Home Artists Posts Import Register

Content

挿絵 炭酸水様 あるくろぜった様 CO様


前話までのあらすじ

光の星へ迫る『巨獣酋長フェザニモン』率いるバンデル人の艦隊…

ソフィ・リオナ・エリナも、次々とその侵攻の前に散っていく。

一方その頃、光の星で目覚めたミレーヌは、自らの師であり銀河守備隊を率いるネグルに、女王ユウリからミレーヌ自身がキーになると言われていたことを聞く。

心あたりを尋ねるネグルに、なにかに気づいたミレーヌは、凛とした視線を向けるのだった…


「何かお心あたりが?」

傍らに置かれたティアラを手にしたミレーヌの瞳が、決意を秘めて輝くのを見たネグル。

その問いかけにミレーヌは軽く頷いた。

「このティアラには、ある条件をもとにユウリ様の力、その一端を引き出す機能がついているんです。」

確かその名をエンプレスモード…

少し前にミレーヌが使用したという話が出ていたが、なぜかその後情報統制がかかっていた。

「以前ミレーヌ様がつかったという…詳細は機密扱いでしたな。」

ネグルの言葉にミレーヌが再度頷く。

「はい…あまりに力が強大なことと、いつでも使えるものではないので…」

ある条件…先程ミレーヌの口をついた言葉を思い出し、ネグルはその先を視線で促す。

「使用条件は『何度も敗北を重ねること』…正確にはその敗北から何度も立ち上がる精神に、ティアラが応えるのだそうです。」

それを聞き絶句するネグル。

まさか、か様な苦行を愛弟子が強いられていようとは…

苦渋に満ちた表情のネグルに、ミレーヌは優しく微笑む。

「そんな顔しないで、師匠。お母様よりこのティアラを受け継いだその時から、これは私の宿命と思っています。今回も…やり遂げて見せるわ!」

自分に言い聞かせるかの様に気合を入れるミレーヌの姿に、ネグルは弟子の成長を感じて感嘆する。

「もう技を外しては転んでベソをかいていたミレーヌ様はいないのですね…ネグルは寂しゅうございます…」

咄嗟に少し茶化して誤魔化したネグルに、ミレーヌの表情もつられて笑顔に変わる。

ビィーッ!ビィーッ!

しかし師弟の楽しい時間は終わりとばかりに、けたたましいサイレンが建物中に響き、空気が一変した。

「全く無粋な…奴らが最終防衛ラインに到達した様ですな。ミレーヌ様、積もる話は星を守ってからでもよろしいかな?」

ネグルの表情が自分に稽古をつけていた時の様な真面目なものへと変わり、自然と気合の入るミレーヌ。

「ええ!いきましょう!」

万全とは言えないコンディションの中、光の星の命運をかけたミレーヌの戦いが今、始まろうとしていた…


「して、そのエンプレスモードの能力とはいかばかりでしょうか?」

作戦の立案を急ぐネグルの問いに、ミレーヌはふと首を傾げる。

「うーん…私自身もよくわからないんです。前回は発動して光のエネルギーを解放したら解決してしまったので…」

ミレーヌがエンプレスモードを使用したのは、大怪獣グルノアによって地球が闇に閉ざされた時であった。

その時は変身後に杖を振るっただけで事態が収まっており、ミレーヌ自身にも力の底が見えなかったのである。

「でも、それだけでもエネルギーを使い果たしてしまいました。今回もユウリ様のご期待に添えるかどうか…」

自身なさげなミレーヌの後ろ姿に、かつてのソフィの姿を重ねるネグル。

ガルデン大王に光の星が攻められた際、当時の国宝を持ち出してその脅威を排除したソフィ。

その咎で皇位を追われ、今は隠遁生活を送っているものの、その時は体を張って光の星の未来を守り抜いた姿が今回のミレーヌにも見てとれた。

「血は争えませんな、ソフィ様…」

二度も同じ死地に向かう背中を見送る事しかできず、自分のふがいなさを歯噛みするネグル。

そんな師の胸中を察してか、ミレーヌは笑顔で振り返った。

「師匠、そんな顔しないでください…愛弟子の晴れ舞台、とくとご覧あれ…ってなものです!」

そういうと飛翔し、空から迫る大艦隊に向かっていくミレーヌ。

「ミレーヌ様…どうかご無事で!」

ネグルも自らの役目を果たす為、踵を返して司令部へと戻るのであった…


今回の侵攻にあたり、光の星は緊急時のマニュアルに則り、市民や皇族の避難を進めていた。

その船団がバンデル人の艦隊とは逆方向へ出立を始める。

成層圏に到達したミレーヌはその様子を確認し、改めて艦隊へと向き直った。

「ユウリ様…今一度お力をお貸しください…エンプレスモード起動!」


頭上に掲げたアルティマティアラを起動し、再度装着するミレーヌ。

その頭部から薄いヴェールがミレーヌの身体を包み、エネルギーを帯びたリボンでタイマーを装飾していく。

ユウリの持つ杖を模したアルティマスタッフが身体の前に生成され、それを手に取ったミレーヌはさながらユウリのような威厳を湛えていた。

「聞きなさい!あなたたちは不当にこの星を侵略しようとしています!直ちに進軍をやめるのです!」

眼前に迫る艦隊に毅然と対するミレーヌ。

それに応えるように、艦隊からは巨獣酋長フェザニモンが現れ、ミレーヌに対峙する。

「フン…地球でワシの手先に負けた小娘が偉そうに…ワシに腰を振った母親のように犯してやろう!」

フェザニモンの挑発にミレーヌの視線に怒りが滲む。

「お母さま…その様子では話し合いに応じるつもりはないのですね…ならば!」

覚悟を決めたミレーヌはアルティマスタッフを頭上に掲げて意識を集中する。

「ユウリ様に代わり、このアルティマミレーヌが相手になります!」

スタッフには光の星の力の象徴・アルティマベルを模した鈴があしらわれており、淡く光を発していく。


「わが星を護るスパークルフラッシュの加護…その身をもって味わいなさい!」

ミレーヌの構えた杖から発せられた光の波動が、その明滅を強めていった。

「グアアッ!やらせるとおもうか!」

フェザニモンはすぐさま羽根を飛ばし、その一団がミレーヌへ襲いかかる。

「そんなもの…ハァッ!」

ミレーヌが目を閉じると一瞬光の波動が拡散し、フェザニモンの羽根は彼女の前で霧散した。

「小癪な…ではこれならどうかな?射出しろ!」

フェザニモンの号令で、艦隊から二つの物体がミレーヌに向けて飛び出した。

目の前に放り出されたそれを見たミレーヌの顔が強張る。

「お母様!お義姉様!」

それは無惨にも蹂躙されたソフィとリオナの姿であった。

二人ともタイマーは消灯して目には光がなく、陵辱の跡がはっきりと見てとれた。

「なんてことを…許しません!」

ミレーヌの怒気をはらんだ声に、フェザニモンは嬉しそうに喉を鳴らす。

「グェッグェッ…今からその女どもに我が羽根を打ち込み、傀儡にして貴様らの星を蹂躙してくれるわ!」

そういうやいなや、素早く羽根を撃ち出すフェザニモン。

「ああっ!だめぇっ!」

光の波動を放つ間もないことに気づいたミレーヌの身体は、考えるよりも先に動いてしまっていた。

ドシュッ…

「あ…」

力の全てをアルティマスタッフの制御に回していたミレーヌの柔肌に、無惨にもフェザニモンの毒羽根が突き刺さる。


ピコンピコンピコン…

無情にもエナジータイマーが悲鳴をあげ、ミレーヌの危機を知らせてしまう。

「ぁ…くぅ…まだ…ま…ける…わけ…には…」

毒の廻りで視界が霞み、胸にはうっすらと乳首の輪郭が浮かびあがる。

アルティマスタッフの最大出力を発揮するには、今少しのチャージが必要であった。

それまでミレーヌの身体が保つか…フェザニモンの攻撃に屈してしまうのか…

光の星の命運をかけた決着の時が、すぐそこへと迫っていた…


「むうう…こんなことなら言いつけを破ってでもご助力すべきであった!」

モニターで戦況を見守っていたネグルは机を叩いて後悔する。

本来であれば、ネグルはフェザニモンの妨害に対する露払いとして同行するつもりであった。

しかしミレーヌから、エンプレスモードの全力が未知数のため、攻撃に巻き込む可能性があることを考慮して、地上に残るように言われていたのである。

エンプレスモードの加護があるミレーヌはいざ知らず、至近距離からそのエネルギーを浴びてしまったらどうなるか…

そんな心配をすることがないよう、一人で行かせて欲しいというミレーヌの願いを、ネグルは受け入れてしまったのである。

愛弟子の危機に自らの判断を誤ったと憤るネグル。

しかしそんなネグルの肩に、背後から優しく手が添えられた。

「大丈夫です。あの子はまだ負けてはいないわ…」

その声に振り返ったネグルの顔が、希望に満ちる。

「ユウリ様!お戻りに…なられたのですね…」

しかし背後に立ったユウリの姿に、ネグルは絶句した。

ボロボロにやつれ、光の星にいるはずなのにエナジータイマーは消え入りそうな光で明滅し、頬は何かに耐えるように上気している。

「なんということだ…聖十字隊のもの!ここへ!」

普段なら見ることのないユウリの姿に、ネグルは救護班を呼びつけるが、ユウリがそれを手で制した。

「良いのです…今は火急の事態。それよりもご覧なさい。ミレーヌは今も戦っています。そしてあの子は…一人ではないわ!」

ユウリの言葉を証明するかのように、レーダーが謎の物体の接近を告げる。

それは一直線にミレーヌの元へと向かっていた…


「ぐぅ…このままじゃ…」

アルティマスタッフを握る手から力が抜け、意識が朦朧とする。

病み上がり本調子ではないところに、エンプレスモードの負荷と毒がミレーヌを苦しめていた。

「ククク…もうよい!楽になるがいい、アルティマミレーヌ!」

フェザニモンはさらなる羽根を放ち、ミレーヌにトドメを刺そうとけしかける。

万事休すか…

そう思われたその時、一本の矢がフェザニモンの羽根を全て撃ち抜いた。

「…あれは…お義姉様のフェザーアロー…どうして…」

撃ったはずのリオナはミレーヌの背後で意識を失って倒れている。

一体何が…そう思ったミレーヌの目の前に、カプセル怪獣が漂ってきた。

「フェザーアローはこれを…!!…これは!」

ミレーヌはそこに刻まれた個体名を見て驚愕する。

あまりの懐かしさに涙腺が緩みそうになるミレーヌであったが、『彼』がここにきた意味を考え、すぐに戦士の表情へと立ち直った。

「キミなら安心して背中を任せられる…お願い、力を貸して!『怪獣くん』!」

そう言ってカプセルを起動するミレーヌ。

一瞬の閃光が走り、光の中から巨大な怪獣が出現する。

「ガアアアアアアッ!」

カプセルの中身はかつて、ミレーヌの友として幼少期を過ごした怪獣の子供…ミレーヌは『怪獣くん』と呼んで親しんでいたドラゴン型のモンスターであった。

飛び出した怪獣くんはあたりの艦船を蹴散らし、熱戦を放射する。

その一撃は、ミレーヌへの対応で前に出過ぎていたフェザニモンを超えて前線に寄っていた艦隊に命中、一気に轟沈させていく。


「グルルルルル…」

大好きなミレーヌを甚振ったフェザニモンを威嚇する怪獣くん。

「キシャアアアアア!」

フェザニモンも言語を忘れてバンデル人の本性を剥き出しにして吠え返す。

「怪獣くん…すごい!私も…負けていられないわ!」

ミレーヌは友の勇姿に鼓舞され、なんとか体勢を立て直した。

キィイイイン…

アルティマスタッフにあしらわれたベルに、スパークルフラッシュの力が集中する。

その溢れ出るエネルギーに、ミレーヌのタイマーが青に戻り、その傷も癒えていく。

「一気にこのまま決めます!怪獣くん、お願い!」

ミレーヌの呼びかけに合わせて、怪獣くんの強烈な尻尾の一撃がフェザニモンを艦隊の方向へ弾き飛ばした。

「グアッ!」

そのまま踵を返して飛翔し、ミレーヌの背後に浮いていたソフィとリオナを抱えて光の星へと降下していく怪獣くん。

このまま二人を残したままではミレーヌの集中を妨げる、ということを怪獣くんは長年の付き合いで感じ取っていた。

後顧の憂いがなくなったことで、杖を掲げるミレーヌの目から迷いが消え、真っ直ぐにフェザニモンとバンデル艦隊を見据える。

「怪獣くん、ありがとう…!」

友人への感謝を胸に、最後の気力を振り絞るミレーヌ。


「アルティマスタッフよ、その力を示せ!セイクリッド・スパークルレイ!」

ミレーヌの声にあわせて、杖が溜め込んだ光の力を一気に解放した。

ズァアアア…

発動した波動は光の速度で銀河に伝播し、その過程にあるすべての怨念や情念を浄化していく。

「ギヤァアアアアアッ!!」

最も近い位置で初撃を受けたフェザニモンは、アンチスパークルの与えた力と共に光へ飲まれていく。

その瞬間、銀河は聖なる光の輝きに包まれていた…


光の星から離れた宙域で力尽きていたエリナにも、ミレーヌの放った光が届く。

ピコンピコンピコン…

消えていたエナジータイマーに命の灯がともり、エリナの目が開かれる。


「これは…すごい光の波動…ユウリ様?」

自らの身体が回復と共にいつも以上に漲ることを実感するエリナ。

「寝ている場合じゃないわね…ハアアアアッ!」

手足を縛っていた鎖を手繰り寄せ、気合を入れるエリナ。

彼女を繋ぎ止めていたはずの艦隊はその力に逆らえず陣形を崩していく。

同じ光に灼かれ、弱体化したバンデル人たちではもう彼女を止めることはできなかった…


ビキ…バキ…

ミレーヌの手の中で、アルティマスタッフにヒビが入っていく。

彼女が持つアルティマティアラと共に、手にした杖もユウリが使う本物ではない。

引き出したスパークルフラッシュの力の前に、もうすでにエンプレスモードの神具ではその形状を保つことは難しかった。

「ありがとう…みんなを救ってくれて。また力を貸してね…」

ミレーヌはそういうとエンプレスモードを解こうとする。

母から譲り受けたアルティマティアラを失うわけにはいかない。

撃ち放った力の反動に自分の身体が耐えられるか…

その自信はあまりなかったが、ミレーヌには不思議と心配や後悔はなかった。

「お母様…お義姉様…それに師匠や怪獣くんもいる…少し休んでも大丈夫だよね…」

満ち足りた表情で杖を掲げる腕を下ろすミレーヌ。

その身体は行き場を失った光の奔流に飲まれていった…


「……ーヌ…ミレ……!ミレーヌ!」

自らを呼ぶ懐かしい声に、薄らと目を開けるミレーヌ。

そこには目に涙を溜めて微笑むソフィの顔があった。


「お母…様…」

掠れた声を発したミレーヌにソフィが抱きつく。

「よかった…全く、いつまでも心配かけるんだから!」

そういいながらソフィは優しくミレーヌの頭を撫でる。

「お母様…もうよろしいのですか…」

さっきは完全に意識を失っていた様子だったが、今のソフィは全快しているように見えた。

「ええ…あなたが放った光の波動で回復したわ。中心にいたあなただけはダメージを負ってしまったようだけど…何事も過ぎたるは及ばざるが如しね。」

ミレーヌたちアルティマの戦士にも、スパークルフラッシュの光は強すぎる…

それを制御する女王ユウリの凄さを改めて感じるミレーヌであった。

「ミレーヌ…よくぞ光の星…ひいてはこの銀河を守ってくれました。皆を代表して感謝の意を…」

ソフィの背後からユウリが現れ、ミレーヌの身体に手をかざす。

「ユウリ様!…あぅ…」

立ちあがろうとするミレーヌをユウリが制する。

「無理をしてはダメよ。今はその身を癒すのです。」


かざしたユウリの手が優しく光り、ミレーヌのエナジータイマーが光を取り戻す。

「はい…少し…やすま…せて…いた…」

安心したのかミレーヌの意識が遠のいていく。

ユウリはソフィと目線を合わせ、微笑みながら司令部へと下がっていった。

ミレーヌの代わりにユウリに頭を下げるソフィ。

回復を続けながらソフィは手に握ったカプセルに目線を落とす。

「ふふふ…君がミレーヌを救ってくれるなんて…私も身体を張った甲斐があったというものね。」

ワンパクだった怪獣くんを思い出して、ソフィは笑顔を浮かべる。

「でもありがとう…これからもミレーヌをよろしく頼むわよ。」

母の気持ちを知ってか知らずか、腕の中のミレーヌは安らかな寝顔を見せるのだった…


「うっ…」

司令部に入ったユウリは膝をつく。

ミレーヌたちの前ではなんとか取り繕ったものの、その身体は限界を迎えようとしていた。

「ククク…よかったではないか…あの娘、貴様の後継として優秀に育ちそうだ…」

念話でアンチスパークルがユウリに語りかける。

大一番を直に見せるため、決戦の直前でユウリを解放したアンチスパークル。

今回の結果はユウリにとってもアンチスパークルにも興味深いものであった。

「ダメよ…あの子はまだ若い…重責を負わせる訳には…」

ユウリは被りを振る。

しかし、アンチスパークルはそんなユウリの意見など意に介さず、次なる暗躍を思案する。

「貴様のためにも、あの娘にはこれからも試練を用意してやろう…せいぜい後継が育つよう祈るのだな!」

いうだけ言ってアンチスパークルはユウリのそばからかき消える。

「ごめんなさい、ミレーヌ…私が不甲斐ないばかりに…」

ユウリはこれからミレーヌを襲う毒牙を案じ、ユウリは人知れず涙を流すのだった…


ミレーヌの活躍によってバンデル人の復讐は幕を閉じた。

しかし、アンチスパークルに目をつけられてしまったミレーヌ。

これから彼の刺客が次々に地球を襲うだろう。

銀河に平和が戻るその日まで、負けるな!闘え!アルティマミレーヌ!


闘え!アルティマミレーヌ「護れ、光の星!巨獣酋長フェザニモン襲来篇」 完


Files

Comments

Addition2

非常精彩的结局,非常期待“下篇”又会是怎样的进展。还有期待IF的结局又会是怎样的下场,也会又怎样的死亡情景。 非常感谢您做了这个作品。

syonnai_hito

怪獣くんの活躍に胸が熱くなりました😿 今回はあわやの展開でしたが、いずれあるであろう、エンプレスモードでのやられが楽しみです。