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挿絵 らすP様


ルクリアがクインモネラの猛攻に屈したころ、その近くで開催されていた『アルティママンフェス』通称・アルフェスの会場となったドームにもたくさんの近隣住民が避難してきていた。

大人気ヒロイン「アルティマレディ・ティオ」のマネキンや展示品に囲まれ、人々は身を寄せ合う。

ティオのマネキンにはちょっとした仕掛けが施されており、胸のカラータイマーや表面の塗料に、光の国の技術が組み込まれていた。

周りの人々の希望や喜びといったポジティブな感情『プラスエネルギー』を感知し、金色に輝く仕様になっていたのである。

当然アルフェスに訪れるような子供やファンはこれを見て喜び、そのプラスエネルギーでまたマネキンが光る、という好循環を生み出す仕組みになっていた。

しかし報道によりルクリアが無惨に敗れたのを見てしまい、落ち込んだ住人の心ではティオのマネキンは光ることはなかった。

「ねぇ…あのアルティマレディのお姉ちゃん、負けちゃったの?」

一人の少年が親に尋ね、大人たちは口をつぐんで俯いた。

「でも、きっとティオがきて助けてくれるよ!ティオは強いんだ!きっとあのお姉ちゃんも助けてくれるよ!」

周りの子供たちからも同じように声が上がり、少しだけ避難場所の空気が軽くなる。

無邪気にティオの助けを信じる少年の姿に、大人たちも俯いていた顔をあげてマネキンを仰ぎ見る。

ティオのマネキンが薄く輝き出したことに、まだ避難民は気づいていなかった…


「私は…負けたの?…」

圧倒的なクインモネラの力の前に力尽きたルクリア。

ルクリアと一体化したアンナは、自らの右腕が熱を持つのを感じ、意識を取り戻す。

「これは…」

アンナの右腕には体内のゴーデス細胞を制御する腕輪が装着されている。

最近、光の国の開発者・アルティマレディ・アカリによってバージョンアップが施され、ミックスアップという他の戦士の力を借りる機能が追加されていた。

「私が今ミックスアップしても、この怪獣には勝てない…どうすればいいの?」

困惑するアンナの右腕はゆっくりと持ち上がり、アルフェス会場を向いて静止する。

そして腕輪から淡い光の粒子が、会場の方向へと流れてゆくのだった。


避難所となっていたアルフェス会場に、突如外部から光の粒子が波のように入ってくる。

最初は外からの攻撃かと身構えた避難民たちも、その粒子が持つ温かさに安心感を覚えていた。

粒子の波はゆっくりとティオのマネキンへと収束する。

「これは一体…」

今から始まる奇跡を前に、人々はポカンと口を開けることしかできなかった…


光の粒子の正体…

それは、かつてタイラントと戦い敗れた、別の次元のアルティマレディ・ティオのエネルギーの残滓であった。

敗れはしたものの、彼女たちがタイラントにつけた傷跡が、巡り巡ってルクリアを勝利へと導く。

その際、タイラントの中に蓄積されたティオのエネルギーが、アンナの持つ腕輪に流れ込んでいた。

そしてそのエネルギーが今、新たな『依代』を見つけ、そこに宿ろうとしていたのである。

エネルギーの向かった先、ティオを形どったマネキンは、いま本物へと変わろうとしていた…


「ねえ、お父さん…ティオ、綺麗だね。」

子供の声に我に返った男性は、ティオのマネキンが眩い光を放ち始めたことに気づいた。

「お、おい…みんな見てくれ!」

男性の声に周りの大人たちも状況に気付きざわめき立つ。

「確かこの像には光の国の技術が使われているはず…もしかして何か力が秘められているのか?」

人々がおかれた状況に新たな希望を見出しつつあることで、マネキンはさらに眩く輝く。

「ねぇ、僕たちが気づいたらまた光が強くなったよ!応援したらもっと強くなって、あの怪獣をやっつけてくれるかも…僕応援するよ!ティオー!あの怪獣をやっつけてー!」

一人の子供が先陣を切り、子供たちがそれに続く。

「あのお姉ちゃんを助けてあげて!」

「アルティマレディは負けないよね!」

「お願い、ティオ!」

縋る希望がそれしかないこともあり、大人たちもそれに続いて声を上げていく。

人々の願いが一つになったその時、金色のオーラを纏った戦士の瞳に光が宿る。

そのまま手を天に掲げると、光に包まれたアルティマレディ・ティオは、空へと飛び立つのだった。


「フン、他愛のない…まぁ、これでゴーデスに貸しを作れたと考えれば安いものか…」

動かなくなったルクリアを触手で嬲りながら、クインモネラは独りごちた。

「さて、こいつを血祭りにあげた後は市街地を攻撃する契約だったな…この形態は動きづらいんだがな…」

クインモネラが足元に張った根を引き抜き方向転換を始めると、近くにあるアルフェス会場が目に止まった。

「なんだ、あんな近くに生体反応が集まっているではないか…まずはあそこを壊滅させるとするか。」

触手の先にエネルギーを集積し、破壊光線を発射する体勢に入るクインモネラ。

しかし次の瞬間、目標に設定した施設から眩い光が走り、攻撃用の触手を切り落とす。


「ギャアアアア!」

身体の近くで切り落とされたことで、集めていたエネルギーが自らに当たり、身悶えるクインモネラ。

「な、何やつ!」

クインモネラが光の軌跡を追うと、その先には金色のオーラを纏ったアルティマレディの姿があった。

その新たなる女神・ティオはクインモネラの問いかけには答えず、切り落とした触手から地面に落ちたルクリアを見据える。

「ぐううっ…話が違うぞゴーデス!アルティマレディは一人ではなかったのか!」

想定外の難敵の出現に頭に血の上ったクインモネラ。

乱雑に放たれる攻撃を、淡々とティオは躱していく。

そのまま地上に降り立つと、ルクリアのカラータイマーに手をかざす。

するとティオの纏う金色のオーラが、少しずつルクリアへと流れていった。

ピコンピコンピコン…

消えていたルクリアのタイマーに光が戻り、その肌も血色を取り戻していく。

「何をしている!?やめろぉ!」

激昂するクインモネラの触手がティオに殺到し、一気にその身体を絡めとる。


「…!」

流石のティオも、がんじがらめに触手に拘束されたことで身動きが取れなくなってしまった。

「手を焼かせおって!このまま引きちぎってくれる!」

力を込めた触手の締め付けがティオを襲ったその時、凛とした声が響く。

「そうはさせません!」

次の瞬間、ティオと同じ金色のオーラを身に纏い、ルクリアが再び立ち上がった。

ザシュッ!

アカリから借り受けた力・ナイトブレードを操り、触手を切り落として一気にティオを解放する。

「よくもやってくれましたね…街には行かせません!」

空中で見えを切り、クインモネラの前に立ち塞がるルクリア。

その脇に、スッとティオも並び立つ。

視線を交わすだけで、二人の間に言葉は必要なかった。

「一緒にいきましょう!はああああっ!」

ルクリアは気合を込めると瞬時にフレアモードへと変わり、ティオは集中しながらその手を水平に広げる。

「ネイバスター光線!」

ルクリアの最大出力の光線がクインモネラの頭部へ殺到し、それに合わせるように、ティオも自身の必殺技・ゼペリオン光線を放つ。


二つの光線が宙で螺旋を描くように混ざり合い、一気にクインモネラの頭を撃ち抜いた。

「グハアアアアアッ!」

断末魔をあげるクインモネラ。

頭部を失ったことにより、その身体も草木が枯れるように朽ち果てていった。

「やった!やりましたね!」

ルクリアがティオを見遣ると、ティオの身体はゆっくりと光の粒子になって消えていくところであった。

微笑むティオと感謝の握手を交わすルクリア。

クインモネラが消えたことで、避難所から外へ出てきた民衆から歓喜の声が上がる。

「アルティマレディ〜!ありがとう!」

「ティオ!かっこよかったぞー!」

その声に応えるように一瞬眩く輝いたのち、ティオの身体はかき消えるように霧散する。

そしてティオを構成していた光の粒子は、ゆっくりとマネキンへと還っていくのだった…


「むぅ…奇跡のオンパレードじゃのう…」

目の前の状況に唸るゴーデスを見て、タケシはため息をつく。

「全く…捨て駒が派手に散ったけど、これじゃ希望を抱く人間が増えてマイナスエネルギーは貯まらないんじゃないか?」

しかしゴーデスは意外と淡白な反応を示す。

「うむ…しかし、失敗というわけではないのじゃ。具体的な侵略者を目にすることによって、人間共にはいつか本当に支配者が現れるのではないか、街が破壊されるのではないか、そんな懸念が芽生えたはずじゃ。そして、いつかその蕾が花開く時が来る…わしは気長にそれを待つわい。」

随分と楽観的なことで…

そんな言葉を口にしかけて、タケシは咳払いして誤魔化した。

「まぁ、それに…これはワシの経験則じゃが、いいことというのは続かんもんじゃ。この星にもそんな言葉があったじゃろう。ルクリアたちは今回いい目を引いたのじゃから、次はワシらの番かもしれんぞ。あんな捨て駒で奴らの幸運を吐き出させたのなら上々よ。」

禍福は糾える…ってやつかな…

ゴーデスの言葉を聞き、そんなことを考えていたタケシの耳に、ゴーデスの嬉しそうな声が聞こえてくる。

「ファファファ…これを見るが良い。早速朗報が一つ届いたようじゃぞ。」

ゴーデスが喜色満面の顔でむけてきたモニターには、本来この時に地球の守護に就いているはずだった戦姫・アルティマレディ・ジェニスの囚われの姿が映し出されていた…


続く


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Comments

syonnai_hito

ティオが少しエッチな目に合いつつ、王道の勝利エンドでした。タイラント戦の伏線回収も敵役としてのクインモネラも、それにゴーデスのポジティブさも素晴らしい。

ます。

ルクリアのピンチもっと見たかったな…

ます。

ルクリア初期の作品みたいなエロ展開を期待しますm(_ _)m