」

逃げ出そうとするも、腰が抜けたような状態になってしまったハートには無理な相談であった…


机の上で目を覚ましたエンヴィはハートの窮地に慌てふためく。

「あわわわ…なんかハートがピンチデビ!なんとかしなくちゃデビ〜!」


️▶「あれは灯ちゃんのカバン…そうデビ!」

 「窓を開けて外に助けを呼ぶデビ〜!」


「久瀬ぇ…元の姿も十分可愛かったが、その姿もいいなぁ…たーっぷり可愛がってやるぜぇ!」

どこから持ち出したのか、紐のついた首輪を持ち出した語呂月がハートに近づき、カチャカチャと拘束を開始する。

「やめてください、先生…こんなのダメです…」

ダメ元で説得を試みるものの、ハートの上気した表情がそそるのか、語呂月はギラギラとした視線を熱っぽくむけてくる。

「ぐへへ…そんなこといいながら、もう随分と出来上がってるじゃねえか…おらっ!」


背後に回った語呂月がハートを拘束し、屹立した逸物を濡れた秘所に突き出そうとした瞬間、眩い光が部屋を照らした。

パシャッ!

「あん?」

語呂月が音のした方を振り向くと、そこにはエンヴィが灯のスマホを構えて浮かんでいた。

「テメェ!なにして…」

怒鳴る語呂月をよそに、ポチポチとスマホを操作するエンヴィ。

「ここをこーして…がぞーをつけて…そーしんデビ!」

エンヴィがしたことを想像したのか、語呂月の顔が真っ青になる。

「クシシシシ…アンタの写真、この学園のお問合せページに送ってあげたデビ!ハートは普通の人に見えないデビから…アンタがしごとちゅーに一人でおちんちん丸出しで腰を振ってるがぞーが送られてきて、みんなきっとびっくりするデビねぇ!」

イタズラっぽく笑いながら、ハートにウィンクで合図を送るエンヴィ。

「コイツ!そのケータイをよこせ!」

「きゃー、怖いデビ〜!」

焦った語呂月はエンヴィを追い回し、エンヴィはひらひらと飛んでそれを翻弄する。

エンヴィが作ってくれたチャンスに、ハートはなんとか体勢を整える。

胸のコアジュエルに力を集中し、一気に解放するハート。

「オウマみたいに効くのかわからないけど!サークレッド・ハートウェイブ!」

エンヴィに気を取られていた語呂月はあっさりと浄化の光の直撃を受けてしまう。

「ぐあああ…」

苦しむ語呂月の腕からイヴィルシードが外れ、エンヴィが嬉しそうにそれをパクつく。

「んむんむ…なんかちょっといつものイヴィルシードと違う感じデビ…まぁ、おいしーからいいデビ〜」

エンヴィがイヴィルシードを食べたことで、生徒指導室に充満していたマイナートは消え失せ、灯も変身を解く。

語呂月は気を失って倒れており、灯は安堵のため息をついた。

すぐに生徒指導室がノックされ、エンヴィの送ったメールを見た教師たちが乗り込んでくる。

灯は指導室に呼びだされて入った瞬間に、逸物をさらけ出してる語呂月にびっくりして写真を撮ったと説明し、その場をやり過ごすことに成功した。

灯のショックを心配する教師たちにカウンセリング等を勧められるも、疲れを理由に逃げるように退散する灯であった…


後日、語呂月は懲戒解雇されたことが発表され、生徒たちは歓喜する。

語呂月の言っていた「あの人」のことは気になったものの、学園に戻った平穏にホッとする灯であった…


次回予告

夜の学園で謎の影が失踪する…そんな噂を聞いたエンヴィはお化けに会えると大喜び!

お化けなんていないんだよ…って言ってたら、私の前を包帯に塗れた謎の人影が!?


次回、救聖天使ブライトハート第9話!「怪奇!ミイラ男?夜の学園大冒険!」に光臨です!

※来月は今回の敗北編の更新・9話は8月の更新になります。


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Comments

ナッツ

学園の生徒に人気No.1的な存在な若い美人教師に肩に手を回したり、二人で呑みに行こうとセクハラするのが目に見えるゴロツキ

ガチピン@ご支援感謝

わかる😏 語呂月くんいい竿役になれそうなので、また出してあげたいですね。 来月の敗北編では、いい思いができるはずなので、そちらもお楽しみに!

syonnai_hito

語呂月先生、因果応報な面はあるとはいえギャグみたいな画像を取られて解雇され、不憫と言うかかわいそうな気がしないでもないですが、敗北編での大暴れが期待できそうです☺